第36話「ユメコン狂時代だ」(1984年11月30日)
機械文明……なかんずく急速な進歩を遂げるコンピューターに依存して堕落する人間の姿を活写した、いかにも上原正三さんらしいストーリーである。

今回は冒頭から、コンバットスーツをまとったシャイダーとアニーが、敵のアジトとおぼしき施設(メーサー殺獣光線のような巨大なアンテナが天に向かってそそり立っている、80年代特撮ドラマに良く出てくる施設)を高台から見下ろしている。建物の周囲は、銃器を抱えた警備兵が固めている。
一瞬、アニーの活躍に埋もれて全く存在感がないので、とうとう円谷浩さんがリストラされたのかと思ってしまうが、無論、そんなことはない。
シャイダー「シャイダースコープ!!」 もっとも、アフレコにしか参加できなかったせいか、円谷さんの声が妙に張っているように聞こえる。

フーマ、さすがにショッカーのように戦闘員をそのままアジトの前に立たせておくほど迂闊ではなかったが、シャイダーの目を誤魔化すことはできなかった。
……ま、銃を持ってる時点で怪し過ぎるんだけどね。
シャイダーは、一気に建物の内部まで透視して、ヘスラーやギャル、ミラクラーたちが何かの装置を大量生産している様子まで掴んでしまう。
ついでにギャル5の衣装も……いえ、なんでもありません。

シャイダー「間違いなくフーマの秘密工場だ」
アニー「突入しましょ」
シャイダー「むぁてえ! シャイダースコープ!!」 逸るアニーを必要以上に大きな声で制止すると、シャイダーは再びシャイダースコープで基地周辺を探る。
シャイダー「地雷地帯だ。建物には赤外線レーザー発射装置が張り巡らせてある。まともに突っ込むと真っ黒焦げになるぞ」
アニー「何を企んでいるのかしら、フーマは」
シャイダー「電子製品の工場らしい。叩き潰さなければ」
シャイダー、超次元戦車シャイアンを呼ぶと、

アニーの体を押し上げながら、一緒に空高くジャンプする。
なんとなく、シャイダーのポーズがバレエダンサーみたいで笑える。
シャイダーはバトルシャイアン、アニーはスカイシャイアンの操縦席にそれぞれ乗り込み、地中と空から同時に攻撃を仕掛ける。
厳重な警備体制を誇るアジトも、二機のハイテクメカの奇襲にはなすすべがなく、工場はたちまち壊滅し、警備兵たちの体が宙を舞う。ヘスラーとギャルたちは、建物の脇からワゴンに乗って脱出する(運転はギャル4)。

その前方に、地中からバトルシャイアンが現われてハッとするギャルたち。
……
なんか見掛けたことのない人が混じっているが、そう、今回からギャル2が再び交代して、矢島有美子さんと言う人に変わってしまうのだ。
これは二代目の大内弘子さんが、翌年スタートする「電撃戦隊チェンジマン」のレギュラーに抜擢された為……だと思う。
うーん、正直、可もなく不可もなくと言った顔立ちで、どうせなら初代・加納綾さんにもう一度演じて欲しかったところだが。

バトルシャイアン、ついでブルホークに追跡され、だだっ広い空き地に入り込むワゴン。
それにしても、ギャルばっかりが乗ってるワゴン車ってのも、なんかほのぼのして良いよね。女子高の運動部が、合宿に向かってるみたいで(無論、ヘスラーとギャル1は顧問の先生である)。

ワゴンとそれを追い掛けるブルホーク。

そのブルホークをフーマの戦闘機が頭上から攻撃し、さらにそれをアニーのスカイシャイアンが撃つ……と言う、かなり凝った合成シーン。
シャイダーも執拗に追跡を続けるが、最後は煙幕を張られてまんまとワゴンに逃げられてしまう。

シャイダーはコンバットスーツ姿のまま、バビロス号でアニーと合流する。
シャイダー「アニー、ありがとう」
アニー「シャイダー、フーマは何故あのワゴン車を必死に守ろうとしたのかしら?」
シャイダー「フーマにとってよほど重要なものらしい」
いや、ヘスラーとギャルたちが乗ってたからだと思いますが……。

ヘスラーたちは不思議宮殿に帰ってくる。
ヘスラー「申し訳ありません、シャイダーめに工場を破壊されてしまいました」
ポー「不思議獣コンコンさえ無事なら、ユメコン作戦になんら支障はありません」
クビライ「ユメコン作戦を実行せよ」
こうして「ユメコン作戦」なるものがスタートするが、

そのサンプルとして選ばれたのが、藤井洋八と佐々木梨里によるおもしろおかしい青木一家であった。
藤井洋八さんは「B&B」解散直後で、同年、「マシンマン」や「バイオマン」にもゲスト出演されている。
佐々木さんも、「シャリバン」の23話に似たような役で出ておられる。
さて、青木一家、家族揃ってドライブに行こうと、ポンコツ車をお父さんが一生懸命いじってなんとかエンジンがかかるものの、ボンネットを閉めた途端にプスンと逝ってしまう。
青木「あーあ」
青木夫人「お父さん!」
青木「駄目だ、この車!」

と、その横へ滑り込むようにして現われたのが、またしてもあのワゴンであった。
ギャル1「こんにちは、お困りですね。でも我が社のユメコンさえあればこんなことにはなりません」
訪問販売員に扮したギャル1が、にこやかに話しかけてパンフレットを渡す。
……
かつてこれほどまでに迅速かつ自然に相手の懐に入り込むセールスレディがいただろうか? いや、いなかった! ギャル1、ギャル軍団なんて辞めて、ニッセイレディにでもなったらどうか?

青木夫人「アンドロメダユメコン・リース社?」
そのパンフレットと言うのが、いかにも昔のデジタル製品っぽくてナイスである。
ギャル4「リース代は月々たったの1000円、まずはお試しになって下さい」
同様の制服を着たギャル4と三代目ギャル2もワゴンから製品の箱を抱えて出てくる。
どうせ車もエンストしてるし……と言う訳で、青木一家は家に戻って、ユメコンとやらの性能を見せて貰うことにする。

男の子「僕、それ知ってる、キャプテンシステムってんだろ?」
女の子「飛行機や汽車の切符も買えるんですってね、家にいながらー」
テレビに接続されたユメコンを見て、得意げに子供たちが言う。
「キャプテンシステム」って、覚えてる人はあまりいないだろうなぁ。管理人も実際に使ったことはないが、要するに原始的なインターネットみたいなものである。
ギャル1「我が社のユメコンはまさに夢のコンピューターなんです。たとえば……」

ギャル1が、MSXみたいなキーボード一体型コンピューターのキーを叩き、テレビ画面に「とんかつ ほしい」と打ち込むと、実際にお皿に乗ったとんかつがポンと出現する。
当然、青木家の人々は目を丸くする。
ギャル4「ご主人も会社にお出掛けになる必要がありません」
青木「いや、もともとニートなんで……」
じゃなくて、
青木「自宅勤務できるって訳?」
ギャル4「ええ」
ギャル2「お子さんのお勉強だって、指一本で」
三代目ギャル2の初台詞に頷いて、ギャル1がキーを叩くと、画面に計算式のようなものが表示される。要するに、算数の問題なども解いてくれるということなのだろう。
男の子「こりゃいいや」
女の子「学校行かなくて済むねー」
済むかなぁ?

ギャル1「車だって新車に……」
青木夫人「はああん、それは駄目、このうちのローンだってまだ残ってるんですからね」
ギャル1「ご心配なく……」
ギャル1、今度は「げんきん ¥2,000,000 ほしい」と打ち込むと、200万円分の現金が出てくる。
青木「え、キャッシュサービスもあるのか」
ギャル1「はい、大きく借りてお支払いは200年ローンで。年利はたったの0.1パーセント」
ギャル2「子供、孫、ひ孫」
ギャル4「そしてそのまた孫の時代までに支払えばいいんですよ」
ギャル1「200年にわたるらくらくローンでございます」
青木「じゃあタダみたいなもんじゃないか!」
ほとんど冗談のようなローンシステムに、揃って目を輝かせる青木夫婦。
しかし、子供ならともかく、孫やひ孫まで先祖の作った借金を肩代わりさせられてはたまったもんじゃないな。それに、200万(利子はないものとして、1年に1万円)で済めば良いが、自堕落なこの夫婦がそれだけで満足するとも思えず、放っておけば雪だるま式に借金を増やしていただろうし。
もっとも、フーマの狙いは別に金を貸して儲けることや、それによって破産に追い込むことではないので、別に彼らが返済できなくなっても困らないのだが。
とにかく、生活苦にあえぐ青木一家がユメコンのリース契約を結んだことは言うまでもない。
……でも、「生活苦にあえぐ」と言っても、一応車はあるし、ローンが残っていると言ってもちゃんと東京で一軒家を所有している訳で、当時の日本がいかに豊かだったかが分かるようである。
数日後、大ちゃんは小次郎さんに頼まれて、注文されたペットを一緒に注文主の自宅に送り届ける。
奇しくもそれは、あの青木家であった。
この辺の流れは26話の「魔界ゾーン大当り」とそっくりである。
二人が青木家に着くと、ちょうど家族全員でドライブに行くところだった。無論、ピカピカの新車である。

大「学校や会社はどうしたの?」
小次郎「古いですねー、遅れてますよ、大ちゃん、青木さんは自宅勤務、マリちゃん、清君はユメコンでばっちりお勉強、だからね、スポーツやペットでも飼ってないと暇を持て余すんですと」
情報通の小次郎さん、自慢げに大ちゃんにユメコンについて教えてあげる。
しかし、自宅勤務と言っても具体的にどうやってるのかさっぱり分からないのが難点である。ここは、「ユメコンで何でも取り出せて、金もいくらでも借りられるから、会社も辞めてしまった」と言う方が分かりやすかったかも。
……ところでやっと今思い出したけど、今回の話、「仮面ライダーBLACK」の第28話「地獄へ誘う黄金虫」にも似てるよね。そう言えば、それにも佐々木さんが出てたっけな。
小次郎さんの話を聞いた大ちゃん、いかにも胡散臭いユメコンなるものを調べようと、青木家の2階のベランダに飛び上がり、家宅侵入する。

階段を下りると、リビングのテーブルに置かれているユメコンと、テレビが見えるのだが、超ハイテクメカを接続している割に、肝心のテレビがあまりに古臭過ぎないか?
大(ユメコン・リース社……住所も電話番号も書いていない。もしかしたらフーマ?)
そう睨んだ大ちゃん、いきなりユメコンを持ち上げると床に叩きつけてぱらぱらに壊してしまう。
いや、さすがに思い付きだけで器物損壊したらあかんと思うのだが……。仮にも刑事なんだし。
それはともかく、ユメコンを壊した直後、電話のベルが鳴り響く。大ちゃん、一瞬躊躇するが、ゆっくりと受話器を取る。

ギャル1「こちらアンドロメダユメコン・リース社でございます。ユメコンに故障が生じたようですね」
大「そっ、そうなんです。速く修理を頼む、急いでくれ」
ギャル1「……本当に青木一郎さんですか?」
大「そうですが」
大ちゃんが答えた途端、ガチャッと電話が切れる。
大(やっぱりフーマの仕業だ!) ………………え、なんでですか? ギャル1の声で分かったのだろうか?
大ちゃん、根拠もないのにアニーにも「フーマの仕業だ!」と断言する。
アニー「え、フーマが?」
大「ああ、フーマはメンバーの声を声紋で判別してるらしい」
……いや、だから何なの? 声紋で判別するとフーマなの?
どうも今回の大ちゃんの推理は、雑と言うか、強引である。

一方、大ちゃんが小次郎さんの店に寄ると、予想されたことだが、小次郎さんもユメコンを導入して、ダメ人間にふさわしい、ウハウハ自堕落生活を満喫していた。
小次郎「出たぁ、銭っこだぁ!」
とりあえず300万を出してみる小次郎さん。
しかし、この金って何処から沸いて出てるんだろう? それとも不思議獣コンコンが作り出している贋物に過ぎないのだろうか。
大「小次郎さん、やめろ、これは悪魔の機械なんだ!」
大ちゃん、ここでもユメコンを叩き付けて壊してしまう。これもさすがに乱暴過ぎるよね。
大ちゃんは一旦店を出て、スーパーシャイダーホーンで小次郎さんに掛かってくる筈の電話を盗聴する。
家宅侵入、器物損壊、盗聴か……やりたい放題だな。新番組「やりたい放題デカ」。
ギャル1のオペレーターが、「ただいまより新しいユメコンを電送します」と言うと、小次郎さんの持っている受話器の送話部分から泡が吹き出し、

それが珍獣のガーキの姿になり、新しいユメコンを小次郎さんに手渡すのだった。
「電送」って、こう言うことじゃないと思うんですが……。
大ちゃん、その電話の発信源を突き止め、別の場所にいるアニーと共に追跡しようとするが、すぐに反応がなくなってしまう。

その発信源はやはりあのワゴンの中からで、制服姿のギャルたちと不思議獣コンコンが乗っていた。
ユメコンは、不思議獣コンコンの細胞体が素材になっているらしい。
ポー「ユメコン病にとり憑かれた人間どもはやがて体を動かすことすら嫌がるようになります。指一本動かせば全て事足りる訳ですから……」 クビライ「ユメコンを日本全国に広めよ、人間どものあくなき欲望を煽り立て、肉体も精神も堕落せしめよ」
CM後、作戦の順調な進捗状況を報告しているポー様。
それにしても、ポー様の台詞、「ユメコン」を「スマホ」に変えれば、そのまま現代の日本社会にぴったり当て嵌まる気がする……。

別の工場で大量生産されたユメコンがギャルたちの手によってありとあらゆる家庭にばら撒かれる。
ここでやっとギャル5の制服姿が拝めるが、正直、髪型も制服のデザインもいまいちだなぁ。
ナレ「ユメコンは大流行した。自宅勤務で通勤者も減った。スポーツをする人も減った。主婦たちもユメコンで買い物をするようになった」
ナレーションに合わせて、空の車両を走らせる電車や、無人の商店街のイメージ映像が流れる。

ナレ「人々はフーマの狙い通りに怠け者になった」
完全に堕落しきった青木家の人々。

ついでにパジャマ姿で葉巻を咥えた小次郎さんの映像も映し出されるが、小次郎さんの場合、ユメコン導入前と後とで、大した違わないような気がする……。
色々あって、大ちゃんはワゴン車からの電波を再びキャッチする。

大「アニー、奴ら動き出したぞ」
アニー「こっちもキャッチしたわ」
大「大工場がある筈だ。そこを突き止めたい」
アニー「分かったわ」
ほつれ髪が垂れるアニーの横顔が綺麗なのである!
で、大ちゃんとアニーは遂にヘスラーたちを捕捉し、ラス殺陣に突入。

後は特に書くこともないが、目を惹くのは、不思議時空での戦いで、コンコンが作り出した偽のシャイダーと、本物のシャイダーとのバトルが出てくることくらいだろう。
シャイダーがコンコンを撃破し、あえなくユメコン作戦は潰える。
ナレ「しかし、コンピューター時代はもう到来しているのだ。君たちの家庭にも入り込んでいる。機械の虜になるな! フーマの陰謀に気をつけろ!」 ラスト、いかにも上原さんらしい台詞と共に、自動券売機やATMなどのイメージが映し出される。
以上、アイディアは面白いのだが、アクションシーンが無駄に長く、その分、肝心のドラマ部分が稀薄なエピソードであった。青木家の堕落ぶりや家庭崩壊の様子を、もっとしっかり描いて欲しかったところだ。
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