「宇宙刑事シャイダー」(1984年7月14日公開)
今回紹介するのは、「東映まんがまつり」の一篇として劇場公開された作品である。
勿論、本編のブローアップではなく、完全新作だ。
OPは、テレビ版とほぼ同じだが、EDがないため、キャスト・スタッフがすべてOP内で表示されている。

OP後、東京のオフィス街に、何の説明もなく登場するのが今回のゲストキャラ、オメガである。
スーツアクターは高橋利道さんで、ボイスは渡部猛さんと言う、最強の組み合わせ。

放送局のような建物の屋上からじっと路上を見詰めていたオメガは、いつものようにジムニーでパトロール中の大を目にするや、腕に仕組んだショットガンをぶっ放す。
それをかわして、建物の陰から敵の様子を窺う大。
屋上に人影を認めると、一気にビルの非常階段を駆け上る。オメガはまだ屋上に残っていて、大に襲い掛かってくる。

二人は同時に屋上から飛び降りるが、大は空中で「焼結!」して、屋上へジャンプする。
これは、ビルの上から飛び降りた映像を逆回転させているのだ。
しかし、こんなオフィス街のど真ん中での飛び降りって、ちょっと他では見たことないなぁ。
オメガの方は、路肩に止めていた左ハンドルの赤いスポーツカー(恥ずかしながら車種不明)に乗って、猛スピードで走り出す。シャイダーも、すかさずブルホークを呼んで、追跡する。

そのチェイスシーンを、空撮でとらえているのが、いかにも劇場版と言う感じでリッチな気分になれる。

おまけにテレビ版では考えられないほど時間をかけてたっぷりと見せてくれる。
それにブルホークがこれだけ長い距離の公道を走るのは、全話を通してもここだけではないか?
車には興味のない管理人ですら、この一連のチェイスシーンには見惚れてしまったほどだ。
やっぱり、ブルホークはデザインが良いんだよね。宇宙刑事シリーズの中では一番だろう。

オメガの車には、ボンドカーのように煙幕やらミサイルやらがついていて、随時追跡者を妨害するものの、ブルホークはそんな攻撃など物ともせず、遂に採石場に追い詰める。
が、シャイダーが車に近付くと、既にオメガの姿はなく、時限爆弾がお土産として残されていた。

激しい爆発を間一髪かわすシャイダー。

オメガ「さすがは宇宙刑事、見事だ」
シャイダー「フーマか?」
オメガ「オメガだ! 宇宙刑事シャイダーを倒した男として銀河じゅうに響き渡る名だ。明日正午、○○の荒野で待つ!」
オメガは一方的に言い渡すと、マントを翻して走り去る。
そのやりとりを、ギャル4と5が、物陰から観察していた。
二人は不思議宮殿に戻って報告する。

ヘスラー「なに、オメガがやってきた?」
ギャル4・5「はい」
ギャル1「オメガ、銀河の無法者、滅法腕の立つ男とか……」
クビライ「シャイダーに真剣勝負を挑むとはなかなか頼もしい男だ」
誇り高き武人としてヘスラーは自分たちの手でシャイダーを倒すべきだと主張するが、

ポー「オメガがシャイダーを倒せばそれでよし、大事な不思議獣を傷つけずに済みます」
クビライ「ポーの言うとおりだ、ここはひとつ、様子を見るのだ」
自分の意見が容れられ、ワイドな画面でいつも以上に男前のポーが微笑む。

一方、ヘスラーはクビライの前から退出すると、ギャルたちと緊急ミーティングを開く。
ヘスラー「地球までやって来て挑戦するとは相当に自信があってのことだ」
ギャル3「シャイダーに勝つ可能性は」
ヘスラー「大いにありうる」

ヘスラー「そうなった時、行動隊長としてのワシの立場はどうなる?」
ギャル1「フーマが倒せなかったシャイダーを」
ギャル4「オメガが倒した」
ギャル2「それもたったひとりで」
ギャル3「噂は銀河中に広がり」
ギャル1「我がフーマの面目は丸潰れになりましょう」
ギャル5(あ~ん、次は私の番だったのにぃ) 普段はクビライやポーの命令に背反することはまずないヘスラーだったが、オメガに先んじてシャイダーを倒そうと独自に動き出す。
バビロスでは、アニーがオメガについての情報を検索していた。

アニー「オメガ、銀河を荒らしまわっている無法者よ。過去に5回も脱獄に成功してるわ」
え? と言うことは、5回も銀河連邦警察に逮捕されたことがあるってことだよね。
強いんだか弱いんだか……。

その頃オメガは、明日の戦いに備えて、過去の己の戦いについて思いを巡らせていた。
オメガ「俺はギャバンに負けた……」

オメガ「あれは銀河のイオン星で戦った時だ。あの時はこのショットガンがなかった」
オメガ、実は過去に他の宇宙刑事たちと戦っていたことが分かる。

オメガ「おまけにシャリバンにまでイガ星で戦って負けた……その時はこのロケット弾を装備していなかった」
オメガは戦いに敗れるたびに、自身の体に新たな武器を埋め込んでパワーアップを繰り返し来たらしい。
それにしても、イガ星で戦ったと言っているが、シャリバンたちによってもうイガ星は再興してしまったのだろうか? いくらなんでも早過ぎる気もするが……。
オメガ「しかし、今度は勝つ。そしてフーマの最高幹部になって見せる」
オメガ、純粋にシャイダーと戦いたいと言う訳ではなく、それによって名を高め、フーマの幹部になることが目的だった。
これも、なんかカッコ悪いよねえ。その割に、あとでフーマの作戦を妨害しているのだから、行動に一貫性が見られない印象を受ける。正直、このオメガの就活設定は要らなかったんじゃないかと思う。
それはともかく、今日もひとりでUFO探しに奔走している社会不適応者の小次郎さんは、渓谷で、幼稚園児たちが遠足に来ているのにでくわす。ちょうど弁当を食べようとしているところだった。

小次郎「わぁー、美味しそうだなや、はは、おじさんにもくんないかなぁ」
今だったら先生がマッハで通報しているところだが、幸い、当時はケータイ電話などというものはなかったので、小次郎さんは逮捕されずに済む。

小次郎さんがおねだりするが、子供たちは声を揃えて「だーめっ!」と応じる。

小次郎「しらねえっじゃ、しらねっじゃっ! もーっ、いじわるっ!」
悔しさのあまり、身も世もなくその場で地団駄を踏む小次郎さん。
以前から「小次郎さんの精神年齢は幼稚園児並み」と言う説を唱えている管理人であったが、それを証明しているようなシーンである。

それを見て先生は「あっはっはっ」と朗らかな笑い声を立てるのだが、それを演じているのが、80年代特撮アイドルのひとり、里見和香さんなのだった。
もっとも、あまり出番はない。
と、彼らの周囲で誰もいないのに「不思議ソング」が聞こえてくる。

子供たちは怖がって一斉に先生にしがみつくのだが、その無防備なジーパンのヒップを小次郎さんが見逃す筈もなく、どさくさ紛れに抱き付くのだった。

小次郎「先生、おっかねえーじゃー!」
ほんと、ケータイのない時代で良かったね……。
さらに、彼らの周囲に珍獣たちが現れては消え、消えては現れ、「不思議ソング」を歌う。

気がつくと、いつの間にか子供たちの姿だけが掻き消すように見えなくなっていた。
遠くから「先生、助けてー!」と声が聞こえる。みれば、送迎バスに乗せられた子供たちが何処かへ連れ去られようとしているところだった。

二人は急いで渓谷から車道へ上がるが、走ってバスに追いつける筈もない。
ちょうどそこへパトロール中のアニーが通りがかる。
先生「あっ、助けてください」
小次郎「事件ですよ、事件だぁーっ!」
確かこの時点ではまだ小次郎さんはアニーのことを正式に紹介されていないので、名前は口にしない。
アニーはすぐバスを追いかけて、トンネルの中へ進入するが、トンネルを抜けるといつの間にかオフィス街になっている。

そして、園児たちが逆向きに走りながら消えて行き、

かわりに、アラブの盗賊っぽい衣装の方たちが大挙してこちらに向かってくる。

アニーは彼らに追われて、ビルの屋上から突き出た細長い通路の端に追い詰められる。

彼らの投げる短剣をよけつつ、思い切ってそこから飛び降りるアニー。
劇場のスクリーンで見るパン チラ、さぞや眩しく輝いていたに違いない。

さらに、空中に張ってあるロープに掴まり、

ぶら下がってそのまま勢い良く滑空するという離れ業を演じる。

フィニッシュは、ローアングル(別名・セクハラアングル)からの大開脚!
……
いやー、アニーさん、人気者になる筈ですよね。
だって、ずーっとパンツ全開にしてアクションしてるんだもの。みつを。
パンツは別にしても、男でも尻込みそうなアクションを、尻を出しながらこなしてしまうのだから、ありとあらゆる賛辞を捧げたくなる。
その場は切り抜けたアニーだったが、結局待ち構えていたヘスラーたちに捕まってしまう。
大は、ヘスラーに「アニーを助けたかったら○○の石切り場へ来い」と言われ、その場所へ向かう。

小高い崖の上には青く透明なボックスがあって、その中にアニーが閉じ込められていた。

大が駆け寄ろうとすると、その左右にヘスラー、ギャル、ミラクラーたちが一斉に姿を見せる。
いかにも、ワイド画面を意識した並びだね。
ヘスラー「子供たちを人質に貰った。貴様が焼結すると同時に子供たちも爆発するという仕組みだ」
大「焼結!」(聞いてない)
ヘスラー「あ、ちょっと……」
子供たち「うぎゃーっ!」
じゃなくて、
大「卑怯な」
ヘスラー「焼結してみろ、女刑事もろとも吹き飛ばして見せる」

大は、生身のまま、ジープに乗ったさっきの連中に追い掛け回される。
しかし、子供たちを既に人質にしているのなら、別にアニーを生かしておく必要はないと思うんだけどね。
特に「シャイダー」では、宇宙刑事の相棒の戦闘能力もバカにならないから、さっさと殺してしまった方が絶対フーマの為だったろう。

続いて、1以外のギャルたちが四方からロープを投げて大の身動きを封じる。

ヘスラーの投げた剣で空中へ投げ出された大が、崖の途中から転がり落ちる。
合成じゃないんだけど、なんとなく合成しているように見える不思議な映像である。
全身傷だらけの大は、目も霞んできて、あとは死を待つばかりとなる。

ヘスラーがミラクラーたちにバズーカ砲を発射させようとしたその時、オメガが反対側から現れ、大を庇うように立ち塞がる。
オメガ「待てい、シャイダーは俺が倒す」
ヘスラー「何を抜かす、二人とも征伐!」
オメガは砲撃をかいくぐりながら、崖上にロケット砲を撃ち返す。
その衝撃で、ギャル1が、持っていた起爆装置を落としてしまう。

それを見た大は、いつになく色鮮やかな爆発の中で、「焼結」し、青い光の玉となって飛び上がり、地面に転がる起爆装置をビデオビームガンで撃ち砕いてから、アニーのそばへ着地する。

ボックスからアニーを助け出し、一緒に崖から飛び降りる。

そして、崖上のミラクラーたちをビデオビームガンでなぞるように撃って、

ミラクラーたちを一気に粉砕する。

しかも続けてビームが剣のように乱舞し、あちこちに火の手を上がるという大迫力のシーンとなっている。

なお、ミラクラー爆破シーンは別の角度からの映像も繰り返される。
さらに、さらに、いつもの名乗りを上げたあとで、

崖上からシャイダーがアニーに向かってレーザーセンサーガンを放り投げ、

それをアニーが見事キャッチするという神業的なアクションが繰り出される。
勿論、これはアニーがシャイダーに向かって投げているのを、逆回転しているのだ。

ヘスラー「征伐!」
本日二回目の「征伐!」を叫ぶヘスラー。
この並びも、テレビシリーズでは見たことのないものである。
で、

一斉に走り出す他のみんなに遅れないように、一生懸命走るギャル5が健気で可愛いのである!
シャイダーはミラクラーたちと、アニーはギャルたちとそれぞれ戦う。

久々に、(勇気を出して)直接敵と接触するギャル5であったが、

あっさり頭をどつかれてフェードアウト。
この、前屈みになって谷間が強調された胸元が良いですね。
続いてミラクラーたちが攻撃してくるが、

矢継ぎ早にビームを撃って、難なくそれらを撃退する。

シャイダー「アニー、子供たちは何処だ?」
アニー「それが分からないの。でもこの近くにきっと秘密基地が」
ここで、シャイダーとアニーがそれぞれメカに乗り込み、バンダイの回し者風に大暴れするいつもの戦闘シーンに移行する。

劇場版と言うことで(?)、ギャル5も至近距離で激しい爆発が起きると言うハードな撮影に挑んでいる。
シャイダーはその戦いの最中、バトルシャイアンで地下を掘り進み、幼稚園児たちが監禁されている秘密基地を発見、無事、彼らを救い出す。
フーマとの戦いが終わってから、いよいよ、オメガとシャイダーの一騎打ちとなる。

距離を置いて向かい合い、しばらく無言で対峙する両雄。

シャイダーの後ろの丘にはアニーが、オメガの背後にはヘスラーたちがそれぞれ立って、固唾を呑んで戦いの行方を見守っている。
やがてオメガが数歩前に出て、マントを投げ、それが地面に落ちた瞬間に戦いの火蓋が切って落とされる。

まずは、距離を置いたまま、ビデオビームガンとショットガンの撃ち合い。

続いて、オメガは、シャリバンに負けた後で取り付けたと言う両肩のロケット砲を撃つ。
遠距離での撃ち合いはほぼ互角。続いて接近戦に移る。

オメガは両手首に装着したトンファーのような剣を構え、シャイダーもレーザーブレードで応戦する。
オメガは確かに強く、レーザーブレードを剣で受け止めた上、シャイダーのコンバットスーツすら切り裂く。
その戦闘能力は少なくともヘスラーと互角か、それ以上と言えただろう。
しかし、善戦空しく、一瞬の隙を衝かれて必殺の「シャイダーブルーフラッシュ」を喰らってしまう。

元々オメガを仲間とは思っていないヘスラーたちは、オメガの死を見届けずにさっさと引き揚げてしまう。
フーマは、基本的に仲間内の結束は強いのだが、このように部外者に対して冷たすぎるのが組織としての特徴であり、欠陥と言えるかもしれない。
もっとも、クビライ自身は、オメガと言い、ヒムリー(ヘスラーの弟)と言い、実力さえあれば誰でも仲間に加えてやろうとする度量を持っているようだが。
オメガ、デザインも戦い方も何もかもがカッコイイのだが、
オメガ「フーマの幹部になれたものを……」 死に際の台詞は相当に情けないものがあった。チーン。

そして仰向けに倒れると同時に、大爆発を起こし、その破壊と戦いに明け暮れた人生に別れを告げる。
個人的にはとても好きなキャラで、テレビ版の準レギャラーになって欲しかったくらいだ。

最後は、今回も大活躍だったアニーちゃんの飛び切りの笑顔で締めましょう!
さてこの劇場版、アクションについては言うことないのだが、ドラマ要素がほとんどなかったのが残念である。折角、里見さんが出てるのにね。
それと、どうせなら、ギャル2が加納さんから大内さんに交替する前に撮って欲しかったな、と。
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