第30話「砂漠に消えた友人」(1980年10月22日)
冒頭、宇宙から飛来した紫色の隕石が彗星のような尾を引いて、日本のとある山に落下する。
落下地点からは、青白い閃光が瞬くと共に、怪獣の唸り声のようなものが聞こえた。
その後、UGM本部の警報ブザーが鳴り響き、敵の出現を知らせる。

オオヤマ「よし、出動!」
キーを叩いているエミの大きな白い手袋が、犬の前足みたいで可愛いのである!
あと、すぐに横にあるイトウのでかい顔と比べると、小顔がますます引き立って可愛いのである!
猛たちは戦闘機で出撃するが、現場上空に到着した時には、怪獣とおぼしき敵によって都市は完全な廃墟と化しており、敵もとっくの昔に姿を消していた。
しかも、イトウによれば、似たようなケースがこれで4度目だと言う。
オオヤマ「こっちの動きを掴んでるかも知れん」
エミ「でも、キャップ、どうして?」
シルバーガルの操縦席の猛は、自分たちを見張っている奴がいるに違いないと断言する。

ユリ子「でも、警戒の厳しいこの基地にそんなことが起こるなんて……」
エミ「そうなの……ハッ!」
UGMの誇る美女コンビがそんな話をしながら廊下を歩いていると、

廊下の突き当たりの壁に怪しい影が蠢いているのにエミが気付き、にわかに緊張が高まる。
エミが、思わずホルスターから銃を抜いて影に銃口を向け、待ち構えるが、

それは宇宙人でもスパイでもなく、ましてや基地に紛れ込んだ豚でも、ぶつかり稽古を挑んできた関取でもなく、広報のセラであった。
セラ「うわわっ、危ない!」
エミ「セラさぁん!」
ユリ子「(撃)てぇーっ!」 エミ「え? ちょっとユリちゃん!」
この時、ユリ子の脳裏には、

クシャナ「焼き払え、どうした、それでも世界で最も邪悪な一族の末裔か!」
と言う「ナウシカ」の名シーンが浮かんでいたそうです。
エミ「……って、あたしは巨神兵かっ」
じゃなくて、
セラ「びっくりしたなぁもう」
ユリ子「驚いたのは私たちよ」

セラ「ユリちゃん、探してたんだよ、気象観測班にちょっと見たいデータがあるんだ。取材なんだけど」
ユリ子「はい、わかりました」
セラのような下等生物(下等生物じゃないです)に対しても笑顔で優しく接してくれるユリちゃんが素敵なのです!

セラ「宇宙観測センターの中に資料がありますから。ちょっとうるさいんですよ」
ユリ子「どうぞ」
ユリ子がカードキーを挿して認証番号を押すと、観測センターのあるAゾーンへの扉が開く。

そこは、異様に警戒が厳重なところで、モニター室の前を通る時、壁の一部が透視カメラになっていて、通る人間のボディチェックが行われるのである。

そのカメラによって、セラの連れてきた二人の男がタダモノでないことが一発で分かってしまうのだが、どんなハイテクメカを導入しようと、結局それを運用する人間の資質・能力によって結果は左右されてしまうもので、この時も、モニター室の職員が二人ともカメラに背を向けていた為、易々と通過を許してしまう。
それにしても、このシーンを見るたびに、「トータルリコール」の有名なシーンを思い出してしまう。
ついでにシュワちゃんがボウリングの球のような巨大な鼻クソを掘り出しているシーンを思い出してしまう。

ちなみに、その職員の一人を演じているのが80のスーツアクターもしていた福田浩さん、後の福田健次さんである。
さすがにこの番組がデビュー作だけあって、めちゃくちゃ若くて細い。
セラたちが観測センターにいる頃、静山湖付近で怪獣の唸り声のようなものが聞こえたと言う通報があり、猛とイケダの乗るシルバーガルが現地へ飛ぶ。
だが、今度もシルバーガル到着前に、怪獣は忽然と消えていた。
良く考えたら、怪獣が出たらUGMが出撃するのは当たり前の話なので、それだけでオオヤマたちが何者かが自分たちの動きを把握していると決め付けるのは変なのだが、オオヤマはそう決め付け、基地のゲートのチェックをより厳しくさせる。
セラたちが談笑しながら基地から出て来て、その厳重な警戒ぶりに目を見張る。

土山「あれえ、我々記者に対しても随分警戒が厳しくなったものだねえ」
セラ「そんなことないですよ、記者の皆さんの身元は確実です。特に先輩と僕とは幼馴染ですから」
土山「お陰で随分助かってるよ」
セラ「しかし、先輩が取材旅行中にアフリカで行方不明になったって聞いた時、僕はもう……」

青木「嬉しかったなぁ、砂漠のど真ん中ですからねえ。土山さんと一緒じゃなかったら、僕はあの時ハゲタカの餌になっていた」
セラ「ああ、中学の時に全校マラソンで僕がダウンした時も、セラ、セラって、僕を励ましてくれましたよね、先輩!」
土山「覚えてるよ、焼け付くような砂漠をさまよいながら、あのマラソンのことを思い出してんだ。セラ君のことも……暑かったなあ、あの時も……じゃ、また!」
土山はセラの幼馴染であり、最近、アフリカで青木カメラマンと共に一時行方不明になったらしい。
……と言うことは、冒頭で隕石のようなものが落ちたのは、日本ではなくアフリカの砂漠だったらしい。
つまり、ちょうど落下地点付近に、遭難中の土山と青木カメラマンとがいたと言う訳か。
この辺の説明不足、分かりにくさも、視聴率が低迷した原因ではなかったのだろうか。二人が何とか砂漠から生還した模様についても、一切説明がないのも物足りない。
で、この土山を演じているのが、かつて「スーパーロボットレッドバロン」で、日本一ひげの濃いヒーローとして活躍した紅健役、槙健吾さんなのである。昔の芸名は岡田洋介ね。

それはさておき、二人がにこやかに挨拶して去っていくのを見送りながら、セラは首を傾げていた。
セラ「あれ、寒中マラソンだったんだけどな……先輩、勘違いしてら!」
さて、慧眼の読者の中には、管理人が敢えてこの画像を貼ったことに違和感を覚える方がおられるかもしれない。ストーリーの説明上、不可欠とは思えず、さらに美的感覚に甚だしく欠けるこのような画像を、管理人が訳もなく使う筈がないからである。
無論、ちゃんと理由があってのことなのだが、その理由については、物語が進むにつれて自然に判明することと思う。

セラのアップに続いて、
エミ「ハッ! キャップぅっ!」
ひどくショックを受けた様子のエミの大写しとなる。
……
どうやら管理人の狙いはここにあったようである。
つまり、セラのきったねえ画像(註・きったなくはないです)と、このエミの顔を対比させることにより、エミの美貌をより際立たせると言う深謀遠慮だったのである。
……などと言う与太話はさておき、話を進めよう。

オオヤマ「矢的、どうした?」
猛「操縦不能です」
オオヤマ「何言ってる、Bシステムに切り替えろ」
イトウ「それが駄目なんです」
エミ「Cシステムも駄目なんです」
オオヤマ「だったらDシステムで行け!」
イトウ「そんなシステムありません」
じゃなくて、
オオヤマ「なんだと、矢的、脱出しろ!」
どうやら、猛とイケダの搭乗しているシルバーガルに異変が発生したらしい。
それにしても、二人のおっさんの顔に挟まれると、ますますエミの美貌が照り輝くなぁ……。
オオヤマは脱出を指示するが、脱出装置も反応せず、シルバーガルはどんどんその速度を上げていく。
シルバーガルには、万一に備えてA、B、Cと言う三つの操縦システムが搭載されているのだが、それが三つとも同時に機能不全に陥ると言うことは、明らかに単なる故障とは思えなかった。

あまりの速度に、シルバーガルの主翼にぶつかる気流がうっすら筋を引いて見えるようになる。

さらに、空気との摩擦熱(?)で、機体の表面が泡立つように膨れていく。
この辺の描写は、さすが円谷プロと言う感じである。
凄まじいGに耐え切れず、そのうちイケダは失神してしまう。猛は、ブライトスティックを取り出して80に変身しようとするが、それがコックピット内に仕掛けられた妨害装置に反応し、猛はその存在に気付く。
猛は、以前やったように、銃の先端にブライトスティックを取り付けて引き金を引き、特殊な光線で妨害装置を消滅させ、やっとシルバーガルを空中分解の危機から救う。
そしてお約束だが、猛は、足元にTと言うイニシャルの付いたハンカチを落ちているのを見付ける。

オオヤマ「その奇妙なメカが何か特殊な、そうたとえば磁力、あるいは一種の電波のようなものを発射していたんだ」
フジモリ「しかし、そんなものをどのようにしてシルバーガルにセットしたんでしょう」
イトウ「スパイだ、スパイがこの基地に潜入していることはもう間違いない」
本部に戻った猛たちから報告を受けているオオヤマたち。
ナレ「ウルトラマン80である猛には思い当たることがあった。あのハンカチにあったTと言うイニシャルだ」 細かいことだが、このナレーション、ちょっと変だよね。
「ウルトラマン80である~」と言う枕詞をつけるなら、続いて、特殊能力を持つ猛にしか気付けないことを言わないと辻褄が合わなくなるではないか。だが、イニシャル付きのハンカチを拾って犯人を推測するなんて、別に誰だって出来ることである。

それはそれとして、猛はエミと一緒に土山と青木を尾行する。
エミ「矢的隊員の思い過ごしよ。第一、土山記者はセラ(呼び捨て)の中学の先輩よ」
猛「どうしても調べたいことがある、君はそこの喫茶店で奴らを見張っててくれ」
これもねえ、Tだけでいきなり猛が土山(と青木)に目を付けているのが唐突な感じを受ける。
Tと言う頭文字で、基地に出入りしている部外者は他にも一杯いる筈だからである。
それと、猛の台詞から、青木カメラマンのことも同類だと決め付けているのもいささか乱暴である。
猛は、エミに見張りを任せて、ひとりで土山のマンションへ不法侵入し、ウルトラアイで調査するが、予想に反して、なんら怪しいものは見付からなかった。

薄いピンク色のブラウスが良く似合うエミ、猛に言われたとおり、喫茶店に所在なげに座っていると、

土山「やあ、デートですか、城野隊員」
エミ「こんにちは」
他ならぬ土山と青木がその背後に立ち、親しげに話し掛けてくる。
土山「なんか僕たち疑われてるんだって? 空中分解寸前のシルバーガルを救った矢的隊員のほうがよっぽど宇宙人的だよな」
青木「ほんとだ」
この土山の台詞も、何で自分たちが疑われていると知っているのか、ちょっと引っ掛かる台詞である。
ついでに、シルバーガルがそんな目にあったことを、どうして土山が知っているのか?……と言うことをエミが不思議に思わないことも変である。

エミ(矢的隊員が宇宙人だなんて……)
が、エミは寝不足で頭がちゃんと回転しないのか、見当違いの方向に潤んだ目で思いを馳せていた。
その後、猛はセラにその疑惑について話す。当然、セラは激しく反発する。

セラ「矢的隊員、ひどすぎるよ、土山先輩が宇宙人だなんて、スパイだなんてさー。ふとっちょ、セラっちょ……」
猛「なんだいそれ」
セラ「そう言って、良くみんなにいじめられたんだよ。それを、土山先輩いつも庇ってくれた。いつも一緒に泳ぎに行ってさあ、僕が泳げるようになったのも、先輩のお陰なんだよ!」
セラ、切々と、自分がいかに子供の頃から土山に世話になってきたか、熱弁をふるう。
思うに、このシーンは、猛たちが尾行するシーンの前に持って来るべきだったのではないだろうか。そうすれば、さっき提示した疑問も、セラを通じて土山たちが自分たちが疑われていることを知った……と言う風に解釈できたのだが。
猛は、セラが何気なく口にした土山たちのアフリカでの遭難の一件を聞き、考え込む顔になる。

警備隊長「Aゾーンへ入った者の、透視写真をチェックしていたんですが……」
その後、イトウたちは、警備隊長から4枚の写真を見せられる。それは、ユリ子たちが土山たちを案内した時の、透視カメラの映像をプリントしたものであった。

イトウ「骨がない! この装置は我々の骨に反応してシルエットを作るんですね」
警備隊長「そうです」
イトウ「シルエットがないってことは、骨がないってことですか」
警備隊長「そうです、この二人の体には骨格が一本もない。カメラの故障かとも思ったんだが……」
警備隊長を演じるのは、21話にもゲスト出演していた、ブラック指令こと、大林丈史さんである。
二人に骨がないと知った猛は、彼らの正体が、いくつもの星を侵略してきた恐るべきザタン星人だと見抜く。
相手が宇宙人だとわかったので、UGMは直ちに宇宙観測センターに入ろうとしていた土山たちを包囲し、銃口を向ける。

フジモリ「止まれ、ザタン星人、正体は分かってるんだ」
セラ「ちょっと待って下さい」
当然、セラは身をもって土山たちを庇う。
フジモリ「構わん、撃て!」 セラ「うぎゃーっ!」 土山&青木「ひでー」
と、したいのは山々のフジモリであったが、いくら下等生物(下等生物じゃないですってば)とは言え、むやみに撃ち殺す訳には行かない。
それにしても、フジモリ、なんでザタン星人と言う名前を知っていたのだろう? 猛が教えたら、「なんでそんなこと知ってるの? ひょっとしてお前も宇宙人なの?」と言うことになるし。
猛はここで、本物の土山たちは既にザタン星人に砂漠で殺され、目の前にいるのは偽者なのだと言う残酷な事実をセラに伝える。

と、土山たちもあっさり本性を現わし、背後から駆け寄って両側からセラの腕を掴むと、そのまま屋上に飛び上がり、ビームを撃ってくる。
フジモリ「構わん、撃て!」 セラ「うぎゃーっ!」 土山&青木「ひでー」
と、したいのは山々のフジモリであったが……(以下略)
土山は、セラを人質にして、「屋上に通じるドアを開けたまえ、中をちょっと拝見する」と要求する。
フジモリ「もう、ちょっとだけですよ~」
土山「いや、すまん、すまん」
じゃなくて、
フジモリが時間稼ぎをしている間に、猛はひとり、建物の中に入り、内部から屋上を透視し、

再び、ブライトスティックを利用した特殊なビームを放ち、

まず、青木に化けていたザタン星人に命中させる。

渾身の光学作画によって、青木とザタン星人の体に青白いパルスが走る様子が描かれる。

とんがり帽子に赤い手袋と言う、ちょっとメルヘンティックなデザインのザタン星人。あえなくひっくり返って消滅する。
そしてセラが、青木の持っていた銃を拾って、土山の体に撃ち込む。

だが、死ぬ間際、土山は右手を空に向けてビームを放ち、空中に銀一色の怪獣ザタンシルバーを出現させる。
ザタンシルバー、デザインは「80」の中でもピカ一である。

セラがもう一発土山にビームを撃つと、土山はザタン星人の姿になって倒れ、消滅する。
セラは、涙を流しつつ、膝からその場に崩れ落ちる。
ナレ「セラは今、激しい怒りに燃えていた。
だが、全く絵にならないのであった!」

オオヤマ「いいな、今度こそ怪獣を逃がすな! 出動!」
引き続き、おっさんたちの顔に挟まれながらお仕事中のエミ隊員。
これで、イトウだけでもいなくなってくれるとホッとしたが、

イトウ「怪獣は現在、我々の宇宙観測センターの方に向かっている……」
エミ(もう、あんたも行きなさいよ!) 何故か今回、イトウは司令室から一歩も出ようとせず、引き続きエミの横に居座り続けるのだった。

口からガスを吐いて、UGMの戦闘機を撃ち落すザタンシルバー。
ザタンシルバーは外見だけではなく、実力も相当のもので、シルバーガル、スカイハイヤーのレーザー攻撃を一切受け付けない。
猛「金属のようですが、金属反応は全くありません!」

オオヤマ「チーフ、GZ爆弾を使ってみろ」

イトウ「GZは、シルバーガルのα、Β号に一発ずつ積んでいますが、まだ実験もされてません」
エミ(私の顔の上で会話するのやめて欲しい……) この時、エミは両サイドからの「W加齢臭攻撃」で窒息寸前だったそうです。
嘘はさておき、命令を受けて、猛とイケダはそれぞれα号、Β号に分離し、

おのおのの格納庫にあるGZ爆弾(ナレーションによると、なんでも溶かしちゃう化学兵器らしい)をアームで掴んで移動させ、

下部ハッチを開いて、怪獣の頭上から投下する。
いつもながらの素晴らしいミニチュアワークである。
画像は貼らないが、体に降りかかったGZ爆弾の液体を、ザタンシルバーの特殊な皮膚が弾いて揮発させてしまう特撮も見事である。
色々あって、結局最後は猛が80に変身して、怪獣と戦う。
だが、ザタンシルバーの皮膚は、80のビームすら弾き返してしまう。

80、ならばと、必殺の飛び蹴りを何度も何度もお見舞いする。

その連続攻撃に、さしもの強固なザタンシルバーの皮膚にも穴が開き、内部が露出する。
そう、ザタンシルバーはロボット、「兵器怪獣」だったのだ。

80は、指先を合わせると、その先端から冷凍ガスを噴射し、その傷口から機械内部に注ぎ込む。
無敵のザタンシルバーも内側からの攻撃にはひとたまりもなく、たちまち凍り付いて彫像のように立ち尽くす。そして80の放った波動ビームを浴び、ぐらりと倒れると同時に、爆発四散するのだった。
ラスト、両目から涙を溢れさせながら、セラが土山との思い出を回想している。
で、ご丁寧にも、美しい自然を背景に、泳ぎの練習や、マラソン大会、木登りなど、それらの情景が、子役を使って撮られているのである。
スタッフのこだわりには脱帽させられるが、そんなもん見せられてもあんまり嬉しくないのだった。
以上、シナリオはツッコミどころ満載だったが、それなりに見せ場の多い力作であった。
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