第27話「白い悪魔の恐怖」(1980年10月1日)
静かな夜の住宅地。
道の真ん中にあるマンホールの孔から、白いシェービングクリームのようなものがむくむくと湧き上がる。

と、(助監督のキューを)待ってましたとばかりに、すっかり出来上がった酔っ払いが「カラスー、何故鳴くのーー、カラスの勝手でしょー」と歌いながら、千鳥足で近付いてくる。

正統派の酔っ払いらしく、手には得体の知れない折り詰めを紐でくくったものをぶら下げていたが、ホルスターに差したタバコをキセルのように横咥えしているのがNGです。
普通、ぐでんぐでんに酔っ払った奴が、歩きタバコはしないだろう(タバコ吸わないので良く分からんが)。
酔っ払い「こんな夜中に洗濯なんかしやがって……」

酔っ払い、恐れる色もなくその泡に近寄るが、いきなりその泡が生き物のように蠢いてその体にまとわりつき、遂には全身を覆い尽くす。

仰向けに倒れた酔っ払いは「ああーっ!」と、一声悲鳴を上げると動かなくなり、やがて泡が薄くなっていくと、服や靴だけ残して、その肉体が消滅していた。
要するに、生物らしき泡に食い尽くされてしまったのだろう。
「仮面ライダー」だと、こんな場合、服だけ残すなどと言う面倒くさいことはせず、一気に白骨にしてしまう手抜き、いや、簡易撮影法が採られることが多いが、円谷プロはさすがに仕事がきっちりしている。
もっとも、物語後半で、この酔っ払いが普通に出てくるのはいささか解せない。
謎の泡はその後も街を徘徊し、犠牲者の数を増やしていく。

宇宙生物学の権威であり、エミ隊員のパパでもある城野博士が、UGM作戦室に出向いて、今度の事件の証拠品について隊員たちに説明している。
城野「ここに付着しているシミは、地球以外の生物の体液であることが分かりました」
オオヤマ「地球防衛軍以外の宇宙艇が地球に接近した報告はありません」
城野は、その生物が地球防衛軍の宇宙艇にくっついて地球に侵入したのではないかと推理する。

オオヤマ「しかし宇宙艇の表面は、地球に進入する時には空気との摩擦で摂氏千数百度になります。それに耐えて生きてる生物がいるとは……」
城野博士は、ノーベル賞を取った青山博士なら、もっと詳しいことが分かるだろうと青山博士を招聘してみることを勧める。
城野「青山博士は木星で3年間、宇宙生物の研究をされて1週間前に地球に帰ってこられたばかりです」
城野がボタンを押して、壁のモニターに、その青山博士の肖像を映し出す。
それがコワモテの睦五郎さんだったので、隊員たちは一様に(こいつが犯人だな)と、確信するのであった。
ま、俳優の顔はさておき、木星から1週間前に帰ってきたと言う時点で怪し過ぎるよね。
その夜も、隊員たちはパトロールをしていたが、

携帯型のセンサーを手に見回りをしていたエミ隊員が、センサーの反応を頼りにとある民家に上がり込む。
エミ「どなたかいらっしゃいませんか。お留守ですか」

もしやと思って土足のまま踏み込むと、台所のテーブルには、さっきまで食事を取っていたと思われる家族の服だけが残されていた。
子供の野球帽が床に落ちているのを見て心を痛めるエミであったが、泡はまだその周囲に残っていて、今度はエミが入ってきた勝手口や窓から、エミ目掛けてぐんぐん迫ってくる。

エミ、慌てて別の出口へ向かい、ぷるぷるのおっぱいが落っこちそうになる(註・なりません)。
だが、そちらの出口からも大量の泡が入り込もうとしているところだった。
エミ、一瞬その場に立ち尽くすが、すぐ通信機で一緒にパトロールをしていた猛に助けを求める。

エミ「矢的隊員!」
猛「これが人間を消してしまう犯人か。この家の人たちは?」
エミ「……」(無言で首を振る)
猛、手にした銃から火炎を放射するが、泡は燃えも溶けもしない。だが、玄関のそばにあったホースから水を撒くと、泡はそのまま排水溝の中へ押し流される。

猛は、消えていく泡の上を、何かの影が飛んでいくのを目撃する。
死ぬ思いをしたエミたちからの報告を受けたオオヤマは、
オオヤマ「そうか、大変だったな」 エミ「そんだけかいっっっ!!!」 オオヤマ「それより……」 猛「それよりってなんだよ! それよりって!」 嘘はさておき、オオヤマの淡々としたくちぶりに、猛やエミが内心ムカッとしていたことは大いにありうる。
オオヤマ「青山博士がもうすぐここへ来られる。その場でお前たちが見たことを報告しろ。代わりにな、フジモリとイケダの二人をやる」
オオヤマの後ろに立っているハラダとタジマ、いつの間にイメチェンしたのか、まるで別人のようだなと思っていたら、ほんとに別人だったので大笑い。
そう、何の説明もなく、ハラダとタジマは26話を最後に転属となり、代わりにまた、容易に顔と名前が一致しそうもない二人が配属されたのである。
それにしても、もうちょっと特徴のある顔した人をキャスティングして欲しいものだ。これじゃあ、ハラダ、タジマと交替させた意味がないではないか。

二人が意気込んで廊下を歩いていると、向こうから来たお天気お姉さんのユリ子と出会う。
ユリ子「あら、あなたたち新人ね」

フジモリ「UGM3期、フジモリです」

イケダ「同じく6期、イケダです。よろしく」

ユリ子「あたし、気象班のユリ子です。どうぞよろしく」
……どうして当時のスタッフには、ハラダとタジマの代わりにユリ子や京子先生のような可愛い女性隊員を加入させようと言う発想がなかったのだろうか?
さて、UGM本部の前では、イトウが到着予定の青山博士を待っていた。マスコミ関係者や警備で、その周辺は夜だというのにごった返していた。

セラ「イトウチーフ!」
イトウ「なんだ、セラ、お前カメラマンになったのか」
セラ「いやー、写真部の奴が急病でね。ピンチヒッターなんですよ」
などと言ってると、お待ち兼ねの青山博士を乗せた車が入ってくる。
たちまちマスコミが群がり、コメントを求めたり、カメラのフラッシュを浴びせたりする。

青山博士、質問には何も答えず、フラッシュを焚かれるたびに、手で目を隠していた。

少し離れたところから見ていたイトウは、(何故、目を隠すのだろう?)と、疑問を抱く。
眩しいからでは? さて、青山博士は作戦室へ通され、あの体液を調べていたが、

青山「これはもしかすると、アルゴ星人のものかもしれない。私も会ったことがないので良く分からんのだが、
会ったという宇宙人から、色々データを見せて貰ったことがある」
さすがノーベル賞受賞者である。さらっと
「宇宙人と会ったことあるよー」と仰る。

青山「アルゴ星は今から100年前に死滅して縮小を続け、遂にブラックホールになった。それからアルゴ星人は宇宙を炭酸ガスを求めて移動してると言う」
オオヤマ「炭酸ガス?」
青山「アルゴ星人にとって炭酸ガスは我々人間の酸素と同じなんだな」
イトウ「どんな姿をしてるんですか」
青山「はっきりした形がなく、よく見えないと言われている。宇宙の高級生命体の進化の最後の姿は実体のない想念だけの生物になるといわれている。アルゴ星人ははそう言う高級生命体への進化の途上にあるようだ。人間がどんな背伸びをしても勝てない知能を持った星人だ」
イトウ「あの泡、あれは一体アルゴ星人のなんなんですか」
青山「アルゴ星人と泡は全然関係がないと思える。また別のエイリアンが侵入している可能性が強い。アルゴ星人は戦いを好まない平和な星人だが、一旦怒らせるとこの宇宙では一番強い」
青山博士、「良く分からん」と言う割に、歩くアルゴ星人百科事典のように明快に説明する。

そこへ、猛とエミがパトロールから戻ってくる。
二人が入ってきた途端、

博士は急に険しい目付きになって、猛の顔を凝視する。
青山博士(その乳、揉ませろ……)
猛(断る、これは俺のモンだ!) 余人には入り込めないテレパシーで会話を交わす猛と青山博士であった。
……嘘である。
実は青山博士はアルゴ星人に憑依されていて、直ちに猛がウルトラマン80であることを見抜いたのだ。
やがて青山博士は立ち上がり、「アルゴ星人には勝てないから戦わない方が良い」と言う忠告を残し、帰っていく。
猛(アルゴ星人は平和な宇宙人ではない。生物の知能を吸い取って高級生命体になろうとするエゴな星人だと聞いている)
猛、青山博士の背中を見送りながら、心の中でつぶやくのだが、猛は「アルゴ星人は平和な宇宙人」だと言う青山博士の説明は聞いてない筈なんだけどね。
一方、城野博士も、昔会った青山博士とはまるで別人のようだったと、オオヤマに吐露する。
そこへセラがいそいそと入ってくる。

セラ「ちょっとこれ見て下さいよ」
猛「お、セラ、お前写真上手くなったなぁ」

セラが見せたかったのは、青山博士を写した時のもので、博士の影が怪物のような異形の形になっているのを、カメラはばっちり捉えていたのである。
しかし、宇宙人に憑依されているからって、影の形が変わるもんかね?
猛「あの影と同じだ」
猛、エミ隊員を襲った泡の上を飛んでいった影と、その影が同じものであることに気付き、直ちに青山博士の研究所を訪ねる。

で、玄関のドアを開けて応対に出たのが、最初にやられたあの酔っ払いだったのである。
猛も、被害者の写真としてその顔を見知っていたので、ギョッとする。
しかし、泡に襲われたときの感じでは、いかにも泡に食べられたり吸収されたりしたようで、拉致されたとか物質転送されたとか言う風には全然見えなかったので、この設定はNGだったと思う。
猛「君は……」
帰ってきた酔っ払い「どうぞ」
男の顔は真っ白で、仮面のように無表情で、いかにも宇宙人に操られていると言う感じであった。

猛、男に案内されて研究室へ入ると、猛が来るのが分かっていたかのように青山博士がにこやかに振り向き、「良く来てくれたな、ウルトラマン80」と、猛を本当の名前を呼ぶ。
猛「この地球へ来て何をするつもりだ、アルゴ星人」
青山「いや、私は青山だよ。前にも言ったようにアルゴ星人は色んな生命体の知能を吸い取ることにより、実体がなくなりつつある。だから私は地球では青山博士の体を借りている」
猛「地球人を襲うときは泡になって……」
青山「いや、あの泡は私の宇宙服だよ」
あれこれ話していると、急に青山博士が苦しみだし、体が青白く発光する。

猛「アルゴ星人?」
青山「いや、私はアルゴ星人ではない。アルゴ星人は私の体から出て行った。何処かで地球人を襲っているに違いない」
アルゴ星人、何故か要談中に、青山の体から出て行き、ご飯を食べに行ってしまう。
ストーリー上の都合とはいえ、このタイミングで抜け出るのはさすがにおかしいのでは?
猛「アルゴ星人と何処で会ったんですか」
青山「私が宇宙艇で地球へ帰る途中だった……」
ここで、青山がアルゴ星人と遭遇した時の様子が回想される。

航行中の宇宙艇の窓にあの白い泡が張り付き、あっという間に内部に侵入されてしまう。
貪欲に知識を求めていた青山は、それが神のごとき知性を持つと言われるアルゴ星人だと知って、むしろ進んで憑依されたらしい。

青山「だが奴は神ではなかった。悪魔よりずっと悪賢いエイリアンだったのだ」
猛「アルゴ星人が地球を狙う目的は何なんです」
青山「アルゴ星人にとって地球人の知能は若く、素晴らしいエネルギー源なのだ。
人間が若鶏を食べるようなもんだ」
猛「ひどい、それじゃ、地球はアルゴ星人の鶏小屋だ」
アルゴ星人にとっての地球人を、地球人にとっての若鶏にたとえる青山博士。
それに憤慨する猛だが、ひたすら食われるだけの鶏からすれば、地球人もアルゴ星人も似たようなものではないだろうか。
などとやってると、再び博士の体が発光して、アルゴ星人の人格に変わる。
……と言っても、キャラクター的には、憑依前、憑依後で、ほとんど同じなんだけどね。

アルゴ星人に憑依された青山博士、いきなり猛に力道山直伝の空手チョップを叩き込むと、かねて用意していた装置の中に、猛を閉じ込めることに成功する。
青山「ウルトラマン80はここにいる。あとはUGMを叩き潰せばこの地球は私のものになる」

青山博士は、さらに装置についているレバーを倒し、その中に常時青いバリアーが張られている状態にして、研究所から出て行く。
その後、アルゴ星人は巨大化して暴れ出し、UGMの各戦闘機との戦いとなる。

一方、猛はあの装置の中で精神を集中させていた。
ナレ「ウルトラマン80は気力を集中した。このバリアの中でその力が通じるかどうかも分からない。それに体が持ち堪えるかどうかも分からない。しかし、これしかないのだ!」
なんだか良く分かりませんが、「これしかない」そうです。

猛が気合を入れるとバリアーが消え、猛は80に変身、研究所の建物を突き破って登場する。

80、アルゴ星人にあの白い泡を吹きかけられて苦戦する。
だが、薄れ行く意識の中で、青山博士がカメラのフラッシュを極度に嫌っていたことを思い出し……って、それを見ていたのはイトウだったと思うのだが……両手をバツ型にクロスさせてまばゆい光を発し、アルゴ星人をたじろがせる。

そして、体を一回転させて一瞬で泡を吹き飛ばす映像が、なかなかカッコイイのです。
最後はサクシウム光線によって、アルゴ星人はあえなく撃破される。
その、神か悪魔かと謳われた高い知性を全く生かすことなく……。

イトウ「泡にやられた被害者は?」
城野「青山博士もそうだが、まだみんな眠りから覚めん」
ラスト、いつものようにほのぼのした会話を交わすUGM隊員たちであったが、城野博士の台詞から、全ての被害者は生きていて、恐らく研究所に集められていたことが判明する。
……うーん、やっぱり釈然としない。
たとえば人々をさらって来て研究所に集め、猛を閉じ込めたような機械で、彼らの知能だけ吸い取る……みたいな描写があれば納得できるんだけどね。
おまけに彼らの意識が戻らないまま放送が終わってしまうと言う、実にすっきりしない結末となる。
ついでに、折角、城野博士とエミが一緒にいるのに、親子らしい会話が一切ないと言うのも物足りなかった。
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