第14話「大変だ!地球沈没」(1982年5月8日)
11話の噴火、13話の地震に続いて、今度は地球が沈没するらしい。
……
日本じゃなくて、地球が沈没するの? 何処に?
それはさておき、本題に入ろう。

冒頭、季節外れの防寒服をまとったイガアナ博士とザゾリヤ博士が倉庫の立ち並ぶ一画に現われる。
彼らは人目を忍びつつ、第18冷凍倉庫の扉を開け、中に入る。
イガアナ「おお、寒い」
ザゾリヤ「零下50度ですからね」
イガアナ「おお、かちこちに凍っている」
ザゾリヤ「果たして零下50度でもパワーを発揮できるか、早速実験を始めましょう」
倉庫の奥には、氷漬けになったモズーらしきものが立っていたが、
イガアナ「アンコウモズー、アンコウチョウチンスイッチオン!」
イガアナ博士の命令を受けると、頭の先にぶら下がった突起物から強力な熱線を放射して、自分の体に張り付いた氷をあっという間に溶かしてしまう。
そのエネルギーは莫大で、倉庫の中の氷も全て溶かし、床一面が海のように水で溢れ返る。
実験そのものは成功だったが、戦隊シリーズ中、屈指のトホホ幹部コンビとして知られるイガアナたちは、ツキにも見放されているようで、ちょうどその時、近くで野球をしていた少年たちが転がったボールを取りに倉庫の前まで来て、扉の下から流れ出る水に気付き、何事かと扉を開けてしまう。

ザゾリヤ「見たな?」
二人は自己解凍したアンコウモズーを見られたと知るや、たちまち本来の姿になって子供たちをねめつける。
久しぶりに貼ったけど、イガアナ博士の前掛けに描かれたイグアナ(竜?)のイラストが可愛い……。
ワッと逃げ出す子供たちを、別に放っといても問題ないと思うのだが、イガアナたちが追いかける。
偶然近くを青山とミキの車がパトロール中で、子供たちがアンコウモズーに追いかけられているのを見て、車体で道を塞いで邪魔する。
二人は、アンコウモズーがアンコウチョウチンから放つヒートビームを地面を転がってかわすと、ゴーグルファイブに変身する。

ピンクはすぐにピンクミラーを取り出して、ヒートビームを反射しようとするが、あまりの威力に受け止め切れず、弾き飛ばされてしまう。

ザゾリヤ「どんな鏡でも、ヒートビームを跳ね返すことは出来ん」
イガアナ「ヒートビームでトドメを刺せ!」
二人の前に出て来て、勝ち誇るイガアナたち。だが、どうやらこれが彼らにとって、最後の凱歌だったように思われる。
ヒートビームの威力の前に、手も足も出ないブルーとピンク。と、そこへ残りの三人が応援に駆けつける。
だが、イガアナたちはアンコウモズーのエネルギーを温存させる為、戦闘員に(やられ役を)任せてさっさと退却してしまう。
デストピアに意気揚々と帰還した三人は、早速総統タブーに結果を報告する。
イガアナ「実験は大成功です」 ショッカーの幹部がしばしば口にしていた敗北フラグ台詞を得意げに言い放つイガアナ博士。
しかしまぁ、考えたら、悪の人たちには悪事の実験だけでも成功して貰わないと、それに続く作戦を阻止すると言うヒーローたちの仕事がなくなって番組が成立しなくなってしまうので、必ず実験だけは成功すると言う法則は、特撮番組においては逃れることの出来ない「悪の宿命」なのかも知れない。
ザゾリヤ「零下50度でも一瞬にして氷を溶かすことが出来ました」
イガアナ「アンコウチョウチンのパワーを上げれば、南極の氷を溶かすことも夢ではありません」
ザゾリヤ「南極の氷が溶けて全て水になれば、海面の水位が上がり、地球の陸地の大部分は海の底に沈んでしまいます」
また、彼らはアンコウチョウチンのパワーを増幅させる為の巨大なレンズの研磨を、既に名人と呼ばれる神谷鏡太郎に依頼してあると説明する。

実際に、レンズを磨いている神谷鏡太郎の仕事ぶりが映し出される。
ナレ「今日でも天文台で使うような精巧なレンズは機械で磨くより名人が手で磨いた方が良いレンズが出来るのである」
イガアナ「南極作戦、必ずや成功させてご覧に入れます」

イガアナの締めの言葉に、いつものタブーなら「うわーっはっはっ、面白い、やれーっ!」と投げやりにゴーサインを出すところだが、
タブー「えーい、黙れ、黙れ、その言葉聞き飽きたぞーっ!」 不意に激怒して、身も蓋もないことを言い出す。
何か嫌なことでもあったのだろうか?

デスギラー「くぅ~、ぉお前たちは大言壮語すれど、失敗ばかり、総統タブーは大変お怒りである。今度と言う今度こそ、失敗したら、ぃ命はないぞ!」
デスギラー、立ち上がると、身振り手振りを交えながら、W博士に最後通告を申し渡す。
高橋利道さんの切れの良いゼスチュアと台詞回しは絶品だが、「大言壮語すれど失敗ばかり」と言うのは、イガアナたちに限らず、デスギラー自身やマズルカにもぴったり当て嵌まることで、イガアナたちだけが手厳しく非難されるのは不当だろう。
実際、15話でデスマルク大元帥が登場して博士たちが退場した後、デスマルクとデスギラーとマズルカは30話以上にわたって「大言壮語すれど失敗」し続けるのだが、タブーから処刑されることはなかったのだから。
ただ、イガアナ博士たちは悪人としてもあまりに卑屈と言うかプライドがないと言うか、同じ悪のデスギラーの負けっぷりと比べても、見ていてイライラさせられることは事実なので、実際の戦績以上に不甲斐無くタブーの目に映ったのかも知れない。
それは視聴者としても同じことで、イガアナ博士たちのおろおろする姿を見ているとなんか情けないと言うか、遣る瀬無い気持ちにさせられるんだよね。
悪が、視聴者に同情されたら終わりだよね。悪とは、デスギラーのように(どれだけ負け続けても)常に信念を曲げず、堂々としていなくてはならないのである。
そう言う意味でも、W博士の途中退場は、番組的には正解だったと言わざるを得ない。それと、イガアナとザゾリヤって、発音しにくい上に間違えやすいネーミングでNGだったと思う。

それはさておき、ミキとコンボイたちは検討を重ね、ピンクミラーでヒートビームを跳ね返すには、ピンクミラーのレンズを神谷に磨いて貰うしかないと言う結論に達する。

そこでミキは、早速神谷の自宅に赴く。
なんかあまりにミキが綺麗なので、なんてことはないこの後ろ姿まで美しく見えてしまう。末期症状だな。

(もはや説明を入れる必要もない)

ミキ「神谷鏡太郎さんですね」
神谷「……」
ミキ「申し訳ありません、突然お邪魔して……実は磨いて頂きたい鏡があるんです」
ピンクミラーを取り出して、熱心に頼み込むミキであったが、神谷はいかにも昔気質の名人らしく、作業用のゴーグルの下からジロッとミキを睨み、
神谷「邪魔しないでくれ、一世一代の大仕事、天文台で使う世界最大のレンズを磨いているんだ。出てってくれ」
仕事の手を休めず、けんもほろろに追い返してしまう。
イガアナたちは、神谷にそう言って仕事をさせているのだろう。
それにしても、ミキがこう言うアイテムを持つと、実写版魔女っ子シリーズにしか見えん。

ミキが肩を落として、シャンプーのCMのように髪を靡かせながら建物から出てくると、「お姉ちゃん」と呼ぶ声が飛んでくる。

振り返れば奴じゃなくて、神谷の娘の千鶴がいた。
千鶴「パパにはいくら頼んでも駄目」
ミキ「どうしてえ?」
千鶴「千鶴の約束だって守ってくれないもん」
ミキ「どんな約束をしたの」
千鶴「私の誕生日のお祝いを一緒に買いに行くって言ったのよ。それなのに、明日が誕生日なのに!」
ミキ「今のお仕事、そんなに大切なの?」
千鶴「パパ、たくさんお金貰ったのよ」
そこへクラクションが鳴って、狭い道にその依頼人の車が入ってくるが、

それが、ろくに変装もしていないイガアナ博士たちだったので、一目でミキに見抜かれてしまう。
車から降りるなり本来の姿になり、アンコウモズーも何処からか現われる。

ミキもすかさずピンクに変身して戦うが、やはりヒートビームを跳ね返せず、千鶴を攫われてしまう。
デスギラーたちも仕事場に乗り込み、神谷を驚かせる。
神谷「な、なんだお前たちは」
デスギラー「ふん、まさかデスダークの注文とは思わなかったようだな」
神谷「天文台の仕事ではなかったのか」
デスギラー「ふ、良い出来だ。それっ」
デスギラー、レンズの出来に目を細め、すぐ部下たちに運び出させようとする。

神谷「娘を返してくれ!」
デスギラー「ふぁっふぁっふぁっ」
デスギラーって、ほんとに心から悪を楽しんでる感じで、見ている方も心が弾むよね。
その後、ゴーグルファイブは、洋館の地下でレンズ磨きの仕事をしている神谷を発見し、駆けつけるが、神谷は「磨かないと娘が殺されてしまう」と、一心不乱に腕を動かし続ける。
そう、神谷はデスギラーに脅され、ゴーグルファイブをひきつける囮の役をさせられていたのだ。
無論そのレンズはデスダークが注文したものとは別物で、

本物は千鶴と一緒に、トラックで海岸に輸送中だった。
デスギラー「
はっははははははぁ、本物のレンズはこちらだ、いぃまごろ、ゴーグルファイブは神谷鏡太郎の芝居に引っかかっておる筈! はぁっはははははっ」
このデスギラーの悪役芝居、絶品です。文字では完全に伝わらないけど。
それと、変な大人たちに取り囲まれた千鶴の醒めた目が素敵なのです。
ついでに、マズルカの太腿が割りと綺麗なのに驚いたのです。
イガアナ「さすがデスギラー将軍」
マズルカ「お二人に任せておいては不安なので、デスギラー将軍が陽動作戦をお立てになったのです」
イガアナ「ふんっ」
マズルカは、W博士より身分は低いので一応敬語は使っているが、その態度にはあからさまな侮蔑の念が込められていた。
目下の者にまで馬鹿にされて、ますますW博士が惨めっぽく見えてしまう。
それはともかく、彼らは海岸までレンズを運び、そこでデストピアに積み込もうとしていた。その為、デストピアも海中を移動して海岸に接近中で、その動きはコンボイたちのレーダーにも捉えられていた。
あの洋館には時限爆弾も仕掛けられていたが、起爆寸前に気付いて5人と神谷はそこを急いで飛び出す。

爆風で吹き飛ばされ、神谷を守るように、その上に覆い被さるミキ。

神谷「すみません、皆さん、ニセのレンズと知りつつ、時間を稼ぐ為に磨くふりをしているように脅されていたんです」
赤間「何処までも卑怯な奴らだ」
黒田「俺は本当に怒ったぜ!」

神谷「ミキさん、あなたの鏡を磨かせて下さい」
ミキ「え」
神谷「鏡は人の心を映すものだと言う言葉を思い出したんです。あなたの鏡を真心込めて磨きたい。そして千鶴の誕生日を一緒に祝ってやりたい」
ミキ「ありがとう、
いい薬です」
赤間「任せて下さい、ゴーグルファイブは必ず千鶴ちゃんを救います!」
神谷は悪人に騙されていた自分を恥じると共に、ミキに協力を申し出る。
色々あって、ゴーグルファイブはレンズを積み込もうとしていたデスギラーたちを海岸で捕捉し、攻撃を仕掛ける。
ザゾリヤ「ここまで来て邪魔されて堪るものか」
イガアナ「こちらには南極の氷を溶かすレンズがあるんだーっ!」
レッド「南極の氷を溶かす? そんなことさせるものか」
デスギラー「やかましい! やれぇええーっ!」
岩場の上でデスダークとゴーグルファイブの総力戦が展開されるが、

イガアナたちは、アンコウモズーのヒートビームを神谷鏡太郎謹製巨大レンズで増幅し、さっきとは比べものにならない強力な熱線を発射する。
だが、神谷鏡太郎の手伝いをしていたピンクが、磨き上げられたピンクミラーを携えて戦場に到着、強化されたレンズでヒートビームを見事に跳ね返し、レンズも破壊するのだった。
その後はいつものラス殺陣となり、アンコウモズーを撃破して事件は解決、W博士の乾坤一擲の作戦も水泡に帰す。
当然、イガアナたちはタブーに処刑されそうになるが、「もう一度だけチャンスを……」と訴えて、なんとか許して貰う。
しかし、今回の作戦では、イガアナたちは特にヘマはしていないので、責任と言う意味ではデスギラーたちも同罪だと思うんだけどね。
ラスト、総統タブーはデストピアの進路を南極に取るよう命じ、デスギラーをも驚かせる。
そう、タブーは現行のメンツでは勝利はおぼつかないと見て、南極へ行き、海底に眠るデスダーク最強の戦士を復活させようと考えていたのだ。
ところで、折角ドラマのキーポイントになっていた千鶴の誕生日の様子が、終盤のデスダーク内部の動きのせいで、一切描かれなかったのがちょっと残念だった。
長過ぎる戦闘シーンを切れば、それを描く時間的余裕はいくらでもあったと思うけどね。
- 関連記事
-
スポンサーサイト