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横溝正史シリーズ2 「夜歩く」その4

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 ネタバレ注意!

 毎度お馴染み、ネタバレしまくりの解決編です。原作のネタバレにもなっているので、くれぐれもお気をつけ下さい。

 八千代さんと思しき首なし死体が発見されたあと、金田一と日和警部があれこれと調べまわるのだが、時間がないので割愛し、一気に最後の謎解きシーンへ飛ぶ。

 関係者一同を集めた日和警部、開口一番「犯人が誰か、ワシの口からは言えんのじゃ。金田一さんから説明してもらいましょう」と、まるっきり私立探偵に頼りきりである。お前にはプライドと言うものがないんか? ないんだろうなぁ。

 金田一はまず、容疑者と見られた蜂屋は守衛と同時に殺されており、岡山に来てからの蜂屋らしき人影は、すべて真犯人の扮装だったと指摘する。つまり、小金井の離れで発見された首なし死体は、蜂屋のもので、池から発見された守衛の首とは別人だった。えげつない話だが、真犯人によって、蜂屋も守衛も殺され、二人とも首を切断されていたのだ。

 金田一「蜂屋の胴体の死亡推定時刻は午後11時前後と言う解剖結果ですが、本当の死亡時刻はもっと早く、午後7時前後です」

 金田一は、凶器の日本刀が9時ごろに直記たちの手で金庫にしまわれていることから、その時点で既に凶器として使われ、刃には血痕がついていたのだと明快に断定する。

 以前に指摘したように、これは元々真犯人が金庫にしまおうと言い出したのだが、そんなことをすれば、凶器の使われた時刻と、彼らの偽装した死亡推定時刻のズレが生じてしまうので、犯人が自分からそんなことをする筈が無く、それがミステリーとしての弱点になっている。原作では、直記が言い出したことになっている。

 だから、蜂屋はみんなが夕食を取っているときは、既に殺されていて、八千代が夕食を持っていったのも、何かいやらしいことをされたのも、まだ蜂屋が生きていると思わせるための、八千代の芝居だったのだ。その夜の八千代の夢遊病も、芝居であり、11時に離れを歩いてスリッパに血がついたと思わせるための偽装だったのだ。

 蜂屋は実際には5時に夕食を取った後、7時に殺されていたのだが、犯人は、胃の内容物が摂取後2時間と言う死体のデータを利用して、9時に(八千代が持っていって)食べ、11時に殺されたと思わせたかったのだ。これも既に指摘したが、胃の内容物の消化状態だけで死亡時刻が推定されるわけじゃないのだから、ここはミステリーとして不満が残る。

 もう一点だけ矛盾するのはその晩のお藤の行動である。彼女が深夜、蜂屋に頼まれて水を持って行ったと言うのを、金田一たちが全員聞いているのだ。

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 金田一「僕は八千代さんが共犯者だという確信を深めたんですが、どうしてもそこが納得できなかった……お藤さんはなかなか本当のことを言ってくれずに梃子摺らせたんですが」

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 お藤も土間に立って、その場にいたのだが、金田一の言葉に身の置き所も無い風情で、恥ずかしそうに俯く。いやぁ、萌えるなぁ(好きなだけ萌えてろ)。

 結局、金田一が彼女の代わりに説明する。要するに、お藤は蜂屋と密かにできていて、その夜もお藤が自分から蜂屋の寝室へ忍んでいったところだったのだ。が、部屋に入ろうとした時、ちょうど金田一たちに見付かったので、咄嗟に「水を持ってこいと言われた」と嘘をついたのだ。
 そして翌朝、嘘がばれないようにコップを枕元へ置いておいたのだ。

 お藤が、蜂屋の足の傷を見たと言うのも、二人の関係が深かったとすれば簡単に片付く。お藤はここでは台詞らしい台詞もなく、日和警部に促されてそこから退出する。残念なことに、小林伊津子さんの出番はこれで終わりです。

 原作では、そのことを直記に嘲笑されて、ちょっとムカッとするシーンがあるんだけどね。

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 ついで、金田一は四方太の殺人について話すが、これは言ってみれば番外編の殺人で、実はお柳を巡る争いから、鉄之進がカッとなって殺してしまい、蜂屋の仕業に見せかけるため、首を切り離して竹やぶに捨てておいたものなのだ。

 これは完全にドラマのオリジナル要素である。犯行がばれるのも、凶器に指紋がついていたという、情けないものだった。

 傲慢だった鉄之進が罪を認め、べたっと座り込む後ろ姿は哀れであるが……。

 原作では、金田一が謎解きをしている時、ちょっとしたアクシデントがあって、鉄之進は脳溢血か何かで頓死してしまうのだ。で、その後、油断した犯人が自分の犯行を最後の犠牲者の前でべらべら喋っているところを、金田一におさえられるという結末になっている。

 ドラマでは、引き続いて真犯人の指摘が行われる。

 金田一は直記が「山田花子」と言う偽名臭い女性を秘密裏に病院に入院させていたこと、それを最近、近所の尼寺へ連れてきたものがいることを告げる。彼女こそ、屋代の最愛の女性で、空襲で死んだ筈のお静だった。

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 金田一「この事件の犯人は、屋代、お前だ。動機はお静さんを犯し、発狂させた直記さんへの復讐!」

 昨夜、八千代を追っていたのは蜂屋に変装した屋代で、八千代を殺したあと、何食わぬ顔で金田一たちの前に現れていたのだ。

 八千代は自分が殺されると走らず、芝居の片棒を担いでいたのだ。

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 屋代は犯行を認め、その経緯を淡々と語る。

 屋代「俺はお前に復讐するため今日まで生きてきた。まずお前の愛する八千代を手に入れたんだ」
 直記「嘘だ、お前なんかと八千代が」
 屋代「無理矢理俺のものにしたんだ。お前がお静にしたようにな……八千代はお前の妹なんかじゃない。血液型を調べる知識くらいあっただろう……夢遊病も俺が歩かせたんだ」

 愛する八千代をとっくの昔に屋代に奪われていたと知って、激怒する直記。原作だと、更に屋代が「八千代は処女だったぜ、やーいやーい」と、直記を発狂させかねない台詞を吐いている。

 以前にも書いたように、父・鉄之進→八千代と言う、夢遊病の遺伝から、直記は八千代と血の繋がりがあるのではないかと疑って、手を出さなかったのだ。原作だと、直記も夢遊病なんだけどね。

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 お静のことは、八千代から聞いたと言う。

 八千代「こんないやらしい仙石と古神の血なんて、あたし死んでしまいたい。何も残らずにサッパリするでしょうねえ」
 屋代「やってみるか、化け物退治……」
 八千代「えっ」
 屋代「殺しだよ。自分が死ぬなんてつまらないじゃないか。みんな殺して二人で涼しい顔で暮らすってのはどうだ? 他人を殺してその首と手首を切って自分の身代わりにするんだ」

 屋代はそう持ちかけ、蜂屋を殺人鬼に仕立てた殺人計画を練り上げたのだ。八千代には、お静を殺してそれを八千代の身代わりとさせ、二人で一緒になろうと話していたのだろう。だが、実際には八千代自身が殺されてしまったわけだ。

 金田一の「八千代さんの娘心を踏みにじってまで、お前は自分の復讐がしたかったのか? 人の命を!」と言う台詞が胸に響く。

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 屋代「俺にはお静との生活があればよかった」

 金田一「屋代、人を殺せば、おまえ自身もおしまいなんだ。お静さんは生きてたんだ。この平和な日本で十分幸せに暮らせたはずだよ……あの戦場から生きて帰ってきたのは、その為じゃなかったのか? あの生と死の狭間で君の言った言葉、『命を粗末にするな』……」

 犯人が親友と言うことで、いつになく金田一の台詞も親身なものだった。

 そして、連行される屋代の前に、そのお静さんを立たせておくと言うサプライズも用意している。

 金田一「寅太、お静さんのことは心配するな。僕が面倒見させてもらう」

 原作では、金田一と屋代は他人だが、そこでも金田一がお静の世話を引き受けている。

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 ドラマだけの演出だが、四方太も鉄之進もいなくなって、急に孤独の影に包まれるお柳が、虚ろな笑いを響かせるシーンも印象的だ。

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 ラスト、いつものように日和警部と汽車に乗っている金田一。

 日和「命の恩人の戦友の犯罪じゃ。あんたに取っちゃあつらい事件じゃったな」
 窓から外を見ていた金田一、思わず涙ぐむ。

 だが、日和警部に差し出されたハンカチが汚れていて、顔を拭いたら真っ黒になってしまい、やっと笑顔になる金田一、と言うところで幕である。



 舌足らずで分かりにくいレビューになってしまったが、ドラマそのものはとても面白いのでオススメである。特に、第一回目のキャストの豪華さは、シリーズ随一だろう。その分、二回目はやや中弛みしているが、三回目の丁寧な謎解きで、ミステリーの醍醐味を味わえる。

 おわりです。


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コメント

これは観て良かったです!
どちらが殺した(殺された)?の答えが「二人とも同じように殺された」こと
犯人の意外さ、その動機となった経緯の残酷さ
そして古谷金田一の人情味・・・と見応えたっぷりでした。
やっぱ、脚本の出来が良いからでしょうね(「八つ墓村」とは好対照)。

Re[1]:横溝正史シリーズ2 「夜歩く」その4(11/18)  

影の王子様
>犯人の意外さ、その動機となった経緯の残酷さ
そして古谷金田一の人情味・・・と見応えたっぷりでした。

自分も大好きですけど、原作の最大のトリックが映像化できないのが、仕方ないとはいえ残念です。

Re:横溝正史シリーズ2 「夜歩く」その4(11/18)  

実は“犯人はAでもBでもなくCだったという結末が素晴らしいですね
原作が読みたくなりました。八千代さん(小林伊津子さん)が最後は首無し死体(所謂殺される)となるシーンは残念でしたね😅

Re[1]:横溝正史シリーズ2 「夜歩く」その4(11/18)  

ふて猫様

ミステリーとしては、原作の方が遥かに面白いのでオススメです。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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