第17話「謎の対決!ふたりの渡五郎!!」(1974年1月22日)

愛知県渥美半島、伊良湖岬の高台に、
自然を破壊して建てられた伊良湖ビューホテル。
ロングショットの時点で、リズミカルな太鼓の音が聞こえているので嫌な予感がしたのだが、

案の定、ホテルのステージでは、南洋諸島風の衣装を身に付けた外国人男性が、闇の中に炎が舞う、魂のリンボーダンスを披露していたのであった。
おっさんのスパイダーウォークとか、股間とか見せられてもなぁ……。
一応、腰ミノにビキニのお姉ちゃんたちもいるのだが、暗くて良く見えない。
昔の特撮を見ると、70年代、80年代のリゾートホテルでは何故かこの手のショーが狂ったように繰り広げられていたらしいことが分かる。

で、サトコを除くレギュラーが、そのホテルに遊びに来ていた。
これは、スタッフ、キャストの慰安旅行も兼ねての撮影だったのだろうか?
ナレーターによると「年に一度の休日」らしいが、休みの日とか仕事の日とかって、誰が決めてるんだろう?
あと、年休一日制って、さすがにブラック企業過ぎるのでは?
それと、なんでこんな時に限ってサトコがお休みなの? どうしてスタッフは、サトコを引っ張り出して際どいビキニなど着せて温水プールに放り込んだり、怪人にお姫様抱っこされて誘拐されたりするシーンを撮ろうとしなかったのだろう?
などなど疑問は尽きないが、話を進めよう。
リンボーダンスを見物していた五郎のところに、電話が掛かってくる。それは他ならぬ新人類帝国からの呼び出しであった。

五郎(新人類が俺にたっての頼みがある……なんだろう? 少年同盟女性隊員の制服をミニスカにしろとかだったら良いのだが……)
海岸沿いの道を、物思いに耽りながら、ライジンゴーで駆け抜ける五郎。
ほどなく指定されたテトラポッドが積まれた浜辺に到着すると、体じゅうがレンズとフィルムで構成されたエキセントリックなデザインの怪人、シャシンバンバラが現われる。

怪人「帝王バンバはお前も母親同様、我ら新人類帝国の為に働いて貰いたいとお望みだ」
五郎「と言うと、無理やり俺を?」
怪人「場合によってはな」
五郎「これが俺の答えだ」
無論、五郎がそんな提案にイエスと答える筈もなく、五郎は返答代わりにシャシンバンバラに殴りかかる。

投げ飛ばされた五郎、サナギマンに変身しようとするが、一瞬早く、シャシンバンバラが「タイムシャッター!」と叫んで、左手から特殊な閃光を浴びせ、五郎の動きを……いや、時間を止めてしまう。
怪人「お前の時間は一枚の写真のように定着した。時は止まったのだ」
だったら、そのまま五郎をお持ち帰りして殺すなり脳改造するなりすればいいものを、

シャシンバンバラはアジトに戻り、様々な角度から映した五郎の写真を素材に、五郎そっくりの三次元モデルを作成する。さらに、シャシンバンバラはそのモデルと一体化し、見分けのつかない完全な五郎の偽者に成り済ます。
帝王バンバはその出来栄えに感嘆し、ニセ五郎に「V計画」の発動を命じる。
ちなみにその間、本物の五郎がどうなっていたのか、その辺の説明がないのがちょっともどかしい。
ニセ五郎、手始めに、ライジンゴーで走行中の現金輸送車の進路を塞ぐ。

当然、怒った警備員が車から降りて文句を言う。
警備員は、毎度お馴染み、富士乃幸夫さんであるが、皆さんにはこの顔を良く覚えておいて頂きたい。

五郎はマシンガンを取り出すと、警備員たちの哀訴にも耳を貸さず、薄ら笑いすら浮かべながら、

二人に銃弾を浴びせ、蜂の巣のようにしてしまう。
偽者とはいえ、ヒーローと同じ姿の人間が人殺しをすると言うショッキングなシーンである。
ニセ五郎、近くにいたファントム兵たちに現金の入ったケースを運ばせる。

次のシーンでは、早くも道路に検問が張られていて、何食わぬ顔でライジンゴーを走らせてきた五郎、問答無用で逮捕されてしまう。
五郎「どうしたんです? 何故俺に手錠を?」
警官「これはなんだ?」
五郎「……」
警官、後部座席にあったマシンガンを掴むと、証拠として突きつける。
話の流れからして、この五郎も偽者で、ここでもマシンガンを乱射して罪を重ねるのかと思ったが、意外にもそれは本物の五郎で、あっさり大原署に連行されてしまう。
うーむ、でも、さっきも書いたけど五郎は今まで何をしていたのだろう? 時間停止中に現金輸送車強奪事件があって、その後、五郎の時間が動き出したが、その際、ニセ五郎が犯行に使ったマシンガンをライジンゴーに忍ばせておいた、と言うことなのだろうか?
そもそも、ニセ五郎が乗っていたライジンゴーは本物なのか、偽物なのか?
それと、後部座席にマシンガンがあったら普通気付くだろうし、警察に指摘されたらもっと驚くべきだと思うのだが、五郎の反応はいたって鈍い。
ま、あまり細かいところに拘泥していると話が進まないのでこれくらいにしておく。

五郎逮捕の知らせを聞いて、豪作たちが慌てて大原署に駆けつける。
サトコがいないので、カオルに着目するしかないのだが、このエプロンと言うか、割烹着のようなミニスカワンピース、なかなか良いのです。

豪作「すんましぇん、渡五郎の……」
警官「あ、どうぞ」
さらに、エナメルの黒いロングブーツと言うのも大変そそられるものがあるのです。
三人はすんなり取調室に入ることが出来た。
……って、まさに取調べが行われている部屋に通されると言うのはあまりに親切過ぎるよね。

豪作「五郎、現金輸送車ば襲撃したちゅうのはほんとか? しかも二人も射殺したちゅうとじゃなかか」
五郎「俺じゃない! 人違いだ」
刑事「渡、いい加減に吐いちまったらどうだ?」
カオル「五郎さんは人殺しするような人じゃありません!」
カツミ「これは何かの間違いです」
豪作「そうたい、伊良湖岬に遊びにきちょる男がなんしてそげな悪かことば、せにゃならんとですか」
豪作たちは口を極めて五郎の潔白を主張するが、刑事は、犯行に使われたマシンガンに五郎の指紋が付着していたこと、さらに現金輸送車の負傷したガードマン(警備員)も、五郎が犯人に間違いないと証言していること、などを持ち出して、頑として譲らない。
アリバイについても、五郎はその時刻の記憶が飛んでいて、説明すら出来ない。
ところで、警備員ってどう見ても射殺されていたのに、何故か生き残っていたらしい。でも、豪作も「二人も射殺」って言ってるんだよね。映像を見ても、車には二人しか乗っていないし……。

それはそれとして、五郎は護送車で他の容疑者ともども別の場所に移送されることになる。
五郎(今度の事件は新人類が俺を陥れる為に仕組んだ罠だ……しかし、何の為に?)
だが、護送車は途中で新人類の襲撃を受ける。

五郎「貴様はシャシンバンバラ!」
怪人「我々の目的は渡五郎の救出にある。ほかの人間は虫けら同然、殺せ!」
シャシンバンバラ、警官たちの時間を止めた上で、他の囚人たちに聞こえるようにわざとそんな台詞を言う。
五郎、後部ハッチを閉めて、囚人たちに手出しが出来ないようにする。

怪人「人間どもはお前を刑務所に送るつもりなんだぞ。それでも人間に味方をするのか?」
五郎「貴様の陰謀に負ける俺じゃない!」
シャシンバンバラ、そう囁いて五郎を仲間に引き入れようとするが、五郎が応じる筈もない。
いや、そもそも母親をあんな目に遭わされた五郎が、たとえ社会からどんな仕打ちを受けたところで、自分の意思で新人類帝国の一員になるとは到底思えないのだが……。
五郎は手錠されたままサナギマンに変身し、剛力で手錠を引き千切る。
だが、パトカーがサイレン鳴らしてやってきたので、シャシンバンバラたちは引き揚げ、五郎も追いかける。
結局シャシンバンバラの行方を見失い、元の場所に戻ってくると、警官が囚人たちから事情を聞いているところだった。
警官「逃げたのは渡五郎だけか」
囚人「仲間が助けに来たんだ」
護送車の中でシャシンバンバラの台詞を聞いていた囚人たちは、当然、彼らのことを五郎の仲間だと思い込み、そう証言していた。

五郎(そうか、新人類帝国の狙いは俺を凶悪犯に仕立て、人間社会から追放させることにあるんだ)
その後、道路脇に立っていた二人の子供を、ニセ五郎がライジンゴーで撥ね飛ばすと言う事件が起きる。

と言っても、子供の一人が左手を挫いた程度の軽傷だったが、ニセ五郎はわざと彼らにはっきり顔を見せ付けてから、そのまま走り去る。
本物の五郎は、とりあえず最初に出て来たホテルの一室に身を潜めていたが、豪作たちが血相変えて駆け込んでくる。

豪作「なんちゅうことばしたつか、ぬしは」
五郎「護送車を襲ったのは新人類なんだ」
豪作「まぁ、それはそれとして、轢き逃げはいかんばい」
五郎「何のことだ?」
豪作「とぼけるんじゃなか! 道路を横断中の少年がライジンゴーに轢き逃げされたと……」
カツミ「テレビに五郎さんの写真が出てたんだ」
カオル「一体どう言うことなの?」
豪作たちも疑惑の目を五郎に注ぐ。
で、豪作の発案で、五郎を子供やその親、近隣住民たちのところへ連れて行き、子供に首実検させることにするが、

豪作「本当にこの男が清君ば轢き逃げした犯人かどうか」
カオル「この人じゃないでしょ?」
清「この人だよ」 カオル「即答キターーーーーッ!」 
清「間違いないよ、この人がその車で撥ねたんだ」
男「あんたって人は鬼だ、子供を引き倒しておいて、見捨てて逃げたんだからな」
住民を代表してコワモテの男性が五郎をなじる。
さらに、現場に落ちていた車体の破片が、ぴったりとライジンゴーのボディに合致することを示し、五郎の犯行だと断定する。
ちなみにこの男性、演じているのは「仮面ライダー」55話でゴキブリ男に改造されていた平松慎吾さんですね。
ところで、パーツが一致したと言うことは、ニセ五郎が乗っていたのは本物のライジンゴーだったと言うことになる。つまり、最初からライジンゴーは1台しかなかったと言うことなのだろう。
と言うことは、新人類は自由に五郎のライジンゴーを使えるらしい。……なんかおかしくないか?

豪作「これだけ証拠が揃えば逃げられんばい、自首しろ、な?」
さすがにこの状況を見て、親友の豪作も五郎に自首を勧めるが、五郎はかえって晴れ晴れとした笑顔になり、
五郎「からくりが解けたぞ。もうひとりの俺がいるんだ」
カオル「もうひとりの五郎さん?」
五郎「現金輸送車のガードマンも俺が犯人だと断定した。と言うことは、もうひとりの俺がいるということになる」 客観的には、これ以上ないと言うほどタチの悪い言い逃れにしか聞こえない五郎の説明に、
男「卑怯者! これだけの目撃者と証拠があるのに、お前はまだ人のせいにするのか?」 ゴキブリ男(ゴキブリ男じゃないです)が激怒して、カイを叱るセイラさんのように五郎をぶん殴ってしまったのも仕方のないことであった。
五郎、それでもへこたれず、自分の手で犯人を捕まえてやると言って、まんまとその場から逃げおおせる。
山の中を当てもなく駆け回る五郎、だが、さっきの男や消防団員、警官たちも山狩りを始めていて、迂闊に身動きが取れなくなる。ゴキブリ男などは、猟銃を構えているほどの本気度であった。

豪作たちも、五郎を心配してやってくる。
いいですねえ、カオルの太もも……。
五郎は、彼らに累が及ぶのを恐れたのか、茂みの中に身を隠す。

カツミ「五郎さんは犯人じゃないね」
豪作「勿論じゃ、ばってん、あれだけ大勢の目撃者が揃ってはのう」
カオル「私は信じるわ、五郎さんを」 彼らの会話を盗み聞きして、仲間のありがたさを噛み締める五郎であった。
しかし、さっきまで「自首せんかコラ」とか言ってたのに、豪作の変わりようがやや不自然である。
まぁ、新人類ならそれくらいのことはやりかねないと考え直したのだろう。
その後、五郎は偶然、あの清と言う、轢き逃げされた子供と遭遇する。五郎の姿に怯えて逃げようとした清、小さな丘から転がり落ちて怪我をしてしまう。
五郎は自分の服の袖を破いて包帯代わりにその傷に巻いてやり、その様子を見た清も、五郎が轢き逃げをするような人間とは思えなくなる。

だが、次の場面では、人々の前にニセ五郎が清を人質にして出て来るので、見てる方も一瞬混乱してしまう。
ここは、本物の五郎と別れた後、清がニセ五郎に襲われるシーンが欲しかったところだ。
ニセ五郎「近寄るとこの坊主を殺すぞ」

男「清……」
豪作「やめろ、気でも狂ったつか、ぬしは!」
ゴキブリ男の台詞からして、彼は清少年の父親らしい。

ニセ五郎、彼らの面前で、ナイフを子供の胸に突き立てようとするが、

寸前で本物の五郎が現われ、その振り上げた腕を掴む。
極論すれば、五郎が二人目撃された時点で、「V計画」は失敗したと言えるだろう。
つまり、シャシンバンバラはもうニセ五郎として市民の前に出るべきではなかったのだ。
この後、二人の五郎による激しい殴り合いが行われるが、「科学戦隊ダイナマン」第24話のような、凝りに凝ったフィルム編集による映像などはなく、俳優と代役がひたすら格闘すると言う手抜き、いや、簡易手法が取られている。

だから、アクションシーンの途中で、不自然にロングになったりするのだ。

色々あって、清少年の傷に巻く為に、本物の五郎が服を破いていたことが決め手になり、遂にニセ五郎の正体が暴かれる。
ところで、この画像の五郎の後ろにいる男性、さっき殺された警備員と似てるなぁ……。
こうなればもう書くことはない。
五郎がイナズマンになって、シャシンバンバラを文字通り粉砕し、事件解決となる。
ヒーローが犯罪の濡れ衣を着せられ、社会から排斥されるという、同じ伴直弥さん主演の「キカイダー」にもあったプロットだが、「キカイダー」ほど重苦しい雰囲気は感じられなかった。
多少ブレることはあっても、カオルたちが五郎の潔白を信じてくれていたからだろう。
前記したように、警備員の生死とか、色々と矛盾する点もあるが、なかなかの力作であった。
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