第61話「怪人ナマズギラーの電気地獄」(1972年5月27日)
死神博士と地獄大使と言う「悪の組織」の二大スターが初めて共演したエピソードである。
後に「V3」でも復活して共演しているが、「仮面ライダー」ではこれが唯一の共演になる……のかな?
この61話を皮切りに、ちょくちょく死神博士が南米から帰国しているので、なんとなく二人は何度か共演しているようなイメージを抱いていたので、ちょっと意外だった。
冒頭、房総半島沖を飛行中のF-4EJが、国籍不明の潜水艦を発見して接近を試みるが、潜水艦の主砲によってあえなく撃墜される。
しかし、潜水艦の主砲って……。

無論、それは、親に言われた
「人の嫌がることを進んでやりなさい」と言う言葉の意味を、完全に取り違えているショッカーの皆さんの仕業であった。
そして、潜水艦に乗っているのは、めずらしや、南米に飛ばされた筈の死神博士であった。
死神博士「ショッカー日本支部の基地が行川アイランドの地下にあるとは……さすがは地獄大使、良いところに目を付けた」
これで毎日タダでフラミンゴショーが見れるわいと、ほくそ笑む死神博士であった。
その行川アイランドの全景が必要以上にねっとりとしたカメラワークで映し出される。
耳を澄ませば、
「悲しいけどこれタイアップなのよねー!」と言う、スレッガーっぽいカメラマンの心の声が聞こえてきそうである……と言うのは嘘である。

それに続いて、五郎を先頭にユリたちいつものメンバーが細い坂道を走るように下っている様子が描かれる。
五郎「みんな、もうすぐフラミンゴの踊りが始まるよ!」
そう、当時の日本では、大人も子供も、寝ても醒めてもフラミンゴショーのことで頭が一杯だったのである。
ちなみにおやっさんは同行していたが、肝心の猛と滝の姿はなかった。

さて、ショッカーのアジトに到着した死神博士は、地獄大使と初対面する。
地獄大使「ようこそ、死神博士」
死神博士「地獄大使」
地獄大使「死神博士がわざわざ南アメリカからこの日本においでになったと言うことはショッカー日本支部にとって鬼に金棒……と言いたいところだが、この地獄大使ひとりでは日本征服には力が不足と言うことかな? へへへっ、ふぇっへへへっ……」
握手を交わした後、冗談めかして(死神博士を招聘した)首領に対する不満を吐露する地獄大使。
「日本征服など自分ひとりで十分だ」と言いたかったのだろうが、これまでの戦績をかえりみると、あまり説得力がない。ま、それは死神博士も似たようなものだが。

地獄大使「はっはっはっはっはっ……」
死神博士「土産物をお見せしよう」 自分の言葉に自分でウケて笑い声を立てる地獄大使であったが、死神博士はニコリともせず、さっさと仕事の話に入ろうとする。

地獄大使「……」
地獄大使も、無視されたのでついこんな顔になる。
物の本によれば二人は「折り合いが悪かった」(嫁と姑か!)らしいが、案外、その不仲の原因は、こう言う些細なやりとりに端を発しているのかも知れない。
でも、時間にしてごく僅かだが、この二人の性格の違いが如実に表現された対話シーンは「仮面ライダー」にしては珍しく大人っぽい雰囲気が漂っていて、私は好きである。

怪人「アブアブアブアブ……」(と言うように自分には聞こえる)
死神博士がやや自慢げな顔で紹介したのは、アンデスの沼に住むデンキナマズを改造して作られたナマズギラーと言う怪人であった。
地獄大使「して、その能力は?」 後にこの修羅場を運良く助かった戦闘員たちの証言によると、地獄大使の何気ない一言を聞いた瞬間、全身の血が凍りつくような恐怖に襲われたと言う。
口語的に表現すれば「やべぇ」と言うことになる。
案の定、死神博士の目配せを受けたナマちゃんは、
戦闘員「あ゛あ゛ーっ、あ゛あ゛、あ゛あ゛ーっ!」 (日本語訳・ああっ、まだ家のローンが残ってるのにぃーっ!) 近くにいた罪のない戦闘員を感電死させてしまうのだった。
さらに無差別に電気鞭を振り回して基地ごと破壊しかねない怪人の暴れん坊将軍ぶりに、地獄大使もおたついて「うう、くっ、やめさせろ死神博士!」と思わず悲鳴を上げる。
死神博士「ナマズギラーのヒゲには10万ボルトの電流が流れている。このヒゲに触れた人間はたちまち感電して死んでしまう。たとえ仮面ライダーといえど敵ではない」
自信たっぷりに断言する死神博士だったが、南米で遊び過ぎてボケたのか、仮面ライダーが10万ボルト程度の電流でどうにかなると言う、重大な心得違いをしていた。
仮面ライダーをヒーヒー言わすには、せめて100万ボルトはないとねえ。

さて、行川アイランドでは、魅惑のフラミンゴショーが行われていた。観客席を埋め尽くす黒い頭の群れに混じって、当然、五郎たちの姿もあった。
しかし、後の「スカイライダー」や「シャイダー」などのロケと比べると、信じがたいほどたくさんの客がいて、行川アイランドにもこんな時代があったんだなぁと感慨深い。
もっとも、このわずか数年後には経営不振に陥り、会社更生法を申請する憂き目に遭うのだが……。
五郎「うまいねえ~」
ユリ「どっちがよ」
ソフトクリームを舐めながらフラミンゴの踊りを見物しているご満悦の五郎、ユリに聞かれると、

五郎「どっちもだよ! と……」
振り向いて答え、ついでにトッコの美味しそうなフトモモに視線を注ぐ。
五郎の視線から隠すように、思わず手を足にやるトッコが可愛いのである!
もっとも、五郎、まだ色気づくには早く、
五郎「それにしてもフラミンゴの足ってのは綺麗だねえ!」
単に、フラミンゴの足と比べていただけだったと判明する。

エミ「まぁ、レディの前で何よ!」
トッコ「生意気よ!」
五郎「うっ、ちょっ……」
トッコ、いきなり五郎の後頭部を強く押して、ソフトクリームに五郎の顔をめりこませる。
それにしても、エミ、いつまで経っても演技が上達しない……。
ま、監督も、添え物扱いのライダーガールたちに演技をつけるなんてことはあまりしないんだろうな。

五郎「やったなーっ!」
ソフトクリームまみれの物凄い顔になった五郎。

トッコ「ベーッだ!」
謝るどころか思いっきりベッと舌を出してみせるトッコが可愛いのである!
図体(なり)はでかいけど、精神年齢は五郎と似たり寄ったりというところが果てしなく萌えますね。
五郎はフラミンゴそっちのけでトッコたちを追いかけ、三人は洞窟のような通路の中を走り回る。

だが、トッコたちは洞窟の中で五郎とはぐれてしまう。洞窟から出たところで、おやっさんたちに出くわす。
ユリ「びっくりするじゃない、ね、五郎は?」
エミ「トンネルの中でまいちゃった」
立花「おいおい、まいちゃったって、あいつひとりになって迷子になっちゃったら困るのはこっちだよ」
ユリ「この中とっても広いのよ、ね、探しに行こう」
ユリ、園児の手を引く保母さんのように、エミの手を掴んで洞窟の中へ。
五郎はすっかり道に迷って心細げにトッコたちの名を呼んでいたが、ふと、怪しい気配に気付き、「誰だ? 姿を見せろ!」と、勇ましく誰何する。

と、短いトンネルの中で火花が散ったかと思うと、
怪人「ヤベェヤベヤベヤベ……」(と、私には聞こえた)
いきなりナマズギラーが現われて、早口で叫びながらこちらに突進してくる。
思わず
「やべぇのはお前の方だよ!」と叫んで逃げ出したくなる。
怪人「まず日本に来た手始めに貴様を殺してやる。アブアブアブ……」
日本に来たばかりなのに、まるで日本語しか喋れないように流暢な日本語を話すナマちゃんでした。
だが、そこへ地獄大使が現われ、五郎殺害を止める。例によって例のごとく、五郎を利用してより大きな戦略的成功を収めようという身の程知らずの欲を出したのである。
「小さなことからコツコツと!」と、ガンジーも言っていたように、ここはまず、最年少の五郎の息の根を着実に止めることの方がショッカーのためになったと思う。
もっとも、そんなことをしたら猛たちの凄まじい怒りを呼び、あっという間にショッカーが滅ぼされていた可能性も考えられるが。

一方、バイクを連ねて房総半島へ向っていた猛と滝だったが、その前に死神博士が現れる。
死神博士「我々ショッカーはあのうるさい小僧を人質として頂いた」
猛「きさまー、やはり日本に舞い戻っていたのか?」
死神博士「ふっふっ、小僧の命が大事ならここから引き返すことだ」
猛「待て、滝!」

滝、猛の制止も聞かずにバイクで斜面を駆け上がろうとするが、

仕掛けられていた地雷であっさり爆死する(註・生きてます)。
別にスタッフが笑わそうとしているのではないだろうが、管理人、つい笑ってしまう。
猛が滝に駆け寄ったところに、今度は戦闘員たちが次々と手榴弾を投げてくる。さすが南米帰りの死神博士、シャレにならない攻撃方法を採ってきた。
爆風を受けてうつ伏せに倒れる二人。

ここまでは良かったのだが、緊張感もなく近付いて殺傷能力ゼロのスティックでちょいちょい二人の体をいじっているうちに、気絶したふりをしていた二人がガバッと起き上がり、反撃されてしまう。
なんで、そこでもう一回手榴弾を投げるとか、マシンガンを撃つとか、効果的な攻撃手段を選ぼうとしないのだろう。戦闘員の体には漏れなく「手加減回路」でも埋め込まれているのだろうか。
だが、ここで真打のナマズギラーが登場。

怪人「俺は貴様を倒す為、アンデスのからやってきたナマズ
キラーだ!」
猛「はっはっはっ、アンデスからとはご苦労なことだ、来い、ナマズ
ギラー!」
ナマちゃん、最初の名乗りで自分の名前を間違えると言うトンチキをやらかす。
そしてさりげなく、相手のプライドが傷付かないように訂正してやる猛の優しさがまぶしい。
毎度お馴染み、中田島砂丘でのバトルが繰り広げられる。

丘の上から滝に投げ飛ばされた戦闘員が斜面を転がり落ちていく様子を、カメラは執拗に追いかける。
何もそこまでしなくも良いと思うのだが、カメラマン、何かこの戦闘員に対して個人的な恨みでもあったのだろうか?

戦闘員を蹴散らすと、猛はジャンプして後方へ着地し、気合の入った変身ポーズを決める。
良い具合に風が吹いて猛の服をはためかせ、なかなかカッコイイ変身シーンとなっている。

背景にチラチラ水が見えるが、これは海と言うか、入り江になっているのだろうか。
だが、ライダーとの本格的な戦いの始まる前に、死神博士はさっさとナマちゃんを引き揚げさせてしまう。
何か深い考えがあってのことかと思われたが、CM後、

死神博士「これで私の日本における任務は終わった。あとは本郷たちが罠に掛かるのを待つだけだ」
そう、あろうことか死神博士、作戦途中で帰っちゃうのである!
「悪の組織」の大幹部のケツカッチンって、初めて見た……。
去り際、死神博士は、ナマズギラーには適宜太陽エネルギーを補給しないと電流攻撃が使えなくなる欠点があることを地獄大使に忠告する。

その後、猛たちは行川アイランドでおやっさんたちと合流する。
夜、行川アイランドのステージでは、例によって南洋風の民族衣装をつけたお姉ちゃんお兄ちゃんたちが、得体の知れない(註・知れてます)狂乱のダンスパフォーマンスを繰り広げていた。
見物の中には、大野剣友会のお馴染みの顔も見える。

しかし、このお姉ちゃんの上半身だけビキニスタイル(別名・ジオングスタイル)はなかなか良いよね。

だが、彼らの背後には、妙に目付きの悪くなった五郎が潜んで、猛たちの様子を窺っていた。
五郎は地獄大使の手で洗脳され、なおかつ触れたものに5万ボルトの電流が流れる電気人間にされていたのだ。

滝「おい本郷、おやっさんたちガッカリしてホテルで寝てるって言うのにこんなところでのんびりしていて良いのか?」
猛「待つんだ、ショッカーがこのあたりをアジトにしてる以上、必ず奴らは何かを仕掛けてくる」
猛、ビール片手に妙に落ち着き払っていた。
この後、お兄ちゃんによる「魂のファイヤーダンス」が披露されるが、野郎の半裸と股間見て何が楽しいんじゃ! と言うことで、画像は全てカットさせて頂きました。

五郎はユリたちの部屋に行き、その体に触れた三人を電撃で昇天させる。
続いておやっさんが入ってきて、その際、五郎の右手におやっさんの体が触れても何も起きなかったことは見なかったことにして、五郎の手を掴んだ途端、同じく昇天する。
五郎にはサポートの戦闘員が二人ついてきていて、何故かおやっさんたちの体を部屋から運び出そうとする。
あるいは、彼らもアジトへ連れて行って電気人間にするつもりだったのだろうか?
と言うか、5万ボルトの電流を浴びた時点で全員死んでると思うんだけどね。
おまけに、この戦闘員の存在それ自体が作戦を腰砕けにしてしまう結果を招く。
運び出そうとすると猛たちが来て、殴り合いになるが、

戦闘員「イーッ!」

戦闘員「イ、イイーッ!」
その混乱の中、ぼーっと立っていた五郎の体に触れた戦闘員が二人とも、感電死してしまうのだった。
なんか、ジュニア・アイドルの握手会に来て、感動のあまり頭がショートしてしまったコスプレ好きのオタクのように見える。
……
それにしても、ふーっ(深い溜息)、なんでこう言う作戦に同行する戦闘員に
絶縁服を着せておくという当然の配慮が出来ないのか? 物の本によると、地獄大使は死神博士より作戦指揮能力が高いらしいが、これを見る限り、とてもそうは思えない。

滝「触っても大丈夫か」
猛「
俺は少しくらいの電流なら平気だ。それに五郎の体に充電された電気はもうない」
追い討ちをかけるように、今回のショッカーの作戦の意義をサクッと全否定する本郷猛さんでした。
やがて、おやっさんたちが意識を取り戻して立ち上がるが、猛が五郎の体を抱いているのを見るや、素っ頓狂な叫び声を上げて遠ざかる。

立花「おっ、危ないぞ五郎は!」
ユリ「ああーっ!」
おやっさんの声に慌てて飛び上がるトッコ、ふわっとスカートがめくれて、ほんの一瞬、下着のようなものが見えるのだが、DVDでは判然としない。

五郎「ずるいぞ、二人とも、トンネルの中に置いてけぼりにしやがって! えっ、どうする?」
エミ「キャーッ、やめて、五郎!」
同じく意識を取り戻した五郎、猛の腕からピョンと飛び降りると、トッコたちに指を突きつけ、怖がらせる。
それにしても、戦闘員が死んで、なんでユリたちが助かってるの?
戦闘員て、女の子たちより抵抗力が弱いの?
疑問は尽きないが、管理人もいい加減突っ込むのに疲れたので残りは手短に済まそう。
猛と滝はあの洞窟へ調査へ行くが、滝はあっさり敵の手に落ちる。

過去の戦訓から一切学ぼうとしない地獄大使は、滝も五郎と同じく電気人間にして、猛と戦わせようとする。
……頼むから、すぐ殺して。

猛「滝、お前は死んでしまったのか」
珍しくおセンチになって、行川アイランドのプールの柵にもたれて、打ち寄せる波を見詰めている猛。
と、背後からいきなりバイクに乗った滝が突っ込んでくる。

滝「本郷、死ね!」
猛「あ、ああーっ!」
滝が触ると、猛の体に激しい電流が流れるが、仮面ライダーである猛にとっては冬場に静電気を食らった程度のショックがあるだけで、ほとんど意味はなかった。
……
「5万ボルト程度じゃ猛には通用しないって言っただろうがぁっ!」 と、叫びながら地獄大使の脳天にチョップを叩き込みたい衝動に駆られる管理人であった。

猛が、滝の電流を全て放出させてから気絶させると、ナマちゃんが登場。

ナマちゃんの10万ボルト、いや、それ以上の電流(ボルトは電圧なんだけどね)には、さしものライダーも苦戦するが、
怪人「早くー、電流を送れーっ」
ライダー「そうか、奴はあれから電流を受けているんだ」
アジトの地獄大使が勝負を焦って一気に大量のエネルギーを送ったせいか、ナマちゃんがエネルギーを使い果たしてしまい、さらにライダーに、背後のオブジェが送信パネルになっていることを知られてしまう。

きわめつきは、ここ。
パネルの下に戦闘員がぼけーっと立っていると、

突然、何処からか湧いてきたおやっさんたちにボコボコにされてしまうのである!
……
ショッカーの皆さん、そろそろ目標を世界征服とかじゃなくて、狛江市征服あたりに変えませんか?
それも無理だと思いますが。

立花「五郎!」
五郎「僕は聞いたんだ、ショッカーに捕まった時、塔から太陽光線を反射して、あのナマズの化け物にエネルギーを送るんだって」
なお、どうして彼らがここを襲撃したかと言うと、そんなシーンはなかったが、五郎が捕まった際、地獄大使たちの会話を漏れ聞いていたらしい。
重要な機密を人質の前でペラペラ喋っちゃうって、ついこの前の58話でも同じミスやってたなぁ。

怪人「アブブブ、光を、光をくれ……俺の体に光を当ててくれぇ」
塔へ続く坂道をよたよた登りながら、
死に際のゲーテみたいな台詞を放つナマちゃん。
だが、パネルは五郎たちがロープで引っ張って動かなくなっていた。
はるばるアンデスから連れてこられて頑張ったナマちゃんであったが、エネルギー補給されないまま、パネルのそばに達したところで、「ライダー反転キック」を受けてあえなく沈む。

ついでに、パネルもぶっ壊れ、ついでに地下のアジトまで崩壊してしまうのだった。
この奇妙な連鎖反応の原因は、
「施工業者の手抜き」と言われている。
こうして、終わってみれば、ショッカー、何がしたかったんだ? と言ういつもの諦念に似た感慨に辿り着く管理人であった。

ラスト、五郎やトッコたちが、少し恥ずかしそうに民族衣装をまとって踊っているというシーンになるが、トッコは普段着の上から衣装をつけているだけで、しかも大きく映してくれないのであまり意味がない趣向になっていた。
せめて上半身にビキニを着て欲しかったな、と。
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