第24話「わちは三代目を倒す!もう一人のサキ上京す」(1987年5月28日)
4年くらい前、ここで「3」を取り上げたことがあるが、今回紹介するのは、その中で少しだけ触れていた可愛い女の子が登場するエピソードである。
その頃は、「2」はともかく、「3」の各話レビューをしようなどとは夢にも思っていなかったのだが……。
なお、最初にお断りしておくが、今回は特にその女の子に焦点を当てて、いつもより多めに画像を貼りながら話を進めて行きたいと考えているのであしからず。
冒頭、ふらりと星流学園の校門前に立つ、ひとりのセーラー服の女子高生。
飾り気のないお下げ髪や、背中に結んでいる唐草模様の風呂敷など、いかにも田舎の特産品と言ういでたちであったが、

のっけから、生のニンジンを
「カシュッ!」と歯切れの良い音を立てながら齧ると言う、その(どの?)筋には堪らない仕草を披露する。
彼女の名は、鳴戸新子(なると しんこ)と言うふざけたような名前であったが、演じるのは宮崎織沙さん。
沙織(さおり)じゃなくて、織沙(おりざ……と読むのだろう)ね。
多分、アイドルか女優の卵だったんだろうが、他には、自分の知る限りでは後に「花のあすか組!」にゲスト出演しているくらいだ。
校門の前で時間を潰していた新子は、放課後のチャイムが鳴ってぞろぞろと生徒たちが出てくると、その前に立って品定めをするように女子生徒の顔を覗き込んでいる。

うう、この素でピュアな感じ……良い! 凄く良い!

そこへ、珍しく由真がひとりで現れるが、突っ立っている新子の顔をしげしげと見ているうちに、自然と、初めて東京にやってきた時の唯の、田舎モノ丸出しの様子を連想して、「ふふふふっ」と笑い出してしまう。
新子「こらーっ! なんがおかしいとかーっ?」
由真「えーっ、言葉までそっくり! あっははっ」
新子「こらーっ、きさん、人のことそんげにわろうたら、九州一の大スケバン、風間唯が黙っちょらんぞ!」
由真「ちょっと待ってよ、お前が風間唯だってのかよ」
新子「うちは違う。ばってん、うちは風間唯の一の子分、鳴戸新子って言うと!」

由真「一の子分? ほんとにぃ?」
新子「……まだなっとらんが、いずれはそうなるつもりで博多から出てきたとー、しかし、さすがやね、こんなチンピラ姉ちゃんまで、風間唯のことしっとるやなんて……」
由真の周りをぐるぐる回りながら感心したように言う新子。
宮崎さん、可愛いだけじゃなくて、スタイルもなかなか良いのである。

由真「あんたもしかして、風間唯のこと探してる訳?」
新子「そうじゃ、なんか文句あると?」
由真「文句なんかとんでもない。ねえねえ、その風間唯ってさ、どんな奴なのか教えてくんない?」
由真、新子に興味を抱き、素知らぬ顔でそう頼み込む。

由真「お茶くらいおごるからさ」
新子「お茶だけか?」
由真「じゃあ、サンドイッチもつけるから、ね、教えて下さいよ、新子姉御」
新子「……よし、ええじゃろう!」
おだてに弱くて食い意地の張ってるところは唯そっくりの新子であった。
しかし、同じ学校に通っている筈の由真が、博多から来た女の子に教えを請うというのもなんか変なんだけどね……。
一方、その唯は学校へも行かず、依田先生に連れられて、東京美術館と言うざっくりした名前の美術館に来ていた。
依田先生、いや、般若は不動明王像の特別展示コーナーに来ると、「これを盗み出して欲しいんです」と意外な言葉を口にする。それが今度の指令だと言うのだ。

般若「あ、あまり近付かないで、警報装置が鳴りますよ」
般若が差し出した特殊サングラス越しに見ると、確かに像の四方に赤いレーザーセンサーが張り巡らされていた。
唯「そんなに大事なもんやと、これが?」
般若によると、その像には今まで何度か唯が耳にしてきた「ヴァジュラ」なるものの秘密を解く鍵が隠されているらしい。

だが、彼らの近くには既に影の忍びのひとりが紛れ込んでいた。
飛燕の源次と言うその忍びを演じるのは、仮面ライダーV3の中の人、中屋敷鉄也さんである!
同じ頃、由真は新子と喫茶店にいて、約束どおり、新子にサンドイッチをご馳走していた。
由真「早く喋ろよ」
新子「うーん、なぁんせ、九州一の大スケバンやけん、すごかとよー、身長180センチもある大女で、そぉこらへんのチンピラなんかギョロッと睨まれただけで、10メートルは吹っ飛んでしまうげな」
由真「へー、そりゃ凄いわー」
新子「それだけじゃなかよ、風間唯には結花と由真と言う姉貴がおって、これがまたむっちゃくちゃ強いっと言う噂たい」
由真「お前、それ、どんどん食べな……それで、その由真って方の姉貴はどうなんだい?」

新子「由真ぁ? ああ、由真の方は頭はドッカン人やけど……」
由真「なんだとぉ、この野郎!」
新子「え、どうかしたと?」
……
一心不乱にサンドイッチをムシャムシャ食べている女の子の画像を貼るだけで、とても幸せな気分になれる安上がりな人生を送っている管理人でありました。
それに、田舎出のガサツな女の子と言うイメージなのに、サンドイッチの食べ方は妙に行儀が良いのがミスマッチで、ますます萌えるのです。
由真「別にどうもしねえよー、それでー?」
新子「これが喧嘩したら、リリアン棒たる編み棒つこうて、相手を串刺しにして縫いつけてしまうげな! おそろしかとやろー」

由真「ふーん、もしかして、そのリリアン棒ってこういう棒のこと言うのかなぁ?」
新子「……」
由真「星流学園総番・風間由真、またの名をリリアンの由真って言うのは私のことなんだけどねー」
そろそろ潮時と見た由真が、リリアン棒を取り出して自分の正体を明かす。
しかし、もう慣れたけど、
「リリアンの由真」って冷静に考えたら相当恥ずかしい呼び名だよね。
相手が唯の姉だと知った新子は、いきなりその場に手をついて、「お願いします、唯さんに会わせて下さい!」と嘆願する。

次の場面では、風間家の台所で、結花と由真と一緒にご飯を食べている新子の姿が映し出される。
結花「よく噛んで食べなきゃ駄目よ」
新子「はい」
いかにも育ち盛りと言う風に、脇目も降らずに食べ続ける新子に結花が優しく話しかける。
(最初に会った時の唯よりも)素直で大人しい新子に好感を抱いたようである。

ハクハクと、串カツのようなおかずを口にする新子が可愛いのである!
由真「お前、ほんとに腹減ってたんだね」
新子「はい、だって、唯さんを探して東京を三日も歩き回っとったちけん」
結花「へー、そんなにしてまで唯に会いたかったの?」
新子「はい、唯さんなら絶対うちの力になってくれると思うて……」
由真「あんまり期待しない方が良いと思うけどね……」

と、そこへ、待望の唯が「くしゅんっ」と可愛いくしゃみをしながらご帰宅あそばす。
新子「あのー、あの
チビ誰ですか?」
唯「チビ?」
由真「あれが九州一の大スケバン!」

新子「うっそぉーっ、こげんチビがー? そげんことなか、こげんチビが?」
新子、思わず素っ頓狂な声を上げて、唯の前に立ち、自分との身長差を強調してバカにしまくる。

唯「なんてやー、さっきから人のことをチビ、チビちゅうてー、吹っ飛ばすぞーっ」
新子「なんてやー、なんが九州一の大スケバンか、このーっ」
チビを連発されてカッとなった唯、新子に掴み掛かるが、新子も負けずに取っ組み合いの喧嘩になる。
その後、新子は由真の部屋で、寝巻に着替え、セーラー服を丁寧に畳んでいる。
とりあえず、風間家に泊めて貰うことになったのだろう。

由真「あんな奴だけどさぁ、あれで結構しっかりしたとこあるんだよ。頼んでみなよー、なんとかしてくれるって」
新子「もうよかです」
由真「てめーなー、私の妹、信じられんねえのかよ」

新子「そげんことじゃなかと!」
由真「じゃあ、なんだよ」
新子「色々と考えたら、やっぱ頼まん方がええて……うちの相談事は、結花さんや由真さんにご迷惑かけることになるかも知れんて……せやけん、やっぱ、自分一人で片付けることにしたと」
新子、年少ながらなかなか律儀で、責任感の強い女の子であった。
一方、唯はひとり、自分の部屋で昼間の般若との会話を思い出していた。
般若によると、あの像は国宝に指定される前に様々な調査を受け、その過程で「ヴァジュラ」についての謎も発見されて、世間に公表されるかも知れないと言うのだ。
般若「そうなれば、影たちにも知られてしまうことになりますね」
つまり、今回の任務は、調査の前に像を一時盗み出して、先に「ヴァジュラ」についての秘密を解き明かそうと言うことなのだ。
……しかし、そもそもなんでその不動明王像にそんな秘密が隠されていることを般若は知ったのだろう?
次のシーンで、あの飛燕の源次が、翔の前に出て、「非常に奇妙な形をしておりまして……」と言っているので、普通の不動明王とは異なる形状だったことから、般若が着目したのかも知れない。
翔は、飛燕の源次に不動明王像の奪取を依頼する。
さて、新子はひとりであの美術館に足を運び、不動明王像に手を伸ばそうとするが、般若が唯に注意した警報装置に引っ掛かり、たちまち警報が鳴り響いて警備員が駆けつける。
警備員に引っ立てられていく新子を、唯が、そして飛燕の源次が見詰めていた……。
CM後、係員に叱られて放免されたのだろう、新子が近くの竹やぶの中の遊歩道のベンチにしょんぼり腰掛けている。

新子がいつも背中に結んでいる唐草模様の風呂敷から取り出したのは、展示されているものと瓜二つの不動明王像だった。
新子「じいちゃん、やっぱうちにはできんやね、じいちゃん……」
像に語りかけながらぽろぽろ涙をこぼす新子が可愛いのである!
と、そこへ飛燕の源次とその部下の忍びたちが竹やぶから出て来て、新子の身柄を押さえる。
少し離れたところで見守っていた唯が、すかさず華麗なヨーヨーさばきで忍びたちを蹴散らし、姉たちと共に新子と不動明王像を死守する。

茫然と、唯の実戦で鍛えられた見事な戦いぶりを見ていた新子は、「つよか~! めっちゃくちゃつよか~! やっぱ、九州一の大スケバンたい!」と唸って、チビ、チビと馬鹿にしていた唯のことをすっかり見直すのだった。
新子はその場に手をついて、「お願いです! うちを助けて下さい、実は……美術館に飾られとる像はニセモノなんです! 本物はこれなんです」と、意外な事実を明らかにする。

新子「うちのおじいちゃんは、仏像を作る職人やったとです。若い時にこの像を修理したことがあって、その時、この像の不思議な魅力にとり憑かれたごとなって、こっそりニセモノば、作ってしもうたとです」
その後、一旦風間家に戻り、般若も同席の上で新子から改めて詳しい経緯を聞いている三姉妹。
般若「本物は自分で隠し持ち、ニセモノは寺へ渡したと言う訳ですか」
新子「ばってん、すぐ返すつもりやったとです。それが、戦争が起きて、この不動明王が行方不明になってしもうて……」
般若「なるほど、返すに返せなくなってしまった?」
新子「おじいちゃん、ずっと悔やんどったとです」
唯「それであんたが美術館で本物とニセモノをすり替えようとしたと?」
新子「すんません、泥棒みたいなこと頼もうと思うたりして……」
唯「気にせんでいいとよ、あんたに頼まれんでも、わちはあの像を美術館から盗むつもりやったと」
新子「えっ?」
唯「ちょっと調べたいことがあってね……依田先生、本物を持ってきたかいね、ちゃんと調べちくり」
般若はその像を手にしてあれこれ調べるが、何の収穫もなかった。
般若「どうやら、私の見込み違いだったようですね……」
結花「折角秘密が分かると思ったのに」
落胆の表情を見せる結花たちであったが、おずおずと新子が「あのう、うち、おじいちゃんに聞いたことがあります……その中になんか難しい字が書いてあるボロボロの紙切れが入ってたって……」と話す。
風間三姉妹と新子は、そのニセモノの中にその紙切れが封入されているのではないかと考え、再び美術館へ。
で、唯が正月にテレビで見た映画(追記参照)からヒントを得たと言う作戦を元に、彼らは行動を開始する。結花と由真はいかにも気が進まなさそうだったが。
具体的には、まず、由真が展示室へ行き、センサーに引っ掛かるように像の前で手を動かす。
当然、警報が鳴り響いて警備員がどやどやと押し掛けて来る。
由真は何もしていないと言い張るが、警備員に連れて行かれる。
続いて、スケバンの癖にそう言うことが苦手な結花が唯に背中を押されるようにして展示室へやってきて、由真と全く同じことをして警備員にとっつかまる。
二人は館長室で、館長直々に取調べを受けるが、そこでもあくまで自分たちは何もしていないと主張する。
その美術館には監視カメラがないので、そのことを確かめることも出来ず、館長は判断に迷う。

結花「警報装置、壊れてるんじゃないですか?」
由真「スイッチ切っちゃえば?」
館長「いやいや、しかし、それは……」
結花「他のお客さんも迷惑するんじゃないですかぁ」
二人に唆される優柔不断な館長を演じるのは、「宇宙刑事シャイダー」第20話の武闘派総理大臣役でお馴染み(お馴染みじゃねえよ)、入江正徳さんです。
つまり、唯の計画は、そうやってわざと何度も警報装置を鳴らして彼らを疑心暗鬼にさせて、確認の為に警報装置を切らせ、その隙に入れ替えようというものだった。
館長室の窓から彼らの様子を覗いていた唯と新子は、館長が、遂に結花たちに押される形で警報装置を切ろうと言い出したのを見て、小躍りして喜ぶ。

だが、唯が本物の像を手に展示室へ行くと、像の前に二人の警備員が立っていた。チーン。
そう、結花たちのいたずらのせいで、さっきまでいなかった警備員が常駐しちゃっていたのである。
ところが、それを見た唯は(くっそう、まだ切っちょらんのか~)と、方向のズレた反応を示す。
いや、この状況は、警報装置がどーのこーのと言う
以前の問題だと思うんですが……。
それでも、唯は何気なく展示室の奥へ進み(あんなことがあった直後に、警備員たちが唯を追い払おうとしないのもかなり不自然だが……)、ヨーヨーを素早く投げてセンサーを作動させる。
そこへ館長がやってきて、「よし、この部屋のスイッチを切ろう。君たちは警報機を調べてくれ」と、唯をその場に放置して展示室から出て行ってしまうのである!
……
この美術館、ショッカーのアジト並みにセキュリティーが甘い施設だったようだ。
つーか、そもそも……、

像はケースにも入れられず、ポンと台の上に乗っているだけなので、警備員が去った後、唯は簡単に本物とニセモノを入れ替えることが出来た。
うん、と言うことは、最初から警報装置など気にしないでこうすれば良かったんじゃないの?
で、ニセモノは、素早く新子に預け、警備員にはちょっと手がレーザーに触れてしまったと謝れば良いのである。それは紛れもなく本物の像なのだから、調べられても全く問題なかった筈だし。
とにかく、三人がニセモノを持って建物から出てくると、

またまた飛燕の源次たちが現れ、新子を人質にして不動明王像を要求する。
無論、彼らはそれがニセモノだということを知らないのだ。
唯はあっさり像を投げ渡すと、新子を取り戻してから忍びたちと戦いを繰り広げる。
中庭で
忍者とスケバンが戦っているというのに、例によって、危機管理意識の欠落した美術館の人たちは何の反応も示さないのでありました。
飛燕の源次は適当なところで戦いを切り上げ、像を握って引き揚げていく。
結花「折角苦労して手に入れたのに……」
唯「心配なか。ほら!」
悔しがる姉たちに、唯はあらかじめ像から抜いておいた古文書のようなものを取り出して見せびらかす。

風間家の前で、くるっと振り向く新子。三姉妹と別れの挨拶を交わしているのだ。
唯「気が向いたらいつでも遊びにおいでね」
新子「はい」
結花「元気でね」
由真「博多でしっかりスケバン張るんだぞ」
新子「はい、うち、唯さんみたいに強いスケバンになるように頑張るけん」
唯「いかん、いかん、スケバンなんかやめて、普通の女の子にならんと……」
新子「ええー?」
唯「普通の女の子になっておじいちゃんを大切にしてやらんとねー」
新子を諭しながら送り出す唯であったが、え、新子のおじいちゃんってまだ生きてるの?
今までの口ぶりからすると、どう考えても亡くなってるようにしか聞こえなかったが。

結花「唯の言うとおりかも知れないわね、新子ちゃん、これからはおじいちゃんを大切にしてあげなくちゃね」
新子「はい、どうも色々とお世話になりました。ありがとうございました!」
最後にもう一度、新子の飛び切りの笑顔を貼っておこう。
新子が去った後、般若はあの古文書の解読を試みるが、肝心なところが虫に喰われていて、「ヴァジュラ」と言うものがつるぎらしいことが判明しただけであった。
一方、飛燕の源次は、意気揚々とニセモノの像を翔の前に持ち帰るが、無論、何の秘密も隠されておらず、ミヨズたちに叱責される。
普通なら、翔にその場でサクッと殺されるのがパターンだが、相手がなにしろ中屋敷鉄也さんだと言う配慮からか、翔は「まあ良い」と、あっさり源次を許してやるのだった。
ところで、どうでもいいことだが、サブタイトルに「わちは三代目を倒す」って書いてあるのだが、本編には全然そんなシーンはなかったなぁ……。
とにかく、思う存分、宮崎さんの画像を貼ることが出来て、管理人はいま、ひとつの使命を終えたような満足感に浸っている。
追記 ところで、唯が劇中、口にしている「正月に見た映画」とはなんだろう? たまたま管理人の手元に1987年正月のテレビジョンがあったのでちょっと調べてみたら、確かに、似たような設定の「おしゃれ泥棒」が放送されていた。
……と言うより、17話でも「ローマの休日」をまんまコピーしていた番組だから、今回のシナリオ自体、もともとこの「おしゃれ泥棒」から着想を得て作られたものだったのかも知れない。