第19話「怪人カニバブラー北海道に現る」(1971年8月7日)
今日も、読者の方のリクエストで一度スルーした作品を紹介したい。
タイトルにあるように北海道ロケが行われているが、23話と同時に撮っているのだろう。
なお、一度スルーしたのは面白くなかったからで、レビューしたところで面白くなる保証はないということを予め申し添えておく。
ちなみにこのタイトルは往年の大映特撮映画「宇宙人東京に現わる」のもじりであろうか。
大阪沖で操業していた小さな漁船がカニバブラーによって転覆させられるアバンの後、

今回の主役、カニのバブちゃんが、「エエエエエエ……エヘッ」などと言う頼りない鳴き声を発しながら、小樽の地震観測所に正面からおずおずと乗り込んでいく。

所員「昨日、大阪沖で発生した小型津波は今月に入り、九州、四国についで三度目である……」
所員「原因は海底地震によるものだと思われるが、各観測所の地震計が何者かによって破壊されたため、震源地および規模は不明である。くそぅ、どういうことなんだ、いったい?」
所員「そほぉ怒るなよ、地震国日本だ」
所員「地震だけならねえ、しかし地震計が破壊されたと言うのはどうなんだ? それに仲間内では配電室が壊されたと言う噂すらある」
所員(どんな仲間内だよ……) 近頃頻発している奇妙な地震と、それに関連して起きている破壊活動について話している所員たち。

怪人「エヘ、エヘ、エヘ……エエ……」
だが、その観測所の配電室には、既に犯人であるカニバブラーが卑屈な愛想笑いを浮かべながら入り込み、配電盤を壊している最中だった。
そこへさっきの所員が、心配になって様子を見に来たのが運の尽き。

怪人「エエエエ……」
カニバブラー、口から管を突き出して、シャボン玉を吹き出し、所員の顔を泡だらけにする。
中の人がシャボン玉用のストローをくわえて吹いているだけと言う、100円で実現できるハイコストパフォーマンスな特撮である。
ま、これを特撮と言ったら、円谷英二に首を絞められそうだが……。
所員はあえなく消され、観測室に残っていた所員も、闖入した戦闘員が銃から吹いた泡を浴びる。

所員「ああああああ……」

所員「うう…………あれっ、透明人間になっちゃった!」
……と言う嘘を書きたくなるほど、泡を浴びた人間は綺麗にパッと消えてしまうのだった。
初期の頃は、良く発泡スチロールの人形を溶剤で溶かしていたものだが、スタッフ、それすら面倒になってしまったらしい。

立花「ええ、ですからねえ、うちは四輪はやってないんですよ、オートバイ専門、ええ、ですからねえ……何度言ったらわかるんだ、ないんですよ!」
一方、レーシングクラブで、珍しく客からの電話を受けているおやっさんと、書類を書きながら楽しそうにそんなおやっさんを盗み 見ているひろみちゃん。
しつこい電話に、途中からつい声を荒げてしまうおやっさんであった。
電話を切った直後、暢気な様子で隼人が入ってくる。

隼人「オッス! ……ああ、なんか雲行きが怪しいぜ、ひろみさん、ユリたちは?」
ひろみ「そのことで会長、お冠なのよ」
立花「夏休みだなんて抜かしおって」

ひろみ「北海道へ行ったらしいわよ」
隼人「なーるほど、それで滝は?」
ひろみ「滝さんの紹介なの」
ちなみにこのひろみちゃんの声、島田陽子さんの声じゃないような気がするが……。
おやっさん、今の電話を受ける前から、ユリたちが勝手に休みを取って北海道へ遊びに行ったことで、むかっ腹を立てていたらしい。

隼人「そんな怒ると体に悪いですよ、なにせそう若くはないんだから」
立花「なんだ?」
隼人「だけど、海へ行っても泳げないことを知ってるんだろうか?」
関係ないが、おやっさん、壁に貼ってあるポスターから、夜毎スティーブ・マックイーンが飛び出してくる現象に悩まされていたそうです。
ひろみ「震源地不明の地震で遊泳禁止って言う、あれ?」
隼人「そういうこと」

滝「こちらFBI東京支部、捜査官・滝和也、FBIナンバー・5O21、定時連絡です」
声「どーぞ」
滝「8月7日現在異常なし」
声「了解」
その滝、自宅の物々しい通信機で、FBIに定時連絡を入れていた。
今更だが、なんでアメリカ国内の捜査組織であるFBIが、日本に支部を設けているのだろう?(ショッカー対策の為、特別に派遣されている?)
あと、せめて英語でやりとりして欲しかった。

滝は続いて、北海道にいるユリたちとも無線で会話する。
彼らは、滝の先輩で同じくFBIの捜査官である神田(宮浩之)のところに泊まっているらしい。
滝に遊泳禁止になってることを知らされてユリたちは残念がるが、現地に来ているユリたちが全く知らなかったと言うのも変な話である。

滝「神田先輩、三人のお守り、よろしく」
ユリ「お守りですって、失礼なー」

首領「諸君、今カニバブラーから気象庁小樽支所の地震計破壊に成功したとの報告が入った。準備工作は終わった。九州、四国、大阪の実験成功を元に、室蘭半島に原爆以上の新水中爆弾を使って大津波を起こすのだ。作戦成功の日まで、絶対この作戦の秘密を知られてはならない。地上のカニバブラーに引き続き監視させるのだ」
まだ大幹部のいないショッカーのアジトでは、首領が長台詞で作戦の概要を部下たちに説明し、命令を下していた。
のちに首領が、喋るのに疲れて大幹部に作戦指揮を任せるようになったのも頷ける。
それにしても、九州や大阪で実験した後、なんでわざわざ人口の少ない北海道で作戦を実行しようとするのか、首領の考えが理解できない。
アジトおよび新水中爆弾がその近辺の海底に設置してあるのだろう、島と言うより海から出た岩の出っ張りのような小島。それと目と鼻の先の距離にある岩だらけの海岸に、ひとりのダイバーが潜りにやってくるが、人間に化けたカニバブバラーに制止される。
だが、忠告を無視して海に入ろうとしたダイバーは、たちまち正体を現わしたカニのバブちゃんに殴り殺されてしまう。
と、陸地の方からそこへやってきたのが、神田、ユリ、マリ、五郎たちであった。
カニバブラー、慌ててダイバーの死体を岩陰に隠す。

マリ「シャクだなぁ、こんな綺麗な海なのに泳げないなんて」
ユリ「私の水着3500円もしたのよ」
既に遊泳できないことを承知しているマリたちは、ブツブツ文句を言いながら岩場に下りてくる。
と言う訳で、せっかく夏の海が舞台だと言うのに、ビキニのボトムの上に同じ柄のシャツを着たマリくらいしか見られないと言う悲しい結果となる。
神田は、ダイバーの遺物と、死体を運ぶ際にカニバブラーが落とした通信機を見付け、さらに岩陰から覗く人間の足を見て、何者かが潜んでいることを察知し、早々にユリたちを促してその場から立ち去る。

滝「なんだって、間違いなくそのダイバーは死んでいたんですか」
神田「間違いない」
滝「それで、その小型無線機と言うのは?」
神田「ボトルの形をして、ワシのマークが入っている。あと、滋養強壮・栄養補給って書いてあるな」
滝「うん、それ、リポビタンDですね」
じゃなくて、
神田「不気味な形をして、ワシのマークが入っている」
滝「先輩、しばらくそのままにしておいてください、一文字隼人にそのことを詳しく話すんだ」
神田「一文字隼人、なにもんだ?」
滝「まぁ、現代のヒーローってとこかな」
神田、ショッカー担当の滝と違って、ショッカーについては何も知らされていないらしい。
……じゃあ、日本で何してるんだろう?

一方、カニバブラーは、たくさんの乳牛がいる牧場を横切って、神田の家に近付きつつあった。
怪人「エヘヘ、エヘ……」
牛(なんじゃこいつは?)
牛(なんじゃこいつは?)
牛(なんじゃこいつは?)
牛(なんじゃこいつは?)
牛(なんじゃこいつは?)

牛さんたちの冷たい視線の集中砲火を浴びた後、窓から家の中に侵入し、あっという間に神田の前に現われるカニバブラー。
怪人「我々の海底地震作戦を知ったものは死だ!」 神田(初耳だけど……) 通信機を取られただけで、神田に全部知られたと早とちりしちゃったらしい。
怪人「だが、その強固な肉体、ショッカーの改造人間になって貰う」
神田、勇敢にカニバブラーに立ち向かうが、左手のハサミでぶん殴られてあっさり気絶する。
次のシーンでは、何故か既に隼人が北海道に来ていて、海上で戦闘員たちとモーターボートによる追跡劇を演じる。
仮面ライダーに変身し、敵のボートを乗っ取り、カニバブラーが上陸した海岸に行くと、ちょうどカニバブラーが神田の体を担いで引き揚げようとしているところだった。
ライダーは神田を助けてカニバブラーを撃退し、通信機も奪い取るが、それには時限爆弾が仕掛けられていて、手掛かりを得られないまま爆発してしまう。
アジトに戻ったカニバブラー、通信機は爆破したから安全だと胸を張るが、
首領「ばかぁっ! 仮面ライダーを甘く見るな」

首領の一喝を浴びて、思わず身を竦める怪人、戦闘員、科学者たち。
首領「もし我々の通信を仮面ライダーが探知していたらどうなる? どうなるのだカニバブラー?」
怪人「エエエエ……」
いつになく粘着質に部下を詰問する首領。
首領「方向探知機を使えばこのアジトの位置は簡単にわかってしまう」
怪人「はっ、わかりました、首領」
首領、カニバブラーに札幌中央気象台の地震計を破壊してくるよう命じ、さらに、科学者たちにも爆発準備に取り掛からせる。
科学者「首領、2時間もあれば」
首領「ようし、2時間後、小樽沖に大津波を起こすのだ」
一方、神田のところへ東京から滝も駆けつけ、合流する。
隼人は無線機の前に座り、ヘッドフォンをつけ、チューニングをまわしながら、
「奴らの使っている特殊な通信、信号音、それを見付け出せば、おのずからショッカーの使用サイクルが分かる!」と、訳の分からないことを言っていた。
つまり、爆発前にちょっとだけ聞いた通信サイクルを覚えていて、それを耳で聞いて判別しようと言うことなのだろうか。さすが人間離れした聴力を誇る改造人間である。
隼人「これだ、極超短波、384サイクル!」
やがて、隼人は見事にショッカーの使用周波数を割り出す。
滝「大型方向探知機で探知すればショッカーのアジトの位置なんて一発だ」(1)
隼人「待て、それは滝、お前にやって貰う」
滝(うん、だから、いま、それをやろうとしたんだけど……) 隼人「追い詰められたショッカーは地震計の破壊を急ぐに違いない。俺は札幌中央気象台を調べてくる」
滝「俺はこの辺のハム愛好者と連絡を取ってこの怪電波の発信地を調べてみる」(2)
ここでの二人のやりとり、突っ込みどころが多くて困る。
(1)と(2)は、典型的な
「さっきと言うてることが違う!」と言う奴である。
役者さんたちも、アフレコしていて「レレレ?」と思わなかったのだろうか。

隼人が出掛けた後、
滝「俺はこの辺のハムに緊急連絡して、怪電波の方向を聞いてみる」
マリ「その方向をその地図に書いておく訳ね」
大型方向探知機のことは綺麗さっぱり忘れて、各地の無線愛好家から情報を集めてアジトの位置を割り出す地道な作業に取り掛かる滝たち。
一方、隼人が札幌中央気象台に到着したのは、カニバブラーが襲撃を行った直後だった。

子供たち「あいつらだよ!」
隼人「よし、わかった、
邪魔だからどけ!」
どこからか小汚い(註・小汚くないです)子供たちがワラワラと出てきて、聞かれもしないのに隼人に車で逃げ出そうとするカニバブラーたちのことを教えてくれる。
おそらく、地元の「仮面ライダー」ファンの貧乏な(註・貧乏じゃないです)子供たちであろう。
隼人、ライダーに変身して埠頭の倉庫の前でカニバブラーたちに追いつき、戦闘となる。

「あらよっ」と言う感じのポーズを取って、口からシャボン玉を吐き出すカニのバブちゃん。

戦闘員「……」
ライダー、戦闘員を盾にしてその殺人泡を防ぐ。
なお、ライダーが戦闘員を盾にする前から、戦闘員の顔には泡がいっぱい付いてました。

敵が怯んだところを、

ライダー、何故か、カニバブラーには目もくれずに赤服戦闘員に飛び掛かり、

自らカニバブラーに背中を向ける格好になって、「アジトは何処なんだ?」と、尋問するのでした。
物凄く不自然です。

滝が無線で得た方角のデータを、膝立ちで床に置いた地図に書き込んでいくマリとユリ。
ミニスカで前屈みになっているマリの姿はなかなかエロティックであるが、チラは発生しませんでした。
また、ここでは、途中から二人がフィルムを早回ししたようなコミカルな動きと声になる。
「仮面ライダー」の初期に、たまーに見られる演出である。

やがて、疲れて眠りこけてしまった二人を尻目に、アジトの位置を確認する滝と神田。
滝「この様子だと、小樽沖、北北西50キロか」
しかし、各地のハム愛好家が例の電波を拾っているということは、ショッカーはあれ以降も同じサイクルで通信していたことになる。
こんなの、使用サイクルを変えて通信すれば簡単に回避できることではなかったか。

カニバブラー、ライダーとしばらく戦った後、アジトに逃げ戻る。
ちなみにカニバブラー、その戦いでライダーキックをまともに受けているが、平気な顔をしている。なかなか頑丈な怪人であった。
怪人「エ、エエ……」
赤ん坊が生まれるのを病院の廊下で待っている父親のように、科学者たちの準備作業が終わるのを、そわそわとアジトの中を行ったり来たりしながら待っているカニバブラー。
やがて、待望のその時が来る。
科学者「あと10分で小樽沖に大津波が起こります」
首領「よくやった、全員脱出するのだ!」
だが、隼人が神田の家に戻ってきてアジトの場所を聞き、再び海へ向かうシーンを挟んだ後、
科学者「急げ、あと
7分で爆発するぞ」
となっていて、あれから3分間、まだアジトでうろうろしていたことが判明する。もうっ。

ともあれ、急いでアジトから逃げ出すカニバブラーたちであったが、

それと同時にシャッターが開いて、仮面ライダーが突入してくる。

それを見て、たちまち元の場所に戻るカニバブラーたち。
ほとんどギャグの世界である。

カニバブラー、我が身を犠牲にして手動の起爆レバーを引こうとするが、結局仮面ライダーに阻止される。
そして海岸に上がって両者の決戦となるのだが、手動レバーを引かなくても、時限装置は生きていた筈なのに、時間が来ても爆発しなかったのは変である。

カニバブラーをライダーパンチで倒した後、美しい入り江を背に雄々しく立つライダーであった。
でも、今回、水中爆弾はそのままだし、アジトも無事だったんだよね。いいのか?
まぁ、そのシーンはなかったが、後でライダーが爆弾を処理し、アジトも破壊したのだろう。

マリ「うわー、素敵ー」
事件解決後、再び海岸にやってきたマリたち。

そこへおやっさんが水着姿でやってきて、真っ先に海へ飛び込む。
立花「ひゃっははーっ!」
例によってマリたちは、遊泳禁止が解除されたことを知らなかったのだ。

五郎「僕も海パンもってこよう」
マリ「私も」
ユリ「私も」
出来ればマリには、下にあらかじめビキニを着ておいて貰って、その場で服を脱いで海へ飛び込んで貰いたかった。
結果的に、我々が拝めたのはおやっさんの古めかしい水着姿だけと言う、客を舐めた結果となる。
しかも、マリたちがこれから水着になることを示しつつ、である。
こう言うのを「蛇の生殺し」と言うのである。
隼人「ショッカー、来るなら来い、俺は一人ぼっちなんかじゃない、こんな素晴らしい仲間たちがいるんだ、仲間たちが!」 ラスト、陽光が波の上にきらめく美しいショットに、隼人の珍しく情熱的な台詞がかぶる。
この台詞自体はなかなか感動的だが、今回のストーリーの後では、やや唐突な感じも受ける。
以上、何の捻りもない、あんまりと言うか、全然面白くないストーリーであった。
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