第21話「レッドカードはあいつだ!~フットサン殺人事件」(2006年5月20日)
珍しく冒頭から、雷と柴田が顔を合わせている。

雷「柴田さんも岡野さんに呼び出されたんですか」
柴田「うん、雷ちゃんも?」
雷「はい」

雷、自転車から降りようとするのだが、その際、スカートがサドルに引っ掛かってしまい、

小出さんが、さりげなく、持ち上がったスカートを手で押さえる仕草に、そこはかとないエロティシズムを感じてしまう管理人でした。
と、向こうから、青いユニフォームにサッカーボールを手にした岡野が満面の笑みを浮かべながらやってくる。
雷「帰りましょうか」
柴田「だね」
岡野「ちょちょっと待ちたまえ、まだ何も言ってないでしょう」
雷「言わなくても分かりますよ、ワールドカップに影響されてサッカーがやりたくなったから付き合えって言うんでしょ?」

岡野「サッカーじゃない、フットサンだ。すなわち、フットサルとはサッカーを意味するフットと、室内を表すサルーンを合わせた言葉、そしてフットサンとはサッカーを意味するフットと、お日様、サンを合わせた言葉、つまり、3対3で屋外でプレーするサッカーのことなんですよー」
雷「私、サッカー得意じゃないんですよねー」
サッカーの知識も興味もない管理人、岡野のもっともらしい説明を聞いて、迂闊にも実際にそんなスポーツがあるのかと思ってしまったが、無論、フットサンなどと言うスポーツは存在しない。ま、別にわざわざ名称を作らずともサッカーのミニゲームと言えば済む話である。
雷、いかにも興味なさそうにつぶやくが、岡野はやる気マンマンで、あらかじめ用意していたネーム入りのユニフォームを取り出して、二人に渡す。

岡野「銭形君、始球式はね、美女の仕事なんですよ」

雷「美女? レッツ・プレイ・フットサン!」
岡野におだてられるとボールを空に蹴飛ばして、あっさり快諾してしまう。割と乗りやすいタイプなのだ。

こちらがその試合のグラウンド。
いやー、今回は金が掛かってるなぁ。
ゲスト俳優が4人もいるし。

岡野「作戦(会議)を始めよう。いいか、まず、全てのボールは私に集める。それから、あとは私がなんとかするから、な?」
雷「それって自分が目立ちたいだけじゃないですかー」
柴田「全くその通り」
二人の不満の声に、岡野は、自分はフットサン4級の資格を持ってるんだと自慢し、実際にボールを足の甲に乗せて、まるでボールが貼り付いているかのように自由自在に動かして見せるが、勢い余ってスポッとスニーカーが脱げてしまうが、ボールはスニーカーの上にくっついたまま。
貼り付いているようじゃなくて、ほんとに貼り付いていたのだ。

雷「あ、ダメですよ、インチキは!」
……
嗚呼、私は雷の胸に押し付けられたボールになりたい(何が、嗚呼だ)

代わりに雷がリフティングをして見せるのだが、これがほんとに上手く、10回くらい軽くやってしまう。
雷「ま、こんなもんですね」
柴田「げ、激ウマ!」
岡野「何が不得意なんだ?」
そうそう、言い忘れるところだったが、日本代表(風)のユニフォームを着て、髪を動きやすいポニーテールにした雷がめっちゃ可愛いのである!

雷「昔はもっと上手く出来たんですよ、ペレのおじさんに色々教わったんで」

柴田「ええっ、ペレって、まさかあのペレ?」
岡野「誰、それ?」

柴田「ええーっ?」
岡野「えっ?」
柴田、雷の言葉に驚くが、続く岡野の発言にそれ以上に驚く。
で、試合開始となるが、それがどう言う位置づけの試合なのか、相手チームが誰なのかも一切説明されない。とりあえず、単なる練習試合であることは確かである。

雷、試合でも華麗なドリブルから見事なロングシュートを放ち、あっという間にゴールを上げてしまう。
これなんかも、ほんとにうまっぽく見えてしょうがない。小出さんが、実際にスポーツ少女だったかどうかは分からないのだが。
いや、なんとなく、制服を着ている女子高生ってみんな運動が苦手と言うイメージ(偏見)が自分の中にあって、それでますます雷の軽快な動きが意外に見えてしまったのだろう。

ちなみにこちらが今回の主審となります。
普段、地上波のちゃんとしたドラマしか見ない視聴者なら、これだけでチャンネルを変えてしまいそうなキャラクターである。

その後も、強烈なシュートを放ち、2点目を挙げる雷。
この、太ももの付け根から覗く、ショートパンツの下に履いた黒いスパッツがなんか良いのである!
さらに、今度はオーバーヘッドキックも決め、序盤で早くもハットトリック達成。
岡野「ようし、よくやった銭形君、さあ、君はもういいだろ、次は私の番だ。私にパスを」
自分が目立つことしか考えてない岡野、相手FWからボールを奪った雷に、猛烈なアピールをする。

雷「ちゃんと決めて下さいよ」
雷、やむなく、ボールを止めて、インサイドキックで岡野にパスする。
この動きも、実に堂に入っている感じなので、「小出さん、ほんとにサッカーが上手かった説」がいよいよ真実味を帯びてくるが、本当のところは分からない。
ボールを貰った岡野、敵陣に切り込もうとするが、相手DFのモスラ塁が立ちはだかる。
一応、ブラジル人ハーフらしいが、どう見てもコテコテの日本人がカツラ被ってるだけである。

岡野「いくぞ、スーパーエリート、シュート!」
そう叫びながら、左足を軸に、右足を思いっきり後方に引いて前傾姿勢になる岡野、

雷も柴田も、不覚にも一瞬だけ期待してしまうが、

岡野「くわっ……あっ」
当然、こうなるのだった。
それでもゴールまで届いたのだから大したものだが、GKショウ・ロンポウに鼻くそをほじくりながら片手で拾い上げられる。
岡野、背中に突き刺さる雷の冷たい視線を物ともせず、なおも強がりを叩く。

岡野「ウォーミングアップはここまでだ。さあ、締まっていくぞ」
雷「もう、ほんとにウォーミングアップなんですか」
岡野「大丈夫だ。今度はズバッと決めてやるから」
二人が行こうとすると、ショウ・ロンポウが声を掛けてくる。
ショウ・ロンポウ「中国にこう言うことわざある。骨折り損のパンリの長城歩き」
岡野「どう言う意味だ」
ショウ・ロンポウ「いくら歩いていも無駄と言う意味、つまり、あなたシュート打つだけ無駄と言うこと」
ショウ・ロンポウも、中国人っぽい喋り方と格好してるが、無論、コテコテの日本人である。

雷「……」
岡野「ふっふっふっ、今にがりがりに痩せされてやるからな!」

岡野「はっはっはっ……」
雷「……」
雷は、GKに言い返すどころか、「全くその通り」とでも言いたげな視線を岡野に向ける。
この、相手を値踏みするような雷の目と、ぶにっとした口元がめっちゃ可愛いのである!
試合が再開されるが、岡野はFWの久里浜カズオのドリブルを止めようと向かい合うが、久里浜は自分から勝手に転がってその場に倒れ、痛そうに膝を押さえる。
岡野「えっ? ……おっ、チャーンス!」
岡野、目を輝かせてボールを奪い、ドリブルしようとするが、
ボブ「チーム警視庁28番、イエローカード・フォー・ペナルティーキック!」
主審のボブ・ダービットソンがすかさずホイッスルを鳴らし、相手チームにPKを与える。
久里浜、それを聞くなり、何事もなかったように起き上がり、仲間たちと喜び合う。

岡野「なんで、私、触りもしてないのに?」
雷「岡野さんは何もやっていません、相手が勝手にこけたんです」
柴田「そうです、シミュレーションだ」
ボブ「私は歩くルールブックなのでーす、私に文句言うならサヨナラですよ」
なおも抗議する岡野だったが、ボブはその胸を突き飛ばし、
ボブ「それ以上強く抗議するなら、レッドカード、サヨナラよ~ん」
憤懣やるかたない雷たちだったが、審判には逆らえず、久里浜のPKとなる。
久里浜、蹴る前にショウ・ロンポウから渡されたペットボトルの水を一口飲み、ついで、置いたボールに口付けをする。

岡野「あいつ、ボールにキスなんてして……不衛生的」
雷「あれは絶対ネッツァーの真似ですよ」
岡野「誰、それ?」

雷「ドイツの伝説のサッカープレーヤーです。ネッツァーはPKの時に必ずボールにキスをしたんです」
岡野「あー、そうそう、そうだった、思い出した」
二人は、柴田が止めてくれるのではないかと期待するが、あっさりゴールを割られ、がっくりする。

雷「あの主審、絶対相手チームを贔屓してますよね」
岡野「まったく、嫌な奴だ。しかし、さっきから何を記入してるんだ?」
ボブが、メモに何か書き込んでるのを見て、腹立ち紛れに疑問の声を上げる岡野に対し、

雷「反則した選手や得点を決めた時間を記録してるんです。フットサン4級なのに知らないんですか?」
岡野「いや、ちょっと君の知識を試しただけですよ」
例によって明快に解説した後、ニヤニヤと嬉しそうに岡野の顔を見遣る雷。
と、ここで漸く事件が発生する。ゴールを決めて仲間たちと楽しそうに踊っていた久里浜が、突然胸を押さえてその場に倒れ、動かなくなってしまったのだ。

モスラ「カズオ、そんなゴールパフォーマンス、陰気で流行らないよ」
岡野「さあ、プレーを続けましょう。……死んでるぞ!」

久里浜の遺体を厳しい顔付きで見詰めている雷が綺麗なので貼りました。
当然、試合どころではなくなり、鑑識が駆けつけて、本格的な捜査が開始される。

久里浜の遺体をケータイで撮っている雷が綺麗なので貼りました。
普通は、ここから本格的なストーリーが始まるのだが、今回は、むしろそれまでの試合の経過の方がメインのような感じで、肝心の殺人事件やそのトリックは、はっきり言って全然面白くないのである。
雷の画像もたくさん貼ったし、これで終わりにしても良いのだが、やっぱり最後まで書くことにする。
さて、久里浜の死因は遅効性の猛毒・オズマ殺しによるものと判明する。
雷「試合中に毒を盛られて殺害されたと考えて間違いありませんね」
それを聞いて他の三人を見詰めていた岡野は、不意にニンマリすると、「犯人はあなただ、ショウ・ロンポウ」と、いきなり犯人を名指しする。
PK直前に、久里浜に飲ませた水の中に毒が入っていたと言う雑な推理だったが、ペットボトルからは検出されず、あっさり却下。
めげずに岡野は、今度はモスラが犯人だと言い出す。
PK後、二人がハイタッチをしていたことから、モスラが手のひらに毒を付着させ、それを久里浜の体に塗りつけたのだというのだが、そんなことしたら自分も死んでしまうやろ! と雷に突っ込まれて無事死亡。

雷「オズマ殺しは触れたら、皮膚から吸収して必ず死に至る毒物です。でもモスラさんは素手です」
しかし、「ケータイ刑事」の世界では、無味無臭無色の即効性の猛毒ウラリや、触れただけで必ず死ぬオズマ殺しなど、危険かつ便利な薬物が存在し、しかも誰でも簡単に手に入れられるようで、日本はまるで毒殺大国のような趣なのである。
岡野「それじゃあ、一体誰が犯人なんだ?」

ロッカールームに移動して、二人だけの捜査会議が開かれるが、珍しく、雷が制服姿に着替えず、ユニフォーム姿と言うのが嬉しい。
雷「問題は被害者の体内にどうやって毒が入ったかなんですよね」
と、そこへ柴田から電話があり、久里浜のスニーカーと唇から毒物が検出されたとのこと。

雷「よどむ、悪の天気……」
美しい雷の横顔。

時間もないことだし、その後、雷はすぐに犯人を特定する。主審のボブであった。
雷「ボブさんは被害者に触れずに、ボールを使ったんです。試合に使ったボールのヘソ周辺からオズマ殺しの成分を検出しました」
岡野「一体どう言うことなんだ」
雷「被害者がボールにキスをすることはフットサン関係者には有名でした。そこであなたは強引にPKを取り、オズマ殺しが塗られたボールをセットした。何も知らない久里浜さんはいつものようにボールにキスをして中毒死を起こしたんです」
さらに雷は、主審が必ず持っているボールペンに毒を仕込んでおき、試合中、隙を見てボールのヘソを塗り潰すようにして毒を付着させたと言うのだが、

柴田「薬物の反応が出ないよ!」
雷「そんな!」
雷の意表を衝かれた顔付きは、まるで、
「長い付き合いじゃない。出なかったけど出たことにしておくぐらいのことは出来るでしょ?」と、柴田に目で訴えかけているように見え……ません。

意気消沈するものの、雷はまだボブが犯人だという確信を捨てようとしない。
岡野「君は捜査を勘に頼り過ぎるなぁ」(註1)
雷「そんなことないです」
岡野「そんなことあります。いいか、フットサンを足でプレーするように刑事は足で捜査をするんですよ」
雷「勘じゃありませんよ」
岡野「君は冷え性だったねえ」
雷「はいっ?」
岡野「頑固な女性は冷え性が多いと前にも教えたでしょ!」
雷「私は普通ですよ!」
(註1……全くその通りであるが、岡野には言われたくない)
「ケータイ刑事」のひとつのパターンである、「頑固な女性」=「冷え性」と決め付ける、若干セクハラ臭いやりとりの末、

岡野「そんな君にいいものをプレゼントしよう、温シップ、とうがらし成分配合。さらに私のオリジナルとしてネギ、にんにく、タバスコをブレンドしておいた」
岡野、救急箱の中から、市販のシップに得体の知れない様々な粉末を添加したものを取り出して、雷に渡す。雷、おそるおそる透明フィルムを剥がしてみるが、鼻を突く異臭に思わず叫ぶ。
雷「くさっ!」
岡野「そう、その臭いが君を温かく包み込んでくれるんだ」

雷「……分かった」
岡野「なにが」
雷「謎は解けたよ、ワトソン君!」
だが、偶然にも、その不気味な温シップが雷に事件の謎を解く手掛かりを与えることになる。
CM後、控え室にいたボブにお仕置きをしてから、雷の謎解きタイム。

雷「あなたは試合前にオズマ殺しの成分が入ったシールをこのボールに貼っておいたんです」
ここで漸く雷が制服姿に着替えている。
雷「そして岡野さんの反則を取ったとき、シールをボールから剥がした。後は被害者がボールにキスする儀式を利用して殺害した。以上があなたの犯行の全てです」
と、あっという間に謎解きが終わってしまったが、これだけ簡単でつまらない殺害トリックは、「ケータイ刑事」シリーズ史上でも稀有だろう。
もっとも、ボブは尚もそんなシールが何処にあるのかと反撃するが、それに対する答えもちゃんと雷は用意していた。岡野を呼んで、そのユニフォームを広げさせ、

雷「あなたはPKの反則で岡野さんに攻められた時に、このシールを貼り付けたんです」
ここで、そのシーンが再現され、確かにボブが岡野を押し返しながら、胸にシールを貼っているのが見える。ただし、それはあくまで再現シーンに限ってのことであり、本編の同じシーンでは、そんなシールなど何処にも見えない。
雷「このシールからはあなたの指紋だけが検出される筈です」

ボブ「私の負けです」
観念したボブは、眼鏡を外し、膝から崩れ落ち、さらに付け鼻と金髪のカツラまで外して「素」になってしまう。
こういうふざけた格好をしたキャラクターは、地上波でもテレビ東京の深夜ドラマなどなら出てきそうだが、ドラマの途中で「素」に戻ると言うのは、さすがに「ケータイ刑事」だけだろう。
岡野「おい、いいのか?」
ボブ「……」
岡野「クニのお母さん、泣くぞ。どうして久里浜さんをあやめたんだ?」
肝心の動機だが、ボブの彼女の唇を、久里浜が奪ったので、その唇を使って久里浜を殺したかったのだと言う、心の底からどうでもいいものだった。
……と言う訳で、ストーリーやトリックより、雷のユニフォーム姿の方が印象的なエピソードでありました。

最後は、そんな愚かな犯罪者を少し潤んだ目で見詰める雷の画像で締めましょう!