第24話「恐怖の惑星大接近」(1983年7月16日)
巷では、X13と名付けられた新彗星の接近に、天文マニアたちが沸き返っていた。
だが、ジャシンカは「宇宙科学センター」を密かに占拠し、そのパラボラアンテナを利用した彗星誘導装置を開発していた。
カー将軍「誘導装置が完成すれば、X13彗星を地球に引き寄せることはいとも簡単でございます」
アトン「彗星から落ちる隕石で地上のあらゆるものを破壊し尽くし、その後にジャシンカ帝国を建設する!」
そんな折、星川竜がそのパラボラアンテナを見に来る。
天体・UFOマニアの竜は、自前の望遠鏡ではX13の観測はおぼつかないので、センターの望遠鏡を借りに来た……のだろうか?
その竜の耳に、「家に帰ってーっ、パパーっ!」と泣き叫ぶ女の子の声が飛んでくる。
見れば、施設のゲート前で、何やら悶着が起きている様子。

所員「パパは大事な研究でお忙しい、帰りなさい」
沙織「ああっ」
所員(毎度お馴染み、鎌田功さん)は、乱暴にも所長の椎名博士の娘を路上に突き倒す。
椎名「沙織、沙織ぃーっ!」
沙織「パパぁーっ、パパぁーっ!」
椎名博士も、二人の警備員に引き摺られるようにして連れて行かれる。

竜「どうしたの」
沙織「パパが、パパがお家に帰ってきてくれないの! あんなに優しかったのにぃ」
竜「よし、お兄ちゃんがパパに会ってうちに帰るように言ってあげるよ」
沙織「ほんとー」
竜「だから今日はお帰り」
当事としては格段に演技の上手いこの子役は、翌年の「星雲仮面マシンマン」で美佐を演じていた秦瑛花さんです。

竜(博士の態度がおかしい……)
沙織が帰った後、

竜は入り口の柵を助走をつけて飛び越えると、

竜(何か訳がありそうだ)
敷地内の林を走って、建物へ近付こうとする。
やっぱり俳優さん自身がこういうことを軽くこなせるのは大きいよね。
だが、建物に取り付く前に、早くも敵が襲ってくる。

しかも、いつものジャシンカの攻撃と違い、水の中に放り投げられて必死に泳いでいたら、土の上でバタバタしている自分に気付く……など、幻術の要素が強いものだった。

キツネシンカ「へへへっ、キツネシンカーっ!」
早くもその仕掛け人が姿を見せる。
竜もすかさず手裏剣を投げる。

竜「待てーっ!」
竜に追いかけられたキツネシンカ、茂みの向こうへ回り込む。

竜が反対側に回って捕まえようとするが、その僅かの間にキツネシンカが、ダイナレッドこと弾北斗の姿に変わっていた。

竜「こらっ、やっ、う……弾!」
北斗「どうしたんだ、星川?」
竜「いや、お前こそ、どうしたんだ?」
姿形はおろか、声まで本物とそっくり同じなので、竜もすぐには正体を見破れない。

竜(どうして弾がいるんだ、ここに?)
背中を向けた竜に、北斗が「おい、星川」と呼びかけ、竜が何の気なしに振り向いたところを、北斗のパンチが竜の顔面に思いっきりヒットする。
そう、今回は「ゴーグルファイブ」の45話「二人のブラック」と同じく、春田さんを軸とした、怪人が色んな人間に化けてヒーローたちを翻弄する、と言う趣向なのである。
竜は続けて、洋介に化けて近付いたキツネシンカに蹴り飛ばされる。

竜「島! ……まただよ」
竜が凹んでいると、後ろからその肩を叩く者がいる。
レイ「どうしたの?」
竜「おお、レイちゃん」
レイ「だいじょぶですか」
竜「いいところに来てくれたねえ。ほんと」

それを本物だと思い込んで手を撫でさする竜であったが、
レイ「そう? えいっ!」
案の定、今度もニセモノで、いきなり投げ飛ばされるのだった。

順番として、当然次には耕作が現れる。
耕作「竜さん、私は南郷です」
竜「来た来た来た……」
ギャグのお約束としては、最後の耕作だけ本物だった……と言うオチが望ましいが、今度もまたキツネシンカが化けているのだった。

が、竜を殴ろうとしてしくじり、思わず尻尾を出してしまう。
竜「南郷、大丈夫か? ……これは何?」
耕作「あ、あっはははぁ……」
何かに驚いて尻尾を出して、相手に見破られると言うのも「二人のブラック」のタヌキモズーと全く同じである。もっとも、変化能力に関しては、キツネシンカの方が遥かに上であろう。
キツネシンカはここで自ら正体を明らかにして、ダイナブラックに変身した竜と戦いになるが、すぐにシッポ兵たちから椎名博士の逃亡を知らされた為、一時退却する。
竜「奴は宇宙科学センターで何をしようとしてるんだ?」
竜はパラボラアンテナの内部に潜入し、設計図のようなものを持ち帰る。

夢野「これはX13彗星を地球に誘導させる為の設計図だ。衝突しない程度にX13彗星が地球に接近した場合、地球はどうなるかと言うとだな……」
夢野博士は、大型スクリーンに
イラストと、
エキストラの悲鳴のSEを使って、X13彗星から剥がれ落ちた隕石によって、地上が地獄のような惨状になるシミュレーションを示す。
……まぁ、彗星の一部が剥がれ落ちるくらいに接近したら、彗星自体も地球の引力にひかれて落ちてくると思うんですけどね。
竜「しまった、博士と沙織ちゃんが危ない!」
その椎名博士、ジャシンカから逃げ出して懐かしの我が家の門をくぐると、すぐに愛娘の沙織が「パパーっ!」と言って抱きついてくる。

沙織「帰ってきてくれたのね!」
椎名「そうだよ、沙織、パパ、もう何処にも行かないからね」
沙織「パパーっ!」
椎名「沙織ーっ!」
娘の体をしっかりと抱き寄せる椎名博士だったが、
沙織「寂しかったわ、沙織」 急に、沙織の声が、おっさんの声になり、目付きも悪くなる。
そう、キツネシンカの声は、毎度お馴染み、依田英助さん。

参考までに……
「宇宙刑事シャイダー」第5話より 椎名「違う、沙織じゃない」
沙織「ふふふふふふふ」

沙織「コーン!」
キツネ的ポーズを取って、一声鳴くと、

たちまちキツネシンカの姿に変わる。

その少し後、竜たちが椎名博士の自宅へやってくるが、門の後ろに警官が立っていて、彼らを追い返そうとする。
警官「椎名博士の依頼で警戒態勢に入っている。中には入れられん、帰れ」
竜「い、いや、あの、博士があのー」
警官「貴様ら本官の言うことが聞けんのか」
竜「仕方がない……」
だが、諦めたふりをしてあっさり引き揚げると見せて相手を油断させ、
竜「おまわりさん、これあげる!」
と、いきなり油揚げを警官の顔の前に突き出す。

と、警官は「あ、油揚げ、ああ、油揚げ、むにゃむにゃ」と我を忘れてその油揚げに噛り付く。
そう、その警官も、キツネの化身だけに油揚げに滅法弱いキツネシンカの化けたものだったのだ。
……しかし、この顔は子供向け特撮番組ではNGだろう。
ちなみに、つるピカハゲ丸君ライクな警官を演じているのは徳田雅之さん。
そう、皆さんご存知、

「スカイライダー」38話で、スカイライダーの人形をトンカチで殴ろうとしてよけられたハゲ丸君を演じていた人ですね(知るか)。
キツネシンカは近くの公園の森の中へ逃げ込む。
当然、得意の変身術を駆使して、ダイナマンたちを翻弄する展開となる。

まず、耕作がキツネシンカを見付けて飛び掛かると、いつの間にかそれが気色の悪いオカマみたいな人に変わっていた。
オカマ「お父ちゃ~ん!」
耕作「あら、おや、おや、やや……」
びっくりして思わず尻餅をつく耕作。
若い人にはさっぱり意味不明だと思うが、これは大屋政子さんのつもりなのだろう。
続いて、洋介がキツネシンカを見付けて、殴りかかろうとするが、

一瞬で夢野博士の姿に変わる。
夢野「あ、島くん」
洋介「あ、博士」
洋介、相手がニセモノだと分かっていても、反射的に畏まってしまう。

洋介「すんません!」
夢野「ハーッ!」
拳に息を吐いてから、お辞儀をした洋介の後頭部に思いっきり振り下ろすのだった。
どうでもいいけど、なんで殴る前に拳骨に息を吐きかけるのだろう?
そして最後は竜と擦れ違い、

「ゴーグルファイブ」の時と同じく、キツネシンカは竜自身に化ける。
ここから、名人芸の編集と、春田さんとそのダブル(JACの人)の優れた身体能力による、超絶的な分身演出が展開される。
ニセ竜「星川君、まぁ、頑張りたまえ」

ニセ竜が立ちすくむ竜の肩を叩いて擦れ違うが、この瞬間にフィルムが切り替わり、

叩かれた方が振り返ると、そちらも春田さんになっていると言う趣向。
この程度ならまだ簡単だが、

ニセ竜「お前こそニセモノだろう、てやーっ」

ニセ竜(春田)の蹴りを、竜のダブルがバク転しながらかわし、

二本目の蹴りを避けながら、奥へ移動する。
ここでフィルムが切り替わり、

その竜が、いつの間にか春田さんに変わっている。
まぁ、こういうのはキャブを並べて説明してもあまり伝わらないなぁ。

極めつけは、春田さんのニセ竜のパンチを腹に受けた竜(ダブル)が、

一瞬で春田さんに変わって、苦痛に顔を歪め、

竜「いてえなぁ、このっ」
竜がニセ竜を殴り返した瞬間、そのニセ竜も春田さんになっていて、

さらにそのニセ竜に殴り飛ばされた竜がカメラを向いた瞬間、またまた春田さんになり、おまけにその後にもう一度切り替えがあると言う、書いてる自分も途中でどっちが本物でどっちがニセモノだか、訳が分からなくなるほど複雑な、このシーンであろう。
つまり、一連のアクションの中で4回もフィルムが変わっているのだ。
めちゃくちゃ大変な撮影だったろうなぁ……。
疲れたので先を急ごう。
結局キツネシンカに逃げられた竜たちは、宇宙科学センターの前で見張りをしている北斗とレイに合流する。
北斗「椎名博士と沙織ちゃんはこの中にいる筈だ」
レイ「でも、警戒が厳重だわ」
竜「拙者に良い考えがある。忍法分身の術」
ご苦労なことに、ここでまた竜が二人になってしまうのである。

竜&分身「俺に任せろ」
これは合成だと思うが……ひょっとして、鏡?

竜「分身、行くぞ」
分身(ダブル)の肩を叩いて走り出す竜(春田)、

ここでフィルムが変わり、「あいよ」と、答えて振り向いた分身も、春田さんになっている。
分身が施設内に入り込み、キメラたちを引き摺り回しているうちに、本物が椎名博士と沙織、椎名夫人を助け出す。
行きがけの駄賃にと、竜は、見事な分身撮影のせいで影が薄かった彗星誘導装置も破壊する。
分身に気付いたキメラたちは、ひとりで逃げていく椎名博士を見付け、全員で追いかける。

が、戦闘員に囲まれて椎名博士は意外な強さを発揮して、戦闘員たちを投げ飛ばす。
そう、

キツネシンカのお株を奪う、竜の見事な変装だったのだ。
後は、5人とキツネシンカの戦いとなり、事件解決となる。

なお、戦いの中、キツネシンカがイエローに化けて攪乱しようとするシーンがある。
他の4人は「どっちが本物だ?」と戸惑うのだが、
背の高さが明らかに違うことには、あえて気付かないふりをするのだった。
結局、今回は、分身合戦に紛れて、肝心のX13彗星の話がどっかに行っちゃったような、いびつなストーリーとなってしまった。

あ、最後にキメラの画像でも貼っておこう。
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