第47話「ライダー死す!」(1988年9月4日)
ショッキングなサブタイトルの47話は、サブタイトルどおり、BLACKがシャドームーンに倒されてしまうと言う、終盤の最初の山場となるエピソードである。
前回のラスト、シャドームーンが全人類に対し宣戦布告した結果、人々はパニック状態に陥り、あらゆる社会機能が麻痺し、東京はゴーストタウンと化していた。
政府すら、ゴルゴムに抵抗するのを諦めてしまうほどで、それ以上に無力な市民は神仏に縋ったり、放心状態でうろついたり、「冬のソナタ」をぶっ続けで見たりするしかなかった。
が、中にはまだゴルゴムに対し、果敢に戦いを挑んでいる人々もいた。
かつて、ゴルゴムに属していた少年戦士たちである。

そんな少年戦士たちを、皆勤賞モノの活躍を見せるコウモリ怪人が空から襲う。
彼らは、ゴルゴムの特殊な薬によって、中身は大人だけど肉体は少年のまま成長がストップしている戦士たちなのである。
24話と31話に登場しているが、奇しくもどちらもレビューは省略している。
つまんないからである。 
ダロム「ゴルゴムを裏切った小僧ども、どうなるか思い知らせてやる」
そんな彼らの前に遂にひとりぼっちになってしまった三大怪人のダロムが現れる。
しかし、三大怪人って三人揃って出てくるから迫力があるのだが、正直、ひとりひとりで出てくるといまいちサマにならないところがあるんだよね。バラオムなんかはひとりでも絵になるのだが。
ダロムの念動力で吹っ飛ばされる少年戦士たち。そこへ光太郎が駆けつけ、彼らを逃がしてからBLACKに変身する。と、それを待っていたようにシャドームーンがコンテナの上に出現する。
シャドームーン「ブラックサン、とうとう決着をつける時がきたな……戦え!」
だが、いまだに「信彦とは戦いたくないよぉ」と駄々をこねている光太郎は、一戦もまじえずにバトルホッパーを呼んでトンズラしてしまう。

シャドームーン「貴様が戦わなければ、太陽はいつまで経っても差さない。それでも良いのか?」
ヒーローらしからぬ逃げ腰を続ける光太郎の態度に、シャドームーンの方がいささか呆れ顔であった。
70年代のライダーでも、親友が怪人として立ちはだかると言うシチュエーションが幾度かあったが、昔のライダーたちはそんな場合でも、あんまり葛藤しないでメキメキとかつての親友の顔にパンチを叩き込んでいたものだが、それと比べると光太郎がいかにも軟弱に見えてしまう。
裏返せばそれだけ時代が優しくなったと言うことだろうか?
さて、傷を負った少年戦士たちは倉庫の中に身を休め、彼らを克美さんと杏子ちゃんが出来る限り手当てしていた。さながら野戦病院のようであったが、正規の病院も、ゴルゴムを恐れて彼らを治療してくれないらしい。
そのうち、もっとも深い傷を負っていた少年が光太郎たちの目の前でガクッと死んでしまう。
と、少年たちは口々に光太郎に「シャドームーンと戦ってくれんかいのう」と言い出す。

杏子「私からもお願い! シャドームーンをもうお兄ちゃんだなんて思っていない! 戦って光太郎さん」
克美「私もよ、光太郎さん!」
光太郎「……」
光太郎、二人からもお願いされ、いつにもまして深刻な顔になる。
光太郎(うーむ、まさか勝てそうにないから戦いたくないんだ、とも言えないし……) じゃなくて、

ひとり、倉庫から出ると、すさんだ風に吹かれながら、闇の中にかつて4人が楽しく過ごした思い出を描いていた。

そこへ杏子ちゃんが思い詰めた表情でやってくる。光太郎は、「克美さんと一緒に日本を離れてくれ」と意外な言葉を口にする。
杏子「まさか、光太郎さん、お兄ちゃんと戦う気になっていたのね? だから、戦うところを見られたくなくて!」
杏子「私、光太郎さんのそばから絶対離れない!」 キャッ、これって完全に愛の告白だよね。
光太郎「でも、どちらかが倒れるまで戦うしかないんだ」(聞いてない)
杏子「いやっ……いやよーっ! そんなのいやーっ! ああっ……」 感極まった杏子ちゃん、光太郎の胸にむしゃぶりついて泣き叫ぶ。
光太郎もその肩をしっかりと抱き締めてやるのだった。
どうせなら、光太郎と杏子ちゃんの恋愛についてもう少し突っ込んだ描写が欲しかったな、と。
でも、あくまで抱擁どまりなのが、いかにもストイックなBLACK版の光太郎らしいとも言える。
と言うか、そもそも昭和ライダーって基本的にカタブツで、ノーセックスなんだけどね。
例外は(平成に作られてるけど)「真・仮面ライダー~(永久に)序章」くらいか?
とにかく、光太郎が戦う決心をしたことは、何でもお見通しの創世王の知るところとなり、早速シャドームーンに伝える。

創世王「ブラックサンが遂にお前と戦う決意を固めた。恐らく、決戦は明日、存分に戦え」
シャドームーン「分かった。だがこれはあくまで私とブラックサンとの戦いだ。絶対に手出しは無用だ!」
誇り高きシャドームーン、創世王に対し、一本釘を差しておく。

一方、光太郎も戦いを前にして、今まで数々の戦いを共に切り抜けてきた愛車バトルホッパー、ロードセクター、そして何気に一番お世話になってるGSX-R400の各マシンに最後になるかもしれない別れを告げていた。
こうして三台が勢揃いしている図は、初めてだと思うが?

光太郎「バトルホッパー」

光太郎「ロードセクター。……長い間、世話になったな」
GSX-R400「って、ワシには一言もないんかーい!」 光太郎「ヒィィッ、バイクが喋った!」 ……冗談である。
冗談であるが、GSXにも何かねぎらいの言葉をかけてやってもバチは当たらないんじゃないかとは思う。

光太郎「僕は信彦に敗れるかも知れない。そしてたらお前たちとも……元気でな」
と、光太郎の言葉を理解しているかのように、バトルホッパーとロードセクターが、それぞれヘッドランプを点滅させたり、可動部分を動かしたりして、光太郎との別れを惜しむ素振りを見せる。
……傍(はた)から見れば、ただの心霊現象である。
光太郎「分かったよ、分かった、心配しなくて良い、僕は絶対戻ってくるから!」
しかし、生体メカであるバトルホッパーはともかく、ロードセクターまで知能を持っているかのように振る舞うのは、ちょっと変じゃないか? RSコンピューターが搭載されているのだが、別にRSは人工知能と言う訳ではないのだから。
そして遂に、決戦の日がやってくる。
別に戦いの場所を指定された訳ではないが、光太郎は何かに……多分スタッフだと思うが……導かれるようにして、人気のない荒野にGSX-R400(報われねぇ)に乗ってやってくる。
崖の上には、シャドームーンと、ダロムが立っていた。

シャドームーン「待っていたぞ、ブラックサン、とうとう最後の時が来たようだな。変身しろ」
光太郎「信彦、最後の頼みだ。元の心に戻ってくれい!」 この期に及んで、聞いて貰える筈のない「お願い」をする光太郎であった。
さすがにちょっと往生際が悪いぞ。

シャドームーン「……問答無用! ゆくぞ!」

シャドームーン、サタンサーベルを構えると、その刀身から赤いエネルギー弾を撃ち込む。
うーん、ここは、もうちょっと火薬の量を増やして欲しかったな、と。
「仮面ライダー」や「V3」の、スタッフが役者に殺意を抱いているとしか思えない凄まじい爆発と比べると、いかにも物足りない。

もっとも、さりげなく顔を隠しながら華麗に吹っ飛ぶスタントの岡元さんの仕事は相変わらず見事である。
光太郎が景気よく吹っ飛んだところでCMです。
CMが終わり、さすがに光太郎もこうなったら戦うしかないと腹をくくる。

光太郎「これだけ頼んでもダメなのか、信彦!」
光太郎、変身ポーズを取ってBLACKに変身する。

こうして、良い感じに戦場に霧がたなびく中、頂上決戦の火蓋が切って落とされる。

ダロムも、シャドームーンに手出しはするなと厳命されているので、高所から戦いを見守っている。
まずは互いに飛び上がって空中でぶつかり合う。

眩しい太陽をバックに、両者のシルエットが空に舞う。

BLACK、サタンサーベルを受け止めると、

その場でジャンプしてキックを放つ。
が、同時にシャドームーンも右足を突き出し、

一瞬、互いの足が密着する。

シャドームーン、素早く足を回し、レッグトリガーでBLACKの足を巻き込むようにして、

BLACKの体を宙に舞わせる。

BLACKも負けじと、相手の体にぶらさがるようにして、延髄切りを食らわせる。
と、その時、どうやってこの場所を知ったのか、克美さんと杏子ちゃんが走って戦場にやってくる。

さすがにもう戦いを邪魔しようとはせず、少し離れた物陰にしゃがみ、息を潜めて戦いの行方を見守る。
……
やっぱり女の子のお尻は良い! ……失礼しました。
無論、死力を尽くして戦っている両雄は、二人のお尻、いや存在など眼中にない。

BLACK、ジャンプしてライダーパンチを打とうとするが、サタンサーベルから放出されるビームで返り討ちにされる。
シャドームーンは、そのままビームでBLACKの体を空中に持ち上げ、岩壁に向かって放り投げる。
BLACK、空中で一回転して体勢を立て直すと、岩を踏み台にしてシャドームーンにキックを放つ。

シャドームーン、サタンサーベルを蹴り飛ばされ、体勢を崩して地面にはいつくばる。
こうして見たところ、シャドームーンはロングレンジ、BLACKは接近戦をそれぞれ得意としているようだ。
まぁ、シャドームーンだけサタンサーベルを使ってるのは、ちょっとずるい気もするが。
しかし、今回のシャドームーン、劇場版2作目と比べると、いまいち迫力不足だなぁ。あの時はまだBLACKの方にためらいがあって、本気で戦っていなかったのかも知れないが。
BLACK「信彦、俺はお前を倒したくないんだ。信彦ーっ! ライダーパンチ!」 シャドームーン「言うてることと、やってることが違う!」(註・言ってません)
BLACK、渾身のライダーパンチがシャドームーンの胸に突き刺さる。

ダロム「シャドームーン様ぁ!」
シャドームーン「手を出すな!」
BLACK、さらに(キックではなく)パンチを打ち込もうとするが、その時、空に雷光がきらめいたかと思うと、
創世王「シャドームーン、やはり私の助けが必要なようだな」
青白い光が落ちてきて、シャドームーンの体をずらして、二発目のライダーパンチを回避させる。

さらに、青白い光に包まれたシャドームーンの体が、人間の、信彦の姿に変わってしまう。
無論、演じているのは堀内孝人さんである。
管理人、今回、レビューの為にDVDをチェックして、ここで堀内さんが出て来たことに割と本気でびっくりしてしまった。てっきり、もう堀内さんは出ないものと思い込んでいたのだ。
さすがにBLACKもギョッとして動きを止め、見物していた女子たちも目を丸くして驚く。

BLACK「信彦、信彦ーっ! 元の姿に戻ったのか、光太郎?」
信彦「光太郎……」
てっきり元の信彦に戻ったのかと、思わず信彦に駆け寄るBLACKであったが、それは創世王の仕掛けた狡猾なトラップだった。

再び青白い光が落ちてきて、信彦は一瞬でシャドームーンの姿になる。
堀内さん、「……え、俺の出番、これだけ?」と、心の中で叫んでいたことだろう。
せめてもうちょっと台詞やれ! と、管理人は心から思うのだった。
とにかく、虚を衝かれたBLACKは、シャドームーンを討つチャンスを逃してしまう。

シャドームーン「シャドーパンチ!」
BLACK「ライダーパンチ!」
その後、必殺技の応酬となるが、「シャドーキック」と「ライダーキック」では、前者の方が優っていたようで(シャドーキックは両脚、ライダーキックは片脚)、撃ち合った後、BLACKだけ、膝をついてしまう。

その隙を逃さず、シャドームーンのサタンサーベルが、二度、三度と、BLACKの無防備な体を切り刻む。
BLACKはそのまま仰向けに倒れ、立ち上がれなくなる。

BLACK「信彦……」
シャドームーン「ブラックサン、いよいよ最期の時が来たようだな」
BLACK「信彦、この地球はゴルゴムのものではない、人類の、いや生きるもの全ての為にこの地球はあるのだ。分かってくれ」

だが、最後の説得も空しく、サタンサーベルを両手で持ったシャドームーンは、BLACKの腹を深々と貫き通す。

シャドームーン「でやっ」
BLACK「ぐおぁーっ! ううっ」
克美「ライダー!」
杏子「光太郎さん!」
二人が慌てて飛び出すが、創世王の放ったビームで地面に亀裂が走り、二人はその場に倒れ込む。

次のシーンでは、ちゃんとBLACKとシャドームーンの横に、亀裂によって生じた断崖が出来ている。
無論、これは場所を変えて撮影しているだけなのだが、なかなか面白いアイディアである。
さっき、明らかに創世王に手助けされたことには気付かないふりをして、シャドームーンはサタンサーベルを引き抜き、「私は勝ったのだ!」と勝利宣言を発する。

創世王「見事だ、シャドームーン、さぁブラックサンの体を切り裂き、キングストーンを取り出せ」
シャドームーン、創世王の言葉に従い、無言で左手をBLACKのベルト部分に伸ばす。
だが、この時、何故かBLACKの体も光太郎の姿にパッと変わってしまう。
シャドームーン「光太郎……」
ダロム「どうされました、シャドームーン様、さ、早くキングストーンを!」
ダロムも高所から降りてきてシャドームーンを促すが、シャドームーンを左手を伸ばした姿勢のまま固まっていた。

創世王「どうした、シャドームーン?」
シャドームーン「私はブラックサンのキングストーンなどなくても立派に次期創世王になって見せる」
創世王「愚か者っ! 一瞬とは言え人間の姿に戻したばかりに、信彦の心を取り戻したのか?」
シャドームーン「違う、そうではない。だが、出来ない!」 既に人間の心を完全に失い、冷血な悪の戦士に染まり切ったと思われていたシャドームーンであったが、光太郎の体を切り裂くことはどうしても出来ないと創世王の命令を拒絶する。
シャドームーンの中に信彦の心が僅かに残っていたのだろうか?
それとも、光太郎の命懸けの願いが、信彦の心を蘇らせたのか?
いずれにしても、ここではEDが流れ、なかなか感動的なシーンとなっている。
シャドームーン「私はシャドームーンだ。次期創世王だ!」
結局、シャドームーンは
訳の分からないことを叫びながらパッと姿を消す。
その後、光太郎の体はまたBLACKの姿になる。

克美「しっかりして光太郎さん!」
杏子「光太郎さん!」
BLACK「杏子ちゃん、克美さん、僕はもう死ぬ」
杏子「馬鹿なこと言わないで!」
克美「何を言うの!」
BLACK「二人とも一刻も早く日本から脱出するんだ。僕が死ねば、この日本を守る人間はいなくなる。脱出するんだ」
杏子「イヤよ、イヤっ!」
克美「イヤよ、光太郎さん!」
BLACK「ありがとう、杏子ちゃん、克美さん、二人がいたから僕は今まで頑張って来れた……ありがとう」
取り縋る二人の手を握りながら、BLACKはガクッと首を落とし、それっきり動かなくなる。

杏子「死なないで光太郎さん、死なないで! 死んじゃイヤーっ!」
克美「死んじゃイヤよ、光太郎さん!」
悲痛な叫びを繰り返しながら、嗚咽する杏子ちゃんと克美さん。
女優としてもそれぞれ子供向け特撮番組の域を超えた素晴らしい熱演である。
その後、再び激しく地面が揺れ動き、BLACKの遺体は断崖を転がり落ち、川の流れに飲まれてしまう。
二人はどうすることも出来ず、BLACKが激流に押し流されていくのをただ見ているしかなかった。
ナレ「仮面ライダーは死んだ。長く苦しい戦いの末、死んだのだ。もはやこの地球を救うものはいない。ゴルゴムの横暴に任せるしかないのか。誰がこの美しい星を救うのだ?」 重苦しいナレーションを聞きながら、48話へ続く。
それにしても、これだけ明確にライダーの死を描いたエピソードって、昭和ライダーの中では他に思い当たらないなぁ(サブのライダーマンやタックルは別にして)。1号やV3が、戦闘で行方不明になっておやっさんたちが死んだと思い込む……と言うケースはちょくちょくあったけど。
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