第23話「時間を操る美女~大学教授殺人事件」(2006年6月3日)
冒頭、菜の花畑の真ん中で、岡野が山積みの書類と格闘している。
そんなところで仕事すんなよ。

岡野「明日が提出日なんですよ、是非手伝ってください」
雷「イヤです」

雷「……」
岡野の頼みを瞬殺したあとの、雷のぶにっとした口が可愛いのである!
岡野「ああ、時間が欲しいなぁ。銭形君は、時間が自由に操れればいいななんて思ったことはないですか?」
雷「ないですよ、そんなことー」
岡野「……ところで今日は何の日か知ってますか?」
雷「今日ですか? 今日はー」
岡野「今日はー?」
雷「今日はー」
岡野「今日は?」

雷「あっ、思い出した!」
岡野「うんっ」
しつこく岡野に聞かれて考え込んでいた雷、不意に叫んで立ち上がる。
岡野、やっと思い出してくれたかと、早くも書類の山を雷に手渡そうと持ち上げるが、

雷「今日はスーパー多聞の焼き芋半額セールの日ですよー」
岡野「……」
雷「ああ、忘れてたぁ。私としたことが」
目論見の外れた岡野、ショックのあまり、音を立てて書類をテーブルの上に落とす。
岡野「完全に忘れられてる、私の誕生日……」
絶望的な顔になって、喘ぐような声で漏らす岡野だったが、ケータイ刑事シリーズで最も性格の良い雷が相棒の誕生日を忘れている筈がなく、わざと知らないふりをして見せたのだろう。
どうでもいいが、いい年こいて誕生日がどーのこーのと言わないように。
と、その時、アンドリウ医科大学で殺人事件発生と言う知らせが、雷のケータイに入る。
二人は早速大学へ行き、捜査を開始する。
被害者は、風呂井戸太郎と言う教授で、自分のオフィスで机に向かったまま刺し殺されていた。
死亡推定時刻は午前11時。
また、教授が9時半ごろ、間宮悦子と言う教授と口論していたとの情報があり、二人は別棟にある間宮の研究所へ行って見る。
間宮悦子と言うのは、小宮悦子のもじりだろうなぁ……。今となってはちょっと分かりにくいが。

岡野「2倍加速装置実験室?」
雷「……」
研究所の扉には、いかにも胡散臭いプレートが貼られていた。
中は薄暗く、細長い部屋の片側にたくさんの機材やディスプレーが並んでいて、なんとなくSF映画の世界に迷い込んだ気分になる。

間宮「警察の方ですか」
岡野「警視庁の岡野です」
雷「銭形です」
間宮「心理療法科の間宮悦子です」
岡野「心理学者、若い、しかも美人」
雷「……」
本人の前で臆面もなくニヤつく岡野の腕を、雷が軽く小突く。
雷「(風呂井戸教授と)口論されていたそうですね」
間宮「ああ、論争するのは学者の常ですから。今朝はこの実験が疑問だと言い出されて……」

雷「その実験と言うのはこの装置で?」
間宮「ええ、この機械から微妙な磁気を流すことで、普段使われてない脳を活性化させるんです。私たちは普段、脳の5パーセントしか使ってません、それを10パーセントに上げることで2倍の仕事が出来るんです」
雷「間宮先生、事件当時、どちらにいらっしゃいましたか」
間宮「当時?」
雷「11時ちょうどです、教授が亡くなったのは」
雷、別に失言を誘おうとして聞いた訳ではないだろうが、用心深い間宮は犯行時刻など知らないふりをして聞き返す。
そう、今回は他にめぼしいゲストがいないし、早い段階で容疑がはっきりするのでバラしても良いと思うが、犯人はこの間宮なのである。

間宮「ちょうど実験が終わった時間です」
雷「その後は」
間宮「(生徒たちに)仮眠を取らせました。40分間、勿論、(私は)この部屋にいましたよ」
間宮は、わざわざフリップに書いて説明してくれる。
これを信じる限り、間宮の犯行は無理のように見えたが……。
雷は念の為、実験を受けた学生からも話を聞きたいと言うと、間宮は青木と言う男子学生を呼んでくれ、自分はその場を立ち去る。
雷は、まず、実験の様子を青木に話して貰う。

青木「まず、ここに座ります、次にこの装置を被ります、次に時計や携帯電話を預けます。これは集中力が切れないようにする為です」

青木「写経を始めます……」
その時の映像が映し出されるが、そもそも、こんな暗い部屋では、写経なんて出来ないのでは?

青木、実際に二人の前で猛烈なスピードで写経してみせる。
岡野「そんなに早く書いたのか?」
青木「ああ、イメージですよ、あんまり覚えてないんで……でも30分でこれだけ書けたんだから」
青木は、そう言って、自分が写経した紙を見せる。確かに、30分で書くのはちょっと不可能な分量のようであった。
雷「いつも30分ですか」
青木「はい、実験はいつも30分で終了します」
岡野「その間、先生は?」
青木「実験室にいましたよ」
雷「確認されたんですか」
青木「いいえ、暗かったんで……あと、写経をやるので必死だったんで確認はしてません。でも先生の香りはしました。先生はかなり個性的なコロン付けてるんで」
青木の証言では、間宮のアリバイが完全とは言い難い。
だが、灯台下暗しではないが、そんなことをしなくても、事件の真相は、殺された教授のパソコンに残されていた。

雷「岡野さん、この未送信メール見てください」

岡野「犯人は間宮って、ダイイングメッセージじゃないか!」
雷「証拠発見!」
嬉しそうにディスプレーを指差す雷が可愛いのである!
それはともかく、メール本文に、
「犯人は間宮」と言う、ミステリー史上、これほど分かりやすいダイイングメッセージがあっただろうか、いや、ない! と言うようなメッセージが書かれていたのである。
ケータイ刑事シリーズでも、ダイイングメッセージって良く出てくるけど、ほとんどの場合、犯人の偽装や暗号だったりして、それ自体がひとつの謎になるものだが、これほど明快で、且つ面白くないメッセージは初である。
これでほんとに犯人が観念して事件が解決してしまったら、視聴者からのクレームで番組が潰れかねないところであったが、無論、そうはならない。
二人は即座に間宮のところへ取って返し、メッセージのことを告げ、事件解決の最短レコードを樹立しようとするが、

間宮「私の目で確認しないと……」
間宮、そう言って白衣を脱いで立ち上がり、さりげなくコロンを首周りにふきつける。
青木が言っていた、個性的な香りが雷たちの鼻腔をくすぐり、

雷「良い匂い……」
岡野「たまらん」
雷、思わずうっとりしてとろけるような顔になる。

そのまま目を閉じ、陶然としていたが、

間宮「さ、行きましょ」
岡野「うん?」
雷「ふ……」
間宮の声で、ハッと我に返る。
なんとなくぼんやりした頭を抱え、二人は間宮の後に続いて風呂井戸教授の部屋へ。
ところが、

雷「あれ、ない……メールがない。なんで?」
岡野「ほんとだ、証拠が消えちゃってる」
もう一度パソコンを見ると、あった筈のメッセージが綺麗さっぱりなくなっていた。
間宮「ほんとにあったんですかぁ」
岡野「いや、ほんとにあったんですよ」
間宮「分かりました、じゃあもしまた何か見付かりましたら呼んでください」
これは、雷たちがぼーっとしている隙に、間宮自身がビューッと行って消したのだが、これって、雷がちゃんと部屋に警官なり柴田なりを見張りに残しておいたら防げたことだよね。
劇中では誰も指摘してないが、はっきり言って、現場の保全を怠った雷の大失態だよね。

二人がなおもパソコンと格闘してると、
きゅううう~と言う、可愛らしい音が鳴る。
雷(少し恥ずかしそうに)「猛烈にお腹が空きました」
岡野「君ですか、まったくもう……」
そう言う自分のお腹からも同様の音が鳴り、雷と顔を見合わせて、決まり悪そうに笑う岡野。

雷「えっ、もう3時?」
岡野「ああっ、集中し過ぎて昼飯食い損ねましたよー」
時間を見ると、既に午後3時である。
岡野は深く怪しまず、遅い昼食を取りに部屋を出て行くが、

雷「よどむ、悪の天気……」
ひとり残った雷は、ディスプレーに向かっていつもの決め台詞を放つ。
雷(きゅううう~) が、その直後、再び可愛くお腹を鳴らして、切なそうにお腹を押さえる雷であった。
二人が学食を探して中庭をうろついていると、中庭に三脚を立てて校舎を撮影している学生がいた。
何の目的か不明だが、その学生は、毎日朝からずーっと校舎の写真を撮っているらしい。
ところが、二人はその学生から思い掛けない手掛かりを得る。
手掛かりと言うか、決定的な証拠だった。
雷「これ、あなたですよね」

雷が学生のデジカメデータをプリントして貰った写真を、間宮に見せる。
それには、物凄い顔で全力疾走している間宮の姿がばっちり映っていた。
雷「写真部の学生が、犯行時刻に撮影したものです」
間宮「……」
さすがの間宮も驚いて、咄嗟に言葉が出ない。
しかし、ダイイングメッセージと言い、写真と言い、これだけ間の抜けた犯人は珍しい。
普通だったら証拠がありすぎて、逆に真犯人に陥れられたキャラと思ってしまうほどだ。

間宮「それ、何にも映ってませんよね?」
岡野「何を言うんですか、これは確かにあなたの……」
間宮、立ち上がると、何の脈絡もなく白衣を脱ぎ、再びコロンを自分に吹き付ける。
そばにいた雷たちは、またしてもそのなんとも言えない芳香にとろんとして、立ったまま眠ってしまう。

間宮「すいませーん」
岡野「ふ?」
間宮「何処に映ってるんですか?」
岡野「いや、これが何よりの……消えてる!」
さっきと全く同じように、間宮の呼びかけで我に返った二人が改めて写真を見ると、画像から、彼女の姿だけ跡形もなく消えていた。

雷「これ、パソコンソフトを使って写真の人物を消したんですよ」
岡野「しかし、私はしっかり持っていたぞ、いつの間に摩り替えたんだ?」
二人はあの学生のところへ行き、デジカメのデータをチェックしようとするが、

学生「いや、デジカメも、パソコンのデータも誰かに消されちまったんだ、これぇ」
雷「ええっ? ダイイングメッセージも写真も消えちゃった」
これも、間宮の仕業なのだが、またしても(決定的な)証拠の保全を怠った雷の、刑事としての資質が問われそうな展開である。
岡野「もしかして彼女はサイボーグ、いや、エスパーだ。我々の目にも留まらぬスピード動きまくって証拠を消してるんだ!」
ま、真顔でそんなことを言い出す岡野に比べれば、100倍マシであったが。

雷「そんな、彼女はエスパーなんかじゃありませんよ。(きゅううう~)うっ」
岡野「またかぁ」
雷「チョー猛烈にお腹が減りました」

岡野「私だって腹ペコなんだから」
雷「まさか……ええっ、もう4時半?」
岡野「えっ、4時半? あっという間の1時間半」
時計を見て、またもや異様に時間が進んでいるのに気付き、戸惑う二人。

岡野「分かったぞ、銭形君、彼女は時を自由に操ることができるんだ、時をかける美女なんだ!」
雷「もう、そんな、時間を自由に操ることなんて出来ませんよぉ」
岡野「だけど、そうにでも考えなきゃどうにもならないじゃないか!」
苦し紛れにそんな突拍子もない説まで持ち出す岡野。
と、そこへ警視庁の柴田から電話があり、間宮が実験に使っているヘッドギアには人間の能力を向上させるような効果は認められないとのことだった。
偶然にも、その写真部の学生も間宮のゼミの生徒だった。実験に参加するのを忘れたと嘆いた後、

学生「いや、俺には全然効かない実験だからいんだけどね」
雷「うん、全然効かない実験て?」
学生「いやよう、みんな30分で1時間分の写経が出来るなんて言うんだけど、俺にはすんげえ長い時間かかってるようにしか思えねえんだ。あの機械使ってもちぃっとも早くなんねえしよ」
岡野「その時、みんなの手は高速で動いてました?」
学生「ふっ、高速で動いてる訳ねえべっ!」
雷「倍で動ける人なんていない、勿論、時間を自由に操ることなんて出来ない」
学生の言葉を聞いて考え込んでいた雷、学生が慢性の鼻炎でやたらと鼻を噛んでるのを見て、不意に真相に到達する。
雷「そうか、謎は解けたよ、ワトソン君!」

間宮「あ、文科省からのメールだ。あなたの研究に対して補助金を交付いたします、つきましては今日7時から手続きを行います。文科省まで来られたし……ぃやったぁーっ!」
CM後、優雅にティータイムを楽しんでいた間宮のパソコンに、待望のメールが届く。
しかし、仮にも、ほんの数時間前に人ひとりを刺し殺した女性とはとても思えない純度100パーセントの朗らかさである。
さすがにこんな奴おらへんやろ。 罪の意識と言うものが全くない、恐らくサイコパスの一種なのだろう。
しかも、香水で自由に人の時間感覚を鈍らせることが出来るのだから、下手をすれば雷や岡野たちまで殺されていたかもしれず、そう考えるとちょっと怖い。
それはともかく、サイコパスの上に異様にせっかちな彼女は、7時までの2時間を待ちきれず、自分の鼻の穴からクソでかい脱脂綿のようなものを抜き取ってから、あのコロンを吹き付ける。

匂いを嗅いだ間宮は、ノートパソコンを枕代わりにその場で眠りに落ちてしまう。
……思うに、間宮、そんなに研究資金が欲しかったのなら、そのコロンを大量生産して売れば良かったんじゃないかと思う。不眠に悩む人たちに、馬鹿売れしただろうからだ。

それはさておき、次に目を覚ました間宮は、自分が全く別の場所、それも狭い砂浜に横たわっているのに気付き、びっくりする。
さらに、背後の茂みから、ヘンテコな、安い世紀末の住人のような格好をした岡野が飛び出してくる。
岡野「誰、お前、誰?」
間宮「やだ、なんですか?」
岡野「私のトリテリー、テ、テリトリー! 縄張り、誰も入っちゃ駄目!」

岡野「300年前、北の氷、南の氷、みんな溶けた。水いっぱい、おお、大洪水、人死ぬ死ぬ、みんな海の底、300年前……」
間宮「えっ、300年前?」
岡野「馬鹿にしてんのかぁ?」
間宮「いやいや、してないですよ」
岡野「お前、綺麗、あとで結婚する」
間宮「……ちょっと待って、あれなんですか、あれ?」
頭がパニック状態の間宮、ふと、前方に聳えているものに気付いて、岡野に尋ねる。
彼女が指差したのは、

海中から出ている東京タワーであった……って、
もっと早く気付けよ! あと、正面からの画像と、東京タワーの画像に映っている二人のポーズが全然違うぞ。
ま、この次の正面からのカットでは、それに合わせた姿勢に変わってるんだけどね。
岡野「あれ、東京タワー、偉い人、300年前住んでた、ごめんなさい!」

間宮「東京タワー? あ、うっわー、時間が飛び過ぎちゃったんだーっ」
まだコロンのせいでぼーっとしているのか、ついそんなボケをかましてしまう間宮。
間宮「……すー、待って、そんな筈ない、あの薬はトリップ効果はあってもタイムスリップできる訳じゃないわ。単に時間があっという間に過ぎる幻覚が見えるだけよ、メキシコから密輸した幻覚植物使っただけなんだもの……」
さらに、聞かれもしないのに勝手にトリックの種明かしを割と大きな声でしてしまう間宮。
ここで雷鳴が轟き、雷のお仕置きが発動する。

雷「自分で白状しましたね、間宮悦子さん」
岡野「これに全て録音させて貰いましたよ」
雷「ここは未来なんかじゃありません、TVSの超大作映画『大日本沈没』のオープンセットです」
そして、雷と柴田も出てきて、ネタ晴らしをする。
この頃、「日本沈没」のリメイクが製作されていたのだろう。クソつまんなかったが。
往生際の悪い間宮は、またもやコロンでその場を乗り切ろうとするが、岡野が我が身を犠牲にしてコロンを取り上げ、柴田に渡す。

柴田「この中に入っているのは、学術名アルゲモナ・メキシカーナの樹液、鼻粘膜から摂取するとトリップして時間の感覚が分からなくなってしまうという幻覚植物です」
雷「だから鼻の悪い渡辺さんには効かなかった。あなたは香水をつけるふりをしてこの薬を撒き、学生たちをトリップさせた。そしてインチキな機械が効いているかのように思わせたんです。あなたが無事だったのは鼻栓をしていたからでしょう。つまり、学生たちが30分だと思っていた実験、本当は60分掛かっていた。60分あれば、十分教授を殺して戻ってくることが出来る」
と、雷は説明するのだが、雷たちはトリップと言うより、完全に眠った状態だったのに、学生たちはそうならず、時間感覚がおかしくなるだけ、と言うのは矛盾してないか?
あるいは、雷たちのようにコロンを直接嗅ぐのと、学生たちのように間宮の体についているコロンを間接的に嗅ぐのとでは、作用に差が出るのかも知れないが。
それはともかく、間宮は学生たちが写経に夢中になっている隙に実験室を抜け出て、全力疾走で中庭を突っ切り、教授を刺し殺してすぐ戻ってきたのである。
しかし、午前11時に大学の中庭を突っ切って往復して、それで写真部の学生以外に目撃されていないと言うのは、いかにもありそうにないことだ。
それと、写真部の学生・渡辺のデジカメやパソコンのデータだが、どうやって消したのだろう? 彼にだけはコロンが通用しない筈なのに……。
雷「あなたが40分といってる仮眠、ほんとはたったの10分、でも、眠ってしまえば分かりません」

雷「どうしてこんなことをしたんですか」
間宮「学問の世界も成果が全てなんですよ、成果さえあれば、補助金が貰える。研究が続けられるの。文科省から来たメールは?」
雷「私が頼んで送って貰いました」
間宮「あっ、はぁ……私には画期的な研究は何にもなくて焦ってたんですよ、とにかく評価が欲しかったの……」
柴田「だから薬を使って、あんなインチキな実験を?」
間宮「教授さえ気付かなければ……」
今回も例によって、
そほぉんなことで殺すなよぉ~と田中邦衛のモノマネ(似てない)で嘆きたくなるような動機だった。
うーん、だったら学者辞めたらと思うし、そんなインチキ実験で補助金が降りたとは思えないのだが。
まぁ、降りる筈のないところに補助金が降りてくるような御時世ですけどね。
で、今回は岡野が眠っている為に、代わりに柴田が犯人に手錠を掛けるという、たぶん、シリーズ通して唯一の例だと思うが、珍しい結末になるのである。

雷「……」
成果主義の犠牲者とも言える間宮の姿に、悲しそうな眼差しを向ける雷の顔が印象的であった。
浜辺が美しい黄昏に染まる頃、雷が、まだ眠り続けている岡野の頭を書類の束で叩いて起こす。

雷「岡野さん!」
岡野「あ、銭形君、おはよ」
雷「報告書、全部やっときました」
岡野「何を言ってるんだ、如何に銭形君といえ、一瞬でこれだけの報告書が出来る訳ないじゃないか」
雷「あーあ、薬のせいだ。今日、岡野さん、誕生日でしょ?」
岡野「えっ、あっ、出来てる、ありがとう、銭形君!」
やはりちゃんと岡野の誕生日を知っていた雷からの粋なプレゼントであった。
しかし、女子高生に代わりに報告書を書いて貰う警部補って、かなり情けないものがあるな……。
以上、今回も突っ込みどころに事欠かないエピソードであった。