第56話「アマゾンの毒蝶ギリーラ」(1972年4月22日)
ある夜、山の中の道路を走っていた片山俊作、コウイチ親子の車が、ダムを見下ろす峠に差し掛かったところで、理由もなくエンストする。
さらに得体の知れない怪物が周囲を徘徊しているのを見て、二人は慌てて車から降り、クリーム色をした円形の建物に逃げ込む。

鍵は開いていたが、中に住人の姿はない。二人はとりあえず適当な部屋の中に入るが、ドアが勝手に開いて、廊下に女性らしいシルエットが浮かび上がるが、

九条みわ「イヒヒヒヒ……」
俊作「はっ!」
それは怪人ギリーラの人間体で名を九条みわと言い、演じている建部道子さんはなかなか綺麗なのだが、ほとんど素顔が出て来ないのがちょっと悲しい。
……まぁ、この導入部、はっきり言って要らないと思う。と言うか、片山親子の存在自体、ストーリーには特に関係ないのだ。

翌日、レーシングクラブのニート部屋では、猛と滝が、最近頻発している峠道での車の転落事故について話していた。
猛「この断崖で、最近一ヶ月の間に、車が三台も落ちた」
滝「しかも乗っていた筈の人間は、ひとりとして発見されていない」
猛「ここまでスクラップを捨てに来る奴はいないだろうしな」
滝「行って見るか」
猛「ああ」
何しろ暇だからね……。FBIの滝はともかく、猛の生活費は何処から出ているのだろう?

滝「この断崖だ。乗っていた人をどうかしちまってから、車を突き落としたに違いない」
猛「何故ここを選んだかが問題だ」
滝「山の中で人目につかないからか」
後に、ショッカーの目的は単なる労働力確保の為だったと分かるのだが、ならば、わざわざ無人の車を崖から突き落とす必要はなかっただろう。隠密行動が原則なのだから、そのまま(人間に化けた)戦闘員が離れた場所まで車を乗り捨てて来ればいいだけの話である。
その手間を惜しんで世間の耳目をひくようなことをするから、こうやって開始5分足らずで猛たちに調査に乗り出される羽目になるのだ。

猛「おい、走ってる車を停めさせるにはどうすると思う?」
滝「そうだな、
綺麗な若い女の子を全裸で立たせるか……」
猛「それだっ!」 じゃなくて、
滝「そうだな、小さい女の子がひとりで手を上げているとか、それとも事故を起こさせるか……」
猛「それだ。道路に何か細工して事故を起こさせたんだ」
滝「やっぱりショッカーの仕業か?」
猛「いや、はっきり断定は出来ないが……」
逆に聞きたいけど、今までショッカーの仕業じゃない事件ってありましたっけ?
と、二人は地面に落ちている緑色のガラスの粉のようなものを発見してしゃがみこむ。

滝「車の塗料じゃなさそうだ……」
猛「よせっ!」 指の先に付けたその物質を伸ばした舌先に持っていこうとした滝を、猛が激しい勢いで止める。
その勢いがあまりに強かったので、滝が思わず自分の舌を噛み切る……みたいなギャグを考えたんですが、うまくまとまらなかったのでボツにしました。
猛「うっかりしたことはするんじゃない。猛毒だったらどうするんだ」
滝「はっ、それもそうだ」

地獄大使「これが日本の主な貯水池だ。ここから飲料水が流れ人々の喉を潤す。つまりこれを汚して毒の水にすれば、大勢の人間を一度に片付けることが出来る筈だ」
一方、ショッカーのアジトでは、日本地図のパネルを図示しながら、地獄大使がギリーラや戦闘員たちに今回の作戦の概要を説明していた。
つまり、単純明快なショッカーの得意とする「ダムにこっそり毒を入れちゃおうぜ」系の作戦なのだ。

地獄大使「ギリーラよ、良く聞け、お前の翅の毒鱗粉をカプセルに詰め、貯水池の上から落とす。これが我がショッカーの毒水計画だ!」

ギリーラ「その大混乱に乗じ、日本を征服する為には、大量の毒カプセルを一日で落として回る必要があります」
女性怪人ギリーラの声も、建部道子さんがあてておられる。

猛「蝶の羽についてる鱗粉だ。それも非常に珍しい種類だな」
滝「すると外国産の蝶か」
猛「うん、見ろ、その光っているのが恐ろしい猛毒成分だ」
滝「じゃあさっきは危なかったな」
猛「全くだ、痙攣して即死だったぞ」
大学の研究室であの粉を調べた猛は、それが猛毒を持った鱗粉であることを突き止める。
さらに猛は、最近、アマゾンから毒蝶を持ち帰ったと言う収集家のことを思い出す。

再びショッカーの楽しいアジト。
片山親子を含めた6人の囚人が乱暴に地獄大使の前に引き出される。
ギリーラ「これが今まで集めた捕虜です」
誇らしげに言うギリーラだが、一ヶ月もかけてたったの6人しか掻き集められなかったの?
もっとも、地獄大使はしごく御満悦の様子で、「うむ、よかろう、囚人どもは早速、毒カプセルの作業奴隷として働かせろ。子供は人体実験用に回せ」と命じる。
さらっと「子供は人体実験」と言う地獄大使の冷酷ぶり、ステキです。
俊作「何をする気だ」
地獄大使「コップをこれへ……」
ギリーラ「ヒヒヒヒヒ……」

地獄大使「ふふふふ、お前、これをテストに飲め!」
ただし、実際に子供をどうこうする場面はコードに引っ掛かってNGなので、あわれ、その横にいた成人男性にビーカーに入った怪しげな液体が押し付けられる。
男「う、うう……」
地獄大使「飲むのだ!」

戦闘員に体を押さえられ、口をこじ開けられた男性、液体を無理やり喉に注ぎ込まれる。
男「うーうっ、ううわあ……ぐぇ、ぐわーっ!」
男性、喉をかきむしるようにして苦しみ悶えていたが、

やがて一声絶叫を迸らせると、ばったり床に仰向けに倒れて動かなくなる。
地獄大使(ほんとはただの青汁なんだけどねー) 人間……いや、日本人が如何にその場の雰囲気に流されやすく、思い込みの激しい生き物なのか、地獄大使は実験して見せたのである。
と言うのは嘘だが、折角の貴重な労働力をむざむざ死なせてしまったのはいかにも愚行に見える。
そもそも、今更ギリーラの毒の効果を試す必要なんかないだろう?

その頃、レーシングクラブでは、メンバー総出で古新聞を調べていた。
アマゾンから毒蝶を持ち帰ったと言う収集家の記事を虱潰しに探しているのだ。
今ではまず考えられない光景だが、当時の話としても、普通に新聞社に問い合わせをしたら一発じゃないの? と言う気がする。あるいは、滝の所属するFBIに聞いてみるとかね。

トッコ「これにも載ってないわ。思い違いじゃないの?」
それはそれとして、今回もその巨体に似合わない小学3年生みたいな衣装を着させられているトッコが可愛いのである!
ただ、残念ながら今回も出番はこのレーシングクラブの中だけ。
なかなかお目当ての記事は見付からなかったが、やっとおやっさんが、五郎がかぶっていた折り紙の「かぶと」にその記事を載せた新聞紙が使われていることに気付く。

立花「あった、これ、これ」
ユリ「やっぱり五郎じゃない」

猛「五郎、コラッ!」
五郎「すいませーん」
猛は、ゲンコツを振り上げて五郎を叱る素振りを見せるが、

猛「はっはっはっはっ、良くやった」
一転、その拳を開いて五郎の頭に乗せ、ガシガシと撫でてやるのだった。
猛の……と言うより藤岡さんの厳しさと優しさが良く出ているシーンだと思う。
滝「おかしいな、あのダムの近くだぜ、住所は」
二人は再びバイクを連ねてあの峠へ向かう。

猛「おい、何か引っ掛かる、これは一緒に行かない方が良いかもしれないぞ」
滝「よし、俺が行く。
君はここで待っててくれ」
猛が、
「もう、君だなんて、和也ったら他人行儀なんだからっ!」と、内心つぶやいているところを想像して、ちょっと気持ち悪くなった管理人です。
それにしても「君」はないよね、「君」は。滝は、隼人が登場する前から、猛とは親友の間柄だったんだし。

滝は問題の収集家、九条みわの家を訪ねる。無論、冒頭に出て来たあのクリーム色の建物である。
みわ「あのアマゾンの蝶は私は仮にギリーラと呼んでいますが、正式な名前はまだ決まってませんの……あちらでは悪魔の蝶と呼んで見付けても誰も近寄りませんわ」
滝「そんなに珍しいものでしたら、ますます見たくなりました。是非拝見させて下さい」
みわは滝に頼まれて少し困ったような口ぶりになるが、結局承諾して一旦席を外す。

滝「綺麗な人だ……」
ひとりになると、ついニヤニヤしながら感想を漏らす滝(現在離婚調停中)。
だが、すぐに部屋が暗くなったかと思うと、ドアが開いて不気味なメイクになったみわが現われ、目の前でギリーラに変身する。
しかし、あっさり自分の正体をバラすとは、いかにも芸のないやり方だ。ありきたりだけど、毒入りのコーヒーを勧めるとか、色々あると思うんだけどね。

滝「このうちの人たちをどうした?」
ギリーラ「ショッカーはアマゾンの毒蝶に私の命を注いで、改造人間ギリーラを作ったのだ」
脳まで完全に改造されたみわは、自分の悲惨な運命について、まるっきり他人事のように話す。

毒矢を放ち、それを滝がデスクにあったみわの写真立てで受け止めるが、ギリーラは、かつての自分の姿を見てもまるで動揺しない。
が、ギリーラは続けて攻撃しようとせず、ドアを閉めて滝を閉じ込める。
滝「開けろ、開けて勝負をしろ!」 滝、勝てる見込みもないのにドア越しにそんな怒号をぶつけるが、

ギリーラ「5分で爆発するようにセットしろ。家もろとも吹き飛ばしてやる」
ギリーラはギリーラで、ドアの下に時限爆弾をセットして家ごと爆死させるという、まわりくどいと言うか、大仰なやり方で滝を始末しようとする。
猛はさっきの場所で待機していたが、滝からのSOS信号を受けて直ちに助けに来る。
建物に入ろうとしたところで、ギリーラと鉢合わせする。

猛「ライダー、変身!」
戦闘員を蹴散らしてから、初めて役者の口の動きと合わせて決め台詞を放つ猛。
しかし、相変わらず変身ポーズにはあまり気合が入っていない。

ギリーラ「ライダー、この中で滝が泣いている。行ってみろ!」
ライダー「なにっ」
戦いの途中、ギリーラは何を血迷ったか、わざわざライダーに滝のことを教えてやる。
まぁ、ライダーを滝のところへ行かせて、あわよくば一緒にライダーを殺そうと欲を出したのだろうが、

肝心の時限爆弾が、ドアの下にただ置かれているだけだったので、ライダーはそれを掴んで出てくると、

ヒョイッと言う感じで無造作に放り投げる。
で、その爆弾が落ちた場所が……、
戦闘員「あ……」 爆発に巻き込まれないように少し離れた場所に避難していたギリーラさんたちの足元だったので、管理人、大笑い。
いやー、こういうとぼけた空気と言うか「間」は、狙って出せるものではない。

みんな慌てて木の後ろに隠れて身を屈めるが、

その爆弾の威力と言うのがこれまたしょっぱいもので、これじゃあ「家もろとも吹き飛ばす」なんてことは、最初から無理だったろう。せいぜいドアが壊れるくらいじゃないか。

ギリーラ「しまったぁ、次の手だ!」
戦闘員「イーッ!」
「ダメだコリャ、次行ってみよう!」と、いかりや風に画面からはけていくギリーラたち。
CM後、ギリーラたちはレーシングクラブに現われ、ひとりでいたおやっさんを捕まえ、人質として連れて行く。……いい加減、サクッと殺せば?

猛と滝は、もう一度あの家に入り込み、相手の出方を窺っていたが、レーシングクラブから大急ぎで戻ってきたギリーラがぜーぜー言いながら話し掛ける。
ギリーラの声「生き延びても同じだったろう、本郷猛」
猛「ほざくな、勝負はまだついてないぞ」
ギリーラの声「お前らの負けだ。我々の毒水計画は既にカプセルも完成し、秒読みの段階に入っている」
猛「毒水計画だと? なんだそれは」
ギリーラの声「うるさいねっ、説明はこれだ!」
ショッカーの改造人間、脳を改造される際に漏れなく
バカ になっちゃうらしく、ギリーラは何も知らない猛たちに親切に毒水計画のことを教えてやる。
ギリーラのヒステリックな叫びと共に、二人の足元の床が抜け、

滝「いて」
猛「滝、大丈夫か」
滝「これが奴らの地下のアジトか」
二人は、至れり尽くせりにも、ショッカーのアジトへ案内される。
……
ショッカーのあまりのバカさ加減に目が眩む思いがして、咄嗟には突っ込むことも出来ない管理人であった。
せめて、落とし穴の底にトゲトゲが生えているとか、最低限の悪の仕事はやりましょうよぉ。

もっとも、二人が角を曲がったところで、おやっさんを人質にした地獄大使たちと鉢合わせする。
地獄大使「罠に嵌まったな」
立花「本郷、こいつらダムに毒を流す計画なんだ」
猛「なにぃ、それが毒水計画か!」
はい、人質の分際で、おやっさん、毒水計画の全貌を知り尽くしてました! 多分、二人が来るまでの待ち時間に、地獄大使が自慢げにおやっさんにべらべら喋ったのだろう。
……
もう突っ込む気力もない。

地獄大使「こいつを殺してもいいのか?」
立花「俺は死んでもいい、こいつらやっつけてくれ!」
それでも隙を突いて暴れようとする二人だったが、おやっさんを人質に取られていてはどうしようもなく、抵抗をやめる。

一度奪われた短剣を、猛と滝に突きつける戦闘員。
とりあえず、そのまま顔にブスッと刺したら?
地獄大使はすぐそばの小さな牢獄へ猛を入れると、おやっさんと滝を何処かへ連れて行く。

地獄大使「待て、ギリーラ、いよいよ計画の実行だな。ようし、囚人どもを全部連れて来い」
地獄大使、ギリーラを呼び止めて命令する。
その結果、

片山親子や囚人と一緒に、さっき向こうへ行ったばかりの二人も数珠繋ぎになって連れて来られる。
滝&おやっさん(俺たち、同じところを行ったり来たりしてるような……) 地獄大使「ようし、まず奥多摩にカプセルを落とし、ついでにこいつらを毒水の中に重りをつけて沈めて来るのだ」
さらに、地獄大使、七面倒くさい処刑方法をギリーラに指示する。
いや、なんで毒カプセルの投下と言う重大な任務に、そんなどうでも良い余計な仕事を加えねばならないのだろう? だいたい、そんな囚人を同行させたら、移動に時間が掛かってしょうがないだろう。

地獄大使「本郷、貴様だけは全てが終わってから特別な方法で片付けてやる。ふっはっはははははは……」
地獄大使は鉄格子に顔を近付けてにたにた嬉しそうに、決して実現することのない悪の理想図を気持ち良そうに語ると、
見張りの一人もつけずにその場を立ち去る。
……
突っ込んだら負けだ。
猛(あの毒カプセルをこの中から何とか出来れば……)
おまけに、牢獄から見える位置に、大切な毒カプセルがケースに入れられて積んである。

猛はメモ帳をちぎってライターに火をつけると、それを放り投げて毒カプセルを燃やし、破壊する。
しかし、外から火を近付けただけで、爆発するかなぁ? ちゃんとケースに入っているのに。
これも、戦闘員をひとり残しておけば余裕で防げた事態だよね。それ以前に、猛を縛り上げもせずに牢獄へ入れておいた時点でアウトなのだが。
それはさておき、猛、怒り狂う地獄大使の前に改めて連れて来られる。

地獄大使「ていっ、ていっ」
猛「あ、ああっ……」
地獄大使、鞭をふるって猛を痛め付け、猛も思わず内股になって喘ぎ声を漏らす。

地獄大使「へっへっ」
猛「いりゃっ!」
が、それは猛の芝居で、左右の戦闘員を支えにして、反動をつけて思いっきり両足を突き出して地獄大使を蹴り上げる。

猛「ライダー、変身!」
首領「……」
そしてショッカーのシンボルマークの前にジャンプすると、今回、二度目の変身。
今回はとりわけ地獄大使や怪人の行動がおバカなので、首領も呆れ果てたのか、終始無言である。
ライダーはアジトを脱出すると、サイクロンを駆って奥多摩のダムへ急ぐ。
そのダムでは、今しも囚人たちの処刑と、毒カプセルの投入が実行されようとしていた。
ちなみに地獄大使が人体実験に使うとか言っていた俊作の息子は、囚人と一緒にピンピンしてます。

滝「俺たちをどうする気だ?」
いや、さっき地獄大使の言ったこと聞いてたでしょ?

ギリーラ「貴様らを殺す前にこのカプセルをダムの中に入れるのを見せてやる」
男「助けてくれぇーっ!」(聞いてない)
が、ギリーラが愚図愚図しているうちにライダーが到着。
漸くギリーラがカプセルを投げるが、水面に落ちる前に空中でキャッチされてしまう。
ところで、前半、毒カプセルを一日で落として回るとか言ってたけど、その話もいつの間にかどっか行っちゃったらしい。

で、ダム周辺を舞台にいつものバトルに突入する。ギリーラが必殺の毒矢を放つが、
ライダー「俺には通用せん」
……の一言で片付けられている。
最後はライダーキックを浴びてダムの上に落ちて爆発し、毒水計画は案の定、失敗に終わる。
こんなしょうもない作戦の為に人生を台無しにされた九条みわさんが不憫でならない。

戦いの後も、猛はライダーの姿のまま、人々の見送りを受けて走り去るのだった。
コウイチ「ライダー、さようならー」
俊作「……ところで、我々はどうやって帰ればいいんでしょう?」
立花「……あ」
滝「……あ」

猛「……あ」
30分ぐらいしてから、ダムにみんなを置いてけぼりにしてきたことに気付く猛だった。
以上、今回も壮絶な「ボケとツッコミ」バトルが繰り広げられる、管理人にとってはまさに死闘であった。
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