第7回「愛が欲しい」(1985年5月28日)
の続きです。

翌日(?)、車に乗って移動中の剛造のまわりに、渡り鳥連合が群れを成して集まってくる。

手島「いやぁ、この季節には良く湧くんですよ、バルサン焚きましょうか」
剛造「ああ、そうしてくれ」
じゃなくて、車はバイクに邪魔されて、とうとう停まってしまい、

路男「あんたが大丸剛造だな」
剛造「そうだが、君は誰だね?」
路男「名乗ったところで覚えはねえだろうが、遠い昔、俺はあんたに一度会ってるぜ。耳を澄ませろ、海鳴りが聞こえて来る筈だ。女の悲鳴が木霊するあの海鳴りがよぉ。てめえの無慈悲が砂浜を朱に染めた遠いあの日の海を忘れたとは言わせねえぞ!」
剛造「覚えておらんな」
路男「覚えてなければ、俺が思い出させてやる! その時はな、帝王気取りのあんたに泥水の苦さをたっぷり味わわせてやるぜ」
路男、初めて剛造に面と向かい、恨みの言葉を並べ立てるが、それは千鶴子に言ったのとほぼ同じことの繰り返しで、意外とボキャブラリーが貧弱なことが露呈してしまう。

剛造「君は私に何が望みだ」
路男「俺の望みはあんたに
頭の割れるような苦しみを与えてやることだぁ」
剛造「……」
表現が斬新過ぎて、いまいちその迫力が伝わらないのが路男のタンカの欠点だった。
まあ、普通は「二日酔いの話ですか?」ってなるからね。

剛造「出したまえ」
さすが、男の夢、コンツェルンの総帥にのぼりつめている剛造である。
路男の精一杯の口上にも、顔の筋肉ひとつ動かさず、車を発進させる。
いや、むしろ、
剛造「私に挑戦するとは不敵な若者だ……ふふ」
などと、路男の向こう見ずな若さを讃えるような余裕のブリ山ブー子さんであった。
……だが、
路男の詩的な台詞が引き金になったのか、車の震動に身をゆだねて目を閉じていると、忽然と、18年前のあの忌まわしい記憶が剛造の脳裏に甦ってくる。
ここで、あの浜辺で、倒れている男、赤ん坊を抱いて走り去る女の姿がチラッと映し出される。
男は路男の父親で、女は路男の母親、そして赤ん坊は言うまでもなく路男自身だった。

一方、一連の騒動の元凶と言うべき龍作は、いまだに紅葉坂教会にお神輿を据えて、でかい顔で居食いを続けていた。
能天気に飯をかきこんでいる龍作を、エリカがほとんど憎しみを込めて睨みつけている。

龍作「ケッ、なんて目だ。さげすんでのか、この俺を? 俺のどこが気にくわねえってんだよ、人をバカにしやがって」
エリカ「あんた、子供を捨てた人ね」
龍作「なんだと、どうしてそれ……」
エリカ「あんたの目には悲しそうな顔をした少女が二人焼きついている」
龍作「うすっ気味悪ぃ女じゃねえか。神様が乗り移ったようなこと言いやがって」
自分の過去をピタリと言い当てられ、さすがに不遜が服を着ているような龍作も気味が悪くなる。
そこへ若山が入ってくる。

若山「エリカの目は誤魔化されんぞ、この子は直観力の鋭い子でな、神のように人の真実を見抜く力を持ってるんだ」
龍作「まさかー、狐憑きじゃあるまいし」
若山「悲しみを幾重にも通り越した人間には人の真実を見抜く力が自然に備わるのだ。お前もこんなところでまごまごしとらんで海へ帰ったらどうなんだ? あんた、腕のいい漁師だったそうじゃないか」
若山の何気ない言葉に、龍作は箸を置き、改まった口調で、
龍作「牧師さんよ、いいですかい、年がら年中海鳴りを気にしてよ、朝は一番最初に飛び起きて、遠い水平線のうねりを確かめる。そうまでして漁に出たってなかなか暮らしはなりたちゃしねえや。そういう漁師の暮らしがあんたに分かるんですかい?」
漁師がやれるもんならやってみろとでも言いたげな感じだった。

若山「あんた一人なら十分暮らしていける筈だと思うんだがねえ」
龍作「ケッ、冗談じゃねえや、世間の奴らはどんどこどんどこ豊かになっていくってのによー、俺一人が取り残されてたまるかってんだい。牧師さんよ、ここんちの神様は金儲けの知恵は授けてくれねえんですかい?」
若山「金儲けの知恵だけは授けてくれんようだなぁ、ふっははははっ」
と、そこへ、会社に着いた剛造から若山に電話が掛かってくる。
龍作も、相手が剛造と聞いては捨て置けず、彼らの会話を盗み聞きする。

若山「朝からどうした、よほどつらいことがあったようだな。……なにっ、ええっ? 暇つぶしにゴルフボールを尻の穴に入れてたら取れなくなったぁ? バカかお前はっ!」
じゃなくて、
若山「……なにっ、ええっ? 慶子さんの形見の着物をしのぶさんに着せてみたというのか?」
さいわい、若山は、相手の言葉を割と大きな声で繰り返すタイプの人だったので、龍作には二人の会話の内容が手に取るように分かるのだった。
剛造は、この間の着物の一件を洗い浚い若山に告白する。

若山「大丸、しのぶさんはお前の娘だ。命を賭けた静子さんの告白に嘘があろう筈がない」
なんか、分かりやすい心霊写真みたいだな、この画像……。
若山は、どんなに剛造がしのぶへの気遣いや愛情を隠しても、千鶴子には見抜かれてしまうのだから、いっそのこと、隠さずおおっぴらにやったらどうかとアドバイスする。
若山「もう隠すな、大丸、しのぶさんにいたわりの言葉をかけるときも、贈り物をするときも千鶴子さんの前で堂々とやれ。お前がそうやれば千鶴子さんもきっと安心すると思う」
剛造「わかった、これからはそうしよう」
だが、その会話を龍作にごっそり聞かれたことが、また新たな悶着の種となる。
龍作が、静子が18年前のことを何もかも剛造に打ち明けたこと、剛造がしのぶを実の娘だと承知の上で引き取っていることを知ってしまったのだ。
さて、剛造、早速アドバイスどおり、デパートで見掛けて買ってきたと言うスカーフを、千鶴子、しのぶ、耐子たちに同時にプレゼントする。
確かに、陰でこそこそ渡すよりは千鶴子の神経を刺激しないようだったが、それが問題の根本的な解決にはなる訳ではない。

鈴子「旦那様、しのぶさんと耐子さんのお父様って方が……」
そこへ鈴子が現れ、龍作の来訪を告げようとするが、

鈴子「旦那様にお会いしたいと……」
その言葉も終わらぬうちに、当の龍作が鈴子の体を押し退けてあつかましくも登場する。
龍作の人間性を的確に表現した、見事なシーンである。

剛造「君は……」
龍作「おい、しのぶに耐子、迎えに来たぞ。真鶴へ帰るんだ。用意しろ」
剛造「松本さん! それはいかん、そんなことをさせる訳にはいかん」
龍作「おかしなこと言うじゃねえか、父親が娘を引き取りに来たんだ。文句があるなら警察でもなんでも呼んで貰おうじゃねえか。ええっ、大丸さんよ、父親が実の娘を引き取っちゃいけねえってんですかい」
剛造「いや……」
さすがに親子関係を盾に、真っ正面からそう言われると剛造もどうすることも出来ない。
龍作「しのぶ、耐子、なに愚図愚図してんだい? さっさと用意しろ」
剛造「待ってくれ、あんたとは後でゆっくり話をしよう。だから今日のところは引き取ってくれ」
それでもなんとか穏便に話をおさめようとするが、

千鶴子「そんなのおかしいわ、しのぶさんのお母さんが迎えに来てるのよ、どうして反対なさるの? しのぶさんをこの家から出せない特別な訳でもあるんですの?」
剛造「……」
今度は、ことあるごとにしのぶたちを追い出そうとしている千鶴子たちが龍作に加勢する。
則子「あなた、千鶴子さんの言うとおりですわ、実の親子が一緒に暮らすのが当然じゃありませんか」
則子の言葉に、
「だからこそしのぶと一緒に暮らしたいんだよ!」と横っ面を張るように叫んでやりたいのは山々だったが、それは出来ない剛造なのだった。
剛造「私は静子さんからしのぶさんと耐子さんをお預かりしたんだ」
千鶴子「実の父親が迎えに来てるのよ、帰してあげるのが当然でしょ」
剛造「不幸せが目に見えてるのに帰す訳にはいかんのだ」
剛造も何とか道義論で抵抗するが、見兼ねたしのぶが、「父と一緒に真鶴に帰ります」と言い出したので、剛造にもどうすることも出来なくなる。
しのぶが耐子を促して二階へ上がった後、

龍作「大丸さんよ、ぐうの音も出ねえだろう?」
剛造「ぐう」
龍作「出たあああーっ!」
じゃなくて、
龍作「大丸さんよ、ぐうの音も出ねえだろう?」
剛造「貴様と言う男は」
龍作「ああ、そうだよ、勝手な親だよ、大丸さん、明日からあの二人をこき使って楽をするつもりだ。娘を不幸せにしようがしまいが親の勝手だ、好きにさせて貰うぜ」
岩波書店の「古今東西・人間のクズ語録」に必ず収録されるであろう最低の発言をぶちかます龍作。
それは、今までさんざんコケにされてきたことへの仕返しの意味もあったが、その真意は、そうやって剛造を動揺させ、しのぶたちを取り戻す為なら、どんな大金を積んでも構わないと言う気持ちにさせようと言う、ダニ野郎としての緻密な計算によるものだった。
要するに、龍作はしのぶたちなどどうでもよく、それと交換に剛造から金をせしめたいだけなのだ。

悔しがる剛造をよそに、「うまくいったわね」と言う風に、顔を見合わせて笑う千鶴子と則子。
荷物をまとめて父親の後に従うしのぶたちは、玄関を出たところで雅人と会う。
だが、まだしのぶのことを愛してるとまでは言えない雅人は、悲しそうに別れの挨拶をして去っていくしのぶを、ただ見送ることしか出来ないのだった。意気地なし!
一方、剛造は、仮にも大丸コンツェルンの総帥である。これくらいで引き下がる筈もなく、腹心の手島に、どんな手を使ってでもしのぶと耐子を連れ戻せと命令する。
龍作親子三人は、とりあえず適当な安宿に落ち着いていた。
元々龍作は、大人しく真鶴に帰ろうなどとこれっぽっちも考えていないのだ。

もっとも、親子と言っても龍作は16年前に家を飛び出したきり、つい最近まで葉書ひとつ寄越さなかったクソおやじである。
そんな男に、しのぶたちが親しみを見せる筈もない。
しのぶ「お父さん、真鶴に帰るんじゃないんですか?」
龍作「ふん、バカ、男が一旦志を立てて東京に出てきたんだ、おめおめと手ぶらで帰れるかってんだ。故郷に帰る時はせめて1億くれえの金を手にしてえよ」
しのぶ「お父さん、そんな夢みたいなこと言ってないで帰ったら地道に働いてください。私もタエちゃんも一生懸命働いてお父さんをきっと楽にします」
父親と名乗る資格のない男に対し、それでもそんな優しい言葉をかけてくれるしのぶ。
普通のろくでなしだったら、感涙にむせんで心を入れ替えるところだが、
龍作「笑わせんじゃねえよ、バカヤロー、おめえたちみたいな小娘が働いてナンボになるってんだ」 龍作を、そんじょそこらのろくでなしと一緒にして貰っては困るのである!
龍作「ぶさけんな、このバカヤロー!」
さらに、そう罵って枕をしのぶに向かって投げつける。
ここまで極めると、ある意味、立派である。

耐子「やめて、しのぶ姉ちゃんにひどいことしないで! 16年間も私たちをほっといて、よくもそんな真似できるわね」
龍作「ケッ、気のつええ娘だなぁ、死んだかかあにそっくりだ」
姉の代わりに、耐子がずいと前に出て反抗する。
しのぶ「お父さん、私は高校辞めて働くわ。でもお願い、タエちゃんだけは高校に行かせてください。タエちゃんは勉強が好きだし、成績もいいんです」
龍作「ああ、高校でも大学でも行かせてやるよ、耐子はもうじき億万長者の娘だからよ」
しのぶ「またそんな夢みたいなこと言って……」
龍作「何が夢なもんか、おれゃ勝負に勝ったんだ、男が一生賭けた大勝負だ。もうじきここに億って金を背負ったお使者がよ、お迎えに来るぜ。へっへっへっ」
龍作は、剛造の部下が、しのぶたちの身代金としてまとまった金を持って現れると信じて待っていた。
同じ待つにしても、メロスが帰ってくるのを待つセリヌンティウスとは、えらい違いだが。
だが、偶然のいたずらか、シナリオライターの苦し紛れか、この夜、剛造と龍作が、それぞれ体調を崩して寝込んでしまう。

千鶴子「お父様の具合はどう?」
則子「まだ熱が下がらないの」
千鶴子「そう、滅多に風邪など引いたことのないお父様なのに……お母様、私にお父様の看病をさせて」
則子「そう? じゃ、千鶴子さんにお願いしましょ」

千鶴子「お父様、私の大切なお父様……」
枕元に座り、剛作の手を握り締め、その身を気遣う千鶴子。

同じ頃、龍作も安旅館の一室で寝込んで、しのぶの手厚い看護を受けていた。
しのぶ「タエちゃん、休みなさい、後は私がやるから」
耐子「そんな男、ほっとけばいいのよ!」
耐子はそう叫ぶと、隣の布団に潜り込んで涙を噛み殺す。
図らずも、剛造も龍作も、自分とは血のつながりのない娘に看病されている訳である。

剛造「千鶴子か……」
千鶴子「お父様」
剛造「お前が寝ずの看病してくれていたのか」
千鶴子「これくらいのこと当たり前ですわ。私ね、お父様、こうしてるあいだじゅう、ずっと私が5才の時のことを思い出していましたのよ」

剛造「お前が5才の時?」
千鶴子「ええ、私が風邪をこじらせて肺炎になって死に掛けた時があったでしょう。あの時、お父様は私を抱き締めて一緒に眠ってくれたわ」
剛造、
「やべえ、何も覚えてねえ!」と、内心焦るが、
剛造「ああ、あの時……」
と、さもはっきり覚えているような顔で相槌を打つ。

千鶴子「お父様、あの時千鶴子が死なずに済んだのはお父様のお力です。私、お父様のご恩は一生忘れません!」
剛造「千鶴子!」
千鶴子「お父様!」
病気と言うのは時として、人と人とのわだかまりを溶かす作用をもたらすものだが、ここ最近冷えかけていた大丸親子の関係も、そんなちょっとしたことがきっかけで、再び熱い絆を取り戻すのだった。
千鶴子を抱き締めながら、剛造はしのぶはこのまま龍作のもとへおき、代わりに金銭的な援助をしてやろうと思い直し、手島への命令を取り消そうと決意する。
再び旅館の一室。龍作も目を覚ましていた。

龍作「しのぶ……」
しのぶ「あ、お父さん、目が醒めたんですか」
龍作「ああ、お前、徹夜で看病してくれてたのか」
しのぶ「むうすめだもの、当然でしょ」
龍作「ふん!」
しのぶ「お父さん、寝言言ってたわよ」

龍作「寝言、なんてだ?」
しのぶ「大丸様がお金を持って迎えに来るなんて言ってたわ……そんなこと考えなくても私が一生懸命働いてお父さんを楽にしてあげるわぁ、お母さんの分まで働くわ。だから親子三人、仲良く暮らしましょう」
龍作「しのぶ……ちっきしょう、なんて子だよぉ」
嫌がる顔もせず、龍作の汗で濡れた体をタオルで拭いて、そんなことを言ってくれるしのぶに、さすがの龍作も毒気を抜かれたような顔になる。
しのぶ「お父さん、私たち、16年間離れ離れに生きてきたんだもの、これから、その分取り戻さなくっちゃ」
龍作「おめえ、こんな俺でも父親だと思ってくれてんのか?」
しのぶ「お父さんだもの、かけがえのないお父さんだもの」

龍作「しのぶ……」
しのぶ「なんなの、お父さん」
龍作「おめえは本当は……」
しのぶの善良な魂に触れて、うっかり龍作も感動して、何もかも告白してしまいそうになる。
すわ、世界に冠たる人間のクズ・龍作のピンチ! と思いきや、ここで、ドンドン戸を叩く音がして、手島の声が聞こえる。
その途端、

龍作「うわーっははっ、きやがった、きやがった。ほれ、見ろ、とうとう億って金を持ってきやがった!」
しのぶ「……」
龍作の中に一瞬芽生えかけた良心の火は、億と言う金の威力の前にあっけなく吹き消されてしまう。
これこそ、キング・オブ・ダメ人間、龍作の真の実力なのである!
だが、手島が持ってきたのは金ではなく、令状を持った刑事たちであった。
あわれ、龍作はその場で窃盗容疑で逮捕されてしまうのであった。
しのぶ「お父さん、さっき、何を言おうとしたの? 本当は、私は何だというの?」
龍作「ふん、おめえのおやじはなぁ、薄汚ねえ野郎だよ!」
しのぶ「……」
連行される直前、しのぶが取り縋ってさっきの言葉の真意を質すが、返ってきたのは微妙な答えだった。
これだと、しのぶの父親=剛作とも取れるし、龍作が自分のことを自嘲して「薄汚い」と言ってるだけのようにも聞こえるしね。

もっとも、あっという間に出戻って来たしのぶの、剛作を見る目には、ただならないものがあったので、龍作の言いたいことは伝わっている様子。

千鶴子「どう言うことですの、手島さん?」
手島「しのぶさんたちのお父さんに真鶴に帰れない事情が出来ましてね、やむをえず、お二人をお連れしたんですよ」
千鶴子「お父様、お父様が命じられたのね?」
剛造「父親である松本さんに特別な事情ができた以上、静子さんとの約束を守ってしのぶさんと耐子さんを私が預かるのは当然だろう」
千鶴子「嫌よ、私はそんなの嫌よ」
則子「私も反対ですわ」
剛作「この家で私の決めたことに反対することは許さん!」
いつになく暴君的な態度で千鶴子たちを黙らせると、
剛造「しのぶさん、耐子さん、これからは君たちに対して特別待遇は一切しないつもりだ。高校には通わせるが、あくまでも大丸家のお手伝いとして君たちを雇うことにする。それでいいね?」
しのぶ「はい」
しのぶに対しても、ことさらに厳しい言葉を掛ける。
ただ、しのぶはともかく、耐子なんか第3回だったか、屋敷を出て二人で暮らそうとなど言ってたくらいだから、正直、別に大丸家に居続けなくちゃならない理由はないと思うんだけどね。
さらに、もし、単なるお手伝いと言うことになれば、

剛造「それならお前たちにも文句はないな」
千鶴子「ええ、お手伝いとして雇うのなら私にも不満はありません。しのぶさんには私付きのお手伝いになって欲しいわ」
剛造「……」
千鶴子のしのぶに対する嫌がらせがエスカレートすることくらい、剛造にも分かりそうなものなのに。
ここは、予定通りしのぶたちを真鶴へ帰し、経済的援助を続ける……で、良かったんじゃないの?

と、その瞬間、玄関脇のステンドグラスの窓を突き破って、モリが飛んでくる。
管理人、そのモリが、千鶴子の額に突き刺さったら良いのになぁと期待するが、

残念ながらそうはならず、彼らの足元に突き刺さる。
一瞬、
「破れ奉行」の襲撃かと思ったが、さにあらず。
バカの一つ覚えのあのペットの響きが高らかに聞こえてきて、路男の仕業だと分かる。

門の前に立ち、いつものようにペットを吹き鳴らしている路男。
こいつは、モリが誰かに突き刺さる危険性を考えていたのだろうか?
ナレ「千鶴子としのぶ、明日はどんなつらい日が待っているのか……」 と言う、夢も希望もないナレーションを聞きながら、8話へ続く。