「ウルトラマンタロウ」 第50話「怪獣サインはV」
- 2018/02/21
- 19:49
第50話「怪獣サインはV」(1974年3月15日)
今回もバラエティ色の強いエピソードで、人気スポコンドラマ「サインはV」の主役だった坂口良子さんをゲストに迎え、彼女が怪獣とバレーボールをすると言うふざけた、いや、摩訶不思議なストーリーが展開する。

冒頭、空港上空から巨大な岩石の塊のようなものが降ってきたかと思うと、

今まさに離陸しようとしていたジャンボジェット機に直撃する!

岩石はそのまま転がり続けて駐機している他の飛行機を次々と踏み潰し、空港ビルを破壊する。

岩石の正体は、頭部から長い角が生えた、怪獣ガラキングであった。
ガラキングは空港をめちゃくちゃにすると、今度は街へ繰り出して、更なる破壊欲求を満たそうと暴れ回る。
もう一度球体に変化すると、


今度はマンションに激突して粉々に吹き飛ばす。
その眼下では大勢の人々が悲鳴を上げて逃げ惑い、街は阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。
既に1000人以上の死傷者が出たと思われるが、何故か今回はなかなかZATがやってこない。ま、ストーリー上の都合と言う奴ですね。
と、ひとりの若い女性が、逃げる途中、路上に倒れて泣いている子供を見付け、慌てて抱き起こす。

ユキ「しょうがないわねえ、お姉ちゃんがおんぶしてあげる! ファイトーッ!」
若い女性、服部ユキは泣き続ける子供を背負うと、掛け声と共に走り出す。
今回のヒロイン・ユキを演じるのが、若いにもほどがあるだろうと言う坂口良子さんなのである。まぁ、まだ二十歳前だからね。
他の人たちと一緒に必死に怪獣から逃げていたユキだったが、とある老人ホームのそばまで来たところで不意に立ち止まると、思い切って後ろを振り向き、はるか上空にいるガラキングの顔を見上げる。

ユキ「こら、怪獣、私は女なのよ! 私がおぶってるのは子供なのよ! そんな弱い者イジメをして得意なの? それにここは老人ホームなのよ、大きい図体して恥ずかしいと思わないの?」
ここでユキの姿がワイプになって、怪獣とユキが同じ画面で対峙すると言うウルトラシリーズでは極めて珍しい映像となる。
ガラキング、勿論、ユキの叫んでいる言葉は理解できないのだが、その迫力に気圧されたのか進撃をストップさせてその場に佇み、困ったように顔を掻いたりしている。
光太郎、避難民を誘導しつつ、怪獣に接近していたが、その足元で怪獣に説教している変な女の子に気付き、叱り付けるように注意する。

光太郎「何をぼやぼやしてるんだ? こんなところで立ち止まってないで、早く避難して下さい」
ユキ「何よ、あなた目が悪いの? 足の悪い老人たちが中にいるのよ! 怪獣と戦うのがZATでしょう。交通整理なんかしてなくていいわよ!」
光太郎「ZATの任務は市民の安全を守ることです。君こそ怪獣を怒鳴ったりして、もし怪獣が怒って向かって来たらどうするんだ?」
ユキ「まぁ、じゃあなぁに、老人ホームが危険になってきたのは私の責任とでも言いたいの?」
ユキ、度胸もあるが弁も立つようで、光太郎に対し一歩も引き下がらずに抗論する。

光太郎「分かんない人だなぁ」
ユキ「あなたこそ」
光太郎「とにかく非難して下さい!」
ユキ「いやっ」
光太郎「非難しろ!」
怪獣の目の前で、延々と言い合いを続ける二人。
と、再び怪獣が動き出したので、ユキは子供を背負ったまま老人ホームの中へ非難する。

光太郎の銃撃を受けてよろめいたガラキング、ガスタンクが並ぶコンビナートに踏み込むが、何故かその丸いガスタンクに惹かれたようで、叩き割ろうともせず、手頃なサイズのを抱えてボール遊びを始める。
BGMもコミカルなものに変わるが、ついさっき空港とマンションで大惨事が起きて、軽く1000人以上の死傷者が出たばっかりなんですけどね……。
ここでやっと、ZATの戦闘機が怪獣の上空に進出してくる。

北島「なんだぁ、あいつ、遊んでやがる」
荒垣「ガスタンクでまり遊びしてやがる。子供っぽい怪獣だ」
怪獣の暢気な姿に、荒垣たちも思わず笑みを浮かべる。
それはそれとして、森山いずみ隊員の凛々しい横顔……そろそろ彼女ともお別れなので、出来るだけたくさんの画像を貼っていく所存である。
その森山隊員が怪獣の近くの老人ホームの存在を二人に告げる。
怪獣の周囲にはガスタンクがあり、しかもほんの50メートルのところに老人ホームがある。
だからてっきり、荒垣は軽率な攻撃は慎むだろうと思っていたのだが、

ZATはそんなことはお構いなく、ガラキングに猛攻撃を加えちゃうのである!
しかも攻撃は外れ、ガスタンクや周辺の家屋に甚大な被害を及ぼす。
「ウルトラマンレオ」のMACもかなりのスットコドッコイと言われているが、実際のところ、ZATもそのテキトーさにおいては、似たり寄ったりなんだよね。
逃げ込んだ老人ホームで、入居者たちと一緒にその戦いを見守っているユキ。

ユキ「怪獣、頑張れ! ファイト、ファイト!」
だが、老人たちとは逆に、ユキは何故かZATではなく怪獣のほうへ声援を送る。
そのうち、ZATのレーザー攻撃を受けて、ガラキングは来た時と同じように丸くなって空へ消えて行く。

ユキ「あーあ、また怪獣の負けか」
タエ「まあ、何を言う!
ユキ「あ、ごめんなさい。私ねえ、つい弱い方に味方しちゃう癖があるの。それに怪獣が好きなの」
タエ「怪獣が好き? 若い娘が何と言う……」
ユキのぶっ飛んだ発言に、そばにいたタエ婆さんがあきれて嘆声を上げる。
あれこれやっていると、今の怪獣騒ぎで血圧が上がったのか、反対側に立っていた伸一郎が棒のように真後ろに倒れてしまう。

布団に寝かされた伸一郎を、真剣な目で見詰めているユキ。
やがてゆっくりと伸一郎が目を開けたので、ユキはホッと胸を撫で下ろす。

ユキ「もう大丈夫、あんまり興奮しちゃ駄目よ」
所長「いやぁ、どうもありがとう。いやー、しかし、見事な看護ですなぁ」
ユキ「田舎で、看護婦やってましたから」
ホームの責任者とおぼしき男性もやって来て、ユキに賞賛の目を向ける。

所長「東京見物にいらしたんですか?」
ユキ「いいえー、スチュワーデスの試験受けに来たんです」
所長「ふうん……」
「ついさっき大勢のスチュワーデスさんが死んだから、合格しやすくなったね」と言いたいのをぐっと堪える所長であった(嘘)。
さっき助けた子供が元気にユキにお礼を言って帰って行ったのを見届けると、「じゃあ私もこれで……」と、ユキもスーツケースを掴んで立ち去ろうとする気配を見せる。
と、俄かにまた伸一郎が苦しそうに大きな呻き声を上げ始める。

帰りかけていたユキは、慌てて老人のそばに座り、再び看護婦の顔になって、その脈を取る。

だが、伸一郎はユキに気付かれないようにパッと目を開けて、タエ婆さんたちに「シーッ」と言うような仕草をして見せる。
そう、ユキを引き止めておくための仮病だったのである。
ちなみに伸一郎を演じているのは14話にもゲスト出演している浜村純さんである。

成り行き上、ユキはそのまま老人ホームに残り、食事の手伝いなどをする。
それにしても、この食事にしても、きっちり人数分用意されていて、やっぱり昔のウルトラシリーズは金かけてたんだなぁと実感させられる場面である。
老人たちも、若く明るい女性が一緒にいることで、いつもより心が浮き立つようで、ご飯も美味しく感じられるのであった。

伸一郎「ユキちゃん、飛行機嫌いの怪獣が出るご時世だからねえ、空へ飛びあがるなんて危ないことはやめたほうが良いんじゃないかと思って」
ユキ「駄目よ、そんなこと言って私をここに居させようたって」
伸一郎「いや、わしゃただあんたのことを心配して」
ユキ「駄目よぉ、仮病使ったって何したってもう駄目よ、私がここに居るのは試験の日まで!」
実際に看護婦をしていたユキ、伸一郎の仮病などとっくにお見通しであった。
ユキのきっぱりした宣言に、老人たちも一様に暗い顔になり、黙りこくって俯きがちになる。
翌日、老人ホームに隣接した森の中で、子供たちがバレーボールをして遊んでいる。野球でもサッカーでもなく、バレーボールと言うのがいかにも作為的であったが、当時はドラマの影響などもあってバレーボール人気が高かったのかも知れない。
「子供たちが遊びに来てくれたら……」と言う老人たちの呟きを耳にしたユキは、何か思いついた顔になるとその子供たちのところへ飛んで行く。

ユキ「さあ、行くわよ」
そして、かなり強引に子供たちを仕切ると、ライン際に一列に立たせると、勝手にバレーの熱血コーチを始めるのだった。
ひとりひとり指名しては、容赦なく激しいサーブを叩きつける。要するに「千本ノック」である。
最初は戸惑っていた子供たちも、ユキの真剣な指導ぶりに段々乗ってきて、技術も急速に進歩する。

それにしても、真っ赤なセーターにベルボトムのジーンズと言う、これ以上はないというシンプルなファッションだが、背が高くスタイルの良い坂口さんだと、それだけで「絵」になるんだよね。
ユキ「よおし、だいぶ上手になったわねえ。それでは今から対外試合を行う」
もっちゃん「お姉ちゃん、ろことやるのれすかぁ?」
ユキ「それはねえ、ここのおじいちゃんやおばあちゃん」
もっちゃんと言うのは、ユキが助けた子供なのだが、その舌足らずの喋り方が実に可愛いのである。
子供たちは相手が老人ホームの老人だと聞くと猛烈な拒否反応を示すが、ユキは「コーチの言うことが聞けないの?」と、勝手にコーチに就任した上にコーチの権限をふりかざし、強引に試合をマッチングしてしまう。
老人たちもユキの提案に仰天するものの、伸一郎が思い切ってOKすると、それに賛同する者が続出し、無事に老人対子供と言う珍しいゲームが行われることとなる。
最初は嫌がっていた子供たちも、実際に始めて見ると予想外にやる気を出して盛り上がるのであった。

南原「こんにちは」
ユキ「……」
光太郎「……」
南原「異常ありませんね?」
ユキ「でも、またいつ出るか分からないんだから、しっかりパトロールしてね」
そこへ光太郎と南原がパトロールの途中に立ち寄る。南原がにこやかに挨拶するが、ユキも光太郎も、まださっきのことを根に持っていてお互いに睨み付け、口も利こうとしない。

光太郎「お転婆な娘だ。男だったらぶっ飛ばしてやるんだがなもう」
ユキがあてつけるように南原といちゃいちゃするのを横目に、ぶつぶつと口の中で文句を言う光太郎。

ユキ「一緒におやりなさいよ」
光太郎「勤務中ですからねえ」
ユキ「怪獣退治じゃなくて市民の安全を守るのが仕事でしょう」
光太郎「そうです!」
ユキ「老人だって市民です! 老人をほんとに大切にするということは、楽しみや生きがいを与えてやらなくちゃいけないことだって新聞に書いてあったわ」
南原「そうだ、外部のものたちと一緒に遊ぶことがこの老人たちにとって何より楽しいんだ。東、やろう」
光太郎「南原さん!」
南原、いつになくまっとうなことを言うと、率先してコートの中に入っていく。光太郎もユキに押されるようにして、仕方なくゲームに参加する。

所長「ありがとう、ユキちゃん、今まではいくら誘っても子供たち来てくれなかったのに」
ユキ「都会の子は、核家族とかでおじいさんやおばあさんの良さが分からないのよ。かわいそうだわ」
所長「あんなのような人がずっと居てくれると、ここも随分明るくなるんだがねえ」
ユキ「……」
そうか、50年近く前の時点で、既に都市部の子供たちはそんな環境に置かれていたのか……。
などとやってると、再びガラキングが忽然と空から降ってきて、ちょうど飛んできたバレーボールをキャッチする。光太郎たちは慌ててみんなを避難させるが、

例によってユキはその場にとどまり、今度はガラキングとバレーの打ち合いを開始する。
で、ここでBGMとして、坂口さん本人の歌う「サインはV」の主題歌が流れ出すのである。
怪獣対人間の、異色ラリーは延々と続き、光太郎も南原も、銃を構えたまま、首を左右(上下?)に動かしてひたすらボールの動きを目で追っている。
さしもの怪獣もユキの若さと根性には勝てず、とうとう最後は強烈なサーブを受け止めかねて地面にうつ伏せに倒れてしまう。
怪獣はむっくり起き上がると、前回のように猛烈な勢いで突進を始める。

荒垣「奴は暴れ出した。攻撃!」
既に現場上空に到着していたZATの各機が、荒垣の命令で一斉に攻撃を開始する。
しかし、岩石状態になったガラキングの奇襲を受けてホエールもコンドルも撃墜されてしまう。
で、ガラキングに踏み潰されそうになった南原を助けようとして、光太郎がタロウに変身する。
優勢のうちに戦いを進めるタロウ、哀れっぽい鳴き声を上げるガラキングにトドメを刺そうとするが、「タロウ、やめて、殺さないで!」と言うユキの声に動かされ、

観念したように丸くなったガラキングをバレーボールのように宇宙へ向かって打ち上げ、追放処分で許してやるのだった。
……しつこいようですが、この前、1000人以上死んでる筈なんですけどね。
怪獣騒動は落着したが、その後、悲しい別れが老人ホームに訪れる。いよいよユキのスチュワーデス試験の日がやってきたのだ。

伸一郎「ユキちゃん、頑張るんだよ」
タエ「一番で受かるように祈ってるからね」
さすがにもう老人たちもユキを引き止めようとはせず、目に涙を滲ませつつ、ユキを送り出してやる。

ユキ「どうもお世話になりました」
ユキ、いかにも後ろ髪を引かれる様子で、ぺこりとお辞儀をして歩き出すが、今度は子供たちがわざとらしく頭を押さえて一斉に頭痛を訴え始める。
とどまるべきか、行くべきか、振り返って躊躇するユキに、横から光太郎の声が飛んでくる。

光太郎「老人を本当に大切にする為には、楽しみや生きがいを与えなくてはならない……」
見れば、光太郎以下、ZATのメンバーが勢揃いしてニコニコとユキを見詰めていた。

光太郎「やりがいのある仕事だと思うけどな。違うかな?」
ユキ「……」
しばらく考え込んでいたユキ、やがて満面に晴れやかな笑みを浮かべると、みんなのところへ戻り、「おじいちゃん、おばあちゃん、今からZATと試合よ!」と、元気よく叫んで、老人や子供たちを大喜びさせるのだった。
それにしても、少し離れたところに立っているが、同じ女性の坂口さんと比べて、松谷さんのちっちゃいこと! 前にも書いた気がするが、森山隊員って、小動物的な(あるいは幼稚園児的な)可愛らしさがあるよね。

森山「あはは……」

森山「うふふ……」
そして、嬉しそうに左右の男性隊員たちの顔を見上げる仕草の可愛いこと!
こうして、ジャージに着替えたZAT隊員と、子供&ユキの混成チームによる試合が行われる。

ちなみに今回は、珍しく、その試合を観戦する形で、ZATのエキストラ女性隊員たちも参加している。
……しかし、しかし、である。
肝心の、ジャージ姿の森山隊員の姿をカメラはろくに映してくれないのである!
コートの様子をロングで撮ったシーンにチラッと姿が見えるだけで、顔もはっきり見えないまま、番組は終わってしまう。
当時のスタッフは、何を考えていたのだろう?
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