第57話「土ぐも男ドクモンド」(1972年4月29日)
大学(?)の研究室で、夜遅くまで何やら研究している本郷猛。

猛「全ての金属を溶かし、燃やしてしまう液体火薬か、しかし、沢田、そんなものが出来たらえらいことになるぞ」
沢田「いや、俺は必ず産業の発達に役に立つと思ってる。まぁ見ててくれよ」
猛「……」
同僚の沢田が開発中の「液体火薬」について警鐘を鳴らす猛であったが、沢田からそう言われると微笑を浮かべてあっさり納得する。
猛はそれが軍事目的に利用されたり、悪(ショッカー)の手に渡ったりすることを危惧していると思うのだが、沢田の説得力のカケラもない言葉で引き下がると言うのは明らかに変である。
猛が先に帰った後、沢田はなおも様々な薬品を調合して実験を続けていたが、遂に(これと言うきっかけもなく)成功する。

少女のブロンズ像にその液体を垂らすと、たちまち燃え上がる。
だが、既に建物の外にはドクモンドと言う土ぐも怪人と戦闘員がいて、沢田の研究成果を奪い取ろうと待ち構えていた。

見回りをしていた守衛がドクモンドを発見するが、穴の中に引き摺り込まれ、キユーピー3分クッキングも真っ青の手早さで、白骨にされてしまう。

ドクモンド「奴の発明は完成したぞ」
戦闘員「では、すぐに」
ドクモンド「待て、今、研究データーを書いている。明日の朝、それを頂くのだ」
沢田はドクモンドの読みどおり、徹夜でデータをまとめると、翌朝、眠い目をこすりながら車に向かう。

ドクモンドは沢田が車に乗ろうとしたところを捕まえようとするが、あっさり逃げられる。

ドクモンド「追えーっ!」
後方で待機していたバイク部隊に命じるドクモンド。

管理人、このシーンを見るたびに、ドクモンドがバイクに真後ろから轢き殺される幻影が目にちらつき、笑いを堪えるのに苦労する。
バイクの戦闘員も「このまま轢いたら地獄大使にウケるだろうなぁ」と思いつつ、さすがに上司を真後ろから轢く訳にもいかず、その脇を走り抜けていくのだった。

沢田も必死にハンドルを握って逃走を試みるが、最後は道路から飛び出して崖下に転落、車が炎上する。
その近くを走っていた猛が、轟音に気付いて現場に急行する。
ドクモンド「ぬう、本郷猛!
抜かるな!」
戦闘員(なにを?)
間違ってもライダーを倒しちゃダメだということなのだろうか?
猛に、「抜かりなく」蹴散らされる戦闘員。

猛「くっそぉ、ライダー、変身!」
猛、変身ポーズを決めるが、実はこれが撮影の順番では最初の変身シーンになるのかな? だからして、当然役者の口は動いていない。
もっとも、ドクモンドはろくに戦うこともせず土の中に潜って退却する。

ところで、沢田の車だが、このように高いところにある道路からまっさかさまに落ち、

沢田が外へ脱出する余裕もなく、車は豪快に炎上している。
沢田の命は万に一つも助からないと思われたが、次の病院のシーンでは、

沢田は全身を包帯で巻かれながらも、割とピンピンしているのだった。
いや、あんた、なんで生きてるの? 墜落炎上した後で猛が駆けつけ、さらにライダーに変身してあれこれやっているのだから、沢田の体は完全にウェルダンになってる筈なのに、顔に火傷ひとつないと言うのはさすがに嘘っぽい。
五郎「稔君、大丈夫だよ、きっとすぐ治るよ」
枕元には猛、五郎、そして沢田の弟・稔もいて、五郎が心配そうに兄の顔を見詰める稔を励ましている。

猛「院長、助かるでしょうか」
院長「大変な重傷です。一応手術はしましたが一晩置いて明日の昼、もう一度手術しなければ……」
病室に入ってきた院長に、猛が親族の代わりに尋ねる。
それにしても「大変な重傷です」って、およそ医者が言う台詞じゃないよな。
猛は、沢田のうわごとから、ショッカーが沢田の「液体火薬」を狙っていることを知る。

一方、こちらはショッカーのアジト。
手ブラ、いや、手ぶらで帰って来たドクモンドに対し、いつになく地獄大使がお冠のご様子。
地獄大使「パカモノ、大失敗だ! 日本中の船や飛行機も、金属で出来ているあらゆる物を溶かしてしまう計画が実行できなくなった! 研究データも奪えず、沢田博士まで殺してしまってはあの液体火薬を作れるものはもういないのだぞ!」

ドクモンド「申し訳ありません」
鞭をしならせてドクモンドたちを叱責する地獄大使。
ドクモンドたちは平身低頭して謝るが、「貴様たちは直ちに死刑だ!」と、短気を起こす。

首領「待て、沢田博士はまだ生きてる。早く次の手を打つのだ」
ドクモンド「生きてる? すると本郷の奴が助けたのか」
地獄大使「ふふふ、それならば良い考えがある。
奴が死ぬ前に脳みそを取り出して、改造人間を作れば良い。へっへっ、そうすればそいつが液体火薬を作ってくれるわ」
さらっと恐ろしいことを口にする地獄大使、ドクモンドの処刑はやめて、代わりに沢田の強奪を命じる。

一方、立花レーシングクラブの一室では、いつものように暇な人たちが集まって、今回の事件について話し合っている。
ユリ「稔ちゃんのあんな良いお兄さんをひどい目に遭わすなんて」
トッコ「じゃあ、またショッカーの仕業かしら」
白いセーターに真っ赤なサスペンダー付きショートパンツと言うスタイルのトッコが可愛いのである!
考えたら、彼女にとってはこれが記念すべきファーストシーンになるんだよね。

猛「うん、沢田の発明を狙ったんだ。だが発明のデータは車と一緒に燃えてしまった」
立花「しかし、そんな簡単なことで諦めるショッカーじゃないぞ」
猛「うん、発明の秘密は沢田だけが知っている。ショッカーの奴らはまたきっと沢田を狙ってくる」
猛の睨んだとおり、その夜、ドクモンドが沢田の入院している病院へ現われる。
彼はスパイダーマンよろしく蜘蛛の糸を使って外壁をするすると登っていき、

窓から沢田の病室へ忍び込む。

ただ、それに続けてドクモンドがドアを開けたら、もう戦闘員たちが廊下で待っていた、と言うのが……。
戦闘員が誰にも怪しまれずにやすやすと沢田の病室まで辿り着いたのを見たら、ドクモンドがわざわざそんな特殊能力を使って侵入したのがまるっきり無意味に思えるではないか。
それはともかく、沢田の体を覆っているシーツをはぐと、それはいつの間にか人形に摩り替わっていて、さらにベッドの下には本郷猛が隠れていた。

ドクモンド「図ったな!」
猛「待っていたぞ、ショッカー、やはり貴様たちの仕業か!」
いや、「やはり」って、猛は最初からショッカーが沢田を襲うところ見てたやん。
ここは「ショッカー、やはり沢田を狙ってきたな」と言う方がモアベターだったろう。
猛、早くも二度目の変身を行い、狭い病室の中で激闘を繰り広げるが、結局またしてもドクモンドに逃げられてしまう。
翌朝、車で出勤中の病院長がショッカーに襲われ、あわれ、病院長は守衛と同じくシャレコウベにされてしまう。しかし、
「ありとあらゆる金属を溶かしちゃうぞ!」などと言う、しょうもない計画の犠牲になったと思うと、死んでも死に切れなかっただろう。

で、ドクモンドは病院長そっくりに化けると、何食わぬ顔で病院へ。
院長「ああ、君、沢田と言う患者をすぐ手術する。用意したまえ」
看護婦「あの、お昼からの予定じゃなかったんですか」
院長「いいから、するんだ」
看護婦「はい……変だわ、院長、
そんなにヒルナンデスが見たいのかしら? いつもと違うみたい」
ソラマメみたいな顔の看護婦さんも、院長の態度に不審を抱く。

待合室に座って徹夜で見張りを続けた末、うとうとしていた猛と滝が、おやっさんに揺り起こされる。
立花「おい、おい、沢田さん、手術するそうだ」
猛「今日の昼ってことじゃなかったんですか」
三人が慌てて、ストレッチャーに乗せられて運ばれている沢田のところへ行くが、院長は「まず検査と麻酔をしますから」と、猛たちの同行を許さず、手術室へこもってしまう。
滝「感じの悪い院長だな」
猛「いや、昨日はあんな風じゃなかった」

きょろきょろ周囲を見回しながら、ストレッチャーを手術室へ運び入れるニセ院長。

一旦ドアを閉めた後、

ヒョイと顔を出して、「手術中」の札を下げる仕草が、妙に可笑しいのであった。

部屋に入るとすぐ、院長は看護婦さんを殴って気絶させ、ドクモンドの姿に戻ると、白衣を着た戦闘員に意識のない沢田の体を運び出させる。
いつまで経っても検査が終わらないので、猛たちは待ち切れなくなって手術室へ駆け込む。

が、既にドクモンドたちの姿はなく、気絶した看護婦さんがベッドの上に寝かされているだけだった。
そのまま床に放置していけばいいのに、ドクモンドは女性に対してはなかなか紳士的なのである。

地獄大使「脳だけを取り出して移植するんだ。いいな?」
アジトでは、またライダーに邪魔されてはかなわんと、すぐさま沢田の脳の摘出・移植手術が行われようとしていた。

沢田の脳の「器」となる活きの良い囚人が連れて来られる。
ドクモンド「こやつです」
地獄大使「良かろう、すぐに手術の用意をしろ」
襟首を掴まれてまるで犬っころのように扱われている囚人がとても哀れである。

レーシングクラブでは、みんなで病院周辺の地図を睨みながら、なんとかアジトの所在地を探り出そうと躍起になっていた。
立花「この三つの点を結んでみると……ああ、ダメだ。こんなことは何の関係もない!」
滝「もう11時を回っちまった」
猛「昼までに取り戻して手術をしないと手遅れになる」
さすがの猛も打つ手がなく、焦燥の色を額に濃く滲ませる。

そこへのんきな顔した五郎が入ってくる。
五郎「あれー、病院の方はいいのー?」
猛「五郎!」 立花「何だお前は、何にも知らんでのんきに……少しは稔君の身にもなってみろ!」
五郎「みんな、何プンプン怒ってんのさー?」
五郎のぼやきに全面的に頷きたくなるほど、ここでのおやっさんたちの反応は理不尽に厳しい。
五郎、野外で土ぐものことを研究していたのだと言い、本物の蜘蛛を掌に乗せてみんなに見せる。

トッコ&エミ「いやーっ!」
間近に蜘蛛を見て、思わず叫び声を上げるトッコが可愛いのである!

と、蜘蛛を見ていた猛が、何事か思い付いたように目を輝かせて立ち上がる。
猛「そうか、五郎、やったぞ! 蜘蛛は蜘蛛の巣に、何故自分だけが引っ掛からずに歩けるのか。それは足の裏から特殊な油を出しているからなんだ。つまりドクモンドの足跡を窓の下から辿っていけば、きっと奴らのアジトが分かる!」
猛はそう言い切っているが、実際は足から油が出ている訳ではなく、蜘蛛の巣の横糸にだけ粘液がついていて、蜘蛛は移動する時は、粘液のついていない縦糸の上を歩くので、引っ掛からないらしい。
ま、それは別にしても、猛のこの推理はあまり意味がないように思える。何故なら、ドクモンドがアジトと病院の間を移動するのに、徒歩だったとは限らないからである。

もっとも、自動車で移動していたのでは、永久にアジトの場所が分からず、ライダーの負けになってしまうので、実際はちゃんとドクモンドの足跡が、アジトの入り口まで続いていたのだった。
ナレ「改造人間・本郷猛の視覚は人間の20倍も鋭いのだ!」
ライダーに変身した猛の目には、アスファルト上に点々と続く足跡がはっきり見えるのだった。
しかし、「視覚が20倍も鋭いのだ!」と言うより、「ライダーの目は、常人には見えない特殊な波長を捉えることが出来るのだ!」と言う方が適切だったろう。
で、詳細は省くが(省くなよ)、沢田の手術が開始される直前に、ライダーと滝がアジトを発見し、アジトの外でライダーとドクモンドの激しい戦いが繰り広げられる。

ドクモンドも善戦するが、最後はライダーキックを浴び、

大爆発を起こしてアジトもろとも木っ端微塵に吹っ飛んでしまうのであった。

滝「大丈夫か、ライダー」
ライダー「見ろ、ドクモンドの最期!」
滝「……ところで、沢田博士は?」 ライダー「あ゛っ……」 ……と言うのは嘘で、ナレーションによって沢田が助け出されて怪我も治ったことが語られている。
しかし、戦闘シーンの間、沢田を運び出すシーンが1秒たりとも存在しなかったのは事実である。
その上、アジトが大爆発でしょ? 普通考えたら、沢田、死んでるよね。
あと、「液体火薬」の発明はまだ残ってるんだから、これ以降も沢田の研究が狙われてもおかしくないと思うのだが、無論、ショッカーは同じ作戦は二度と展開しない主義なので、これっきり沢田が襲われることはないのだった。
以上、無駄なシーンがやたら多く、はっきり言って全然面白くないエピソードであった。前半で沢田がショッカーに捕まって脳を取り出され、改造人間にされてライダーと戦うことになっていたら、かなりハードなストーリーになっていたと思うのだが。
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