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横溝正史シリーズ2 「夜歩く」その2



 続きです。

 八千代が夢遊病の発作を起こして森の中を歩いているのを目撃した金田一、翌朝、小鳥の囀る爽やかな空気の中、屋代にそのことについて聞く。屋代も彼女が夢遊病であることは知っているが、詳しいことは分からないと言葉を濁す。

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 金田一「屋代、気に障るかもしれないが、ここは君のような人間がいるところじゃないな。君がここにいるのは、学費を出して貰った恩返しなのか?」
 屋代「そうでもないが……」
 金田一「じゃあ義理立てることもないだろう。君なら何処行ったって立派に生きていけるよ。お静さんを亡くした気持ちは分かるが、ここを出て、まともな生活をしろ」

 と、戦友にストレートに忠告する金田一。いかにも古谷金田一らしい台詞である。

 屋代は、復員して絶望した時、自分を助けてくれた伯父やイトコの直記への感謝の気持ちを述べた後、「そりゃ俺だっていつかここを出たいと思ってる。ずっといるところじゃない、良く分かってるんだ。君の心配は有り難いと思ってる」と、金田一の気遣いにも礼を言う。

 金田一「余計なことを言っちまったようだ。あの戦場を生き抜いてきた君だ。どんなことも切り抜けていくだろう」

 実に清々しい友情のエールである。シリーズ中でも、金田一がこれほど心を許した友と言うのは、この屋代くらいではないだろうか。

 だが、直後、一転して二人は恐ろしいものを発見する。前夜、八千代が入っていった離れの中へ好奇心から金田一が入ってみると、

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 奥の寝台に、首と手首を切り離された男の死体があったのだ!

 また、床にはべたべたとスリッパのような血の跡が残っていた。

 なお原作では、手首はそのままになっているが、ドラマでは指紋から身元が判明するのを防ぐためか、手首も切り落とされている。ただ、そんなことをすると、かえって警察に疑われると思うんだけどね。

 調べてみると、蜂屋と守衛の姿がない。どうやら、死体はそのどちらからしいのだが、蜂屋が以前、バーで突然、女に太腿を銃で撃たれたことがあったので、その傷の有無を調べたところ、まさにその部分に傷跡があったため、死体はとりあえず蜂屋と言うことになる。当然、姿を消した守衛が犯人ではないかと言うことになる。

 動機は、八千代を巡る争いである。

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 警察の調べで、胃の内容物の消化状態から、夕食の2時間後程度、つまり夜11時が死亡時刻と断定される。ただ、これは原作でも読んでて気になる箇所だが、死亡推定時刻は死体の硬直状態なども判断材料になるわけで、胃の内容物だけでそう決め付けているのは変である。

 それはさておき、八千代のスリッパの裏に大量の血痕が付着していた。11時ごろ、彼女が離れに入っていくのを金田一が目撃しているので、蜂屋が11時ごろ、離れで殺されたのはほぼ確実のようであった(血が乾かないうちに歩いた)。

 また、凶器に使われたのが昨夜金田一たちが金庫にしまった日本刀かもしれないと、取り出して見たところ、刀はそのまま金庫にあったのに、刃にはべっとりと血がついていた。

 刀を金庫にしまったのは、昨夜の9時半ごろなので、11時の蜂屋殺しに使われた訳がないのだが……?

 この不可解な状況の出現は、かなり視聴者や読者をワクワクさせてくれる。ちなみに金庫は、直記と屋代が協力しないと絶対開かないようになっている。

 一方、守衛の部屋から外出着やトランクがなくなっており、守衛が蜂屋を殺し、逃亡したと言う疑いが濃くなる。

 ところが、岡山の本宅から、お多喜と言う老婆(原泉)が上京してきて、事態が一変する。彼女は守衛の忠実な乳母で、鉄之進たちに煙たがられて本宅へ留め置かれていたのだが、事件を聞いて急いでやってきたと言う。そして、実は、守衛の太腿にも、自分で過って撃った傷があると証言するのだ。

 つまり、あの死体が、守衛である可能性も出て来た訳だ。お多喜は、殺されたのは守衛に違いないと言うのだが……。

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 守衛の傷のことは、家族も知らず、お喜多婆さんしか知らないと言う。

 お喜多「仙石鉄之進とお柳が、古神家の財産を自分らのものにするために守衛様が邪魔じゃったんじゃ、犯人はあいつらじゃ」

 また、彼女は八千代は鉄之進とお柳の娘であり、古神家の先代織部の血はひいていないと断定する。
 そうすると、鉄之進は、自分の娘の八千代と、息子の直記を結婚させようとしていることになるのだが……。日和警部の疑問に対し、

 お喜多「それができるんじゃ。戸籍は古神八千代と、仙石直記じゃから。あの男は兄弟じゃろうが、ご主人の奥様じゃろうが、なんでもする男なんじゃ。人の道に外れることをしても何とも思わん人間なんじゃ」

 この、「なんでもする」って、具体的にどういうことなのか、気になる(なるな)。

 無論、鉄之進は警察に追及されても自分は事件には関与していないし、八千代は先代とお柳との娘だとお喜多の言葉を否定する。

 ※余談

 原作の鉄之進の傍若無人のキャラは、坂口安吾の「不連続殺人事件」の、えーっと名前忘れたけど、暴君的なキャラを髣髴とさせる。と言うより、乱脈を極めた、不倫と悪意に満ちた人間模様そのものが、「不連続」から来ているのは一読、明らかだ。
 横溝正史は、結構他の作品に影響されやすい作家なのだ。
 殊能将之が「美濃牛」の中で、「獄門島」と漱石の「草枕」の類似点について言及しているが、この「夜歩く」と「不連続」以外でも、「八つ墓村」と乱歩の「孤島の鬼」、「犬神家の一族」と宮野叢子の「鯉沼家の悲劇」など、挙げればきりがない。

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 本家の嫡男の守衛が、殺されたかあるいは殺人を犯したかもしれないと言うのに、お柳や四方太は、まるで気にならない様子。

 ドラマでは下品な四方太、お柳の耳たぶを触ったりするが、

 お柳「うるさいわねぇ、半端者の癖に、一人前の男の真似するんじゃないよ。さあ子供の時間じゃないんだから、どっか行って遊んでおいで、ね、いい子だから。お前にはお藤くらいがちょうどお似合いだよ」
 と、まるっきり相手にされない。

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 もっとも、自分だったら迷わずそのお藤(小林伊津子)の方へ突撃するけどね。

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 そのお藤、死体は蜂屋だと強く訴える。彼女は、以前、蜂屋に足の傷跡を実際に見せてもらったことがあると言う。この、身の置き所のないように体を小さくしているところとか、とても可愛いと思う管理人であった。

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 八千代は、以前から蜂屋のことを知っていて、何者かに撃たれた後、見舞いに行ったと証言する。それがきっかけで親しくなったのだと。

 岸田森さんの出演シーンはこれが最後かな。

 原作では、直記が屋代に、八千代こそ蜂屋をいきなり撃った謎の女だと教えるんだけどね。

 そうそう、これも書き忘れていたが、原作では屋代は売れない探偵小説家で、直記には経済的に援助して貰っている間柄なのだ。で、屋代寅太なので、愛称が「寅さん」なのだ。


 もう誰も読んでないと思うが、つづく。


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コメント

この金庫の件は秀逸ですよね。特に二人で協力しないと開けれない・・・とした点でも。
そして、定番の殺したのが「AがBを?」→「BがAを?」の展開ですが、このオチがまた良いです!

Re[1]:横溝正史シリーズ2 「夜歩く」その2(11/15)  

影の王子様
>そして、定番の殺したのが「AがBを?」→「BがAを?」の展開ですが、このオチがまた良いです!

どっちも殺されてましたーと言うのが凄いですよね。

Re:横溝正史シリーズ2 「夜歩く」その2(11/15)  

首無しの死体って今ではもうカット(即刻🚫)ですねぇ😅小生も青年の時分に横溝正史作品(タイトルは忘れましたがね)を観て、未だに恐怖を感じております

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70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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