第1話「決闘!すずめヶ丘」(1971年10月3日)
「好き!すき!!魔女先生」は、1971年~72年にTBS系列で放送されたSF学園コメディである。
……と言いつつ、つい半年前までは一度も見たことのない作品だったんだけどね。
まぁ、「特撮ヒロイン画報」などでタイトルやスチールくらいは見ていたが、正直、まったく何の関心も持っていなかったのだ。ところが、去年の春頃に、とある読者の方からコメントで推薦して頂いたので、特に期待もせずに、とりあえずDVDを見たのである。
しかし、実際に見てみたらこれがまさかのサヨナラ満塁逆転ホームラン!(なんのこっちゃ)
要するに予想外の大ヒットだと判明した訳である。
もっとも、見ていきなり惚れ込んだ訳ではなく、最初はまあまあ面白いな、程度の反応だったのだが、何度か見ているうちに徐々に引き込まれていき、遂には「白熱化」現象が起きてしまったと言う次第。
「白熱化」と言うのは、管理人の作った言葉で、ひとつのドラマや特撮について熱狂的に入れあげ、長期間にわたって毎日のように繰り返し見てしまう現象のことである。過去には、「不良少女とよばれて」「セーラー服反逆同盟」「少女コマンドーいづみ」などでも見られたが、今回のケースはそれ以上の熱中度であった。
現に昨夜も見てるんだよね。多分、今夜も見るだろう。
何故、そこまで好きになってしまったのか。作品自体の面白さ(辻真先さんのシナリオが絶品!)もあるのだが、なによりヒロインの月ひかるを演じた菊容子さんへの思い入れがその要因となっていると思われる。
際立って美人と言う訳ではないのだが、くるくると変わるその豊かな表情と、確かな演技力、
ムチムチした太もも、人柄を感じさせる明るく美しい声……等等、とにかくスチールでは伝わらない魅力に溢れているのだ。
さらに、ネットで経歴を調べたら、この作品の僅か3年後、
24歳の若さで亡くなっていたと知り、大いにショックを受けたものである。
あんなに素晴らしい女優が、人生始まったばかりと言う時期に、しかもあんな形で命を落とされていたとは……だから、管理人はせめて彼女の仕事と魅力を、ひとりでも多くの人に知って貰いたいと、とりあえず彼女の代表作(と言って良いだろう)である、この「魔女先生」のレビューを、かつてないほどの気合を入れて書こうと決意したのである。
(その一環として、去年の年末に「泣いてたまるか」の菊さん出演回を取り上げている)
ま、あまり個人的なことをだらだらと書いていても仕方ないので、前置きはこのくらいにして早速第1話のレビューを開始したいと思う。
そうそう、言い忘れていたが、原作は例によって石森章太郎先生である。

OPは、月ひかるの左手中指に嵌めたムーンライトリングから不思議な光が渦を巻きながら広がり、その上にタイトルが重なると言う映像からスタート。
OPは堀江美都子さんの「かぐや姫先生のうた」である。
あくまで女児向けの作品なので、同時期に放送されていた「仮面ライダー」などのように勇ましくはない。
タイトルバックは、登場人物たちの映像などで構成された、ごく普通のもの。

月の母船から、超能力の源、ムーンライトパワーを、ムーンライトリングで受け取っているシーン。
余談だが、この歌詞を見るとつい「痴女じゃないのかな」と言うフレーズが浮かんでしまう管理人であった。
OP後、まずサブタイトルが表示される。途中から、ナレーターの天地総子さんによってサブタイトルが読み上げられるようになるが、初期は無声である。

団地の近くの路上に停めてある、数台の車に三人の悪ガキたちがペンキで悪戯書きをしている。
正夫「へへー、みんなびっくりするぞぉ」
そのリーダー格の大柄な少年・竜村正夫、演じるのは後にゴーグルイエローとなる藤江喜幸さん。
最近まで知らなかったのだが、藤江さんて、結構色んな作品に出ている子役だったんだね。

思う存分絵筆をふるって、意気揚々と学校へ行こうとした三人の前に、パッと現われたのが、このドラマのヒロイン・月ひかるであった。菊容子さんは当時21歳。

当然叱られるものと後ずさりする三人であったが、
ひかる「ちょっと、貸してごらーん」
子供からペンキのバケツと絵筆を借りると、

自分も猛烈な勢いで車体を塗りたくり始める。
ファーストシーンの段階で、ミニスカの裾から白い下着がチラチラ見えているのが泣きたくなるほど嬉しいのである!

一生懸命、楽しそうに絵筆を動かしているひかる。
ただ画像を貼るだけで、これだけ幸せになれる女優さんは滅多にいない。
しかし、このシーン、ちょっと長過ぎるんだよね。
初めて見た時もその点が気になって、早くも作品に対する期待が下がったほどである。

とにかく、塗る場所がないほど車体を塗り潰したひかる、「悪戯するなら徹底的におやりなさい」と言い、三人の鼻先をちょいちょいと筆でつつく。

と、一瞬にして三人の顔が、ペンキで盛大に悪戯書きされる。
ひかるの超能力によるもので、三人はまるで気付かない。

ひかる「君たち、なかなか可愛いわよ」
正夫「えっ? あっはっはっ……」
言われて互いの顔を見た正夫たち、初めて自分たちの顔に気付いて笑い声を上げる。
その隙にひかるは彼らのそばを離れ、ムーンライトリングに指を吹きかけてパッと姿を消す。
正夫「おい、あの姉ちゃんいなくなっちゃったよ! ……おい、車っ!」
きょろきょろと辺りを見回す三人、いつの間にか悪戯書きが綺麗に消されて、車がピカピカになっているのを見て驚く。

ひかるは瞬間移動して、近くの5階建てのアパートの屋上に立ち、不思議そうな顔を見合わせている正夫たちを見下ろしていた。

ひかる「竜村正夫、通称タツノオトシゴ、学園名誉理事長のせがれにして、箸にもフォークにもかからないガキと!」
ひかる、あらかじめ手帳に書いていた、担任することになるクラスの子供のデータを読み上げる。

ひかる「さすがバルの調査は正確だわ」
バル「えっへん、あったりまえじゃ、こう見えても宇宙連合・アンドロメダ星雲支部直属、平和監視委員である姫のアシスタントですわい、パイチョ!」
ひかるの後ろにパッと現われたうさぎのようなキャラクター、ひかるの良き相棒バルである。声は名優・牟田悌三さん。
バルは、それだけ言うと杖を動かしてあっという間に消えてしまう。バルもひかると同じく様々な超能力を使えるのだ。
ひかるもバルも、平和監視員と言う肩書きで、地球人が宇宙の平和にとって害になるかどうかを調べに来たアルファ星人なのである。ついでにひかるはアルファ星の姫……と言うより、アンドロメダ帝王の娘なので、バルはひかるのことを「姫」と呼ぶのである。
ただし、二人の当初の目的は、いつの間にか「子供たちを怪人から守ること」と変わってしまうのだが。
舞台変わって、物語のメインとなる東西学園。薄暗い廊下を、校長に案内されてひかるが静々と歩いている。

校長「ちょうどいい、ご紹介しよう、こちら5年D組を担当する月ひかる先生です。こちらは図工を教えてくださる旗野先生です」
ひかる「よろしくお願いします」
向こうから来た旗野先生に、校長がそう言って紹介する。
初対面と言うこともあってか、ひかるは妙に物静かである。

旗野「あ、こちらこそよろしく」
で、その旗野先生を演じるのが、笑ってしまうほど若々しい森本レオさんなのである。
それでも、当時、28才くらいで、菊さんよりだいぶ年上である。でも、森本さんは童顔で、菊さんは大人っぽい顔立ちなので、ほぼ同じくらいに見える。
この作品が成功した理由としては、脇役陣のキャストが充実していることも挙げられる。

教頭の大伴(牧冬吉)が前口上を述べている中、校長先生にエスコートされてD組に入ってきたひかる。
壇上に立ったその顔を見て、当然、正夫たちはギョッとする。
ひかる「今日からこの東西学園に仲間入りした月ひかるです。先生だなんて堅苦しく考えないで皆さんのお友達にして下さいね」

若くて美人、しかもいかにも「話せる」感じの挨拶に、子供たちも大喜び。
無論、宇宙連合の力やひかる自身の超能力で、この学園の教師として潜り込むことに成功しているのだが、前任の先生は何処行っちゃったんだろう?
ちなみに一番前に座っている眼鏡の子は、この番組終了後に「仮面ライダー」のレギュラーとなる矢崎知紀さんである。彼もかなりの数の番組に出ている名子役である。

太一「先生、年いくつ?」
ひかる「さー、いくつにしようかなぁ」
マルタンボウのあだ名で呼ばれる丸木太一の質問に、笑顔で楽しそうに応じるひかる。
実際、アルファ星人としての年齢は別にあるので、この場で何歳の設定にするか考えているのだろう。

校長「媚びてはいかん、先生には威厳が必要です」
教頭「そうでございます、若いだけに経験不足のようでございますなぁ。ええ、今後私がビシビシと」
ひかるの、友人同士のような話し方に、横で聞いていた校長が顔を顰める。
校長を演じるのは無声映画時代から活躍しているベテランの潮万太郎さん。弓恵子さんのお父さんである。

続けて好き勝手な質問を発する子供たちを汽笛のような口笛で黙らせると、
ひかる「質問に答えるわ。年齢21歳、バスト87、ウェスト61、ヒップ91、このドレスはバーゲンで3500円、それを自分で仕立て直したの。恋人はただいま募集中!」 一気呵成にまくし立てる。
最初の挨拶で、ひかるが子供たちのハートを鷲掴みにしたのは言うまでもない。
しかし、教師って21歳でなれるんですかね? ま、菊さんの実年齢をそのまま使っているのだが。

その後、早速体育の授業をしているひかる。
真っ白のブラウスにミニのプリーツスカートと言う、思わず抱きつきたくなる衣装で、笛を吹きながら子供たちと一緒に走っている。
ひかるも良いけど、女の子たちが野暮ったいブルマじゃなくて短パンと言うのも都会的で良いよね。
なお、東西学園は中等部、高等部も含めた私立学園なので、全体的に自由な校風なのである。
その日の種目は鉄棒と言うことで、

正夫「しめた、鉄棒だ。俺の腕の見せ所だよ」
朝の仕返しではないが、格好良いところを見せ付けてやれると意気込む正夫。
ちなみに、後ろに見えているのが、クラスのマドンナ的女の子、ハルコちゃん(杉山和子)である。

だが、ひかるはのっけから、体操選手のようにぐるぐると大車輪を披露して、正夫の出る幕がない。
無論、いくら菊さんが運動神経が良くても、これは無理なので、男性スタントである。
生徒「すごいよ、ねー、竜村君」
正夫「うるせえなー」

正夫「うるせえっつんだよー、バカヤロウ!」
黒木「なんや、もういっぺん抜かしてみい」
正夫、肩を叩かれて、てっきり隣の生徒かと思って怒鳴り散らすが、それはいつの間にか後ろに立っていた黒木と言う背の低いOBであった。

正夫「く、黒木さん」
さすがの正夫も、思わず顔色を失う。
相手が誰だろうと怖いもの知らずの正夫だが、唯一頭が上がらないのがこの黒木であった。

黒木「我が愛する母校に新任の先生が来たというから検分に来た。あれか」
正夫「はい、はいそうです」
黒木「ううん、プロポーションはまあまあ上等やな、天は二物を与えずと言うから、どれくらいブスや?」
正夫「ブスー?」
黒木を演じるのは、「てなもんや三度笠」で絶大な人気を誇っていた白木みのるさん、当時37歳くらいか。黒木と言う役名は、無論、白木をひっくり返したものなのだ。
もっとも、白木さんは特別出演のようなもので、登場するのはこの1話と14話だけである。ただ、OBと言うが、黒木が現在、学生なのか、社会人なのか定かではない。一応、学ランを着ているし、気楽にグラウンドに足を運んでいるところを見ると、まだ高等部に在学中なのだろう……か?
黒木が勝手にひかるをブサイクだと決め付けていると、ちょうどひかるの演技がクライマックスを迎え、

ふわりとスカートを広げながら、美しく着地する。
ちなみに二枚目の画像で、ぶれながらも、微かにほんの微かに白いパンツが見えていて、貴重なパン チラショットとなっている。
この作品、冒頭の下着チラのような、下着は結構頻繁に見えるのだが、その奥にある白い秘境は実はなかなかその全貌を現わしてくれないので、このぼんやりしたパン チラでも、貴重な一枚なのである。
……あ、天国にいる菊さん、人間のクズの言ってることなので見逃してやって下さい。

得意げに振り向いた時の、衣服がやや乱れて胸の部分がふわふわしているところも、実に良い。
ただし、この華麗な鉄棒演技も、実はムーンライトリングの力によるものだったことが、だいぶ後になって判明する。

子供たちは拍手喝采、さらに黒木も一瞬でひかるの虜になって、その顔に見惚(と)れている。
黒木「はりゃ、はは……」

ひかる「竜村君、誰なの?」
正夫「あのう」
黒木「あ、あのう、ぼ、ぼく、この学校のOBで、く、く、く、く……」
ひかる「ああ、校長先生に聞いたわ、元番長の黒木君ね」

黒木「わははは、僕の名前を覚えてくださって、こここ、光栄ですぅ、うふふふ」
興奮気味に生徒たちを掻き分けてひかるの前に出てきた黒木、その手をとって口づけする。

ひかる「あっ」
正夫「あやっ」
黒木「あー、おいちい」
いいなぁ、白木さん。唯一無二の個性の持ち主だよね。

さて、その後、どうしてそんなことになったのか一切説明はないが、ひかると正夫がガチの相撲を取るという状況になっている。
行司は黒木である。

黒木「互いに見合って~、はっけよーい、残った!」
手をついて前屈みになって、息が触れるほど顔を近付け合う二人。
この菊さんの横顔、可愛過ぎる! 
がっぷり四つになって、激しく押し合う二人。

ひかるを押し出そうとして、正夫の腕がひかるのふくよかな胸に密着する。
……
管理人はこの時ほど、ゴーグルイエローになりたいと思ったことはない! 
黒木「はっけよい、はっけよい、(正夫に)あほっ、もうちょっと手加減せんか!」
背中の布地越しにうっすらとブラが見えているが、藤江さんも、他の子より年上で学年的には既に中1で、異性をバリバリに意識している頃だから、かなりドキドキされていたのではないだろうか。
ちょうど廊下を通り掛かった旗野も校長も、窓から見ていたが、

ハレンチだ、けしからん、などと言いつつ、何処から取り出したのか、双眼鏡で食い入るようにひかるの肢体を凝視する校長先生がお茶目なのだった。
黒木が「手加減しろ」と言ったのが響いたのか、ここからひかるが盛り返して、豪快な下手投げで正夫を土俵の外へ投げ飛ばす。

上気した顔で、得意げに髪をかきあげるひかる、熱戦でブラウスのボタンが外れてブラと胸の谷間が丸見えになる。

そしてカメラはご丁寧に、その神聖な谷間にズームインする!
……
嗚呼、生きてて良かった。(しみじみ)

黒木「はっはっはっ、目の毒や~、目の不注意や~、あああ、あーあ!」
黒木はもとより、遠くから見ていた校長たちの目も、思わずひかるの胸に釘付けになる。
序盤、特に7話くらいまでは、こういうちょっとエッチなシーンが盛り込まれているのが大変喜ばしい限りなのだが、中盤以降はほとんど見られなくなるのがとても残念である。
でも、これくらいのお色気なら、不快になるよりむしろ爽やかな甘酸っぱい気分になるよね。ね?(同意を求めるな)

由美「かっこよかったわぁ、月先生」
女子生徒「美人で強くて話が分かって、最高じゃない」
ハルコ「タツノオトシゴ、しゅーんとしちゃった」
由美「あれじゃまるで、ミミズのオトシゴだわ」
授業の後、クラスの女子たちがひかるのことを絶賛し、正夫をケチョンケチョンにけなしている。
真ん中の、ピンク色のサロペットを着ているのは、一応レギュラーキャラクターなのだが、劇中では(自分の見た限りでは)一度も役名が出て来ない。1話のクレジットから、演じているのは長尾由美さんと言う子役らしく、教室の壁に貼られている習字や絵などにも、しばしば同じ名前が出ているので、とりあえず長尾由美と言う名前にしておく。
と、悪口を言われた正夫が現われ、「やい、もう一度言ってみろ」と怒鳴る。

ハルコ「何よ!」
由美「ミミズのオトシゴー!」
正夫「なにぃ」
だが、ハルコも由美も気が強く、ガキ大将の正夫に対しても一歩も引こうとしない。
正夫がしつこく由美を追い掛け回していると、見兼ねた優等生の進(矢崎知紀)が進み出てやめさせようとする。無論、そんなことで大人しくなる正夫ではなく、今度は進の眼鏡を取り上げてしまう。
正夫「そんなに返して欲しいのかよ、ようし、じゃあ俺と決闘しろ」
進「決闘?」

ひかる「まぁ、決闘だなんて格好良いじゃない?」
進「先生、僕の眼鏡取っちゃったんです」
ひかる「ね、いつやるの? 決まったら先生に教えてね。さあみんな授業始めるわよー!」
そこへひかるが入ってきたので、進はすぐに訴えるが、ひかるはまったく耳を貸さず、無視して授業を始めてしまい、眼鏡はそのまま正夫に取られた形になる。
無論、ひかるは進に意地悪したわけではなく、ちゃんと理由があってのことだったのだ。
その夜、進は由美に引っ張られるようにして、竹薮町888番地のひかるの自宅にやってくる。ひかるに直談判して、正夫から眼鏡を取り返して貰おうと言うのだ。
町外れの竹林の中に老夫婦が住む竹取家があり、ひかるはその離れを借りているのだ。

武右衛門「ばあさん、良い娘さんに部屋を借りて貰って良かった。私たちまで気分が明るくなりますよ」
たけ「でも、不思議な先生ですよ、なんだか人間離れがして」
武右衛門「ふっ、今の世の中、かぐや姫はおらんよ」
子供たちを離れに案内した後、そう言って笑い合う竹取夫婦。
竹取武右衛門を明石潮さん、竹取きよを岡村文子さんがそれぞれ演じている。
ちなみに二人はどちらも1898年
(明治31年!)生まれなのである。

ここでやっとCMになる。
前期のアイキャッチは、石森先生のイラストにひかるの「ムーンライトリング」の声が重なるもの。
どっちが先でどっちが後だか知らないが、初期のひかるのスタイルはこのイラストとほぼ同じである。

由美「先生、何故ほっとくんですかー」
ひかる「眼鏡のこと?」
由美「勿論だわ、進君、とっても困ってるのに」
ひかる「さあ、何故かしら? (進に)君には分かってるんじゃない?」
自分の部屋に子供たちを上がらせて、落ち着いて話を聞いているひかる。
自宅でくつろいでいる時は、基本的にひかるはいつも和服姿なのである。この辺の設定は、御伽噺の「かぐや姫」のイメージから来ているのだろう。

由美「わかりません! あんな奴、先生がやっつけてくれりゃいいんです。相撲の時みたいに」
キンキン声を張り上げて、進の答えを横取りして叫ぶ由美。
番組的には、あくまでハルコがメインキャラクターなのだが、この1話に限ってはこの子がハルコの代わりを務めている。あるいは、この回だけハルコ役の杉山さんが撮影に参加できなかったので、代わりに彼女が抜擢されたのだろうか?
この子、演技も当時としてはそこそこ出来て、それなりに可愛いのだが、この頭のてっぺんから出るようなキンキン声には閉口である。だから、2話以降、ハルコが彼女の代わりに活躍するようになって、管理人はホッと胸を撫で下ろしたものである。
ちなみに、DVDのデータファイルでは、ハルコの説明文に何故かこの子の写真が使われている。

ひかる「進君、君もそう思ってる?
先生が叱ればいいんだ、自分たちは黙って見物してるだけでいいんだって?」
進「だけど僕ぅ、弱虫だもん……僕、鈍いんだ、キャッチボールだって鉄棒だって(出来ないし)」
ひかる「すばしっこいのが強いとは限らないわ。たとえば君、クラス委員だからみんなに号令かけるでしょ。だったら気合術が出来るわ、きっと」
進「気合?」
ひかる「そうよ、やって御覧なさい、お腹の底に力を込めて」
進「恥ずかしいやー」

ひかる「
バカッ! 正しいことを主張するのに喧嘩も出来ない今の君のほうがよっぽど恥ずかしいわ!」
進の何気ない一言に、ひかるが不意に鋭い声を上げて叱り、進も由美も驚いてひかるの顔を見直す。
ひかるは基本的には優しい先生なのだが、怒る時はしっかり怒る先生なのである。

ひかる「立って! 足を開く。目をつぶる。お腹の底に力を込めて、自分がライオンか虎になったつもりで」
進「えーい」

ひかる「力が足りなーい」
いいなぁ、このひかるの口元。
その後、竹薮に囲まれた庭に場所を移して、進の訓練が続く。
繰り返し叫んでいるうちに、進の声にも張りが出て来て、最後はひかるがこっそりムーンライトリングを使って、進の叫び声を増幅させ、目の前の竹が倒れ、竹薮全体に響き渡るほどの威力を演出する。

ひかる「進君、君、強くなったのよ」
進「先生、ほんと? 先生、僕は明日、タツノオトシゴと決闘します!」
肩に手をやり、その顔を覗き込んで勇気付けるひかるに、進も威勢良く宣言するのだった。
ひかるが気合術云々と言ったのは、別にそれでタツノオトシゴに勝たせようということではなく、進に自信を持たせることが目的だったのだ。

子供たちが帰った後、ひかるが、部屋の奥にあるバルの秘密の住処に入ってくる。
ここにはバルのベッドの他に、宇宙連合との通信設備なども備えてあるのだ。
バル「やっと帰ったか、チビどもは」
ひかる「どう、バル、可愛いでしょ? あれがあたしの子供たちよー」

バル「可愛いだとー? あんなガキが可愛いなら、このバルなどさしずめ、アンドロメダ第一の二枚目じゃ」
バルの着ぐるみの目の部分は、回によって多少違うのだが、スーツアクター(甘利健二)の目がじかに見えるようになっているのが良いのである。

バル「くだらん、だいたい姫も姫じゃぞ、くだらんことにムーンライトリングを使い過ぎる」
ひかる「相変わらずご機嫌の悪いこと」
バル、初期はむしろ子供嫌いなのだが、話が進むに連れて段々と性格も変わってきて、13話では逆に子供好きだと公言するようになる。
このバルの頑固なおじいちゃんと言う感じの媚びない可愛らしさも、このドラマの楽しさのひとつである。
あと、このひかるのぷっくり膨らんだ頬が可愛過ぎる……。
さて、もうだいぶ長くなったので、後は急ぎ足で片付けよう。

翌日、すずめヶ丘で、ひかるや黒木、ハルコたち立会いの下で、正夫と進の決闘が行われることになる。
「先に泣いた方が負け」と言うルールで開始されるが、勢い良く向かって行った正夫、進が目を閉じて動かないのを見て振り上げた右拳をストップさせる。
正夫「何の真似だ?」
進「黙ってろ、気が散る」
正夫「なにぃ」
進(僕は虎だ、ライオンだ、強いんだ)
進、心の中で念じると「えーい!」と叫びながら、思いっきり正夫を殴り飛ばす。
……
気合術、関係ねえ! 
ちょうどその頃、近くの未舗装の道で、校長先生が車の運転の練習を旗野先生の指導で行っていた。
校長「あたたたたたっ」
旗野「あー、停まっちゃった」
校長「どうもコツが飲み込めんなぁ」
旗野「諦めた方が良いんじゃないですか」
校長「何を言うか、やっとのことで仮免までこぎつけたんだ、今時車の運転が出来んようじゃ、子供たちに馬鹿にされる」
と、旗野先生が、遠くで正夫と進が喧嘩をしているのに気付き、二人はそのまま車で現場へ向かう。
戦いは、やはり正夫優勢で進められていた。

黒木「ああ、先生、まだやらすんかー」
審判の黒木も見兼ねて、ひかるに救いを求めるような目を向ける。

ハルコ「先生、止めてあげて!」
由美「進君がやられるわ、もう止めて!」
ひかる「いけないわ、今止めることが進君にとってどれほどの侮辱か、考えて御覧なさい」
ハルコたちも口々に訴えるが、ひかるはつらそうな顔をしつつ、そう言って仲裁を拒む。
その後も激闘は続くが、ひかるは、校長先生の車がこちらに向かってくるのに気付く。
今来られるのは不味いと、ひかるは少し後ろに下がると、ムーンライトパワーを使う。
最初は車を空中に浮き上がらせるが、旗野先生が車から降りようとして地面に落下しそうになったので、慌てて元に戻す。
ついで、車をラジコンカーくらいの大きさに変えて、時間を稼ごうとするが、

これも、たまたま野良猫が近くにいたので失敗となる。

ちなみに、カメラが切り替わると、猫の種類が明らかに違っているのがいかにも昔の東映らしい雑な仕事ぶりである。
結局、車のタイヤをひとつ外して、何とか走行不能に追い込む。
そうこうしているうちに、進が正夫の体に馬乗りになって鼻の穴に指を突っ込み、あまりの痛さに正夫が泣き出したので黒木がすかさず進の勝利を宣言する。

由美「良かったわね、進君」
ひかる「進君、良くやったわ」
進「先生、ありがとう、みんなありがとう」

進「オトシゴ、ありがとう、君のお陰で僕強くなれたんだよ」
進、みんなに礼を言うと、倒れたままの正夫にも感謝の言葉を捧げる。
正夫「変なこと言うなよ」
ひかる「変じゃないわ、正夫君、あなたね、自分でも気がつかないうちに田辺君の頭でっかち治してくれたの、先生のお手伝いしてくれたんだわ」
ひかるにも感謝されて、正夫はちょっと恥ずかしそうにそっぽを向く。
全てが終わってから漸く校長先生たちが駆けつけるが、みんなで口裏を合わせて喧嘩ではなくじゃれていたのだと誤魔化して、その場を収める。

ひかる「と言う訳なんです、校長先生」
校長「しかし……」
校長が言いかけたところで、時間が止まり、ひかる以外の人間がその場に固まって動かなくなる。バルの良く使う超能力で、その気になればひかるを止めることも出来る。
バル「あったりまえじゃ、姫はお前ら地球人とはちょいと出来が違うわい」
ひかる「まぁ、バル」
しかし、このバルの台詞は今ひとつ会話の流れに合ってない。
バルが消えた後、ひかるが子供たちと一緒に元気に走り出し、首を傾げつつ校長先生たちも走り出したところで、「つづく」となる。

EDは、石森先生のイラストをバックに、これも堀江さんの「月光の子守唄」と言う、それこそ子守唄のように優しい歌。
以上、30分番組にしてはやたら長くなってしまったが、第1話のレビューでした。
いや、普通の特撮番組だと、アクションシーンやスポンサー向けのロボットバトル、あるいは変身シーンなど、余計なシーンが多いのでドラマ部分は正味10~15分くらいしかないのだが、この作品は、そう言うシーンが一切ないので、ドラマとして非常に密度が高いのだ。
簡単に言うと、「ダイナマン」や「バイオマン」などの25分枠のドラマ部分が2本分詰まってるような感じなのだ。
そして管理人、この作品を見ていて、
「特撮ドラマにアクションシーンは不要なのでは?」と言う大胆な仮説を立ててみた。少なくとも、アクションシーンがなくてもこんなに素晴らしい特撮ドラマが作れることは実証されていると言えるだろう。
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