第30話「第一部完結 唯vs翔 運命の戦い!」(1987年7月23日)
冒頭、翔の寝所の奥深く、翔秘蔵の男雛しかない雛壇に近付く修験者風の二人の若者。

影に仕える呪道衆の九佐(きゅうざ)と十佐(じゅうざ)と言う、大家族番組からオファーが来そうな兄弟であった。
ミヨズ「何者じゃっ! 呪道衆・九佐、十佐、おのれ、何をしておる!」
が、男雛に手をかけたところで翔の腹心・ミヨズが現われ、鞭のように鋭く舌を舞わせる。

二人はその男雛を盗む為に侵入したようであった。兄の九佐が命懸けでミヨズを引き止めている間に、弟の十佐は男雛を持って脱出する。
九佐がオトヒの帯で必殺仕事人みたいに首を吊られる様子が、シルエットとなって映し出される。
OPタイトル後、

前回のラスト同様、結花が深刻な顔で仏壇の前に座り、若い母親と二人の幼い子供が映った古い写真を手に、父親の遺影に向かって語りかけていた。
結花(父さん、唯は本当に私たちの妹なの? 父さん……)
唯が2階から降りてきたので、結花は素早く写真をポケットに突っ込む。

唯「なに見よったと?」
結花「なんでもないわ。唯……」
唯「うん?」
結花「……お腹空いてる?」
唯「うん」
結花「じゃあご飯にしましょ」
結花、じっと唯の顔を見詰めていたが、やがて温かな笑みを浮かべ、何事もなかったように日常的な言葉を掛ける。

サブタイトル表示後、ミヨズは直ちに男雛を十佐から奪還する為の刺客、雷山衆の三人(雷神、竜神、虎神)を翔の御前に呼び寄せていた。
雷神「呪道衆と言えば、呪いを掛けて殺すを術とするものたち、まさか姫様を」
ミヨズ「愚か者が! 呪道衆がどのような呪いを掛けたとて、姫様に通じる筈もあるまい!」
雷神「申し訳ございません!」
雷神の翔の実力を軽んずるような発言に、ミヨズが美しい顔を怒りに染めて叱り飛ばす。
それにしても整ったお顔と言い、威厳のある凛とした声と言い、歯切れの良い台詞回しと言い、このシーンのミヨズは実に魅力的である。

翔「人形が泣いておる。はよう、わらわのもとに帰りたいと泣いておる。人形、取り返してたもう」
平和な星流学園の昼休み、屋上で結花と依田が話している。

結花「唯は本当の妹なの? 風魔の里で、八重と言うおばあさんがくれたの。裏を見て……私が2才、由真が1才って書いてあるわ。由真が1才のときなら、唯はもう生まれている筈でしょ。もし生まれてないにしても、母さんのお腹の中にはいた筈だわ。でも、母さんのお腹は大きくない。唯はその時、何処にいたの? 唯は本当に私たちの……」
結花は、風魔の里で手に入れた写真に図らずも写り込んだ事実に気付き、唯は自分たちの実の妹ではないのではないか? と言う疑惑を抱いていたのだ。
もっとも、既に唯を出産した後で、単に唯がそこに映っていないだけと言うこともありうると思うが。

依田「唯は風間小太郎の娘だ。お前たちの父、小太郎がそう言った筈」
結花「でも」
依田「父を信じられないのか? 迷うな」
依田、おっかぶせるように結花に言い聞かすと、その写真を
びりびりに引き裂き、あまつさえその場に放り捨てて行ってしまう。
いや、さすがに他人の家族写真を……それも、家が火事になったのでほとんど残ってない筈の写真を、本人の目の前で、無断でやぶきますか、普通?
それに対して結花が全く反応しないのも変である。
その夜、唯は唯で、風魔の里から帰ってから明らかに様子のおかしい結花について、由真に相談していた。

唯「やっぱおかしかぁ、結花姉ちゃん、なんか悩んじょる」
由真「いいじゃねえか、ほっとけよ」

唯「じゃけん、こんげな深刻な顔してご飯作りよるとよー」
唯、自ら結花の顔を再現して訴える。

由真「お前、それ、どう言う顔?」
唯「深刻に悩んじょる顔じゃ」
相変わらず、とてもスケバンには見えないガーリーな髪形の由真が可愛いのです!

由真「ふふふふっ、お前がやるとサルが困ってるような顔にしか見えないよ、ふふふっ」
唯「なんてやー」

で、まあ、例によって例のごとく、くんずほぐれつのキャットバトルに雪崩れ込む。
もっとも、今回は階下から結花の「ご飯よー」と言う声が飛んできたので本格的な喧嘩になる前に終わる。

スポーティーなハーフパンツとサスペンダーの組み合わせも似合っているが、こうして唯と並ぶと由真が際立って大きく見える。

同じ頃、追っ手の眼を逃れて山奥の洞窟の中に身を潜めていた十佐が、あの男雛を使って、得意の呪術を仕掛けようとしていた。
十佐「アビラウンケンソワカ……」
無論、その対象は、呪道衆の怨敵である(後述)翔の筈だったのだが……。

夕食の席で、由真が唯の懸念を姉に漏らす。結花は表面的には何気ない顔を装い、
結花「何も悩んでなんかいないわよ。そうねえ、悩みと言えば……好きになるようなイイ男がいないことかな」
由真「ほらみろ、考え過ぎなんだよ、お前はー」
唯「じゃけん、結花姉ちゃん、元気なかったじゃろ、じゃから……」
上の空で自分の茶碗にご飯をよそって、それが山盛りになったのをしゃもじで平らに掻き落とすのが、いかにも体重を気にする女の子らしくて可愛いのである!

結花「心配してくれたの? ありがとう。おかわりは?」
唯、笑顔で自分の茶碗を差し出すが、にわかに背中に激痛を感じてそれを落としてしまう。
しかし、その高さから落ちた茶碗が三つに割れるのは、ドラマ的にはありがちとはいえ、いかにも嘘っぽい。おまけに、床にはカーペットが敷かれているし。
結花「唯?」
由真「どうしたんだよ」
唯「なんか急に背中が……」
当然ながら、彼らにはそれが十佐の呪術によるものだとは分からない。
その後、唯が勉強している頃、十佐が渾身の恨みを込めて針を男雛の体に突き立てる。

と、唯が持っている女雛がガタガタと揺れ始めたかと思うと、

唯「うーっ、うう……」
唯、さらに強烈な痛みを感じて、その場でのた打ち回る。
その呻き声は、家の外に立っている雷山衆のひとりの耳に届くほどだった。

CM後、知らせを受けた依田が慌てて風間家にやってくる。
依田「どうした」
結花「突然苦しみ出して」
由真「人形掴んだら静かになったんだけど……」
関係ないけど、このカットの由真の座り方がめっちゃ可愛い。
……あれ、最近なんだか妙に由真のことが気になるなぁ。
ひょっとして、これは恋?(うるせえ)
雛人形をしっかり胸に抱いて、高熱に浮かされているように脂汗をかいている唯を見た依田は、「いかん、呪殺の術を掛けられている」と、一発で見抜く。

由真「なんだよ、それ」
依田「呪殺と言ってな、相手の身に着けているものや、大切にしているものを盗み、そのものに呪いを掛けて殺すと言う恐ろしい術だ。呪道衆が良く使う。唯は、何か盗まれたものは?」

由真「そんなのわかんねーよ」
結花「このままだと、唯は?」
依田によると、あの女雛が、唯を呪いから護っているので、なんとかあの程度で済んでいるらしい。

十佐「何故だ、何故、呪いが通じないのだ? やはり、翔は……そうか、雛人形は男雛と女雛が揃わなければ……」
十佐クンは十佐クンで、その必殺の呪いが関係のない筈の唯に及んでいるとも知らず、一向に効き目がないと首をひねっていた。

雷神「やはり翔様が言われたとおりか」
雷竜「はい、物凄い苦しみようで、あれは間違いなく呪殺の術が掛けられた様子」
雷虎「しかし、何故風魔の娘に呪いが掛かるのだ?」
雷神「わからん、が、十佐は必ず風魔の娘たちのところに現われると翔様は仰ったのだ。もう少し待ってみよう」
能舞台の上で、今後の対応を話し合う雷山衆(どっちが雷竜で雷虎なのか分からんけど)。

一方、依田たちは唯に掛けられた呪いを解こうとあれこれ調べていたが、由真の前に、高校生の格好をした十佐が、堂々と名乗って現われる。
気の短い由真は、相手の言葉に一切耳を貸さず、十佐を捕まえてその場で殺しかねない勢いだったが、依田が止めに入る。
十佐「頼む、お前たちが持っている雛人形、貸してくれ」
十佐はとりあえず、風間家に連れて来られる。意識も戻らない唯に対面させられると、

十佐「違う、俺が呪いを掛けたのは翔だ。この娘ではない」
由真「だったらどうして唯が!」
依田「話は後だ。とにかく呪殺の術を解いてやれ」
十佐がその場で呪文を唱えると、たちまち唯は意識を取り戻し、布団の上に体を起こす。

十佐「呪道衆は翔に良いように利用されていた。それに気付いて影から抜けようとしたら、一族、皆殺しにされて……やっと生き残ったのは俺と兄さんだけだった。翔の奴を倒そうと思って……」
1階に降りて、改めて十佐の話に耳を傾けている依田たち。
十佐が呪いを掛ける為に翔から男雛を盗んだと聞き、由真は家が父親ごと吹っ飛んだ時、焼け残った一枚の写真……あの男雛と女雛が並んで写っている……を十佐に見せて確認する。
由真「これと同じ奴かい」
十佐「これだ」
唯「なんで、なんでじゃ、なんで翔がわちが持っちょる女雛と対の男雛を持っちょるんじゃ?」

唯「依田先生、なんでじゃ?」
依田「知らん、何故だかは知らん」
唯のストレートな問い掛けに、素知らぬ顔で答える依田の顔は、誰がどう見ても何もかも知ってる顔だった。

唯「じゃけん、なんで……」
結花「もしかしたら、翔と唯は……」
依田「結花!」
由真「姉貴、何言うんだよ!」
結花の胸中で、以前から抱いていた唯の素性に関する疑問と、今回の雛人形の疑問とがぶつかり、結花はぽつりと核心に触れるような言葉を吐き出し、依田が鋭く制止する。
唯「結花姉ちゃん、どういうことじゃ」
結花「……」
当の唯から問い詰められるが、結花は目をそらして何も答えない。
唯は、十佐にその男雛を見せて欲しいと頼み、十佐は唯の雛人形を貸してくれるのなら見せても良いと条件を出す。
十佐「男雛と女雛を並べて術を掛ければ、翔を倒せるかも」
依田「待て、それは危険過ぎる。呪いが翔ではなく、唯に掛かったら?」
依田の指摘に、若者たちは一様に黙りこくる。その沈黙を破って、

唯「それでもいい、わちが持っちょる女雛と並べてそれで翔が倒せるのかも知れんのなら、その可能性に賭けて見る。わち、風間小太郎の娘やもん。翔を倒さにゃいかんのじゃ」
一同(どこ見て喋っとんだ、コイツは?) 唯の熱意に押し切られる形で、依田たちは十佐の潜伏している洞窟へ向かうことになる。
だが、当然その動きは、雷山衆の耳目を通じて翔に知らされる。

翔「動き出したか、唯……ミヨズ、オトヒ、出掛けるぞえ」
ミヨズ&オトヒ(ぞえって……) こうして翔が、20話以来、久しぶりにお日様の下へ姿を現わすこととなる。
さて、道中の様子は省くが、5人はその洞窟に辿り着き、唯は約束どおり、自分の女雛を十佐に貸し与える。

由真「唯、お前、死ぬかもしれないんだぜ?」
唯「いいんじゃ、十佐さん、はじめちくり」
十佐(くりって……) 唯の言葉を受けて、十佐が二つの雛人形を使って呪文を唱え始めるが、背後から飛んできた吹き矢が十佐の肩に突き刺さる。
無論、雷山衆による攻撃であった。
これからしばし、森の中での激しいバトル(お楽しみタイム)となります。

雷山衆のひとりから逃げる由真、

はい、ここで、「スケバン刑事」シリーズでは珍しいパン チラが炸裂するんですねえ。

雷山衆は、炎を使うのが得意らしく、逃げる由真に向かって炎が生き物のように伸びていく。

だが、忍びとして数々の修羅場をくぐりぬけた由真の敵ではなく、身代わりの術に引っ掛かってあっさり由真に首を締められる。

三味線の勇次のように敵を仕留めた後、カメラの方を見る由真がとてもカッコイイのである。
依田も結花も、そこそこ苦戦するが、それぞれ雷山衆のひとりを倒し、ひとまず戦いは終わる。
と、二つの人形を持って森から山の中へ逃げていた唯の前に、翔とミヨズ、オトヒが立ちはだかる。

翔「余の人形、返してたもー」

唯「なんてやー」
……
実は二人は実の双子だと後に判明するのだが、どちらも
言葉遣いが変だと言う点では妙に一致している。
この二人では、そもそもまともに会話が成り立たないような気もするのだが……。
翔が超能力(要するにフォースです)で唯の動きを止め、雛人形を二つとも引き寄せようとしているところへ、依田たちが駆けつける。
結花は、ある考えがあって宙に浮いている女雛に金属製の折鶴を投げて刺すが、

果たして今度は翔が苦痛に顔を歪める。
翔は唯の持っていた女雛をキャッチすると、刺さった折鶴を外して投げ捨てる。
結花「やっぱり翔と唯は……」
結花、唯と翔の間に何らかの繋がりがあることを確信する。
唯、女雛は取られたが、代わりにヨーヨーで地面に落ちた男雛を巻き取り、回収する。つまり、互いの持っている雛人形が入れ替わったことになる。

燃える闘志を瞳に漲らせて、翔を睨み据える唯。

唯「待てーっ!」
さっさと立ち去ろうとする翔たち(男雛を取られたまま引き揚げるのは変だが……)を、唯が追い掛けようとするが、

それを阻止するように、唯の目の前で激しい爆発が連続的に起きる。
ここはかなりの迫力だが、一番怖かったのは何気に丘の上にいる翔たちだったのでは?
唯が目を開くと、翔たちは忽然と姿を消していた。

唯「なんでじゃ、翔ーっ! なんでお前がこの雛人形を持っちょるんじゃーっ! なんでじゃ、なんでなんじゃ……これは、この雛人形は母ちゃんの形見……なんでじゃ、なんでじゃ、なんでじゃーっ!」
人形を抱く唯の叫び声が、荒野に空しく響き渡る……。
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