第18話「友情のイナズマ落し!!」(1974年1月29日)
冒頭、譲治と言う少年が、団地の屋上から向かいの団地の一室で、若い女性が何者かに殺されるのを目撃する。
偶然、五郎と出会い、一緒に管理人に頼んで部屋を見せてもらうが、そこは空き室で、死体などはなかった。譲治が見たのは、御影さおりと言う女優で、近々その部屋に引っ越してくる予定だったことが分かる。
五郎は、窓枠に残されていた一滴の血から、譲治少年が嘘を言っているのではないと確信する。

譲治「僕、譲治って言うんだ」
五郎「僕は渡五郎」
譲治「ねえ、殺された女の人、どこへ運ばれたんだろう」
五郎「警察に届けたから、後は任せとけばいいさ。じゃ僕はこれで……」
譲治「待って!」
五郎「どうしたんだ?」

譲治、行こうとする五郎を呼び止め、その顔をじっと見詰める。
五郎、その瞳が不思議な光を発するのを見て、タダモノではないと直感する。
譲治少年、どこかで見たことある顔だなぁと思ったら、去年時代劇専門チャンネルでやってた「快傑ライオン丸」のレギュラーだった梅地徳彦さんだった。

譲治「うっ、あっ、うっ、くっ……」
五郎「どうしたんだ、うん?」
譲治「頭が痛い。予感が始まるといつもこうなんだ」
五郎「予感だって?」
譲治「僕は未来のことが見通せるんだよ」
五郎「すると君はミュータントか」
譲治「五郎さんもミュータントだね」
譲治少年はかなり能力の高いミュータントらしく、一目で五郎もミュータントであることを見抜く。
譲治「何処かで大勢の人が殺される……」
その頃、大都撮影所では、セットの中でドラマの撮影が行われていた。

そこで撮られていたのは、男にナイフで刺された若い女性が、起き上がって逆に男にナイフを突き立てると言うシーンだった。
男を演じている俳優を演じているのは大野剣友会の中屋敷鉄也さんである。
そして女は、他ならぬ、殺された筈の御影さおりであった。

監督「カーット! いやー、いいねえ、さおりちゃん。裏切った男に復讐する感じが良く出ていたよ」
監督、カットをかけてさおりの迫真の演技を誉めるが、男優が本当に死んでいるのに気付いて驚く。

監督「おいっ、死んでるぞ! き、君、いったいこれは」
監督の横にいるタイムキーパー風の女の子がちょっと可愛いと思いました。

さおりは無表情でナイフを引き抜くと、今度はスタッフに襲い掛かってくる。
数人が殺されたところで、イナズマンとなった五郎がセットに現われる。
イナズマン「君は一度死んだ筈だ、それなのに生きている、何故なんだ?」
さおり「私は新人類の殺人鬼として生まれ変わったのだ。ふふ、ふふふふふっ」
不気味な笑いを発しながらナイフを振り回すさおり。
イナズマンも相手が人間なので本気で戦えずにいたが、さおりは撮影用の照明を浴びると、悲鳴を上げて倒れ、息絶える。

イナズマン「この人も新人類の犠牲にされてしまったのか」
考えてみれば彼女、人気女優だったのが、殺された挙句に新人類の手先として殺人鬼にさせられるって、めちゃくちゃ極悪なことされてるんだよね。
その後、公園でひとりブランコに乗っていた譲治に五郎が近付いて話し掛ける。

五郎「君には友達はいないのか」
譲治「うん、病気で学校を休んでいるからね」
五郎「お父さんやお母さんは?」
譲治「共稼ぎしてるんだよ」
五郎「じゃあ、いつも君はひとりぼっちなんだねえ。
みじめだねえ」
譲治「うん……って、
余計なお世話だ!」
途中から嘘である。
譲治はひとりでいることが多く、色んな空想をしているうちに予知能力が備わったのだと説明する。

譲治「僕、ほんとはミュータントの能力なんかより友達が欲しいんだよ!」
五郎「友達はいるじゃないか」
譲治「え、何処に?」
五郎「うん」
戸惑う譲治の両手と、自分の両手を重ね合わせ、

五郎「君はもう一人ぼっちじゃない。僕がいる。僕たちは友達だ、そうだろう?」
譲治「うん!」
ま、この状況だとそう答えるしかないよね。
下手に「違う」とか言ったら、どこか遠いところに連れて行かれそうな気がしたと、後に譲治少年は涙ながらに語っていません。

怪人「ドクバンバラの爪の毒を受けたら最後、人間は殺人鬼に生まれ変わってしまうのだぁ」
バンバ「ようし、すぐ行動を開始するのだ」
今度の事件の張本人は、体中からキノコを生やしたトカゲ風の怪人・ドクバンバラであった。
サイケデリックな彩色を施されたそのデザインは、新人類帝国の怪人としてはかなり派手な方である。
一方、部屋にひとりでいた譲治は、再び未来のビジョンを見る。
それは、新人類帝国に若い女性が廃墟のような建物に連れて行かれるものだった。

しかし、次のカットで、譲治がその場所に来ているのと言うのは、いささか乱暴な展開である。
ここは「仮面ライダー」などにも出て来る石灰工場跡だったと思うが、いくらそのビジョンが見えても、そこが何処にあるのかまで分からない筈だからである。
女性「キャーッ、放して! 誰かーっ!」
ファントム兵「黙れ!」
それはさておき、譲治が階段を上がって内部を覗くと、ビジョンで見た女性が柱に縛り付けられていた。

怪人「ええい、俺の爪の毒で、お前を殺人鬼に仕立て上げてやる。うっへっはっはっ」
譲治、うっかり音を立ててしまい、あっさりファントム兵に捕まってしまう。

怪人「小僧、何故俺たちがここにいることがわかった?」
譲治「……」
怪人「ええい、言え! 言わぬかーっ! 言えっ! ううむ、後でゆっくり痛め付けてやる。縛っておけ」
女性「……」
自分がこのシーンの主役の筈だったのに、突如割り込んできた子供のせいで放置されて、ちょっと不服そうなお姉さんでした。
命の危険を感じた譲治は、テレパシーで五郎に必死に助けを求める。
犬笛を聞いた犬のように、五郎が大学の寮から飛び出してくる。

豪作「おい、おい、どぎゃんしたと五郎?」
五郎「黙って」
豪作「黙れとはなんじゃい!」 豪作、珍しくキレるが、
五郎「うるさいっ!!」 豪作「いっひっ」
即座にその倍の大声で怒鳴り返されてシュンとなる。
五郎「譲治君!」
豪作「うんがー?」
五郎「その声は譲治君だな?」
譲治の声「五郎さん、捕まったんだ、殺されるーっ!」
五郎の目に、お姉さんそっちのけで譲治を重点的にボコボコにしているドクバンバラとファントムたちの姿が浮かび上がる。
五郎は直ちにあの場所へ飛び、とりあえず譲治を助けて安全な場所に瞬間移動する。
五郎「君はテレパシーの交信も出来るんだね」
譲治「初めて使ってみたんだ」
五郎「だけど、二度とテレパシーの交信をしちゃいけないよ」
譲治「どうして?」
五郎「テレパシーの交信は物凄く体内のエネルギーを失うんだ、君の小さな体じゃ無理だ」
五郎、体への負担の大きなテレパシーはくれぐれも使わないよう、譲治に強く言い聞かせる。
トゲバンバラは、なかなか五郎が見付からないので苛々していた。

怪人「まだ見付からないのか、ようし、俺が奴をおびき出してやるぅ!」
おっぱいをサンドする形に縛られて引っ張り回されていたお姉さん、いかにも早く帰りたさそうな顔なのがツボであるが、ま、女優さん本人も、早く帰りたかったんじゃないかと推察される。
で、ここでやっと出番が来て、ドクバンバラの毒を受け、さおりと同じく殺人鬼になってナイフを手に五郎に襲い掛かると言う段取りとなる。

怪人「俺様によってこの女は殺人鬼に変わったのだ」
五郎「なんということを!」
だが、その後、お姉さんは間違ってファントム兵士の鉤爪を首に受け、倒れてしまう。
大変気の毒なことに、生死も不明のまま、お姉さんの出番はこれで終了となる。色んな意味で合掌。
五郎、ドクバンバラの毒ガスを浴びて視力を奪われてしまい、苦戦を強いられる。
サナギマン、ついでイナズマンに変身するものの、視力は戻らないままであった。
怪人「めくらのイナズマンに何が出来る。かかれーっ!」
バリバリの放送禁止用語を使って部下をけしかけるドクバンバラ。
あと、今気付いたけど、「めくら」と「イメ クラ」って似てるよね(知るかっ)

譲治「このままじゃイナズマンが危ない……こうなったらテレパシーで……僕、死んだって構わない!」
それを見ていた譲治、五郎の忠告も自分の命も顧みず、テレパシーを使って五郎に語り掛ける。
譲治「僕に出来ることはないかい?」
イナズマン「ひとつだけある、君の目で新人類を見るんだ。俺が君の目を通して新人類の動きを掴む」
イナズマン、五郎の視覚を借りて敵の動きを知り、的確な反撃を行う。

ドクバンバラ、イナズマンの視力が戻ったのかと思い、戦法を変えてファントム兵士たちを巨大な毒キノコに変身させたりする。
平地に場所を移し、

怪人「バンバラー!」
ファントム兵士「ヒャーッ!」

ファントム兵士たちがドクバンバラの号令で一斉にしゃがんでキノコに変わるのは、なかなか可愛らしいのだが、

イナズマンがその間を走り抜けようとすると、情け容赦なくキノコが爆発、破裂するのが、なかなかえげつないのであった。
ドクバンバラ、大した粘りも見せられず、最後はタイトルにもあるように「超力イナズマ落とし」で倒されるのであった。
五郎は、急いで廃工場に引き返し、崩れかけた柱にもたれてぐったりしている譲治を抱き起こす。

五郎「譲治君! 譲治君だね? 君の為に勝つことが出来たよ。譲治……譲治君、死ぬんじゃない!」
五郎、譲治が意識を失っているのに気付き、血相を変えてその名を叫ぶ。
管理人、「譲治君だね?」と言う台詞に違和感を覚えたのが、よく見たら、まだ五郎の目は完全に治ってなかったらしい。
ま、「仮面ライダー」でよくある、怪人を倒したら、何もかも元通りになる……と言う安易な方法に比べたら立派だが、今回はいささか引っ張り過ぎているような気がする。

悲愴なBGMのまま、カメラは夕焼けに染まる川面を眺めている五郎の背中を映し出す。
豪作が息せき切って走ってきて、
豪作「五郎」
五郎「ダメだったのか?」
豪作「おぬしの祈りが神に届いたんじゃ」
五郎、半ば諦めていたが、豪作の言葉に思わず振り返る。

五郎「豪作!」
豪作「助かったばい!」
五郎「本当か?」
豪作「うん」
五郎「譲治君! 譲治君ーっ!」 五郎、瞳を輝かせて(病院に向かって)走り出す。
まぁ、ここは譲治が死ぬか、生きるか、どちらのパターンもあったと思うけどね。ドラマとしては、どちらが良いとも言えないが、「F」なら死んでた可能性大である。
と言う訳で、高久進さんらしいストーリーであったが、あまりに登場人物が少ないのでドラマに膨らみがなかったのが残念である。どうせならサトコたちも登場させて欲しかった。
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