第69話「怪人ギラーコオロギ せまる死のツメ」(1972年7月28日)
この69話、プロ野球のオールスターで飛んだのだが、翌週の土曜日ではなく金曜日、すなわち第70話の前日に曜日をずらして放送するという、今ではまず考えられない形で放送されたらしい。
さて、山すその平地で、怪人ギラーコオロギと戦闘員たちが、十字架に縛り付けられたライダーを遠巻きに眺めていると言うシーンからスタート。

もっとも、それはただの人形に過ぎないのだが。
背後から地獄大使が来て、「お前の殺人音波の威力を試してみるのだ」と命じる。
怪人「ギーラーッ! ギィイイイルァーッ!」
気合と共にギラーコオロギの額の第三の目が光り、

強烈な殺人音波がライダー人形に向けて放たれる。

人形は木っ端微塵に砕け飛ぶ。
人形とはいえ、なかなかショッキングな映像である。
しかし、

ものはついでとばかりに、手前の地面からも派手な爆発が起きるのは、さすがにおかしくないか?

と、足元に転がってきたライダーの生首を、赤いマニキュアを付けたような怪人の手がむんずと掴み、

拾い上げると言うのも、当時のちびっ子たちには衝撃を与えたのではないかと思ふ。
怪人「仮面ライダー、今に必ずお前もこのようにしてやる」
地獄大使「ふっふっふっ、はっはっはっ、見たぞ、その威力、こうもお前の威力を見せ付けられては、仕事をして貰わなければなるまい、へっへっへっ」

怪人「そ、それでは俺と仮面ライダーと早く戦わせてくれ!」
一旦、アジトに引き揚げて、ヤク中気味、いや、興奮気味に要求するギラちゃんだったが、
地獄大使「まあ、待て、ライダーと戦うのはいつでも出来る」

地獄大使「今こそお前の恐怖の死の爪で日本中を大混乱に陥れるのだ」
怪人「……」
地獄大使「うむ、使い物にならなくなった戦闘員を連れて来い」 地獄大使のこの台詞を聞いて、
すべての戦闘員が押し掛けてくるような幻想を思い描き、思わず含み笑いをしてしまった管理人であった。

実際は、「扉の外でキューを待ってました」とばかりに、即座に、背の低い戦闘員が、他の戦闘員に両側から抱えられて連れて来られる。
使えない戦闘員「た、頼む、助けてくれーっ!」
ギラーコオロギが赤い爪で使えない戦闘員の首を掴むと、あっさり死んでしまう。

地獄大使「ふっふっへっへっはっはっ、これからが見物だ」
ハ行を自在に操る笑いの魔術師・地獄大使が目玉をひん剥いてつぶやくと、

死んだと思われていた使えない戦闘員がいきなり左右の戦闘員の腕を払い除け、その両手に生えた赤い爪を誇示する。

使えない戦闘員が一転して使える戦闘員に変化して、他の戦闘員を無差別に血祭りに上げていく。
そして、ゾンビ映画のごとく、そうやって殺された戦闘員も、同じような赤い爪を持って甦るのだ。

地獄大使「なかなか大したものだ」
怪人「見たか、俺様の赤い爪の威力を……俺の爪に刺されたものは赤い毒の爪を持って生き返るのだ」
二人に増えた赤い爪の戦闘員は、他の戦闘員にも襲い掛かるが、きりがないので地獄大使がピシャリとムチをふるってやめさせる。
地獄大使「やめろ、お前たち、ようく聞け、このギラーコオロギの死の爪は次々とネズミ算式に謎の病人を増やしていくのだ」
一方、猛は(大学の?)先輩で小川と言う昆虫学者(?)の研究所を訪ねていた。

小川「何しろ近頃の子供たちはコオロギも見たことないって言うんだからねえ」
巨大なコオロギの模型を手に、嘆かわしそうにつぶやく小川さん。
パッと見、篠田三郎さんの親戚みたいな顔である。
関係ないけど、昨夜、管理人の部屋にコオロギが一匹迷い込んだので、捕まえて外へ逃がしてやりました。
今夜あたり、恩返しに来てくれる予定です(来るかハゲ)。

猛「ほお、コオロギを知らない子供たちか。今の子供たちはかわいそうだなぁ」
しかし、都心の子供たちならともかく、番組に良く出てくる多摩丘陵地帯に住む子供は、まだ周囲にたっぷり自然が残っているのだから、コオロギくらいは見てると思うんだけどね。
実際、少し前の64話ではナオキたちがセミ取りしてたもんね。
猛「しかし、コオロギって意外とでかいんですね」 小川「いや、これ、模型なんだけど……」 じゃなくて、
小川「うん、だから明日は昆虫採集の仕方を教えてやろうと思うんだ。それが終わると今度はみんなを連れて昆虫採集に行こうと思ってる」 猛「あ、そうだ、僕の知ってる子供二人、明日こっちへ寄越しますから、先輩、よろしくお願いします」
しかし、この小川の台詞もなんか変だよね。
小川「うん、だから明日は、子供たちと一緒に森に行って、昆虫採集の仕方を教えてやろうと思うんだ」
もしくは、
小川「うん、だから明日は昆虫の特徴や生態について教えてやろうと思うんだ。それが終わると今度はみんなを連れて昆虫採集に行こうと思ってる」
などの方がモアベター。
それはさておき、猛が握手を交わして帰っていった直後、急に部屋の中が暗くなり、凄まじい殺人音波が小川の頭蓋骨を握り潰さんばかりに襲ってくる。

小川「頭が、頭が割れそうだ」
怪人「ギィー、ラーッ!」
さらに、背後からギラーコオロギが騒々しく登場する。
……
つまり、猛が在室していた時から、ギラちゃんはそこに隠れていた訳である。
猛、気付けよ。
ギラーコオロギは、殺人音波を浴びせて、小川を自分の意のままに動く操り人形にしてしまう。
翌日、小川の主催する日曜学校に何も知らない子供たちがやってくる。

小川が子供たちをとある一室に閉じ込めると、そこに潜んでいたギラーコオロギが現れる。
不気味な怪物を前に、身を寄せ合って、楽しそうに悲鳴をあげる子供たち。
ま、当時の子役なんてみんなこんなもんだが、

子供「助けて、放してよー!」
怪人「そうはいかん、お前が最初の赤い爪の犠牲者となるのだ!」
最初に襲われる子供を演じている子役は、妙にうまい。
それもその筈、70年代を代表する(?)名子役のひとり、小松陽太郎さんだからである。
怪人「これで俺様は、もう見てるだけで良い」

一旦倒れた子供は、やがて両手に赤い爪を生やし、メイクも変えられて甦る。
子供「えいっ」
可愛いゾンビだなぁ。

今度は、その子供を見て怯え、悲鳴を上げる子供たち。
この女の子、ちょっとハライチ澤部に似てる。

この右端の女の子は、「魔女先生」の井原さんですね。
その井原さんともうひとりの男の子が爪を喉に突き立てられ、一旦倒れて、小松くんと同じように赤い爪を付けて起き上がる。
その際、井原さんのパンツが丸見えになっているので、真性ロリコン戦士の人は要チェックです。
こうして子供たちは全員赤い爪のゾンビになってしまう。

怪人「実験は大成功だ。子供たちの命は三日間、その間に、赤い爪の人間はどんどん増えていくのだ」
すっかり忠実なしもべとなった小川と、顔を見合わせて喜ぶギラちゃん。
何気に、感染者は三日経つと死んじゃうと言う重大な事実が明かされるが、結局、この設定はストーリーには全く活かされないまま終わるのだった。さすが島田真之クオリティー。
さて、参加する筈だったナオキとミツルは遅刻した為、ゾンビ化を免れ、窓の外から見た一部始終を電話で猛に伝えるが、ここではっきり「小川と言う人はショッカーの手先なんだ」と告げていることをご記憶願いたい。
ナオキとミツルも、電話の途中で戦闘員に捕まってしまう。
当然、猛と滝はバイクを飛ばして研究所へ急行する。

と、両手を背中に隠した子供たちが、何食わぬ顔で玄関から出てくる。
猛「滝、様子が変だ」
滝「君たち、一体どうしたんだ?」
滝の呼びかけにも、子供たちは無表情で黙りこくったまま。
滝が不用意に小松君の肩に触れた途端、小松君の赤い爪が滝の腕に食い込む。
滝はそれだけでぶっ倒れて、後にゾンビになってしまうのだが、なんか、さっきのアジトでのシーンだと、赤い爪で一旦殺された人間がゾンビとして甦るように描かれていたのに、ここでは爪に触れられただけで感染するようになっているのが、若干引っ掛かる。

猛「滝、おい、しっかりしろ」
滝「子供の赤い爪だ」
子供たちは、続いて猛にも襲いかかってくるかと思いきや、

子供たち「ギィーラーッ!」
帰るんかい! まぁ、改造人間である猛には赤い爪など通用しないから引っ込んじゃったのだろうが、それでも、子供たちに襲わせれば、それだけで猛を牽制し、怯ませる効果はあったと思うのだが?
実際は、折角ゾンビにした子供たちを利用しようとせず、ギラーコオロギと戦闘員たちが正々堂々と襲いかかって来る。
後のシーンでも分かるように、ギラちゃん、結構モラルが高い怪人のようだ。
猛もライダーに変身、それは長い長い、途中でCMに行っちゃうほど長い戦闘シーンに突入する。
後編に続く。