第35話「月世界の戦慄」(1968年6月2日)

冒頭、荒涼とした月面に建設されたドーム状の建物が何の前触れもなく、突然、激しく炎を吹き上げる。

多重的な爆発を繰り返し、美しい炎色で漆黒の虚空を彩りつつ、建物は木っ端微塵に砕け散る。
一方、静止衛星軌道上にあって宇宙からの侵略に対する前線警戒基地の役割を果たしているV3では、

クラタ隊長が、宙に浮いて勝手にカップにコーヒーを注ぐポットを、楽しそうに眺めていた。
クラタ「こいつは凄い、まるで念動力だ」

シラハマ「遠隔指示器としては最も小さいものですが、これが放つ超音波は、10万キロの範囲までコントロール可能です」
クラタ「なるほど、そうか……
いや、超音波って、ここ宇宙空間の中だぞ」
それを動かしていたのはシラハマが開発した小型遠隔装置であったが、超音波はともかく、
10万キロってさすがに性能良過ぎなのでは? V3にいながら、地球上の全てのものを動かせることになるではないか。
そのクラタのところへ、前述の爆破事件の知らせが届く。
無論、その情報は時を移さずしてウルトラ警備隊の元へも達し、キリヤマとダンが、ホーク1号で月へ飛び、その調査に当たることになる。
なんでその程度の事件でキリヤマ隊長自ら御出馬になるのか、考えてみれば不自然と言うか、強引な展開なのだが、ストーリー上の都合なので仕方ないのである。
基地に残ったフルハシは、V3のクラタにキリヤマたちの出動を告げ、クラタはシラハマと一緒にステーションホークで出撃する。

クラタ「こちらステーションホーク、ホーク1号応答願います」
キリヤマ「こちらホーク1号、クラタ、しばらくだな」
クラタ「ああ、一緒に宇宙へ出るのは3年ぶりじゃないか」
いかにも嬉しそうに、久しぶりに戦友キリヤマと通信を交わすクラタ。
その背後で、遠隔指示器を手にしたシラハマが不審な動きを示していることには全く気付かない。

キリヤマ「そうだな。そうだ、あれはヘルメス惑星のザンパ星人を
特に理由もなく全滅させた、あれ以来だな」
クラタ「あの時の戦いにくらべりゃ楽な仕事だ」
キリヤマ「はっはっはっはっ、クラタ、集合地点を確認しておくぞ、チコサンドームの通信室」
クラタ「ようし、調査時間は2時間、それ以上遅れると月の夜に巻かれるから遅れるな」
キリヤマ「ふぁっはっはっはっ、誰だって零下180度の真っ暗闇なんてゾッとしないからな」
キリヤマの「零下180度」と言う言葉に、隣に座っているダンが思わず眉をしかめる。光の国からやってきたウルトラセブンであるダンは、普通の人間以上に寒さに弱いのだ。
つーか、マイナス180度だったら、寒さに強いとか弱いとか関係ないっての。
ところで早くも気付いてしまったが、今回は余計な台詞やシーンがやたら多い。メインストーリーが単純でひねりがないので、尺を埋めるのに苦労していると言う印象を受ける。

二人が延々と要もないお喋りしている間に、ホーク1号のコックピット後方では、シラハマの操る遠隔指示器によって酸素タンクのコックが勝手に回り出し、どんどん酸素が機内に放出されていた。
通信を終えた後、キリヤマは急に胸苦しさを訴え出す。

とりあえずタバコに火をつけようとしたキリヤマ、ライターの火が異様に大きく燃えるのを見て、慌てて蓋を閉める。
考えたら、メカを操縦中に隊員が、それも謹厳そのもののキリヤマがタバコ吸うって、これも変だよね。
キリヤマ「酸素だ。酸素が流れている! ダン、空気調節器が!」
ダン「えっ」
キリヤマ「早く、酸素の放出を止めるんだ」

ダン、慌ててコックを締めながら、(変だ、さっは確認したばっかりなのに)と心中でつぶやく。

キリヤマ「ダン、あれほどコックの調節には気をつけるようにと……」
キリヤマが小言を言おうとするが、その最中に今度は機体がグラグラと揺れ始める。
キリヤマ「ダン、オートコントロールが狂ってる!」
回路をいじると、なんとか機体は水平に戻るが、今度はホーク1号が宇宙空間に静止してしまう。
ダン「隊長、加速管(?)が故障です!」
キリヤマ「何故もっと良く点検しなかったんだ?」
ダン「それはちゃんと!」
キリヤマ「言い訳は聞かん! すぐ連絡を取って救援隊を呼ぶんだ」
いつになく感情的にダンを責めるキリヤマ。
だが、通信機も故障したのか、本部との通信も全く繋がらない。

ダン「連絡不能です。誰がこんなことを……」
キリヤマ「この中には二人しかいない……」
意味ありげなことをつぶやいて、じっとダンに疑惑の視線を注ぐキリヤマ。
だが、長年苦楽を共にしてきたキリヤマのダンに対する信頼はちょっとやそっとでは崩れず、すぐに笑みを見せると、ダンの肩をポンと叩く。
ダン「隊長!」
キリヤマ「よし、補助ロケットで進もう」
だったら最初から「二人しかいない」とか紛らわしいこと口にするなよ……。

ソガ「ステーションホーク応答願います」
クラタ「はい、こちらクラタ」
ソガ「あ、クラタ隊長、キリヤマ隊長との通信が切れてしまったんです」
クラタ「そうか。しかし時間がない。先に現場へ行く」
ソガから連絡を受けたクラタだが、こちらもキリヤマに対する信頼は絶大で、眉ひとつ動かさず、淡々と予定通りに任務を継続する。
ステーションホークがクレーターだらけの月面に降下しつつある頃、ホーク1号も補助ロケットの力でなんとか月に向かって飛んでいた。

ダン「隊長!」
キリヤマ「どうした?」
ダン「超音波を逆探知しました。こいつが通信を妨害しています」
キリヤマ(いや、超音波って、ここ宇宙空間なんだけど……) さすが親友のクラタとキリヤマ、全く同じボケとツッコミを部下を相手に演じていた。
嘘はともかく、ダンはその発信源が他でもないクラタのステーションホークだと知ると、血相を変えて通信機のマイクを握る。

キリヤマ「ホーク1号よりクラタ機へ、ホーク1号よりクラタ機へ! (ガーガーピー)駄目だ!」
ダン(いや、だから通信機は使えないんだってば……) 
ホーク1号が月面に何とか不時着した頃、既にクラタとシラハマは地上車に乗って岩石に覆われた地表を踏み越え、問題のチコサン(チコ3?)ドームに辿り着いていた。
ドームに続く洞窟のような岩場を進む宇宙服を着たクラタとシラハマ。
いつものことだが、とても30分の特撮ドラマとは思えないほどしっかりしたセットが組まれている。
ドーム……と言っても、既に残骸と化しているが、その裂け目から内部に入る二人。
どうでもいいが、靴音がカコンカコンと
反響するのは、やっぱりどうかと思う。
クラタがあれこれ基地の中を調べ回っていると、やっとシラハマが本性を現わして、クラタの酸素ボンベのチューブを背後から引っこ抜こうと手を伸ばす。もっとも、直前にクラタに察知され、失敗に終わる。
こう言う時こそ遠隔指示器使おうぜ! 
クラタ「何の真似だ?」
シラハマ「……」
あと、宇宙服のマスクに、こともあろうに口のところに穴が開いているのもどうかと思う。
シラハマは無言でクラタに掴み掛かり、格闘となるが、クラタから段の上から突き落とされたシラハマは、酸素ボンベのチューブが外れ、動かなくなってしまう。
クラタが驚いてシラハマの体を抱き起こそうとすると、不意にシラハマは愉快そうに哄笑を放つと、何事もなかったように立ち上がる。
シラハマ「ハッハッハッハッ、お前の部下のシラハマなら、もう二日前に死んでいるよ!」

クラタ「なにぃ」
シラハマ「安心しろ、私が人間だったらお前は殺人者だ。3年前、お前とキリヤマのコンビに
特に理由もなく撃墜された宇宙艦隊の生き残りと言えば思い出すだろう?」
クラタ「3年前? じゃあ貴様は?」
シラハマ「お前とキリヤマがもう一度一緒に組む機会を待っていたんだ」
クラタ「復讐か……」
そう、シラハマの正体は、かつて二人に
特に理由もなく全滅させられたザンパ星人の宇宙艦隊の生き残りだったのだ。
と、そこへ早くもキリヤマとダンが近付いてくるのが見える。シラハマは遠隔指示器でクラタを脅し、ホルスターから銃を抜き取り、余計なことを喋るなと命じる。

だが、二人の前に立って、にこやかに挨拶を交わしたキリヤマとダンは、クラタのホルスターが空であること、そしてシラハマがいかにも怪しげな装置を持っているのを見て、一瞬でシラハマこそ今回の事件の張本人だと見抜いてしまう。
ダン「隊長、故障の原因が今分かりましたよ」
キリヤマ「はっはっはっはっ、私にも分かったよ」
そう言うや否や、二人は同時にそれぞれの銃口をシラハマに向ける。

キリヤマ「さあ、手を上げて貰いましょうか」

だが、シラハマが不穏な動きを示した為、二人はすぐ引き金を引く。
銃撃を受けたシラハマは、ショックでザンパ星人の姿に戻る。

なおも抵抗しようとするが、ダンの放ったビームが、

その額に直撃、あえなくお陀仏となる。
相変わらず、ビームの光学作画の繊細かつ美しいこと。
これで終わりではさすがにアレなので、ザンパ星人が斃れると同時に大地が揺れて、最初にドームを破壊した犯人であるペテロと言う、岩石の塊のような怪獣が出現する。
ペテロはまずドームの近くにあった地上車をビームで破壊する。クラタ、キリヤマ・ダンは二手に別れ、それぞれの搭乗機に向かって急ぐ。
色々あって、ダンがセブンに変身し、ペテロとの戦いとなる。

セブン、ナックルを何発もペテロの体に打ち込むが、なにしろ岩石のような皮膚をしているので、自分の拳が痛むだけで全く効き目がない。
逆に、穴から潮を噴き出すと言う、下品な(註・下品じゃないです)方法で反撃する。

まるでホースから水を噴射しているように、潮を吹き続けてセブンを寄せ付けないペテロ。
セブンが梃子摺っていると、

俄かに辺りが暗くなってくる。
そう、月が自転して太陽の光が届かなくなった為、ダンが恐れていた「夜」がやってきたのだ。

セブンが成す術もなくペテロの巨体に押し潰されようとしている頃、地上にいるアンヌは、無言で夜空に浮かぶ満月を気遣わしげに見上げていた。

その裏側で過酷な戦いが繰り広げられているにも拘らず、月はひたすら美しく冴え渡っていた。
絶体絶命のピンチに陥るセブンであったが、その時、再び周囲が眩しいほどの光に照らされる。

そう、かなり都合のいいタイミングだったが、彼らの目の前に白く燃える隕石が落ちて来たのだ。
ちょうど落下地点付近にいたクラタは、すかさずステーションホークを発進させて脱出する。

地表に激突した隕石のテルミット反応のようなまばゆい燃焼光を全身で浴びて、セブンはたちまちエネルギーを回復させる。

ペテロに向き直ると、いきなりワイドショット一閃!

ペテロは激しく爆発を起こしながら、四散してただの岩石に変わる。
……だったら殴らずに最初からそうすれば良かったのでは?
月を飛び立ったクラタは、かなりの距離を進んだところで矢も盾もたまらなくなったようにUターンし、キリヤマたちの安否を確認しに戻る。
これもねえ……、いくらハードボイルドタッチなキャラとは言え、普通だったら月から離陸しても、しばらくその上空でキリヤマたちを待つのが普通じゃないの?
(途中で引き返したとはいえ)
「先に一人で帰っちゃう」のはさすがにまずいのでは?

クラタが月に近付くと、ちょうどホーク1号がこちらに向かって飛んでくるところだった。
キリヤマ「クラタさん、月に忘れ物ですかね?」
並行して飛んでいるステーションホークのクラタにからかい気味の言葉を投げるキリヤマ。

クラタ「野郎!」
そう罵りつつ、キリヤマたちの生還を知ったクラタはつい笑みを浮かべてしまうのだった。
ラスト、もう一度月を見上げるアンヌのアップ。
アンヌ(帰ってくる。きっと帰ってくるわ)
以上、レビューしてみたけど、やっぱりあんまり面白くなかった。
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