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「男はつらいよ」レビュー 第16作「葛飾立志篇」(1975年)その2



 続きです。

 寅は差し向かいで礼子から勉強を教えてもらうことになるが、礼子先生、「弥生時代」だとか「魏志倭人伝」だとか「大和朝廷」だとか、普通の人でもちょっと眠くなるようなテーマをぶっこんでくるものだから、寅は初手からやる気も興味もない。ノートにイタズラ書きしたり、さくらさんが様子を見に行きついでに出したケーキにかぶりつくあたりは、まるっきり小学生である。

 勉強が終わって下に降りてくる時の寅のいかにもせいせいした顔、礼子さんに失礼だと思うが、礼子さんは善意のカタマリでできているのか、常に笑顔を絶やさない。

 後は寅が振られるだけなのだが、今回はいつもとやや趣が違う。

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 ある日、とらやに汚いなりをした五十男(小林桂樹)がやってくる。

 ここでの会話にも、ちょっとした行き違いで話がどんどんずれていくテクニックが上手く使われている。

 店先に立つ男に寅が投げる「今時珍しい格好してるじゃねえか、シベリアからの引き揚げ者か?」と言う台詞も可笑しい。

 筧(礼子)から寅のことを聞いたと男は言うが、寅はカケイなどと言われてもピンと来ない。

 男「僕の弟子なんだけどね」
 寅「ああ、植木屋さん?」
 男「いや、植木屋じゃない」
 寅「じゃあ何やってんの、洋服泥だらけにして」
 男「これは土をほじくり返したりするもんでね」
 男は、礼子の師で、考古学の教授なのだが、曖昧に説明するものだから、寅はてっきりドカタのような労働者だと思い込む。

 寅「楽じゃないだろ、その年で」
 男「うーん、楽じゃないけどね」
 寅「身寄りはないのかい?」
 男「うん、身寄りはない」

 そこへさくらが店を手伝いに来る。

 さくら「誰?」
 寅「うん、ひとりもんでな、身寄りがなくって道路工事やってるんだって」
 おばちゃん「かわいそうに」
 寅「おじさん、あんた腹空いてんじゃないのか」
 男「うーん、まあ、空いて……」
 寅「そうだろう! おばちゃん、ちょっとなんか作って食わせてやれや」
 おばちゃん「冷たいご飯しかないけど」
 寅「何でもいい、何でもいい」

 いつの間にか、メシをたかりに来たような感じにされてしまい、大弱りの教授。そこへやっと礼子さんが来て、誤解が解ける。

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 男は田所といい、礼子が言うには知らないことはないと言う偉い学者だとか。そこで、寅が「屁」のことは英語でなんと言うか? と、いかにも寅らしい質問をするが、田所がたちどころに答え、さらに様々な言語での「屁」について一気呵成にまくしたてるのは、有名な(?)シーンである。

 まだ独身である理由について、田所が「男と女の愛の問題は実に難しくて、まだ研究し尽くしていないから」だと大真面目に説明する。それに対し、寅はいともあっさり答えを出す。

 寅「あー、いい女だなぁ、と思う。その次には話がしたいなぁと思う。その次にはもうちょっと長くそばにいたいなぁ、と思う。そのうちこう、何か気分がやわらかぁくなってさぁ、ああもう、この人を幸せにしたいなぁと思う。もうこの人の為だったら命なんか要らない、死んじゃってもいい、そう思うだろう? それが愛ってもんじゃないかい?」

 寅の見事な説明に、田所も「なるほどねぇ」と唸り、「君は僕の師だ!」と叫ぶのだった。

 その後、田所たち大学の研究者たちと、博たち労働者チームが草野球に興じる。

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 無論、こんな場合、寅は試合に参加したりはしない。ベンチから野次を飛ばすだけ。

 ヘルメットをかぶったさくらさんが可愛いのじゃい。

 寅「なぁさくら、正月早々よ、寒い風に吹かれて商売するのも楽じゃねえからなぁ」
 さくら「だから?」
 寅「今年はいっそのこと、とらやで店の手伝いでもしてるか!」
 シリーズ中でも、寅がこうやってはっきり正月を家族と一緒に過ごそうと言う意志を示すのは、ここだけじゃないかなぁ? どうしても正月はテキヤにとっては稼ぎ時と言うことで、正月はいつも寅は旅先なのだ。

 さくら「そうしなさいよお兄ちゃん、その方がいいわ」
 さくらも熱心に賛成する。

 ちなみにこの画像、右端に「谷よしの」さんが映り込み、奇跡のスリーショットとなっている。

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 「フレー、フレー」と、チアリーダーのように大きく腕を振って元気に応援するさくらさんでした。

 試合後の打ち上げでべろんべろんに酔った田所、礼子に家まで送ってもらうが、その際、以前から秘めていたラブレター、と言うより、古風に恋文と呼んだ方がふさわしい、格調の高い手紙を押し付けるように渡す。

 その手紙を読み、恋と学問の狭間で悩む礼子さん。

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 そんなこととは露知らず、寅、大学生になりすましてバイをしている。

 寅「大都会の片隅にコツコツと勉学に勤しむ私たち苦学生にとりまして、片時も忘れられないのが故郷でございます……」
 と、嘘八百並べて、ノートみたいなものを売っている。

 そこへ同じく学生に化けた源がサクラとしてやってくる。

 寅「あ、学生さん、どちらですか」
 源「東大法学部です」
 寅「そう、法学部? じゃあ同志だ! 大いに頑張ろう……あ、200円です。ありがとうございました……」

 とにかく今回、いちいち細かいギャグが冴え渡っている。

 礼子さん、田所の手紙のことで思い煩い、寅の家庭教師も休んでしまう。寅は、風邪だろうと、滋養のあるものを買って見舞うが、礼子はそこで求婚されたと打ち明ける。田所の名前は出さなかったが。

 せっかちな寅は、それを聞いた直後、礼子が結婚するものと早合点して家を出る準備を始める。さくらは残念がって引き止めるが、寅はさっさと行ってしまう。
 
 しかし、考えた末、礼子は電話で田所に求婚を断る。そう、今回は珍しく、マドンナが誰ともくっつかずに終わるパターンだったのだ。それを聞いたさくらは慌てて寅を追うが、寅は一足違いで電車に乗って行ってしまった。

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 米倉斉加年の巡査と源ちゃんが見送りをしていたのだが、その後、源ちゃんとさくらがちょっと顔を見合わせ、源が「あの、行きまひょか」と言い、ふたりで並んで雑踏の中を歩き出す、なんてことはないシーンだけど、好きなシーンである。

 さくらにしてみれば、恋愛問題は別にしても、折角寅と正月一緒に過ごせる筈だったのにと、いかにも残念なのだった。

 そして正月。礼子さんはそのままとらやにいる。考えたら、登場してから最後まで、ずーっととらやにいるマドンナと言うのも、彼女だけじゃないかな? 他にいたっけ?

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 で、何故か、寅、旅先で田所と出会って行動を共にしていた。

 最後に寅が恋のライバルと一緒にいると言うパターンも珍しいと思う。

 寅「もうちょっとゆっくり歩けよ、先を急ぐ旅じゃねんだからさぁ」
 田所「少し体の鍛えようが足りんのじゃないのか? 僕より10も若いんだろう?」

 寅は田所の失恋話を持ち出すが、その相手が礼子だとは知らない様子。二人仲良く連絡船に乗り、富士山へ向けて出発するところで幕。

 ●評価

 リリーの登場する15作と一部で最高傑作と評される17作の間に埋もれがちだが、キャストもシナリオも演出も完璧に近い佳作。特に台詞による細かいギャグの充実ぶりは、シリーズ随一ではないだろうか。

 ★★★★★(5点/5点中)


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コメント

寅さんと(恋の)ライバルが一緒に歩くのも偶然ですかね?最後のシーンは爆笑必至ですね😁

Re: タイトルなし

いやー、お恥ずかしいレビューで面目ないです。

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zura1980

Author:zura1980
70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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