第14話「新頭脳ブレイン!」(1984年5月5日)
「バイオマン」では、人と機械(AI)の融和・共存は可能か? と言うのがひとつの大きなテーマになっているが、これはその先駆け的なエピソードである。
冒頭、地球を回る無数の人工衛星が次々と落下して、地上に甚大な被害が生じるという事件が起きる。
それら人工衛星のすべてが、重要な科学施設やインフラに命中していることからも、何者かの作為が働いていることは明らかであった。

バイオマンは直ちにその原因を究明すべくバイオジェットで発進したが、彼らの前にメカジャイガン、アンカーカンスが出現する。
アンカーカンスは右手から放つ誘導レーザービームで、人工衛星を任意の地点に墜落させていたのだ。
バイオジェットもそのビームを浴びて制御不能となる。
ピーボは急いで彼らをバイオベースへ帰還させる。
……制御不能なのに、どうやって?
それはともかく、新帝国ギアは国連緊急安全保障理事会に挑戦状を叩きつけた!
国連緊急安全保障理事会「いてー」

ブレイン「見たか、アンカーカンスはこれまでのメカジャイガンを遥かに凌ぐ。何故なら新頭脳ブレインが操っているからだ! 世界で初めてタンパク質合成で作られたコンピューター、限りなく生命体に近く、人間の頭脳など遥かに超えた新しい頭脳だ! 直ちに新帝国ギアに降伏せよ」
そう、アンカーカンスはドクターマンの作り出した人工頭脳によって動かされていたのだ。
ブレインの涼しげで切れのある声は、声優の曽我部和行さん。アニメ「北斗の拳」の風のヒューイ(とても弱い)の声でお馴染みです(お馴染みじゃねーよ)。

ブレインの通告を受けて動揺する国連のシーンは、毎度お馴染み「太陽戦隊サンバルカン」第1話の映像が使い回されている。
ドクターマン「もはや誰も新頭脳ブレインには逆らえぬ。そのブレインを作ったのはこの私だ! 私こそが世界一の科学者だ。地球はたったひとりの天才、ドクターマンが支配すべきことを今日と言う今日こそ思い知らせてやる!」 ドクターマン、自分の天才ぶりに、思わず身震いしそうなほどコーフンしていた。
ドクターマンのような自分の才知に過剰な自信を抱き、常にそれを確認しないと気が済まないタイプを、自画自賛・承認欲求型首領と言い、その系譜には「超獣戦隊ライブマン」の大教授ビアスなどが連なっている。
はっきり言って、あまり上司に持ちたくないタイプであるが、ドクターマンの部下はみんな彼によって作り出されたイエスマンばかりなので、組織運営上、特に支障は見られない。

バイオベースに逃げ戻ったバイオマンも、ブレインへの対策を必死に考えていた。
史朗「新頭脳ブレインは限りなく生命体に近いと言った。そして自ら世界一と自慢したあの態度、もしかしたら奴は感情を持ってるのかもしれない」
ひかる「感情? コンピューターが?」
史朗「
そう! 俺に任せてくれ、奴に挑戦してみる!」
常に暑苦しいほどテンションの高い史朗、他のメンバー、特に女子たちから「急に大声出すのやめて」と内心煙たがられていることに全く気付いていなかった。
史朗、レッドワンの姿でアンカーカンスの前に行き、散々彼を挑発する。

史朗の思惑は図に当たり、業を煮やしたブレインはドクターマンの命令も聞かず、自らアンカーカンスの操縦席から出てしまい、直接レッドワンと対峙する。
ブレイン「私は世界一、ナンバーワン、行け、アンカーカンス!」

ドクターマン「ブレインめ、バイオマンの挑発に乗りおって! ファラ、アクアイガーと共にブレインを抹殺せよ!」
十面鬼ゴルゴスもびっくりの短気なところを見せるドクターマン。
その理不尽なほどの峻厳さにはファラたちも驚きを隠せない。「こいつアホか?」と。

モンスター「ブレインは世界一のコンピューターではありませんか」
ドクターマン「世界一は私どわぁっ!」 ファラ(あ、やっぱりアホだったんだ……)

ビッグスリー「ハーッ!」
「アホには何言っても無駄だ」と言うことで、ファラたちも大人しく服従する。
ほんと、頭の良いバカほど始末に負えないものはないと言う好例である。
そう言えば、大教授ビアスもかなりのアホだった……。
こうして開始早々、ブレインは一時的にドクターマンのコントロールから外れたと言うだけで、仲間からも狙われる羽目になる。
そうとは知らず、ブレインはアンカーカンスと共にバイオマンを海岸に追い詰めるが、油断してピンクファイブに捕まる。と、海から現われたアクアイガーに攻撃され、一緒に海へ転落してしまう。
ひかるとブレインは近くの岩場に打ち上げられるが、すぐに4人に発見される。竜太が、弱っているブレインに岩を落とそうとするが、ひかるが身をもって庇う。

ひかる「やめて!」
史朗「何を言うんだ、ひかる、今そいつを破壊しなくては……」
ひかる「これには感情があると言ったのは郷さんよ」

ひかる「見て、私には殺せないわ!」
史朗「……」
ひかるの真剣な眼差しに、史朗も一瞬たじろぐ。

ファラ「私が始末してあげるわ」
嗄れ声が聞こえたかと思うと、ファラたちが姿を見せる。

ファラ「ふんっ!」
ブレイン「あっ、バリアー!」
ファラはまず鞭(?)から特殊なビームを放ち、ブレインを包んでいた強力なバリアを解除する。

ブレイン「何故私を~?」
ファラ「お前は感情を持ち過ぎた。世界一などとのぼせ上がりすぎた。勝手な行動を取り過ぎたんだ」
身動きできないブレインにもう一度ビームを放つが、咄嗟にひかるがブレインを抱きかかえてよける。

ひかる、とりあえず4人に後を任せて、ブレインを抱えて走り出し、小さな洞窟の中に身を隠す。
ほどなく、ブレインが機能を回復する。

ブレイン「あ……、あ……、何故私を助けた? 何故だ?」
ひかる「メカにも心があることは素晴らしいからよ」
ブレイン「心? なんだそれは」
ひかる「弱いものを慈しむ心よ」 「心は何か」と問われて、間髪入れずにそう答えるひかる。
ひかるの……と言うより番組そのものが持つヒューマニズムが発露した感動的な台詞である。
ブレイン「わからん」
ひかる「分かる筈よ、あなたは世界一のコンピューターでしょ。あなたが示した怒りや憎しみの反対よ」
ブレイン「それが分かればどうなる?」
ひかる「メカも人間も仲良くなれるわ」

ブレイン「仲良く?」
ひかる「ええ、科学が発達すればするほど冷たく潤いのない世界になっていく。でもそれじゃあいけない。あなたのようなメカが心を持ってくれれば、世界はもっと温かいものになる。あなたと私だって友達になれるのよ!」
ブレイン「お前と友達?」
だが、その瞬間、ひかるの背後から飛んできたビームがブレインに命中する。

ファラ「愚か者めが、メカに心などある筈がなかろう!」
ひかる、ブレインを抱えて逃げようとするが、アクアイガーの言葉に立ち止まる。
アクアイガー「優秀なメカとは、ドクターマン様の命令を如何に正確に実行するか、だ。そいつは結局出来損ないだったのさ!」
得々と言い切るアクアイガーであったが、後に自身がドクターマンから見捨てられてスクラップにされてしまうかと思うと悲しくなる。

ひかる「違うわ! あなたたちより何十倍、いえ、何百倍も優れたメカよ、私と友達になれたかもしれない」
その後、4人の仲間が駆けつけ、ひかるも変身していつものバトルとなる。
アクアイガーを撃退した後、ドクターマンの操るアンカーカンスと、バイオロボの戦いに移行。
ドクターマン、頭の良さを自慢するだけあって、アンカーカンスを巧みに操ってバイオロボに猛攻を掛け、バイオロボを圧倒する。

ブレイン「ひかるが、危ない! ひかるぅ……、ひかる、私はあの時、お前と友達になりたい、そう言いたかったのだ。フルパワー!」
ブレインの脳裏に、ひかるとの短い交流が蘇ると、ブレインは残っていた力を振り絞り、一気に空を駆け上がり、アンカーカンスの操縦席に入り込む。
ブレイン「アンカーカンス、私の言うことを聞くんだーっ!」
ブレインはアンカーカンスのコントロールをドクターマンから奪うと、その場に釘付けにさせる。
バイオマンはブレインが乗り込んだことを知らず、その隙にアンカーカンスをスーパーメーザーで斬り裂く。
戦いの後、5人はアンカーカンスから放り出されたブレインを発見する。

ひかる「ブレイン! あなたが助けてくれたのね。知らなかった、あなたがアンカーカンスに戻っていたなんて……」
ひかる、ブレインに頬擦りせんばかりに顔を寄せて話し掛ける。

ブレイン「ひかる、君のような美しい心を持ったコンピューターに、なりたかった……」
ひかる「う、う、ううーっ!」
ひかる、ジュンに縋り付いて号泣する。
ブレイン、「さよーならー!」と叫びながら、自らの体を宙へ躍らせ、海へ落ちたところで爆発して果てるのだった。

ひかる「ブレイン!」
史朗「心が通じたんだ、メカにも。ひかるがブレインを信じたことが、俺たちの勝利につながったんだ」
ひかる「ドクターマン、科学を弄ぶこと、絶対に許さないわ!」
ひかる、ブレインへ手向けの花を投げた後、仲間と共に新たな闘志を燃やすのだった。
以上、なかなか興味深いプロットだったが、尺があまりに短いので、ドラマとしては物足りないエピソードであった。
久しぶりに登場のファラキャットの見せ場もゼロだったし。
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