第45話「妖花ビシュムの死」(1988年8月21日)
三大怪人のひとり、ビシュムの最期の戦いを描くストーリー。
ビシュムがばら撒いた怪しい花粉を吸って、女性として、母親としての役割を放棄する人々が続出していた。

たとえば、園児たちに横断歩道を渡らせていた保母さんが、道の真ん中で急に立ち止まってボーっとなったり(そこへ光太郎が通り掛かる)、

腹を空かせて泣いている子供を放置して、ママ友たちとカラオケをする母親がいたり……

ダロム「人間の女たちが本来持っている子孫を残す能力、それを自ら放棄するものが激増している今こそ」
バラオム「我らがつけ込む絶好の機会」
ビシュム「更なる拍車をかけさせて、人間の女と言う女から、母性などと言う下らぬ感情を奪い去るという我らの作戦、順調に拡大、進行しております」
シャドームーン「人間の子孫の存続を絶つと言うことは、すなわち人間の腐りきった歴史そのものを絶つと言うことだ。なるほど、面白いところに目をつけたな。だが忘れるな、もはや怪人たちの力は不要、大怪人自ら戦略を展開するというお前たち自身の言葉を!」
三大怪人「ハーッ」
ビシュムの作戦を褒めつつ、一本釘を差すシャドームーンの言葉に三人は表情を引き締めるのだった。
そんなある日、光太郎たちがショッピングを楽しんでいると、街頭で何か化粧品のキャンペーンをやっているところで、三人の女子高生が商品を紙袋にドカドカ放り込んでいるのを目にする。

克美「杏子ちゃん、あの制服確か……」
杏子「うちの学校の生徒よ」
光太郎「とにかくやめさせなきゃ」

だが、三人が声をかけるより先に、同じ制服を着た女子高生が飛び出てきて「待ちなさい! 待ちなさいよ! あなたたち万引きしたでしょ!」と、鋭く問い詰める。
この、ちょっと菅野美穂を連想させる可愛らしい声……管理人には一発で分かったが、数ヶ月前に放送されていた「少女コマンドーいづみ」の祥子役の山本恵美子さんである。

その正義感溢れる少女は、三人の紙袋を奪い取ろうとするが、逆に突き飛ばされて石段の下に転げ落ちる。
光太郎「待て!」

光太郎の呼び声に平然と振り向いた三人は、前述の保母と同じ目をしていた。
光太郎(同じだ。あの時の目と……)
それにしてもみんな眉が太いなぁ。70年代と比べると3倍くらいになっている。

杏子「大丈夫? ……由美子?」

由美子「杏子ーっ!」
はい、こちらが管理人一押しの、山本恵美子さんのご尊顔です。当時、19歳くらいか。
実は、彼女がこの回にゲスト出演していることを知ったのはつい最近のことだった。無論、ずっと前から何度も見てる筈なのだが、その当時はまだ「少女コマンドー~」を見ておらず、山本さんのことも知らなかったので、全然意識に引っ掛からなかったらしいのだ。
しかし、いくら知らなくても、こんな可愛い女の子を見逃していたとは……我ながら不覚であった。切腹してお詫びしたい。ぐふっ。
で、まあ、同じ高校ならさほど珍しいことではないが、その由美子と言う女子高生は杏子ちゃんの友人だったのだ。由美子は転落した際に腕を負傷した為、病院に収容される。

由美子「そうだったの、お父さんが亡くなられたのは知っていたけど、お兄さんまで行方不明に……それで引っ越したのね。今何処の学校行ってるの、杏子?」
この際だからと、一別以来のあれやこれやをベッドで聞いた由美子が何気なく尋ねるが、現在は何処にも通学していない(?)杏子ちゃんは「それは……」と口ごもる。

杏子「それより、さっきの三人、どうしてあんなことを? とても信じられないわ。うちの学校の生徒たちがあんなことをするなんて」
克美「杏子ちゃんの学校って確か日本でも有数の女性を女性らしく育てるところで有名なところよね」
由美子「それが、まるで変わっちゃったんです。授業はボイコットするし、先生に対する礼儀や何もかも滅茶苦茶になっちゃって……」

由美子「みんな一週間前からなんです。あの永井先生が赴任してきた時から」
杏子「永井先生?」

由美子「クラブで生け花を教えてるの、さっきの三人もそのクラブの子たちよ」
……
さっきから同じような画像を貼りまくっているが、管理人は山本恵美子さんのファンであり、他にめぼしい出演作は知らないので、この機会を利用して思う存分彼女の画像を貼らせて頂きました。
もう思い残すことはありません。切腹して……え、もういい? 分かりました。
で、光太郎はその朝霧女子高が怪しいと睨み、すぐさまバイクを飛ばして向かう。
見咎めるものもなくすんなりと校舎には入れたが、中はがらんとして職員も生徒も誰一人いない。

光太郎「一体どうしたんだ、女生徒たちは?」
てっきり、むせかえるようなかぐわしい香りの女子高生たちの集団に突撃できると思っていたのに当てが外れて、
「これじゃあ話が違うじゃないか、金返せ!」と怒鳴りたくなる光太郎であったが、その時、何処からか定番中の定番「別れの曲」が聞こえてくる。

その音を辿っていくと、とある教室で永井先生と思われる若い女性がピアノを弾いていて、それを聞きながら数人の女生徒が花を生けていた。
光太郎「すいません、永井先生ですね。他の生徒たちは」
永井「今日はこの学校の創立記念日なんですの、この子たちだけ、特別授業なの」

永井「折角いらしたんです、この子たちの作品をご覧になってください」
光太郎「すいませんが、
そんな暇は……」
たっぷりあるんだけどね! 
だが、永井先生は不意に鋭い眼光を放って、光太郎の動きを封じる。
永井「いずれは嗅ぎ付けてくるだろうと思っていたわ、南光太郎! いいえ、仮面ライダーBLACK!」
光太郎「なにっ」
永井「聞かせてあげましょう、あなたの為の葬送行進曲を……」
言うまでもなく、それはビシュムの仮の姿であった。
言葉どおり、ピアノの前に座って「葬送~」を弾き始めると、百合の花から花粉が飛散して生徒たちの頭上に降ってくる。

すると生徒たちは誰かに操られているように一斉に立ち上がり、光太郎を取り囲んでその手足を押さえ付ける。
ドMの人にとっては至福のサービスタイムである。

ビシュム「キングストーンは貰った、仮面ライダー」
光太郎「ビシュム!」
ピアノの向こう側を歩きながら、本来の姿に変わるビシュム。
そして阿波踊りのような動きを見せつつ、光太郎に近付いてくる。
冷静に考えると、好井ひとみさんにとってはかなりの羞恥プレーだったのではないだろうか。
光太郎は何とか女子高生たちをふりほどき、BLACKに変身して窓から中庭へ飛び出す。ビシュムも翼を広げて追撃する。

ビシュムは得意の飛翔能力を駆使して攻撃をかわし、BLACKに決め手を与えない。
そして必殺「いつもより余計に回っております!」攻撃で、体を回転させて旋風を起し、BLACKを吹き飛ばす。

ビシュム「これで済んだと思うな、仮面ライダー、大怪人ビシュムの名誉にかけて必ずその首貰う!」
捨て台詞を残して、ビシュムは退却する。

神殿に戻ったビシュムは引き続き作戦の指揮を取らせて欲しいと嘆願する。
バラオム「己の失策を棚に上げて、お前一人で何が出来るというのだ」
ビシュム「バラオム、私はあなたに言っているのではありません、私はシャドームーン様にお願い申し上げているのです」
バラオム「な、なにぃ」
シャドームーン「ビシュム、策がありそうだな」
ビシュム「ございます、とっておきの策がひとつだけ」
シャドームーン「よし、任せよう、やってみろ!」
その策とは、克美と一緒に由美子の世話をしていた杏子ちゃんをさらい、人質にすることであった。
山本恵美子さんはそのシーンにチラッと顔は出すが、それ以降の出番はない。ちょっと残念だ。

バラオム「ビシュムの奴、シャドームーン様の妹を!」
ダロム「とっておきの策とはこれだったのか」
バラオム「ビシュムの奴、試しておるのだ。シャドームーン様の心のうちを」
ダロム「なにっ」
バラオム「ビシュムの思惑通り運べば、ゴルゴムの勝利は確実、あわよくばその時、シャドームーン様の妃(きさき)となるのも夢ではないやも知れん」
ダロム「考えたな、ビシュムめ」
ひそひそ話をする二人のおっちゃん。
しかし、「試しておる~」と、「妃となる~」の間が、いまひとつ繋がってないような気もする。
この場合は「試しておるのだ~シャドームーン様が悪に徹することが出来るかどうか」みたいな台詞の方が良かったんじゃないかと思う。
今までそんな素振りは一切見せなかったのに、ビシュムがシャドームーンのお嫁さんになろうとしている……と言うのはいささか唐突な展開だしね。しかも、女性の母性を剥ぎ取ろうと画策している最中だと言うのに。
もっとも、それはダロムの勝手な推測に過ぎず、ビシュムがそんなことを考えていたと言う証拠はない。
それに、その場合は杏子ちゃんより婚約者である克美さんを人質にしていただろう。

それはさておき、シャドームーンは二人の会話を聞いているのかいないのか、微動だにせず、ビシュムの戦いを見詰めていた。
その後、再び朝霧女子高へ出向いた光太郎は、ビシュムの仕掛けた罠に嵌まり、美しくも妖しい花々の咲き乱れる、異次元空間へ引き摺り込まれる。

嬉しいことに、そこにもあの女子高生軍団が登場。

山本さんほどじゃないけど、今回出てくる女子高生って全体的に整った顔立ちをしている。

と、空を切り裂いて紫色の鍔の短剣が飛んできて、光太郎の眼前の岩に突き刺さる。
ビシュム「拾いなさい、南光太郎、そして自らの腹を切り裂き、キングストーンを取り出しなさい」

声に続いて、杏子ちゃんの体を抱いたビシュムが降りてくる。
ビシュム「その短剣を拾いなさい、南光太郎、そしてキングストーンを渡すのです。拒否すればお前の代わりにこの娘が切り裂かれるのです」

杏子ちゃんを女生徒たちが押さえつけ、ナイフを突きつける。
ビシュム「さあどうする、南光太郎、いや、仮面ライダーBLACK!」
杏子「ダメ、ダメよ光太郎さん、あなたが死んだら、誰がみんなを助けるの? 誰が地球を守るの?」 そんな状況下で、ためらうことなく光太郎を叱咤する杏子ちゃん。
杏子ちゃんも特撮ヒロインとしての所作と心構えがすっかり板についたようである。
光太郎(でも、ほんとに見捨てたら絶対怒るんだろうなぁ……) じゃなくて、
光太郎(杏子ちゃん、君を見殺しにすることは出来ない!) 
思い詰めた表情でその剣を引き抜き、ビシュムに背中を向ける光太郎。
杏子「やめて……やめて……」
ここで、EDのインストが流れるのだが、その荘厳なメロディが実にこの悲愴感溢れるシーンにマッチしていて、思わず胸が熱くなってしまう。
もっとも、光太郎は最初から割腹するつもりなどなく、逆手に振り上げた短剣を素早くビシュムに向かって放り投げる。短剣はビシュムの肩に突き立ち、その隙に光太郎は杏子ちゃんを救い出す。

が、ビシュムも初めて見せる技……体を縦方向にぐるぐる回転させてエネルギー派を放出するという技を繰り出し、光太郎たちを吹き飛ばす。
女生徒たちも巻き添えを食って飛ばされ、気絶してしまう。
ここで光太郎がBLACKに変身し、ビシュムとの一騎打ちとなる。

BLACKの頭上を素早く旋回して翻弄しつつ、その背中にしがみつくビシュム。
ビシュム「今です、ダロム、バラオム、シャドームーン様、私の体ごと、こやつの命を!」
最初からそのつもりだったのか、ビシュムは自らの命を投げ捨てて、BLACKにとどめを刺すよう仲間に訴える。

思わぬ事態に声も出ない三人。
が、やがてシャドームーンは「ふんっ」と右手を突き上げ、赤い光の剣を放ち、一気に異次元空間に送り込む。これは、初登場時に地上にいるビルゲニアからサタンサーベルを奪った時と同様、神殿にいながらにして別の次元に干渉できるシャドームーンの特殊能力であろう。

しかし、BLACKは寸前でビシュムと体を入れ替え、剣はBLACKではなくビシュムの背中を貫く。
それでも、剣はそのままBLACKの体に届きそうであったが、

杏子「やめて、やめて、お兄ちゃん!」
それを見ていた杏子ちゃんが叫びながら飛び出し、

BLACKの体に抱き付く。
……しかし、これでは、BLACKがビシュムから離れるのを邪魔しているようにも見える。
BLACK「やめろ、離れるんだ、杏子ちゃん!」
杏子「仮面ライダー、あなたが死んだら私も!」

ここで突然、シャドームーンが右手を力なく下げてしまう。そのまま剣を押せば、杏子ちゃんまで殺してしまうことになるからである。
当然、光の剣はシャドームーンの手元に戻ってきて、BLACKは九死に一生を得る。
ビシュムが杏子ちゃんを人質に取ったことが、逆にビシュムの命懸けの作戦を阻止することになるとは皮肉である。そして、やはり、可愛い女子高生の放つ
「お兄ちゃん!」は最強クラスのマジックワードだと言うことか。

哀れなのはビシュムで、致命傷となった傷口から赤いガスのようなものを撒き散らしながら、苦しそうに身をくねらす。
ビシュム「何故です? どうしてとどめを? シャドームーン様!」 
悲痛な叫びを発した後、四散する花びらと共に、爆発・消滅する。
美しくも儚い、ビシュムの最期であった。
ビシュムの死と共にその空間も崩れ始める。BLACKと杏子ちゃんは正気に戻った生徒たちを連れて、その空間から急いで脱出する。

そして、そのまま校舎から走り出てくる生徒たち。
これを見てて思ったのだが、テレビで放送されている全国高校女子駅伝とかも、ユニフォームじゃなくてセーラー服を着て走ったら良いんじゃないかなぁ。記録は落ちるだろうが、視聴率は50パーセントくらい行くと思う。

ダロム「おうっ、ビシュムが……大怪人ビシュムが」
バラオム「死んだ」
一方、ゴルゴム神殿では、長く一緒に戦ってきた同志のあっけない死に、ダロムとバラオムが激しい衝撃を受け、その場に崩れ落ちていた。
シャドームーンは依然として無言であったが、その時、俄かに辺りが暗くなり、雷鳴が轟く。そしてまずダロム、バラオムの胸に稲妻が落ちてくる。
創世王様のお怒りでい。
トホホなのが、ビシュムの死を悼んでいた筈の二人が、たちまち「全部ビシュムが悪いんです~」と、責任を死んだビシュムに押し付けて言い逃れをしようとするところ。

と、今度はシャドームーンの体にも雷撃が加えられる。
シャドームーン「なるほど、すべての責任はこのシャドームーンにある。戦略の失敗もビシュムの死も、すべてはこのシャドームーンがブラックサンにとどめを刺さなかったため、そう言うのか創世王よ! 言われずともそんなことは分かっている! 私自身が良く分かっていることだ!」
シャドームーンがこれほど感情的な、人間臭い台詞を放つのは無論初めてのこと。
創世王に叱られたから……と言うより、自分でも杏子ちゃんを殺せなかった自分の甘さに驚き、動揺しているのだろう。
シャドームーン「創世王、忘れたとは言わせん、次期創世王の候補者として私とブラックサンを選ばせ、競わせていることを。戦っているのは私とブラックサンなのだ、最後の決着は我々自身でつける、恐らくその日はもうそこまで来ている。それまではたとえ創世王であろうと、一切の口出し、手出しは無用、覚えておくが良い!」 大首領とも言うべき創世王に対し、あくまで対等の立場で堂々と言ってのけるシャドームーン、いかさま、気高き悪の貴公子とも言うべき凛々しさであった。
ところで管理人、さっき山本さんの出番はないと言ってましたが、

良く見たら、ラスト、ちゃんと克美さんと一緒に学校へ駆けつけていました。やったね。

ジーンズ姿で、友人たちと嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねている。

ピチピチした女子高生の群れを見ながら、光太郎は、今度の戦いの中に微かな希望を見出していた。
シャドームーンの中には、まだ信彦だった時の心が残っているのではないかと……。
ナレ「シャドームーンは、いや、信彦は杏子を殺さなかった。殺せなかったのだと南光太郎は思った。望みはある、まだ望みはあるのだ! 傷付いた体に鞭打ち、南光太郎は走る、近付く最終対決の予感を胸に……」 46話へ続く。
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