第47話「死を呼ぶ氷魔人トドギラー」(1972年2月19日)
冒頭、何処かの空き地でお揃いのユニフォームを着たユリ、ミカ、エミ、五郎の4人がサッカーをして遊んでいる。

五郎「あーあー、見ちゃいられねえなぁ」
エミ「まったく五郎ったら、頭に来ちゃう!」
三人娘が下手糞なので、すぐにその場に座り込んでしまう五郎を、健康的な6本の太腿が取り囲む。
えー、左からエミ、ユリ、ミカの太腿となっております。
そのうち、ユリの蹴ったボールがミカたちの頭上を大きく越えて草叢の中へ飛び込んでしまう。

じじい「こらっ、誰に断ってここで遊んどるんだ?」
エミ「すいませーん」
ミカ「これから気をつけますから~」
じじい「ワシの土地から出て行け、ここで遊んだらいかんと言うとるのに……」
と、雑草の中からひょいと因業そうなじじいが出て来て、ガミガミとユリたちを叱る。

じじい「こうしてくれるわっ!」
怒りの収まらないじじい、手にしたボールを反対の方角へ思いっきり放り投げてしまう。
大人気ない……と言う言葉は、こういう時に使うのだ。

当時の娘たちは大人しく、そんなことをされても、「まったくしょうがないわねぇ~」と、憤懣を漏らすだけで、じじいに反撃すらしようとしない。
もっとも、そこはじじいの所有地なのだろうから、勝手に入り込んで遊んでいたユリたちが悪いのだけど。
だが、天罰覿面と言うべきか、その場を立ち去りかけると、急に雪がふぶいてきて、

ふと見れば、一瞬でじじいが雪をかぶって彫像のように凍り付いているではないか。
それはショッカーの怪人、トドギラーの吐き出す強力な冷凍ガスによるものだった。
トドギラー、何故か近くにいるユリたちには見向きもせず、カチンカチンになった老人の体を抱き上げると、何処かへ運び去る。
そのデモンストレーションをアジトの中のモニターで見ている死神博士は「私がこの手で作った改造人間は恐るべき威力を発揮し始めた」と、ナレーションっぽい台詞を吐いて、ご満悦の様子。

首領「死神博士、直ちにアイス計画を予定通り実行して貰おう。この計画で氷にした人間どもはアジトに連れ込んでショッカーの仲間に改造するのだ」
死神博士「用意は全て整っております。我々ショッカーに抵抗する、仮面ライダーを始末して、あーとは、改造する人間をここへ連れて来るだけです」
相変わらず、「予定通り」「直ちに」などと言う言い方が好きなパンクチュアルな首領であった。
ナレーター「悪の組織ショッカーはアイス計画を推し進めようとしている。そのアイス計画とは……」
ナレーターの言葉に続いて、洋上を進む数隻のタンカーのような船影が映し出され、ある船の船長と航海士がトドギラーに襲われて冷凍人間にされてしまう。
ナレーターはそれ以上説明してくれないので、パッと見、「アイス計画」とは、日本に入ってくるタンカーを次々と襲っては、石油の輸入を妨害し、日本中を暖房のない寒冷地獄へ叩き込むのが目的……かと思いきや、

滝「遠洋帰りの漁船がまた遭難しました」
立花「なに、それじゃもう昨日から7隻じゃないか」
エミ「原因は、やっぱり氷山?」
滝「ああ、どの船も、不思議な怪獣を見たと打電しながら一瞬のうちに中断してるんだ」
滝の台詞で、それらは単なる漁船に過ぎなかったことが判明する。
要するに、「アイス計画」とは、片っ端から人間を氷の彫像にしてアジトへ運び込み、怪人や戦闘員の素材として活用すると言う、ただその為の計画だったようだ。
だったら、何もわざわざ漁船なんか襲わずに、人のたくさんいる団地や住宅地を襲った方が効率が良いんじゃないかなぁ?

五郎「隼人兄ちゃん、すると、昨日の怪人かも」
隼人「うんー、だとするとショッカーの仕業だな。船に乗ってた人たちは?」
滝「ひとりも発見されていない」
後ろにいるミカ、珍しくカジュアルな格好しているのだが、人の陰になって良く見えないのが悔しい。

さて、その連れ去られた人たちだが、トドギラー自らの手で、アジトの冷凍庫に、肉屋が冷凍肉を吊るすように鎖でぶら下げられていた。
その中には最初に出てきたクソじじいも混じっていた。しかし、そんな年寄りが改造人間や戦闘員の素材になるのだろうか?
一方、あの船長には病身の妻とヤスオと言う小学生の息子がいた。
父親はもう船と一緒に海に沈んでしまったのだとヤケ気味に話すヤスオに、病身の母親は「それは何かの間違いよ!」と、強く言い聞かせる

母親「お願いだから、そんなに思い詰めないで頂戴……お前までがそんな噂を信じて勉強するのがイヤだなんて言ったら、母さん、死んでしまいたいよ」
ヤスオ「お母ちゃん、馬鹿なこと言うなよー」
病身の割に、バッチリお化粧しているお母さんであった。女ですもの!
その後、堤防に座って海を見ているヤスオを隼人が見掛けて声を掛ける。

隼人「坊や、何を見てるんだい。海が好きなのかい」
ヤスオ「海なんか大っ嫌いだー」
隼人「嫌い?」
ヤスオ「お父ちゃんを飲み込んじまった海なんか、大っ嫌いだーっ」

隼人「お父さんが海に飲み込まれた? 一体何時だ、そりゃ?」
ヤスオ「昨日だよー」
……え、昨日の話なの? なんか母親との会話の感じからして、少なくとも一週間は経ってるような気がしたのだが。
と言うか、父親が遭難した翌日だったら、家族はこんなことしてないと思うんですけどね、普通。
そこへ、戦闘員たちが出て来て隼人に襲い掛かってくる。

その頃、滝も、バイクですぐ近くまで来ていた。
滝「隼人の奴、人を出し抜くつもりだろうが、
奴のオートバイには発信装置を取り付けておいたんだ! 何処へ行ってもこの滝和也さんからは逃げられませんってね」
隼人と滝が、事件の謎を追って互いに相手を出し抜こうとするシーンはしばしば見られるが、それが高じて、滝は遂に
ストーカーまがいの行為に手を染めるまでになっていた。
だが、腕時計に内蔵された探知機を使うまでもなく、少し目を上げれば、海に面した狭い岩場で隼人が戦闘員たちと戦っているのが視認できた。

それにしても……、剣を振り回すのなら分かるが、こんな、いかにも殺陣の練習用みたいな殺傷性の低いスティックで攻撃して、何になるのだろう?
これでは、万が一にも隼人を倒せるとは思えないのだが……。
そのうち、トドギラーが現れ、三人は海岸の洞窟の中に追い込まれる。
滝とヤスオは冷凍ガスによってたちまち冷凍人間にされ、隼人も氷の壁に閉じ込められてしまう。

死神「よくやったぞ、トドギラー、これまで、徹底的に我々の邪魔をしてきた、仮面ライダーさえ片付けてしまえば、我々に立ち向かってくる敵は、存在しない」
トドギラーの報告を受けて、いつになく上機嫌の死神博士。
トドギラーは冷凍ガス(零下300度の冷凍シュート)で、生きたウサギを凍らせてから、粉々にすると言う今更ながらのデモンストレーションを演じて、全国ウサギ愛好家協会からの顰蹙を買う。
ほんと、なんでこのタイミングでそんなことしなきゃいけないのだろう?
死神博士は洞窟に閉じ込めてある隼人を連れて来いと、改めてトドギラーに命じる。

さて、その隼人は洞窟の奥の、氷の壁によって創られた狭い空間の中で、なんとか焚き火を起こし、滝とヤスオの体を解凍しようと頑張っていたが……。
隼人「こんな
焚き火の熱じゃやっぱり駄目だ。このままじゃ、滝やヤスオが死んでしまう。そうだ、残るはあの手しかない」

隼人はそうつぶやくと、その場でライダーに変身する。
てっきり、仮面ライダーの超パワーで二人の体を温めようと言うのかと思いきや、ライダーは自分の体を焚き火に近付けて、その熱を吸収し、

その上で滝とヤスオの体にハグして、熱を伝えると言う、恐ろしく原始的な方法を実践するのだった。
……いや、結局、それって、「焚き火の熱」を使ってるんでしょ? 今、「焚き火の熱じゃ駄目だ」って言ってませんでした?
良く分からないのだが、とにかく二人の体はゆっくりと解凍されて、二人も意識を取り戻す。
これも、今までカチンカチンにされていた人間が、いくら解凍されたからって平気で動き回れるようになると言うのは……?
ま、いちいち突っ込んでいたら話が前に進まないのでこの辺にしておく。
ライダーは氷の壁を叩き破って脱出しようとするが、ライダーのパワーをもってしても壁は壊れない。

それでも、普通の岩壁の薄いところをパンチで突き破り、脱出に成功する。
滝は一旦ヤスオを連れて彼の自宅に送り届け、ライダーは洞窟に残って、のこのこやってきたトドギラーたちと再戦する。
だが、ライダーはトドギラーの冷凍シュートをまともに浴びて、冷凍されてしまう。

アジトに運ばれ、手術台の上に仰向けに寝かされているライダー。
もしショッカーが、過去の過ちから教訓を学ぶことの出来る悪の組織だったら、ライダーの敗死は不可避の運命であったのだが……。

死神博士「こう、冷凍になってしまえば、仮面ライダーもただの氷の塊だな」
トドギラー「死神博士、凍ったまま叩きつけてやりましょう!」
死神博士「それでは面白くない。一度溶かして、心臓を蘇生させ、一文字隼人に戻してから地獄へ落としてやれ! それが我々ショッカーの処刑だ!」 トドギラーの粗暴だが、ショッカーにとって最善の提案を退けると、死神博士、
何を血迷ったか、わざわざ仮面ライダーを解凍してから、改めて殺すのだと言い出しやがるのである!
死神博士って、インテリ風を装いながら、
実はただのバカだったのでは? と言う疑問が頭に渦巻く管理人であった。
トドギラーや科学者たちも「いいのかなぁ?」と言うような顔で解凍を始める。
みるみるうちに、ライダーの体表の氷が解けていき、台の上に小さな水溜りを作り出す。
死神博士「今度は、貴様を存分に苦しめてやるわ」
ライダー「それはどうかなっ!」
死神博士の呪いの言葉に応じると、ライダーは手足を縛っていた鎖を簡単に引きちぎると、手術台から飛び降りてトドギラーの背後に回り、羽交い絞めにする。

ライダー「仮面ライダーの力を侮ったな、トドギラー」
トドギラー(せやから解凍したくなかったんや……) ライダー「このアジトに潜入する為にわざと捕まってやったんだ。沈没した船の乗員は何処に監禁されているんだ?」
ライダーはそう言うのだが、ここに運ばれてきた時は完全に凍結していた訳で、死神博士のオウンゴールに等しい判断ミスがなければ、そのまま木っ端微塵に粉砕されていた可能性が高かったと思われる。
よって、ライダーのこの言い草はただの
強がりであったと言える。(証明終わり)

ライダー「何処にいると聞いてるんだ?」
死神博士「……」
ライダー「さぁ、言えーっ!」
死神博士(……え? あ、なんだ、トドギラーじゃなくて俺に聞いてたのか) ……と言うのは嘘だが、死神博士がしばし茫然とその場に佇立していたのは本当である。
自分の軽率な判断が招いた、必勝の状況から一気に形勢逆転された現実に直面して、しばらくはショックのあまり何をどうする分別もつかないでいたのだろう。
さらに、ライダーはトドギラーを脅して、冷凍シュートを死神博士に吹きかけさせようとする。
ちょっと脅されたくらいで大幹部に牙を剥こうとするトドギラーも情けないが、もっと情けないのは、
死神博士「釈放する、やめろ! 約束する、やめてくれ!」 恥も外聞もなく宿敵ライダーに対して命乞いをする死神博士であった。
ついさっきまで、余裕ぶっこいて勝利の凱歌を奏していたことを思い合わせると、ますます死神博士が惨めに思えてくる。
首領が見ていたらその場で処刑されても文句の言えない一連の失態……いや、醜態であった。
幸か不幸か、ちょうどその時、首領はアマゾンからの荷物(ここ、楽天ブログやで……)を受け取りに席を外していたようで、このぶざまな展開を目にすることはなかったのだが。
その後、色々あって、ライダーは外でトドギラーたちと戦い、

滝はなんと、死神博士を追跡し、ガチで殴り合いになる。
仮面ライダー以外のキャラと大幹部がこうやってまともに激突すると言うのは、ちょっと他では思い出せないシチュエーションである。

死神博士のPOVで、滝がパンチを打ち込んでいるシーン。
でも、その正体がイカデビルである死神博士なら、滝など瞬殺できそうなものだが……。
この時点では、まだ正体が怪人と言うことは決まっていなかったのだろうか?
それでも、得意の催眠術によって滝を一時的に戦闘不能にすると、死神博士はさっさと緊急脱出通路から逃走してしまう。
トドギラーは、ライダーキックで倒され、それと同時に冷凍にされていた人たちも元に戻る(なんで?)
ライダーの「一人の犠牲者も出さずに済んだ」と言う台詞通り、ショッカーは結局ひとりも改造人間用の素材を確保することが出来ないまま、敗退することとなってしまった。
サブタイトルの「死を呼ぶ~」と言うフレーズがとても悲すぃ。

事件解決後、ヤスオ少年と父親が感動の再会を果たす後ろで、珍しく男物っぽいズボンを履いているミカ姉さんが奇麗なのである!
うう、もう少しライダーガールを活躍させて欲しいのです。