第44話「タンスの中は海!」(1988年8月14日)
見る前から萎えそうなサブタイトルだが、続編RXの「ブタになったRX」よりはマシか。
画一的な建物が並ぶ、ある住宅地ののどかな休日のひととき、黄色のTシャツ、白い靴下、紺の半ズボンから伸びるなまっちろい太腿と言う、最近ではあまりお目にかかれない典型的な小学生が自分の部屋で、説明書と首っ引きでラジコンカーを組み立てている。
無事完成し、早速試運転を行おうとするが、リモコンを操作しても思うようにラジコンカーが動いてくれない。あれこれとリモコンのレバーをいじっていると、部屋の洋服ダンスの扉の隙間から青白い光が溢れてきて、しかも中から異様な物音が聞こえ始める。
恐る恐るタンスに近付いた少年、思い切って扉を開けた瞬間、凄まじい力でタンスの中へ引き摺り込まれる……。

同じ頃、どこかの研究施設では、白衣を着た男たちが予期せぬ事態に右往左往していた。

そこへイライラした様子で入ってきたのがバラオムおじさんだったので、この施設がゴルゴムの息のかかった施設であることがすぐ分かる。
バラオム「どうしたというのだ」
研究員「ワープ装置が、コンピューターのポイントが狂ってます!」
バラオム「なにぃ」
真面目そうな研究員が、
猫のお化けと普通に会話しながら仕事してる図って、なんか和むわぁ。
と、「スターゲイト」っぽい次元の入り口から、強烈な閃光が爆発し、

眩しさに思わず辺りが目を覆った瞬間、彼らの背後にあの少年がパッと落ちてくる。
要するに、あのタンスと、このワープ装置の入り口が繋がってしまったのだ。
バラオム「何者だ、何故ここへ? 捕まえろ!」
研究員「ふぁいっ!」
頼もしく応じて一斉に少年に飛び掛かる良い大人たちであったが、

案の定、なかなか半ズボン少年を捕まえられないのだった。チーン。
猫とかだったら分かるんだけど、さすがにわざらしくないか、これ?
突然ですが、ここで「悪の組織」の法則・番外編です!
●悪の組織の戦闘員は、大人を捕まえるのは得意だが、子供を捕まえるのは苦手である。 とにかく、半ズボンは彼らの手を潜り抜けてドアの向こうへ逃げ、

そのドアのノブを握って開けられないよう抵抗する。
で、これが実際になかなか開かないのである。
……
大人数人がかりなのに、子供ひとりの力に勝てないのである。チーン。
バラオムがやっとその剛力でドアを引っ剥がし、半ズボンを捕まえようとするが、少年は、今度は無数に枝分かれしているトンネルのような通路の中に迷い込み、闇雲に走り出す。

それを追いかけるバラオム目線の映像と、

少年目線のバラオムの映像をカットバックしているのだが、少年の死に物狂いの喘ぎ声と、ハーッハーッと言うバラオムの息遣いが絶妙のスパイスになって、大人の目で見ても、ここはかなり怖いシーンになっている。

特に、やっと見つけたドアがどうしても開かず、そこにとどまっているうちに、

少年「開けてー、開けてー!」
バラオム「ぶわーっ、ぶわーっ!」
みるみるバラオムが距離を詰めて、その生臭い息が首筋にかかるほどに近付く……と言うくだりは、下手なホラー映画より、よっぽど恐ろしい。

それと、これはあくまで偶然だろうが、疾走するバラオムの影が、トンネルの丸い壁に映ると、まるで本物のネコ科動物のようなしなやかなシルエットに見えるのも、実に見栄えが良い。
で、偶然にも程があるのだが、たまたまその家の近くをバイクで徘徊していた光太郎の鋭敏な聴覚が、少年の助けを求める声をキャッチする。
光太郎、その発生源である少年の部屋まで一気に上がり込む。
普通だったら、40がらみの銀縁メガネの親父が出てきて、
父親「なんだね、君は?」
光太郎「いえ、悲鳴が聞こえたものですから……」
父親「何を訳の分からないことを言ってるんだね」
光太郎「とにかく、上がらせて貰います」
父親「あっ、何をするんだ、やめろ、警察を呼ぶぞ!」
母親「あ、あなた、どうしたんです?」
父親「母さん、すぐ警察に電話だ!」
そして、夕方のニュース。
アナウンサー「本日、○○町の民家に無断で上がり込もうとした男が、駆けつけた警官に現行犯逮捕されました。男は住所不定無職の南光太郎で、警察の調べに対し『僕は悪くない、全部ゴルゴムの仕業なんだーっ!』などと意味不明の供述を繰り返しており……」
なんてことになるんだろうけどね(長えよ)。
まぁ、恐らく、家族は出掛けていて家には少年しかいなかったのだろう。

結局、光太郎がタンスの扉を開けた為、間一髪、半ズボンはバラオムの爪牙を逃れて、自分の部屋へ戻ることが出来た。
少年「助けて、お化けが! タンスの中に……」
光太郎「お化け?」

ぶるぶる震える少年に抱きつかれながら、光太郎は半信半疑でタンスの中を覗き込む。だが、
光太郎「何もないじゃないか」
少年「ああー、ここがトンネルになって恐ろしい化け物が……」
光太郎「夢でも見たんじゃないか?」
何度もゴルゴムの企みを暴いてきた光太郎も、さすがにそんな突拍子もない出来事までゴルゴムと結び付けることが出来ず、独創性のない言葉を口にして、そのまま立ち去るのだった。

そのゴルゴム神殿では、バラオムが何らかの妨害電波によってワープ装置がトラブルを起こしたとシャドームーンに報告していた。
シャドームーン「東京水没作戦はしばらく延期する」
それを受けて、咄嗟にそう判断を下すシャドームーン、いかにも慎重かつ冷静な司令官と言う印象である。
シャドームーン「驕り高ぶった人間どもは地下にまで手を広げ、東京の地下は網の目のように掘り抜かれている。その地下道にワープ装置によって東京湾の水を一気に送り込む」
ビシュム「凄まじい水の流れは道路やビルの下をえぐり、地盤を流し去ります。都市は大地の支えをなくし、道路は沈み、ビルは倒れ、やがて海の底へと消え去ることでしょう」
シャドームーン「バラオム、妨害電波の正体を突き止め、破壊せよ。その後直ちに東京水没作戦を実行する」
シャドームーン、さりげなく視聴者に今回の作戦の概要を説明しつつ、バラオムに命令する。
だとすれば、少年のリモコンが発見され、壊されない限り、ワープ装置は稼動されない筈なのだが、それに続いてワープ装置による現象が出てくるのは、ちょっと首を傾げてしまう。
バラオムが命令に背いて勝手にワープ装置を動かすとも思えないし……。
あるいは、さきほどワープ装置が起こした空間の歪みが、装置が停止した後も、玉突き的に別の場所に異常現象を巻き起こしているのだろうか?
具体的には……、

とある住宅の庭にある小さなプールで、父親と、兄妹らしい若い男女がたわむれている
妹「今度はお兄ちゃんの番!」
兄「ようし!」
いかにもひょろっとした兄が、妹が出た後にプールに飛び込む。

楽しそうに泳いでいる兄を、芝生の上のビーチマットの上から眺める妹。
一応、これ、金持ちの家と言う設定なんだろうが、その割に芝生が手入れされてなくて、全体的に寒々しい雰囲気が漂っている。
と、妹が泳いでいる兄に向かってビーチボールを投げ込むが、ボールは硬いものにでも当たったように、空へ跳ね上がる。驚いて妹が覗き込むと、兄の姿も、プールの水も忽然と消えているではないか。

妹「パパ、パパ、お兄ちゃんがいない!」
父親「おお、水がない!」
前屈みになった妹の、ささやかな胸の谷間が眩しいですねえ。
今回はちょっと嬉しいことに、

続いてこんな映像が出てくる。

そんな彼らの前に、大量の水と共に海水パンツ一丁の兄が落ちてくる。
女の子「キャーッ! あなただれー?」
兄「ここは何処ーっ?」
ほんと、何処でエアロビやってんだか……。
異変は一箇所にとどまらず、続いて、オフィスビルのエレベーターにサラリーマンやOLが乗り込んでいる。

左「どうだい、スキューバとかは?」
右「いやー、忙しくて海にも行けないっすよ~」
絵に描いたような三文芝居と言うのは、こういうのを指す。 
ところが、エレベーターが止まって、扉が開いたその先は……海だった!
これ、どうやって撮影しているのか分からないが、かなりのインパクトがあるよね。
この番組の偉大なところは、それを見た社員たちが「わーっ!」と驚きの声を上げるだけで終わらせず、

ちゃんとサラリーマンやOLを、そのまま海へ突き落としている(註・突いてません)ところである。
ちなみにこの右側のタイトスカートの張りがナイスなOLは女性スタントだと思うが、

続いて飛び込むピンクのスカートのOLは、明らかに男性なのがちょっと悲しい。

被害に遭った人たちのインタビューをテレビで見ている光太郎たち。
杏子「そんなことってあるのかしら」
克美「うん、ワープ空間ならね」
杏子ちゃんの問い掛けに、こともなげに答える克美さん。
光太郎「ワープ?」
克美「空間を歪めるのよ。離れた場所でも空間を歪めればくっつけることが出来るわ」
杏子「SF映画に出てくるあれね」
克美「うん、そうそう! うふふふっ」
暢気にキャピキャピした笑い声を上げる女子たちだったが、光太郎はひとり真剣な顔付きになる。
光太郎「離れた場所をくっつける……ハッ、タンスの中に怪人が……」
光太郎、もしかして半ズボンの話したことは事実だったのではと、急に気になり、再び少年の自宅へ向かう。
シャドームーンの婚約者である克美さんの何気ない一言が、ゴルゴムの作戦を打ち砕くきっかけになるとは皮肉である……。

その頃、少年があのラジコンカーで遊んでいると、その電波を探知してタンスの中からバラオムが飛び出してくる。
今回も、間一髪のところで光太郎が助けにやってくる。
光太郎「イサオ君、逃げろ!」(おっ、そう言う名前だったのか)
光太郎、イサオを避難させてから、BLACKに変身する。
家の外へ出て激しく戦う二人であったが、ここでとんでもないハプニングが発生する。

BLACKの首に巨大な牙を突き立てようと密着したバラオムのけがれのない唇と、BLACKの唇(あるの?)がランデブーしてしまったのである!
バラオム「シャドームーン様、奴はとんでもないものを盗んでいきました。私のファーストキスです」 嘘はさておき、ダロムとビシュムも戦列に加わり、遂にイサオのリモコンが壊されてしまう。それを見て、バラオムはワープ装置の本格的な稼動を命じる。
BLACKはイサオと共に次元のひずみに巻き込まれ、離れ離れになってしまう。
そして次の瞬間、車の行き交う繁華街の道路の真ん中に、光太郎の姿になって出現する。

さすがに戸惑って、周囲を見回す光太郎。
と、すぐ近くの歩道をイサオが歩いている。イサオを追いかけて雑居ビルの中へ入るが、

入った瞬間、今度は車から草原の上へ飛び出すと言う奇天烈ぶり。
さらに、沼に足を取られて助けを求めるイサオに近付くと、

沼から、銭湯の湯船(何故か子供しかいない)に飛ばされてしまう。
光太郎(どうせなら女湯に転送して欲しかった……) 子供「あ、洋服! 洋服!」
光太郎「違うんだ! 僕はただの変態とは一味違うんだ!」
色々あって、最後は東京湾へ飛ばされる。

ダロム「ワープ装置の本当の威力を見せてやろう。東京水没作戦開始!」
ダロムの指示を受け、ワープ装置の前にいるバラオムがスイッチを入れる。
バラオム「後5分、東京は水の底に沈む……ふふふふ」
なんかオチが見えるんですけど……。
光太郎、もう一度BLACKに変身し、ダロム、ビシュムを相手に戦う。
BLACK、いつものようにロードセクターを呼ぶが、ロードセクターはBLACKの前で横転し、走行不能となってしまう。
ビシュム「ロードセクターを呼び、そのRSコンピューターを使ってワープ装置の位置を割り出す……そのくらいお見通しよ」
ダロム「ふふふ、あらかじめ電磁バリアを張り、待ち受けていたのだ」

二大怪人のパワーに苦戦の上、ロードセクターも使えなくなったBLACK、八方塞の状態に陥るが、
BLACK「何とかワープ装置を破壊しなければ……もう時間がない」
BLACK、RSコンピューターで妨害電波を発生させてワープ装置のコンピューターに送り込み、ぎりぎりで装置を止めることに成功する。

BLACK「プラズマジェット!」
さらに、排気ガスを二人に浴びせてひるませ、その隙に捕まっていたイサオを助け出す。
その後、ワープ装置も破壊して、東京水没作戦は未然に防がれたのである。
ちなみに今回は、新しい怪人が一体も出てこない節約型のエピソードでした。
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