第52話「ウルトラの命を盗め!」(1974年3月29日)
前回、荒垣に代わってZATの副隊長に就任した二谷一美にスポットを当てたエピソード。
ZATでは、半年に一度、隊員たちの体力テストが行われている。是非、森山いずみ姫のテストの様子をかぶりつきで見せて欲しいが、それはおいといて、隊長および副隊長は、テストが免除されることになっていたが、

新任の二谷は、その特典に甘んじず、鉄橋の下の河原で年甲斐もなくハードトレーニングを行っていた。
彼も、若い隊員たちと一緒に体力テストを受けるつもりなのだ。

光太郎「あれ、副隊長だ。はぁ~、頑張るなぁ」
ちょうど土手の上を散歩していた光太郎、ランニングをしている二谷の姿を見掛けて、感心する。
と、そこへ森山隊員から異常事態発生を知らせる通信が入り、光太郎は二谷と川沿いの道を競走しながらZAT本部へ向かう。

本部のレーダーには、宇宙空間で、もつれ合うように飛んでいる二つの正体不明の物体が映し出されていた。
二谷「あれは俺のいた基地の近くじゃないか」
森山「ええ、そうです」
二谷「怪獣め、俺がいなくなったと知って攻撃して来たな」
レーダーでは分からなかったが、その二つの物体は、泥棒怪獣ドロボンと「帰ってきたウルトラマン」(以下、新マン)であった。
両者は宇宙空間で激しいどつき合いを演じていたが、新マンはあえなく敗れ、地球の重力に吸い寄せられて落下し、ドロボンも地球に降下する。

森山「うんっ?」
二つの物体が相次いでレーダーから消えたのを見て、「むぱっ」と唇を結ぶ森山隊員が可愛いのである!

ドロボンは深夜の東京の街中を、手にした赤いランタンの光で照らしながらドタドタ歩き回る。
ドロボン「タロウ、出て来い! タロウ、出て来い!」
ドロボンの声は例によって渡部猛さん。

やがて白々と東の空が明るくなってくる。
ドロボンは猛々しい風貌の割に辛抱強く、あくまでタロウ(光太郎)を見付け出すことに専念し、家ひとつ、ビルひとむね破壊せず、朝を迎える。

ZATは、朝になるのを待ってから出撃しようとするが、トレーニングのし過ぎか、走り出した二谷が苦しそうに胸を押さえる。
光太郎「副隊長、あまり無理をなさらないで下さい」
森山「私も行きますから、副隊長はお休みになって下さい!」 森山隊員の思いやりと優しさに、思わず胸が熱くなる管理人であった。
二谷「よし、君も行け、全員出動だ!」
だが、強情な二谷はあくまで出撃を強行する。
スワローに二谷、残りのものはホエールに搭乗して、ドロボンに接近する。
森山「物凄いエネルギーです、今まで現われた怪獣の中でも一番!」

ドロボン「タロウ、出て来い!」
ちょうどそのタイミングで、繰り返しタロウを呼び続けていたドロボンが痺れを切らして実力行使に出る。

操車場に入り込み、停車している貨物列車を思いっきり蹴り上げ、それをトゲ付きの棍棒でかっ飛ばす。
火だるまになった車両が落ちてくる、素晴らしいミニチュアワーク。
ドロボン、堰を切ったように暴れ出し、棍棒で次々と建物を叩き潰していく。
ZATも攻撃を開始するが、何しろ相手は新マンさえ倒した強敵である。早々にホエールは叩き落され、全員パラシュートで脱出する。
嗚呼、一度で良いからパラシュートで降下する森山隊員の姿を見たかった。
二谷は、怯むことなく単機でドロボンの頭目掛けて突っ込んで行くが……。

地面に着地後、ひとかたまりになってコンクリートブロック置き場の中を走る隊員たち。
森山隊員のほっそりしたおみ足が美しいのです! 抱き付きたいのです!

南原「おい、副隊長は?」
光太郎「副隊長!」
森山「副隊長ーっ!」
大声で二谷の名を呼ぶ隊員たちだったが、二谷は別の機に乗ってたんだから、ここでその名を呼ぶのはちょっと変なのでは? まずは通信機で呼びかけるよね。

それはともかく、二谷の姿は何処にも見えない。光太郎たちはドロボンの攻撃を避けて後方に退く。
北島「副隊長はやられてしまったんだ」
南原「久しぶりに第一線に復帰して凄く張り切っておられたのに」
北島「良い人だったな」 二谷を勝手に故人扱いする北島たちに、森山いずみ姫が「まだやられてしまったと決まった訳じゃないわ!」と、凛とした声で反論する。
文字通り傍若無人に暴れ回るドロボンであったが、近くの空き地に、郷秀樹の姿になった新マンの姿もあった。だが、重傷を負って、立って歩くのがやっとと言う状態だった。
ちなみにその衣装は、33話と34話に登場した時に着ていたのと同じ、ウルトラサイン入りの黒シャツに、革のベストと言う組み合わせである。
一方、光太郎と北島はウルフに乗って地上からドロボンに接近を試みる。

ドロボンの口から発せられる火炎攻撃をよけながら、激しく応戦するウルフ。
そのままドロボンの股をくぐるが、ドロボンは宙へ舞い上がり、

くるっと一回転して着地し、地響きを起こしながらウルフを猛然と追ってくる。
この辺の特撮、なかんずく、ドロボンの巨大な足がウルフの後方から見えるシーンの臨場感は、素晴らしいの一語。
一瞬ドロボンの姿を見失ったドライバーの光太郎、思わずブレーキを掛けてしまい、そこをドロボンの足で踏み潰されてしまう。
その瞬間、光太郎がタロウに変身し、北島隊員を助け、ドロボンと対峙する。
ドロボン「やっと現われたな、タロウ、これを見ろ、うん?」
だが、ドロボンはすかさず左のランタンをタロウに見せ付け、牽制する。見れば、何とスパローの機体が半分捻じ曲がった状態でランタンの中に嵌まり込んでいるではないか。二谷は、その操縦席の中で気を失いながらも無事だった。
怪獣の分際で人質を取るとはなかなか油断のならないドロボンであったが、当然タロウは手出しが出来ず、一方的に棍棒で打ちのめされる。

二谷「タロウ、俺に構うな、やれ、やってくれーっ!」
やがて二谷も意識を取り戻し、状況を把握すると必死にタロウに向かって呼びかける。
しかし、地響きの中、スワローの中から叫んだところでタロウの耳に届いたかどうかは怪しい。仮に聞こえていたとしても、タロウにそんな非情な真似が出来る筈もなかっただろう。

二谷は外見とは裏腹に、荒垣以上に男気あふれる隊員だったようで、それならばと、銃口を自分のこめかみに当てて、自ら死のうとする。
二谷「俺がいるために攻撃できないんなら、俺は死ぬ。あとは頼むぞ。……さらば諸君!」
森山「ひっ、副隊長ーっ!」
森山隊員の悲鳴のような叫び声を聞きつつ、CMです。
CM後、二谷は本当に引き金を引くが、あいにくと弾切れで、カチカチと空しく音がするだけ。
やがてタロウは空へ飛び上がり、一旦退却する。

人間に戻った光太郎は、その辺りを彷徨っていた郷に出会う。
光太郎「あいつは一体何のつもりで僕を狙ってるんでしょう?」
郷「今、宇宙に戦争がある」
郷の言葉に合わせて、宇宙空間で円盤と戦闘機が交戦するイメージが映し出されるが、これは「ウルトラセブン」のステーションホークと宇宙船との戦闘シーンの流用である。13話かな?
郷「その戦争にお前を引っ張り出し、味方にして助太刀さそうとしてるんだ」
光太郎「そんなことを僕がすると思ってるんでしょうか?」
郷「あいつの手の中には副隊長と言う切り札がある。彼の命と交換条件に助太刀を持ち出したらどうする?」
光太郎「……」
光太郎は重苦しい表情で沈黙する。
スパローの二谷も「死ぬことも出来んのかーっ」と、無念の叫びを振り絞り、

北島「手も足も出ないとはこのことか」
南原「もう、ZATもおしまいだ」
森山「ウルトラマンタロウもやっぱり神様じゃないのね」
地上の北島たちも、いつになくあっさり絶望の淵に沈んでいた。
こんな局面でも、隊員たちが「副隊長の命を犠牲にしても攻撃する」と言う選択肢を、俎上に乗せようともしないのが、いつもニコニコ仲良しZATの性格を良く現わしている。
(その代わりに、避難している作業員がそんな趣旨の発言をしている)
ウルトラ警備隊やMATなら、絶対そのことで隊員同士で激しい対立が起きる筈だよね。
なお、MACの場合、隊長のダンが捕まったら、全員何の迷いもなく攻撃を続行していただろう。ゲンなんかこの時とばかりに、率先してダン目掛けて集中砲火を浴びせるだろう(註・管理人の偏見です)。
隊員たちが歯軋りしている間も、ドロボンは休むことなく建物を破壊し続けていた。
光太郎と郷は、出来るだけドロボンに近付いてから、打ち合わせどおり、まず郷が新マンに変身する。
ちなみに劇中では郷の方が年上と言う設定だが、役者の年齢では光太郎の方が年上だったりする。ま、ほぼ同じだけどね。

ドロボン「ウルトラマン、また会いましたな」
新マン「……」
ドロボン「これと? よしよし、お前で我慢しよう」
新マンの意図を察したドロボンは、悠然と新マンに歩み寄り、

先にランタンごとスパローを新マンに渡すと、

いきなり、むんずとその胸を鷲掴みにする。
別に豪快なセクハラをしている訳ではなく、ウルトラマンの象徴であるカラータイマーを毟り取ろうと言うのだ。

どう言う仕組みになっているのか不明だが、カラータイマーは簡単に毟り取られ、さらにドロボンの胸に移植されてしまう。

長いウルトラシリーズの歴史でも、カラータイマーを奪われたウルトラ戦士などと言う情けない映像は、これが最初にして最後だろう。

新マンは、残った力でなんとかランタンを地面に置くと、仰向けに横たわり、全身から青白い炎を噴き上げる。

それは良いのだが、最後にマスク以外のスーツがぺしゃんこになってしまうのは、あまりにカッコ悪くて感心しない。ここは普通に倒れたままで良かったのでは?
しかし、ドロボンは最初からカラータイマーを奪う為にタロウを呼んでいたのだろうか? とすれば、助太刀うんぬんと言う郷の説明と矛盾するような……?
もっとも、ここまでは二人の立てた計画通りなので、光太郎は目の前で兄が殺されるのを見ても、さほどショックを受けた様子も見せず、雄々しくタロウに変身する。

胸にカラータイマーをつけた者同士が殴り合うと言うこれまた珍奇な光景。
タロウ、人質はいなくなったが、ドロボンは新マンのパワーを得てますます強大になり、とてもタロウ一人では太刀打ちできない。それに、迂闊にストリウム光線を使うと、新マンのカラータイマーを破壊してしまうおそれもあった。
そこで、これも予定通りか、タロウはひたすら防御に徹し、先に変身した新マンのカラータイマーのエネルギーが枯渇するのを待つ作戦に出る。
やがて、ドロボンのカラータイマーが赤くなり、点滅を始める。

タロウは即座に反撃に転じ、今までの鬱憤を込めてドロボンに蹴りを入れる。
……って、思いっきりカラータイマー蹴ってるように見えるが、良いのか?
新マンに救出された二谷も、不屈の闘志で立ち上がり、森山隊員とペアシートでコンドルに乗り込み、援護射撃を行う。

タロウは仰向けに倒れたドロボンの胸からカラータイマーを奪い返すと、新マンの胸にポコッと置く。
新マンはたちまちむくむくと膨れ上がって蘇るが、二谷に言われてタロウは新マンを太陽近くまで連れて行き、エネルギーを補給させることを優先させる。
そして、ドロボンは二谷の攻撃でトドメを刺されるのだった。
さて、事件解決後、光太郎が本部に行くと、二谷が浮かない顔でいつもとは違う席に腰を下ろしている。

光太郎「どうしたんですか?」
森山「副隊長、失格だって、いつもの席を替えたの」
二谷、今度の失敗ですっかり自信喪失してしまったらしいのだ。

光太郎「副隊長、それはいけないですよ。隊長が死ねば副長隊が指揮を取り、副隊長が死ねば北島さん、北島さんが駄目なら南原さん、ZATの規則はそうでしょ?」
二谷「ま、そりゃあ」
光太郎「さ、副隊長は死ぬまで副隊長です。あそこに座ってない時は死んだ時です」
光太郎に理路整然と説かれ、二谷も「分かった」と応じる。光太郎たちは直ちに二谷を本来の席に座らせる。

光太郎「さ、副隊長」
二谷「うん、定時警戒態勢、出動!」
一同「はいっ!」
やる気を取り戻した二谷が、威勢良く部下に号令をかけたところで、爽やかな幕切れとなる。
さて、いよいよ次回、最終回! の筈だったんですが……。
- 関連記事
-
スポンサーサイト