第29回「コセイドン緊急出動 果しなき戦い」(1979年1月19日)
前回で、遂にゴドメス軍との戦いに終止符が打たれ、第3クールとなる今回からは、毎回、異なる敵やトラブルが発生する、完全な単発シリーズに移行する。
マリがいなくなったこともあり、内容的には、はっきり言って第2クールまでと比べて落ちるのだが、同じように路線変更した円谷作品の「ウルトラマン80」などと比べると、その劣化の程度は低い。
しかし、後半は、いくつかエピソードをスルーせざるを得ないであろうことを最初に断っておく。
で、記念すべきリニューアル一発目のゲストは、バンノ隊長役・草野大悟さんの盟友・岸田森さんなのである!
さて、メンバーが減り、その配置も変わったので、冒頭、21世紀でそれぞれの休暇を過ごしているコセイドン隊の隊員たちの様子が、顔見世的にひとりひとり描かれる。

ゴウは、例によって己の肉体の鍛錬に余念がない。

当然、腋毛もボーボーである。
80年代(前半)までの特撮ヒーローは、男らしさがまず肝要で、ムダ毛処理などもってのほか、むしろ、腋毛出してナンボの世界だったのである!
その最中、胸に下げていたペンダント型の通信機が光って鳴り出し、コセイドン隊に緊急呼集がかかったことを知らせる。
ゴウがトレーニングを切り上げて動き出したところで、止め絵になるが、これは第1回でメンバーが時空管理局に集まってくるときの演出と同じである。

続いて、モリィ、自分の研究室に閉じ篭って、衝撃波を放つペンダントと言う秘密武器の開発に没頭していた。それがやっと完成し、早速その威力を試そうとする。
モリィ「はぁ……、ウェェェーッ!」
雄大な太鼓腹を丸出しにして、深呼吸をして裂帛の気合を発すモリィ。
そこへスーツ姿のテツが入ってくる。

テツ「やけに張り切ってるじゃないの、ああ、ファイタス2号に乗り込むんだっけ」
モリィ「決まってるでしょ、晴れてドンパチできるんだい」
ファイタス2号の操縦者だったマリが抜けた為、代わりにモリィが操縦することになっているのだ。
で、モリィが乗っていたハクアス2号にはビックラジィーが乗り込むことになる。
しかし、モリィ、ハクアス2号に乗ってた頃にも、しっかりドンパチしてたと思うんだけどね。

モリィ、テツに、その「合気道マシーン」の凄さを見せてやろうと、壁に掛かっているドラに向かって気合を発し、衝撃波を出すが、狙いが外れてその横のドアを吹き飛ばしてしまう。
テツ「なんだ、おい、ドア壊れちゃったじゃないか!」
モリィ「あの、増幅器のね、指向装置がね、ちょっとね、狂ってたんすよ」
と、その時、テツの付けていた通信機型ブレスレットが鳴り出し、二人は一緒にタイムポートへ向かう。

続いて、なんと、アルタシヤがビックラジィーと一緒に歩行者天国を歩くと言う、大胆な街頭ロケ。

ビックラジィー「いやはや、地球と言うところはなんて人の多いうるさいところだ。あっ、みんな見てる」
村野さん、恥ずかしかっただろうなぁ。
もっとも、街頭ロケのシーンはほんの数秒で終わり、

次の場面では、高層ビルに囲まれた、人気のない公園のベンチに座っているアルタシヤとビックラジィーの姿に切り替わる。
アルタシヤ「私は自ら望んでこの地球に残ったんです。そしてタイムGメンの一員になったんです。ほんとはファイタスに乗って戦いたかったんだけど!」
ビックラジィー「ああ、滅相もない」
木枯らしに吹かれながら、改めて自分の決意を語るアルタシヤ。彼女はこの第3クールから、名実共にコセイドン隊のメンバーになったのだ。
それにしても、初めてだと思うが、アルタシヤの私服姿がとても可愛らしい。任務の時はもっと地味な服になるのだが、第2クールまでのレイア姫もどきの衣装を脱ぐことが出来て、村野さん自身はホッとしていたのではないだろうか。まぁ、金髪のカツラさえ取れば、さほど恥ずかしくはないか。

当然、アルタシヤの付けていた通信機も鳴り出すのだが、各メンバーの持っている通信機が、全て違う装身具と言うのが芸が細かい。こういう、ちょっとしたこだわりが大事なのだ。

アルタシヤ「出動命令だわ!」
そして、マリなき今、管理人の心のオアシスは、アルタシヤしかないのである。

さて、バンノ隊長は、ひとり、由緒ありげな古寺にいて、座禅を組んで精神統一していた。
バンノ(いかなる事態に陥っても心を乱してはならん。それがコセイドン隊長としての責任であり、務めなのだ……)

と、バンノの通信機もけたたましく鳴り出し、容易ならぬ事態の出来を告げる。

バンノ「コセイドン隊の召集だ。むっ」
だが、自分に言い聞かせたように、バンノは慌てず騒がず、苦みばしった顔のままゆっくり立ち上がろうとするが、
バンノ「うぇーっ、ああ、痺れたー」
バンノ「く、あ……うひゃひゃひゃ……」 お約束のギャグを、迫真の痺れ演技でやりきる草野さん、サイコーです!
ところで、管理人、最近、「気分は名探偵」のDVDを見ているのだが、喫茶店のマスター役で出ている草野さんが実に良い味を出しているのだ。
もし俺が女だったら、草野さんと結婚したい。
時空管理局に集まったメンバーに、タイムマザーが事件の概要を説明している。
時間工学の大家・荻村博士が時空管理局の許可を得ず、勝手に時空航行で過去に行ってしまったと言うのだ。

タイムマザー「彼は危険な人物です。科学技術を信奉するあまり、人間のいないロボットだけの文明を理想と考えるようになりました」
法廷の証言台のようなところで、身振り手振り、熱弁をふるって演説をしている荻村博士のイメージ。
荻村博士を演じているのが、岸田森さんである。
荻村は、強大なエネルギーを秘めた鉱物「ギギ」を採取する為、白亜紀へ行きたいと願い出るが、タイムマザーは却下し、そこで、今度の密航事件となったのだ。
博士は、ギギを自分の作ったロボットの動力源にするつもりなのだ。
コセイドン隊の任務は、荻村博士の身柄を拘束し、21世紀へ連れ戻すことである。

その荻村博士の運転するタイムマシンが、白亜紀の森に降下する素晴らしい特撮ショット。
バンクショットで、コセイドン号がタイムトンネルの中を通って時間と空間を超越する様子が描かれる。

唯一の新撮映像は、特別な制服を着たアルタシヤの姿である。
正式な隊員と言っても、宇宙人であり、テレサ星の王女と言うことで、ウララやマリとは違い、私服の延長のような制服を認められているのだろう。
その理由は、単に、村野さんが生足を出すのを嫌ったからなのかも知れない。
他のシーンでも長いスカート履いてるしね。

一足先に白亜紀に着いた荻村博士、早くも意中の「ギギ」を発見し、興奮に眼を輝かせていた。
荻村「待ってろよ、ギギ、今にお前にふさわしい体に収めてやるからな」
と、博士の頭上に、巨大なティラノサウルスが頭をもたげ、博士を食い殺そうと迫ってくる。

だが、無論、白亜紀の危険動物への対策も用意しており、携えていた特殊な銃を恐竜に向けて撃つ。
撃たれた途端、ティラノサウルスは、彫像のように動かなくなってしまう。
荻村「タイムフリーザー、時間を凍結させたんだ。ギギを、貴様らごとき下等生命体に破壊させてたまるか!」
それは、言ってみればコセイダーの時間停止能力の効果を、任意の個体に限定できるハイテクメカであり、萩村博士が、容易ならぬマッドサイエンティストであることを証明していた。
岸田森さんって、善悪は別にしても、こういう科学者の役が多いよね。

さて、白亜紀に到着したコセイドン隊。まず、荻村博士が向かったと思われるコロニー19へ、モリィのファイタス2号が向かい、低空からその様子を偵察する。
見ての通り、伊豆シャボテン公園を模したセットである。
だが、そこへいきなり博士のタイムマシンが攻撃を仕掛けてくる。
バンノがすぐ援軍を送った為、荻村博士はあっさり退却し、雲海の中へ消えてしまう。
モリィも、バンノに深追いせずコロニーの安全確保を優先しろと命じられたので、追撃を断念する。

で、ファイタス2号を降りたモリィが向かったコロニー19と言うのが、シャボテン公園の特徴的な施設で撮影されている訳なのだ。
入り口で何度呼びかけても応答がないので、モリィは建物の内部に踏み込む。

研究室には、荻村博士の開発中ロボットがたくさんあったが、誰もいないので立ち去ろうとしたモリィ、誰もいないどころではなく、ちゃんと所員や警備員が揃っていることに気付く。
だが、みんなピクリとも動かない。ま、ようく見るとぷるぷる動いているのだが、それは見なかったことにして話を進めたい。

モリィ「何かに固められてるみたいだな……なんだこりゃ?」
モリィ、その中のひとりに触れようとするが、触った途端、激しい電光が煌めく。
ギギ「タイムフリーザー、目に見えぬ時間の檻に入っている」

どこからか非人間的な声がしたかと思うと、恐ろしげなロボットが入ってくる。
「宇宙鉄人キョーダイン」のロボット兵士みたいに、両手を交互に突き出しながら進む。
モリィ「なんだ貴様」
ギギ「荻村博士にエネルギーを吹き込まれた、俺は、ギギ」
荻村博士が採取した鉱石を埋め込んだロボット、その名もギギであった。

ギギ「人間は不要、博士はそう仰った。だからお前を殺す」
モリィ「ああっ……我に合気道マシーンあり!」
ギギ「なに?」
モリィ「つあーっ!」
モリィ、ご自慢の合気道マシーンを発動させるが、今度も狙いが外れてしまう。
だが、その衝撃に怯んだギギの体に飛びついて、動力チューブを引き抜いた為、ギギはよろよろと部屋を出て行き、ちょうど、通路をやってきたゴウとテツに発見されて撃たれ、バラバラになって崩れ落ちる。
ゴウ「なんだ、脆いもんだ」
と、彼らが時間を費やしている間に、荻村は今度はコロニー17を襲っていた。バンノはゴウたちにコロニー17へ向かうよう指示を出すが、矢継ぎ早に、コロニー18からSOSが入る。

女性所員「恐竜も研究所の人たちも次々犠牲になっています。早く、早くタイムGメン!」
コセイドン号の小さなモニターに、コロニー18の生き残りの女性が必死に助けを求める姿が映し出される。

バンノ「おっ」
女性所員「きゃあっ!」
だが、その最中、後ろのドアが開いて荻村が現れ、いきなりタイムフリーザーを女性に向けて撃つ。

荻村「コセイドンの隊長だな、ごくろう、折角だから、私が開発したタイムフリーザーをご紹介しよう」

荻村「これだ、この銃の効果は時間を停止させるだけでなく、出力を最大限に引き揚げると恐ろしいスピードで時間を早めることが出来る」
荻村、余裕たっぷりに、学生に講義でもしているような口調で説明すると、

荻村「ご覧に入れよう」
何の躊躇もなくその女性に向かってもう一度タイムフリーザーを撃つ。
バンノ「あ、ああ……」

バンノが茫然と見ている中、女性所員はあわれ、一気に年を取って老婆になり、最後はガイコツになってしまう。

バンノ「お、お……」
荻村「あーははっ、ああっ、ああ゛ーっ、あああ゛ーっ!!」
さらに、得体の知れない類人猿の咆え声のような笑い声を上げると、荻村はタイムフリーザーで、そのガイコツを殴り飛ばしてしまう。

バンノ「あ、ああ……」
百戦錬磨のバンノも、あまりに無残な光景に、言葉を失う。

荻村「はっはっはっ」
バンノ「貴様ぁ、それでも科学者か!」
荻村「ははは、さよう、信念に基づいて新しい文明をこの地球上に築き上げんとする男だ。今に白亜紀は私の手でロボットの世界になる」
バンノ「ふざけるな、くそっ」
折角二人が共演しているのに、モニター越しの絡みだけなのがちと淋しい。
どうでもいいけど、荻村の服って、「サンバルカン」の嵐山長官の制服に似てるよね。
バンノ、少し考えてから、ファイタス1号をコロニー18へ、ハクアス1号と2号をコロニー17へそれぞれ急行させる。
モリィ「隊長、俺は?」
バンノ「あ、モリか、モリはコロニー19で留守番だ」
荻村は、各メカの動きを見て、
荻村「陽動作戦にかかりおった。隊員が残ったのはまずいが、ひとりぐらいならギギが何とかしてくれるだろう」
舌なめずりせんばかりの顔で、タイムマシンを離陸させ、手薄となったコロニー19へ向かう。荻村の本当の狙いは最初からコロニー19だったのだ。
だが、バンノもそれを見抜いていた。一旦出撃させたゴウたちに、コロニー19へ進路を変えるよう、新たな命令を下す。
一方、コロニー19では、バラバラにされたギギがひとりでに合体して復活していた。モリィはギギから逃れて通信室に逃げ込むが、すぐに荻村とギギと見付かる。

モリィ「お前は」
荻村「私のロボットは不死身なんだよ。タイムフリーザーの出力は最高にセットしてある。ギギ、撃ってみなさい」

ところが、ギギは、フリーザーガンの銃口を、何故か主人である荻村に向ける。
荻村「ギギ、敵はあっちだ」
ギギ「荻村博士のご命令です。人間は無用、人間は殺せと仰った」
荻村「バ、バカ、お前は私の作品だ。奴を撃て」
ギギ「ロボットは常に創造者の命令を守ります」
ギギ、荻村の言葉を無視して、容赦なく荻村博士にタイムーフリーザーを放つ。
人間をロボットによって排除しようとした博士が、自分の作ったロボットに排除されると言う、実に滑稽で皮肉な結末だった。
もっとも、モリィだって人間と言うことでは同じなんだから、ことさらに荻村博士だけを殺そうとするのは理屈に合わないんだけどね。
何かの事情で、モリィのことをロボットだと思った……と言うのなら分かるけど。

とにかく、タイムフリーザーを最大出力で浴びた荻村は、

まさに因果応報、さっきの女性と同じく一気に老け込み、

途中、小泉純一郎みたいなジジイになってから、最後はガイコツと化してしまう。
ギギは、ついでにモリィも殺そうとするが、そこへコセイダーが窓を突き破って飛び込んでくる。
後は、いつものラス殺陣になる。

一方、少し遅れてアルタシヤも駆けつけ、恐怖のあまりへたばっているモリィに駆け寄るが、その際、光沢のある生地に包まれた、偉大なヒップが我々の眼前に、圧倒的な存在感を持って迫ってきたのです!
勿論、ミニスカの方が良いに決まっているが、こういうパツンパツンのズボンと言うのもこれはこれで良いのである!
さて、野外でのコセイダーとギギの戦いだが、アルタシヤがコセイダーに使わせようとタイムフリーザーを投げるが、それをギギに取られ、逆にコセイダーがピンチに陥る。
タイムフリーザーを撃たれたコセイダーだったが、
気合で克服し、ギギの頭をレーザーサーベルで跳ね飛ばして勝利する。
さすがに、気合じゃ無理だと思うんですが……。
それこそ、時間操作には時間操作で、「時間よ止まれ」攻撃を仕掛ければ(番組的に)良かったのに。

バンノ「新コセイドンの初手柄だ。コロニーの人たちもあのフリーザーで甦ったし、ゴウもテツも良くやった、アルタシヤもな」
アルタシヤ「えっへっへっ」
バンノ「そこへ行くともうひとりの人のがなぁ」
モリィ「どうしてこう、肝心な時に駄目なんでしょうな、ねえ?」
ラスト、コセイドン号のブリッジで、新編成最初の勝利を祝って乾杯している和気藹々のバンノたち。
しかし、バンノはアルタシヤを誉めているが、アルタシヤはむしろコセイダーの足を引っ張ってただけのような気がする。むしろ、駄目だったと自他共に認めているモリィの方が、一度はギギを倒しているし、結果的にはギギに荻村を殺させることになったのだから、アルタシヤよりは役に立ってると思う。
以上、ストーリーはさほどでもないが、マッドサイエンティストを楽しそうに演じている岸田森さんの存在が光り、シリーズ後期としては見応えのあるエピソードであった。