第46話「壮絶バラオムの死」(1988年8月28日)
人気のない廃墟のようなところで、人間の目では捉えることの出来ないスピードで縦横に疾走しつつ、鋭い爪でコンクリートや鉄柱を豆腐(絹ごし)のように切り裂いているバラオム。
そこへダロムがやってきて、

ダロム「またやっているのか、バラオム」
バラオム「ビシュムの恨みを晴らす為だ、仮面ライダーはこのバラオムが必ず倒して見せる!」
前回、同僚のビシュムを倒されたことで(まぁ、殺したのはシャドームーンなんだけど)、バラオムのライダーに対する怒りはかつてないほど煮え滾っていた。
で、肉球を握り締めてライダーへの闘志を燃やすバラオムの姿に、

こんなサブタイトルが重なったので、当時、全国の視聴者が一斉にひっくり返ったと言う。
ダロム「え、お前死ぬの?」 バラオム「にゃっ?」 スカイライダーの第17話「やったぞ!ゼネラルモンスターの最後」のように、これから頑張ろうとしている人の映像に、その結果を豪快にネタバレしているサブタイトルをかぶせるのはやめてーな。
もっとも、どうせ最後にヒーローが勝つことは決まっているのだから、ネタバレもへったくれもないのだが。
その頃、太陽の黒点が急速に成長し、膨らんでいき、それによって世界各地で旱魃や異常気象が起き、地球全体が漠然とした不安に包まれていた。そして、その太陽を見上げる光太郎も、なんとなく不安な気持ちになりがちであった。
そんな光太郎の背後から、「光太郎さん!」と声が飛んでくる。

光太郎が何事かと振り向くと、いつの間にか克美さんと杏子ちゃんがバースデーケーキを用意していて、光太郎の誕生日を祝ってくれる。
克美&杏子「ハッピバースデー・トューユー~♪ ハッピバースデー……」
ちょっとしたサプライズに、光太郎もしばし嫌なことは忘れて明るい笑顔を見せる。

光太郎「そうか、今日は僕の誕生日だっけ」
杏子「うん」
光太郎「ありがとう、克美さん、杏子ちゃん」
克美「はい、これ、二人からのプレゼント」
光太郎「うわぁっ、ありがとう!」
母親からプレゼントを貰った小学生のような、澄んだ瞳を輝かせる光太郎。
光太郎「開けていい?」
克美「ええ……うふふ、これからは光太郎さん、自分のお誕生日、忘れちゃダメよ」
杏子「そうよ、光太郎とお兄ちゃんは同じ日の同じ時間に生まれ……」
克美「杏子ちゃん!」

杏子「……」

つい、余計なことを口走ってしまい、克美さんに鋭く注意される杏子ちゃん。
叱られた子供のようにうつむく様子が可愛いのである!
杏子ちゃんの失言で、たちまち和やかなムードは凍りつき、光太郎も深刻な顔に戻って、(そうだ、すべては一年前の僕と信彦の誕生日から始まったんだ……)と、一年前の船上パーティーでの出来事を思い出す。
同じ日蝕の日、同じ時間に誕生した光太郎と信彦が、20歳の誕生日、ゴルゴムの支配者である次期創世王の候補者・世紀王として改造手術を施されたことは、今更繰り返すまでもない。
杏子「ごめんなさい、お兄ちゃんのこと思い出させちゃって」
光太郎「気にしない、気にしない、ようし、今日は嫌なこと忘れて楽しくやるぞぉ!」
光太郎、無理に気分を引き立たせてはしゃいで見せると、思いっきり息を吹いてケーキの蝋燭を消す。
ところが、蝋燭が消えると同時に周囲も暗くなり、光太郎の四方からカサカサと幾つもの羽音を響かせながらバッタのようなものが飛び交いはじめる。それは一年前の船上パーティーで光太郎たち4人を襲ったのと同じような現象であった。
バッタは物にぶつかると激しく爆発し、光太郎もそのショックで気を失ってしまう。
しかもその襲来は、地下深くにあるゴルゴム神殿のシャドームーンの身にも迫っていた。
やがて、光太郎とシャドームーンは、真っ暗な空間の中に頭頂部を向かい合わせる形で浮いている自分たちの姿を認める。

そして、彼らの前に太陽の黒点のような形を取って現れたのが、初登場となる現・創世王であった。
創世王「我が息子たちよ、ブラックサン、シャドームーン」
光太郎「誰だお前は?」
シャドームーン「創世王!」
創世王「お前たち二人は初めて私の声を聞いた。どうだ、なかなか渋い声だろう?」
後半は嘘であるが、創世王の声はドスの聞いた悪役でお馴染み、渡部猛さん。
創世王「良いか、二人とももはや猶予はない。自らの運命に従い、一刻も早く戦い、勝ったほうが次期創世王となるのだ。良いか、分かったな」
光太郎「イヤだ、僕は働きたくない! いや、戦いたくない!」
シャドームーン「創世王、あなたが
そうせいよぉと言うのなら戦いましょう!」
創世王「……」
……嘘です。ごめんなさい。
正解は、
シャドームーン「創世王、余計な口出しはするな!」でした。
創世王は「戦え、戦え」と繰り返しつつ、光となって消滅し、同時に、光太郎もシャドームーンも元いた場所に戻される。
光太郎は、克美さんと杏子ちゃんの声に目を覚まし、慌てて周囲を見回す。
光太郎「バッタはどうした? バッタの大群が店をめちゃくちゃにして……」
杏子「光太郎さん、蝋燭を消そうとして急に意識を失ったのよ」
光太郎「今のは夢だったのか?」
杏子「光太郎さん……」

だが、光太郎が自分の右手を開いてみると、そこには確かに本物のバッタが一匹いた。
克美「あーっ!」
光太郎「どういうことだ、一体?」
一方、ダロムとバラオムは、未来のゴルゴム帝国の想像図を前に興奮した声で話していた。

ダロム「人間の作った文明を全て破壊し、残骸を海に捨て、その後帝国を作るのだ」
バラオム「すると、海は核や石油で汚染され、二度と元には戻らないのではないか? 良く考えてみろ、海から生まれた怪人たちが困ることになるぞ」
ダロム「怪人など使い捨てだ、どうぬわろうと構わん!」
そんな彼らの無神経な会話は、海の怪人であるクジラ怪人に全て聞かされていた。
そのことが、バラオムの敗北と、ひいてはゴルゴムそのものの崩壊を招くことになるとも知らず。
しかし、人類文明のガレキを全部海に投棄するって、めちゃくちゃ労力と時間がかかる仕事だよね。
それに、ゴルゴムにとっても資源の宝庫である海を不可逆的なまでに汚染することは、決して得策ではない筈だ。恐らく、そのプランはダロムが勝手に考えていたことなのだろう。

その二人の前に、シャドームーンが姿を見せる。
シャドームーン「いよいよライダーを倒す時が来た、私は初めてこの耳で創世王の声を聞いた。一刻も早くライダーを倒せとのきついご命令だ」
バラオム「シャドームーン様、まずはその役目、このバラオムに仰せ付け下さい」
シャドームーン「うん?」
バラオム「ビシュムの恨み、なんとしてもこの手で晴らしたいのです」

シャドームーン「いいだろう、だが失敗は許されんぞ。創世王は何故か焦っておられる。少しは分かってやらんといかんからな……バラオム、行け!」
バラオム「ははーっ!」
こうしてバラオムは対ライダー戦、最後の出撃を敢行する。
しかし、ゴルゴムのルールでは、二人の世紀王が戦って、勝ったほうが創世王になると言うことになっていると思うのだが、仮にバラオムがBLACKを倒しちゃっても良いのだろうか? まぁ、BLACKの場合は、改造が終わらないうちに脱走した特異例だから、構わないのだろう。
創世王にしても、本来は公平であるべきなのに、最初からシャドームーンに肩入れしてるからね。
さて、バラオムは、あのクジラ怪人を使って遠足に来ていた子供たちを襲わせ、光太郎をおびき寄せる。
だが同じ頃、ダロムはコウモリ怪人から「どうもクジラ怪人がゴルゴムを裏切るつもりらしいっすよ~」と言う極秘情報を得ていた。

光太郎がBLACKに変身するのを待っていたように、バラオムが登場する。
バラオム、鍛錬によって以前にもまして素早い移動能力を身につけており、右へ左へ影も残さず飛翔しつつ、鋭い爪でBLACKの体を切り刻む。
その高速の動きは、BLACKのマルチアイでも捕捉できず、最初はBLACKにもそれが顔馴染みのバラやんだと分からないほどだった。

やがて、以前、ビルゲニアと戦ったような墓所で、バラオムが動きを止めて姿を見せる。
バラオム「まんまと罠に嵌まったな、仮面ライダー、クジラ怪人を使い、貴様をここへ誘い込んだのだ。今こそ、ビシュムの恨みを晴らしてやる。行くぞ、仮面ライダー!」
もっとも、すぐに戦いの舞台はいつもの開けた採石場に移る。

恐るべき跳躍力で、まるで空中を飛ぶようにしてBLACKに突進するバラオム。

そしてネコ科動物特有のしなやかな動きでBLACKに迫る。
管理人、子供の頃、テレビで見ていてそのビジュアルのかっこよさに痺れたものだ。
戦場にはまだクジラ怪人がいて、その特殊な潮を吹いてBLACKの足元を固定し、動きを封じる。

バラオム「どうした仮面ライダー、そのぶざまな格好は……見たか、ビシュム、俺は仮面ライダーに勝ったのだ。はっはっはっはっはっ」
BLACK「ダメだ、打つ手がない、俺はここで死ぬのか?」
少ししつこいほど、亡きビシュムの霊に語りかけるバラオム。
ひょっとして、バラオム、密かにビシュムのことを愛していたのだろうか?

バラオム「これから貴様の腹を切り裂いて、キングストーンを取り出してやる……クジラ怪人、押さえつけろ……うにゃあああーっうぅっ!」
バラオム、長く伸びる牙を掴んで猫的な鳴き声を上げると、二本の牙のような剣を生成する。
バラオム「行くぞ、地獄へ落ちろ! うにゃあっ!」
バラオム、高所からまっしぐらに飛び掛かるが、

非道にも仲間であるクジラ怪人の背中に、二本の剣をぶすりと突き刺す。

クジラ怪人「バラオム様、な、何故?」
バラオム「貴様がゴルゴムを裏切るつもりなのは先刻承知だ、だから先手を打って、仮面ライダーの墓石にしようとしたまでだ! ふんーっ!」
バラオム、そのままぐいぐいと剣を押し込んで、クジラ怪人ごと、BLACKの体を貫こうとする。
しかし、ここでのクジラ怪人の動きを見る限り、ゴルゴムを裏切ろうとしていた素振りは全く見えない。少なくとも、BLACKを手助けする義理はないのだから、この段階でバラオムがクジラ怪人を粛清しようとしたのは完全な勇み足であっただろう。
果たして、クジラ怪人は死力を振り絞ってバラオムに反撃し、今度は特殊な潮をバラオムの全身に浴びせる。

BLACKはすかさず立ち上がってライダーパンチ、そしてライダーキックを放つ。
さすがに大怪人のバラオムは、ライダーパンチを食らっても、両手から電撃ビームを放って、ライダーキックを食い止めようとする。
しかし、結局防ぐことはできず、胸元にまともにキックを受けてしまう。

バラオム「仮面ライダー、これで勝ったと思うな、俺が倒されても、シャドームーン様がおられる。貴様など問題ではない。シャドームーン様ぁぁぁ!」
立ち上がり、最期の絶叫をほとばしらせると、

地獄への道連れとばかり、電撃ビームを崖上のライダーに向かってぶちこむ。

BLACKの足元で、激しい爆発が起きるのだが、

既にバラオムに戦う力のないことを知っているのか、BLACKが微動だにしないで立ち尽くしている姿が、立ち昇る炎の向こうに垣間見えるのが、もう、めちゃくちゃクールなのである!
そしてバラオムは「シャドームーン様ぁ!」と再び雄叫びを上げつつ、爆発四散する。
その残虐な行為が墓穴を掘った形になったが、その戦いぶり、死に様は、(昭和ライダー)歴代の大幹部と比べても引けを取らない見事なものだったと言えよう。
それは同時に、バラオムを演じた高橋利道さんの素晴らしさでもある。

バラオムの死を報告に戻ったコウモリ怪人とダロムのツーショット。
まさか、コウモリ怪人がバラオムより長生きすることになろうとは、意外であった。
さて、バラオムの死と共に大地が激しく揺れ、ゴルゴム神殿にも落雷が発生する。
そしてシャドームーンだけが再び創世王の部屋に招かれ、「早くBLACKを倒さんかコラ」と発破をかける。
シャドームーン「なぁにをそんなに焦っているのだ、創世王」
創世王「見よ、巨大な太陽の黒点は5万年に一度現れる。この黒点が消える時、我が命も尽きるのだ」
次期創世王を決めようとしているのだから当然だが、現・創世王の命はあと僅かで尽きようとしていたのだ。
シャドームーンも、今度は自らの手でBLACKを倒すと宣言する。

一方、ダロムたちには死んだと思われていたクジラ怪人だが、BLACKの手で助け出されていた。
光太郎「海は必ず僕が守る。だから、ゴルゴムの追ってこない深い海底に隠れて、傷をゆっくり癒すんだ」
クジラ怪人「ありがとう」
握手を交わすと、クジラ怪人はそのまま海へ潜って行く。
このクジラ怪人がこの後、思わぬ役割を果たすことになるのは言うまでもない。

ラスト、あのお気に入りの場所に、シャドームーンが、ガシャンガシャンとレッグトリガーの音を響かせながら現れる。
そこには克美さんと杏子ちゃんもいたのだが、シャドームーンはその呼び声など一切無視して宣言する。
シャドームーン「聞け、愚かな人間たち、今日からこのシャドームーンが世界を支配する。この世にゴルゴム帝国を築くのだ! ブラックサン、私と戦え。貴様が戦う決意を固めるまで、この東京に太陽の光は差さぬ。分かったな。はっはっはっ……」
ところで、今回も逃げ惑う群衆の中にあいつがいましたよ、
笑いながら逃げてる奴が! 47話へ続く。
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