第6話「亡き母の悲鳴」(1985年5月21日)
の続きです。

千鶴子は、茶会の後、自分の部屋に駆け込むと、まず机の上の物に当り散らし、机に顔を伏せてさめざめと泣いてから、
千鶴子「許さない、お父様もしのぶも!」
物凄い目付きを宙に向けて突き刺すのだった。
ま、今回に限っては、千鶴子の気持ちも分からない訳ではないが、でも、ここまで極端に人が変わると言うのは、さすがに「そんな奴おらへんやろ」の世界に突入してるよね。
一方、しのぶも、着物を脱いで鈴子に返した後で、それが慶子(すなわち自分の実の母親)の形見だったと悟り、動揺を隠せないでいた。
しのぶ「そんな大切なものを、旦那様、何故私に?」
千鶴子は、ワンピースの水着姿でさっきの屋内プールへ行こうとしていたが、階段のところで鈴子が白い着物を持っているのを見ると、それを掴んで放り投げてしまう。
千鶴子の嫉妬に狂った目には、しのぶが袖を通した汚らわしい着物に映ったのだろう。
さて、これから、「乳姉妹」では珍しい、いや、大映ドラマでも稀な、管理人的「お楽しみタイム」となります。
なお、潔癖症の女性の方は、これ以降はお読みにならないことをお勧めします。
いつの間に来ていたのか、屋内プールでは、先に千鶴子の取り巻き連中が水着姿でたわむれていた。少し遅れて千鶴子がプールサイドにやってくる。

まなみ「とっても楽しいわ、早く泳ぎましょう」
まなみたちが急いで駆け寄り、はしゃいだ声を上げる。
ここだけ見ると、まなみ(左)が、すっぽんぽんで泳いでるのかと思いがちだが、単にビキニトップの紐が見えないだけである。
ビキニといっても、まなみのはボトムズの上にミニスカのようなものをつけた、意気地なしビキニである。

続いて、自分の部屋で水着に着替えたしのぶが、耐子を誘っているシーン。
ご覧の通り、しのぶって、性格の控え目な割り(関係ないか)に、妙に肉感的なボディのオーナーだと言うことが明らかになる。
黒一色のワンピースと言うのも、実にアダルティでいやらしい。
それと、管理人、前々から、プールや海以外の場所で、女性が水着姿になってるシチュエーションに、異様に興奮する病気を持っていて、これはまさにその典型的な場面になっている。
嗚呼、苦労して「乳姉妹」のレビューを書いてきたけど、途中で投げ出さないでほんとに良かった!! しのぶは、耐子も誘うが、耐子は勉強があるからといって素っ気なく断る。
ついでに森恵さんの水着姿も見られたら、死ぬほど嬉しかったのだが……。

千鶴子「じゃ、分かったわね」

しのぶが一人でやってきたのは、千鶴子による新たないじめの打ち合わせが済んだところだった。
ついでに、百瀬まなみさんの水着姿まで見れて、管理人はもう思い残すことはありません。

そこへ、ムチムチしたボディを隠しきれないしのぶがにこやかに現れる。
しのぶ「皆さん、こんにちは」

千鶴子「もうすぐお父様たちもここに来る頃よ、一緒に泳ぎましょ」
しのぶ「はい、ありがとうございます」
まなみ「しのぶさん、あなたのお母さんは海女さんだったそうねえ」
女子「あなたも海女さんをしていたの?」
しのぶ「私はほんの真似事だけです」
女子「私たちに海女の泳ぎを見せてくれない?」
しのぶ「そんな、海女と言っても特別な泳ぎ方がある訳じゃないんです」
表面的にはにこやかに応じつつ、千鶴子に言われたとおり、嫌がらせのようなリクエストをする取り巻きたち。
しのぶ、そう言って救いを求めるように千鶴子を見るが、

千鶴子は、こーんな顔をしていた。
しのぶ「……」
ここまでがらりと顔付きが変わると、映画「悪霊島」のように、この屋敷には、良い千鶴子と悪い千鶴子とでも呼ぶべき、性格の対照的な双子の姉妹がいて、表面的にはひとりの人間として生活しているのではないかと疑いたくなる(ま、実際は、同一人物の一人二役だったのだが)。
しのぶ、なおも抵抗していたが、取り巻きたちにプールに突き落とされ、仕方なく、

しのぶ「分かりました、海女の泳ぎをお見せするわ」
そう宣言して、プールの中に身を沈めて、水の底を平泳ぎで泳いでプールの中をぐるっと一周して元の場所に戻ってくる。

しのぶ「これで納得して頂けましたか?」
さすがに我慢強いしのぶも、怒りのこもった声で訊く。
千鶴子「納得できないわねえ、海女さんが水着をつけてるなんておかしいわ、海女さんは腰巻ひとつで泳ぐんでしょ?」 だが、千鶴子は眉ひとつ動かさず、新たな言い掛かりを吹っかけてくる。
これこそ、日本ドラマ史上、最も性格が悪いヒロインといわれる千鶴子の真骨頂であった。

実際に、取り巻きのバスタオルを投げ付け、「これをつけて泳ぎなさい」と、平然と命じる。
どうやら剛造、千鶴子に勉学やスポーツ、習い事などをさせることに夢中のあまり、人として一番大事なことを教えるのを失念していたようだ。
別に難しいことではない。人を思いやると言う心を……。
しのぶ「千鶴子お嬢様、あんまりです。私と仲直りすると約束してくれたばかりじゃありませんか、それがどうして、こんなひどいことを私にさせようとなさるんですか?」
千鶴子「お黙りなさい、あなたは私に最大の屈辱を与えたのよ。死ぬような辱めを与えたの。裸になって泳ぎなさい。これは私の命令よ」

しのぶ「そんな命令には従えません」
しのぶ、凛然と言い放つと、さっさとプールから上がろうとするが、千鶴子に突き落とされる。
……ま、だいたい予想できることですけどね。せめて千鶴子たちのいないところから上がらないと。
それはそれとして、その瞬間、しのぶの股間から滴り落ちる水が、実にエロティックだったので、頑張ってコマ送り&キャプしました。
さらに、千鶴子以外の女子がプールへ飛び込み、力尽くでしのぶを裸にひん剥こうとする。しのぶもさっきの泳ぎ方で逃げ回るが、結局捕まり、よってたかって水着を剥ぎ取られそうになる。

と、そこへ颯爽と現れたのが、ビキニパンツも眩しい、雅人であった。
このシーンで、雅人がビキニトップも付けてたら笑えただろうなと思った管理人でした。
雅人は、状況を把握すると、いきなりプールへ飛び込み、見事な泳ぎで女の子たちの間に割り込み、しのぶを助ける。
雅人「やめないか、君たち、どんな恥ずかしいことをしてると思ってるんだ?」 そう言う雅人が、ビキニトップを付けていたら笑えただろうなと思った管理人でした。
雅人「千鶴ちゃん、君が命令したのか?」
聞くまでもないことを聞く雅人。
千鶴子は悔しそうな顔になるが、無言でその場を立ち去る。

既にポロリしかけている胸を押さえ、雅人に付き添われるようにしてプールサイドに上がろうとする傷心のしのぶ。
大映ドラマで、一番エロいシーンじゃないかと思う。
剛造「しのぶさん、どうかしたのかね?」 しのぶ「いいえ、なんでもありません」
最後に剛造が現れ、そんなしのぶを見て間の抜けた質問をする。
察しろよ! 何年千鶴子の父親やってんだって話だよ。

部屋に戻って着替えた千鶴子を、いきなり雅人がビンタする。
千鶴子(……あれ、前にも似たようなことされたような記憶が……)
雅人(……あれ、前にも似たようなことしたような記憶が……)

雅人「君はどうしてそんな卑劣な真似をするんだっ?」
「何回おんなじこと言わせりゃ気が済むのー?」と言う嘆きを言外に込めて、雅人が千鶴子をなじる。
雅人「お父さんの理想の女性に近付きたいと言ったばかりじゃないか? ふくよかで心優しく、それでいて凛としたものが備わった女性、そんな人になると約束したばかりじゃないか」

雅人「僕は情けないよ、君が友達に命じてあんな陰湿ないじめをするなんて、どうかしてるぞ君は」
「どうかしてる」と言うより、むしろ、千鶴子の本領発揮と言う感じなんだけどね。
もっとも、一応、今回に限っては、千鶴子にも一分の理があった。
千鶴子は、形見の着物の一件を語り、
千鶴子「私に対する最大の裏切りよ、これ以上の屈辱なんてある筈がないわ!」
その場にいない……いるけど……剛造のことを責める。
二人の会話を聞いていた剛造、思わず千鶴子の名を呼んで部屋に踏み込む。

剛造「千鶴子!」
千鶴子「お父様、お父様はひどいわ、慶子お母様の娘はしのぶさんなの? 私ではないというの?」
雅人「お父さん、千鶴子ちゃんが怒るのも当然ですよ。どうして慶子お母様の形見を……」
雅人も、今度ばかりは千鶴子の肩を持って、父親を非難する。
剛造、仕方なく、咄嗟に嘘をつくことにする。
剛造「あの着物は慶子の形見なんかではないんだ」
千鶴子「嘘、そんなの嘘よ」
剛造「嘘ではない、実は鈴子君にお見合いの話があってな、長年の労に報いる為に私が買い求めたものなんだ」
千鶴子「嘘よ、お父様、どうしてそんな悲しい嘘をおつきになるの?」 「そりゃ、日本一面倒くさいお前みたいな娘がいるからだよぉっ!」 と、叫びたいのは山々の剛造であったが、
千鶴子「あの着物は写真のお母様の着物と同じじゃありませんか」
剛造「いや、全くの偶然なんだ、私は無意識のうちに写真の中の慶子と同じものを求めていた。だからあの着物は慶子の形見なんかじゃないんだ」
千鶴子「……」
しかし、誰が聞いても空々しい言い訳にしか聞こえず、千鶴子は恨みがましい目で剛造を見詰める。
剛造「証拠を見せよう、雅人もついてきなさい」
何を思ったか、決然とそう言い放つと、あの着物を手に、二人を引き連れて勝手口から中庭へ出てくる。
ちょうど、しのぶたちが焼却炉でゴミを燃やしているところだったが、剛造はその着物を燃え盛る炎の中に投げ入れようとする。

千鶴子「お父様、もうやめて」
剛造「いや、やめるわけはにいかん、お前を苦しめた着物を私の手元においておく訳にはいかん」
剛造、思い切って着物を火の中に叩き付けるように投げ入れる。
無論、それは剛造にとって身を切られるほどつらいことだった。
雅人は、それが剛造が千鶴子を宥める為の芝居だと薄々感づいているような顔だったが、人の気持ちに対する想像力の欠如した千鶴子は、

千鶴子「お父様、許して、ほんの少しでもお父様の心を疑った千鶴子を……許して」
それが本当に形見の着物ではなかったのだと受け取り、泣きながら剛造に抱きつき、号泣するのだった。

雅人「……」
激情の千鶴子を見る雅人の目が、「やってらんねえ」とでも言いたげに見えるのは気のせいだろうか。
ま、これだけコロコロ性格が変わる人と一緒に暮らしていたら、いい加減、ヤになりますよね。
この場は何とか切り抜けたものの、更なる嵐の接近を予感しておののく剛造の顔を映しつつ、終わりです。