第43話「怪鳥人プラノドンの襲撃」(1972年1月22日)
おやっさん、ユリ、エミ、五郎、そしてどっかその辺に転がっていたガキ(註・違います。並川博士と言う偉い学者さんの息子、アキラ君です)と言う、変則的な組み合わせで、とある山にハイキングに訪れている一行。
と、ふとしたことで仲間から離れたエミが、山肌にぽっかり開いている洞窟のような洞穴を見つけ、好奇心の赴くまま、その中へ入っていく。

大方の予想通り、その奥深くには、ショッカー謹製の怪人プラノドンと言う、古代の翼竜をモチーフにした怪物が潜んでいた。
怪人「カー、カー」
寒いのか、なんとなく両手の翼で自分の体を抱くようなポーズを取り、少し心細げな鳴き声を放つ怪人を見て、
エミ「あ、ああーっ!」 素っ頓狂な悲鳴を上げるエミ。
いや、何もそこまで驚かなくても……。
ひとりで夜道を歩いていて遭遇するとしたら、どちらかと言うとプラノ丼よりエミの方が怖い気がする。

洞窟の先にはアジトがあり、さらわれたエミが手術台に縛り付けられている。
怪人「では、これから手術を開始します」
死神博士「よし、開始しろ」
てっきり、エミを改造して怪人にしてしまうのかと思いきや、

それは、エミの耳にピンセットで受信機を押し込むと言う、これを「手術」と言ったらブラックジャックに首を絞められそうな単純極まりない作業だった。

怪人「死神博士、これでこの娘は私が発する電波によって自由に操縦できます。
アァー!」
死神博士「……」
プラノドンの声は、ショッカーの怪人としてはなかなか理知的な落ち着いた声音なのだが、台詞の後に付け加える間の抜けた鳴き声が、それを台無しにしていた。
早くも、一抹の不安を抱く死神博士であった……。
あと、前回も似たようなことやってなかった?

その頃、姿の見えなくなったエミを捜し求めて、おやっさんたちは霧の立ち込める山の中を歩き回っていた。
これは、霧を表現したかったのだろうが、これじゃどう見ても山火事だ。
やがて、怪人の操り人形となったエミが何食わぬ顔で戻ってくる。

立花「何処行ってたんだ、随分、心配したぜ」
エミ「そー」
その目付きはどう見てもまともではなかったが、例によっておやっさんたちは1ミリたりとも不審を抱かない。
その夜、プラノドンはエミのマンションにやってくる。

エミ「ショッカーの改造人間!」
いつの間にか異形の怪物が部屋に入り込んでいるのを見て、恐れおののくエミ。
怪人「カー、カー……」 この、極度の緊張感と、プラノ丼ののどかな鳴き声との対比が、えもいわれぬ笑いを誘発する。
エミは怪人の支配下にある筈なのだが、ここでは怪人に逆らって逃げようとする。

怪人は触覚から電波を発して、エミの頭に凄まじい痛みを発生させる。
怪人「俺に逆らうとどうなるか分かっただろう」
エミ「やめて、お願い、気が狂いそう」
怪人「お前は今から俺の言うとおり、行動しろ、分かったか?
あぁ~」
最後の「あぁ~」、一歩間違えればバラエティ番組で使われるお色気SEになりかねない。
しかし、このやりとりを見ると、エミは完全に操られている訳ではなく、激痛に耐えかねて嫌々従っているようにしか見えず、この前のシーンと矛盾している。

しかも、次のシーンでは、再び人格ごと支配されているように邪悪系の笑みを見せているのだから、ますます訳が分からなくなる。
とにかく、エミはプラノドンに命じられて、その足で隼人の部屋へ忍び込み、怪人から渡されたカメラと、隼人のカメラをすりかえる。
翌日、さきほど名前の出たロケット工学の権威・並川博士が2年ぶりにアメリカから戻ってきて、港で大勢の人たちの出迎えを受けると言うシーンになる。
出迎えの中にはアキラ少年、FBIとして護衛の任についている滝、そして博士のスナップを撮りに来た(自称)カメラマンの隼人の姿もあった。
撮ってどうすんだ……?

その様子を、テレビで見ている死神博士たち。
死神博士「並川博士のような偉大な学者が日本に帰ってきては我々ショッカーにとって邪魔だ。一文字の奴、お前が博士を殺すのだ、一文字のカメラには小型ロケット弾が仕掛けてあるのだ」
怪人「……」
両手をぴしっと体につけて、
「えー、そうなんですかー」とでも言うように死神博士の話を聞いているプラノドンが可愛い……。

だが、隼人がシャッターを切ろうとした瞬間、飛び出してきたアキラ少年がぶつかった為、狙いは僅かに外れて、ロケット弾は並川博士の持っていた息子へのお土産が入った箱に当たる。
当然、隼人は殺人未遂の現行犯で警察に捕まってしまう。
ここから、「キカイダー」でお馴染み、殺人犯にされてしまった改造人間としての隼人の苦悩がたっぷり描かれる……ことはなく、滝が自分はFBIだと身分を明かして弁明した為、あっさり釈放される。
……面倒臭かったんだね、スタッフ。
その後、いろいろあって、今度は滝がショッカーに捕まってしまう。
今までライダーの分身のように活躍して、ショッカーの大きな障害となってきた滝である。
死神博士は即座に滝を処刑……しようとはせず、エミと同じく受信機を取り付けて、プラノドンの意のままに操れるように改造する。
……何度同じ過ちを繰り返せば済むのだろう?
その頃、レーシングクラブに滝を拉致されて浮かない顔の隼人が戻ってくる。

ユリ「さっき警察の人が来てたのよー」
ミカ「隼人さん、何をしていたの」 このミカの喋り方が、大時代と言うか、ひとりだけ別のドラマに出てるように浮いている。
だが、これは作品の制作順を見れば氷解する。実は、この43話のほうが、40~41話のロケより先に撮られているのだ。つまり、ミカの杉林陽子さんにとっては、これが記念すべき最初の参加エピソードになる訳で、要するに、まだ慣れてなくて単に演技が下手だっただけなのだ。

その後、密かにエミのことを疑っている隼人が、エミのマンションを訪ねて来る。
エミ、この番組ではお馴染み、ショッキングピンクの布団を被って頭が痛いと訴える。

隼人「藤兵衛さんたちが、君がハイキングから帰ってからどうも様子がおかしいって心配してるんだよ。君、ハイキングの途中、山の中で1時間ばかり行方不明になったんだってね。もしかしたら、その時、君に何かあったんじゃないのかい?」
改めて見ると、佐々木剛さんって男前だね。

隼人が更に突っ込んで、洞窟でプラノドンと遭遇したのではないかとかまをかけると、エミはあっさり馬脚をあらわし、隠し持っていたピストルを取り出して、つきつける。
隼人「僕のカメラをすりかえたのも、君だろう!」

隼人はエミが引き金を引いた瞬間、その腕を捉え、

ベッドに投げ飛ばす。
隼人「ふんっ」
エミ「あっあっ~ん」
はい、こちらも初参加となるエミ、いきなりパンツがチラチラしておられて、将来が楽しみな逸材ですね。
それにしても、このフトモモは……。
エミは再び激しい頭痛に襲われ、その場に倒れ込む。

一方、受信機を埋め込まれた滝は、ショッカーの射撃訓練場に連れてこられていた。
死神博士「滝、お前の射撃の腕前はFBI随一と聞いている。試しにあの的を撃ってみろ」
滝「……」
死神博士「ふふふ、撃てるかね」
滝は玩具のようなライフルを渡されると、それを死神博士に向ける。
が、プラノドンが電波を送り込むと、滝の頭にエミと同様、激痛が走り、滝は大人しく命令に従うようになる。
滝はその腕前を発揮して、的に正確に命中させるが、その的と言うのが、
こんなんだった。チーン。
そろそろ、ショッカーの皆さんに「おまいら本気で世界を征服しようと言う気があるんか?」と襟首を掴んで問い詰めたい気持ちになってくる。
もっとも、彼らが滝に殺させたいのは、仮面ライダーではなく、あくまで並川博士と言う存在であった。
……しかし、ショッカーにとって現実的な脅威ではない並川博士をそんなにまでして殺そうとするより、滝をこの場で始末してしまった方が、ショッカーにとって遥かに有意義なことだと思うのだが。
実際、今回の一件でも、滝がいなかったらまだ隼人は警察に留置されている筈なんだからね。
滝は、並川博士の乗る車を狙撃するよう命令される。隼人は、エミの頭から受信機を発見して、さらにそれを傍受して、ショッカーの計画を知る。

刻一刻と迫る狙撃時間に向けて、バイクを猛スピードで飛ばす隼人。
その姿に秒針を刻む時計の文字盤が重なると言う、凝った映像演出がされている。
で、結局、滝の狙撃は仮面ライダーによって阻止され、後はプラノドン、戦闘員との戦いになる。
それにしても、今更だが、初期のライダーのアクションは、いかにも肉弾戦と呼ぶにふさわしい豪快さだ。

たとえば、この戦闘員に対し、金属的な殴り音と共に、ライダーはパンチ、キック、パンチ、パンチ、パンチ、パンチ、パンチと、7連打を浴びせた上、
ライダー「滝を操るショッカーめ、俺が許さん!」 と、怒鳴りながら首を絞め、

とどめに、パンチとキックをもう一発ずつお見舞いし、次の敵に突進している。
この、崩れ落ちる戦闘員のうつろな目付きに注目して頂きたい。
まるで「生まれて来なければ良かった……」と言うように、絶望の底に沈んでいるように見える。
プラノドンは翼をはためかせて強風を起したり、口からロケット弾(マシンガン?)を発射したりと、なかなか強力な怪人であったが、最後は特に波乱もないまま、ライダーキックを受けて滅ぶ。

勝利の後、沈みつつある太陽を背に、稜線に立つライダーのシルエットが、めちゃくちゃかっこいいのである。
こうして、事件は解決する。

滝とエミは、今回のことを隼人に謝罪する。
隼人「いいんだ、君たちのせいじゃないんだ、全てはこの発信機のせいだ」

立花「並川博士が無事で、ほんとに(どうでも)良かったな!」
満面の笑みで、締め括るおやっさん。
でも、ショッカーのターゲットとおやっさんたちが一切会わないまま事件が解決すると言うのも珍しい。

ラスト、カフェテラスでくつろいでいる並川親子のところへ、ロケット弾で壊してしまった玩具の代わりに、新品のロケットの玩具が届けられる。
並川「一文字隼人にかわって、これをプレゼントします。仮面ライダー」
と言う、隼人の細やかなアフターケアが視聴者を温かい気持ちにさせつつ、「つづく」のであった。
しかし、プラノドンが殺されたからって、邪魔な並川博士をショッカーがこれっきり付け狙わなくなるのも、良く考えたら変なんだけどね。
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