第17話「2大怪獣タロウに迫る!」(1973年7月27日)
今回も「落穂ひろい」の一環として、3週にわたってタロウとバードンとの死闘を描いた連続エピソードの初回、第17話を紹介してみたい。
冒頭、長野県(?)の大熊山の火山活動の様子、そして噴火口にあった巨大な卵が内側から割れる……と言う不気味な予兆を感じさせるシーンからスタート。
周辺に飛散した大量の岩石・火山灰にまじって、無数の、緑色の奇妙な毛虫が降って来て、収穫前のスイカの中に潜り込んだことに誰も気付かなかった……。
光太郎がその近くの畑にいて、地元の農家の男性からスイカを分けて貰っている。

と、その最中にも火山性地震が起きて、農家の男性をひどく怯えさせる。
光太郎「まるで地震の巣ですね」
男性「そうよ、今年は変な夏でなぁ、春から御山は怒りっぱなし、四六時中地震はあるし……そうかと思えばこのスイカ、馬鹿あたりなんだよ」
光太郎「でも、スイカがたくさん食べられて良いですね」
男性「とぉんでもない、ほれ、見てみろ」
男性から投げられたスイカを受け取った光太郎、それがビーチボールのように軽く、中身がすっからかんになっているのに驚く。スイカの表面には、錐を刺したような穴が開いていた。

光太郎「おじさん、これ……」
男性「中は空っぽよ、とにかくたくさん出来ることは出来るんじゃがな、えてえのしれねえ虫がついちゃって、農協でも色々調べたんだが……」
もっとも、すべてのスイカが食われた訳ではないので、光太郎は中身の詰まったスイカを4つ買うと、両手にぶら下げて、近くの大熊山地震研究所までの道のりを鼻歌まじりに歩いて行く。
カッと太陽が照りつけ、研究所に着いた頃には光太郎の顔や体にはびっしょりと汗が吹き出ていた。
光太郎は、健一とその友人・タケシを連れて、タケシの父親である小林彰が勤務するこの研究所に見学に来ているのだ。
仕事中の小林と一緒に光太郎の帰りを待っている健一とタケシ。
最近、仕事が忙しくてなかなか家に帰れないタケシの父親は、息子が「早く一緒に住みたいなぁ」と寂しそうにつぶやくのを耳にすると、仕事の手を休め、息子のそばに立って、

小林「無理を言うもんじゃないぞ、タケシ、健一君を見なさい、健一君だってお父さんいないんだぞ」
健一「ほんとは寂しいんだけど、お父さんの仕事だからしょうがないんです」
小林「うん、健一君の言うとおりだ。男の子は我慢できなくちゃ駄目だよ」
タケシ「わかってるよ、じゃあ、噴火が止まったら絶対だよ」
小林「よし、男の約束だ」
小林が息子に言い聞かせていると、光太郎が入ってくる。
もう帰るところだったのだろう、光太郎はスイカをひとつ小林にお裾分けすると、子供たちを車に乗せて一路、東京へ。

疲れたのか、後部座席のタケシは、スイカを枕代わりにしてすやすや眠っていたが、三つのスイカのひとつから、シャリシャリと変な音が聞こえてくるのに気付き、好奇心からか、あえてそのスイカを選んで持って帰ることにする。
その夜、タケシはスイカを自室に運ぶと、テープレコーダーのスイッチを入れてから(なんで?)、包丁を入れる。

切った途端、中からクソでかい緑色の虫が飛び出し、床に落ちる。
虫嫌いの人なら、それだけで卒倒しそうなシチュエーションである。
長野から東京に運ばれてくる間に、虫が果肉をすっかりたいらげ、あっという間にここまで成長してしまったのだろう。
タケシは無謀にも捕虫網を手におそるおそる虫に近付き、捕獲を試みるが、小さくても怪獣の幼虫だったので、口から白い糸のようなものを吹き付けられ、まともに顔に浴び、もんどりうって苦しむ羽目になる。

タケシ「母さん、母さん!」
ゆき「タケシ! どうしたの、タケシ?」
タケシ「怪獣だ、怪獣だよ!」
ゆき「何言ってるの、タケシ、しっかりしなさい」
タケシ「目が、目が見えないんだ……」
助けを求める声に母親・ゆきが飛んでくるが、その僅かなうちに毛虫は部屋から姿を消していた。
若くてなかなか色っぽいタケシのお母さんを演じるのは金井由美さん。
森山「東さんのおみやげでぇーす! お早くどうぞーっ」 一方、ZATでは、森山隊員が切り分けたスイカをワゴンに載せて、かなりキャピキャピした声で呼びかけながら、隊員たちのところへ運んでくる。
珍しくエキストラ女性隊員たちの姿も見えるが、野郎どもがスイカを頬張るシーンばっかりで、肝心の森山隊員がそのキュートなお口でスイカにかぶりつくシーンはなく、全世界が落胆したと言う。
だが和気藹々とした雰囲気の最中、小林家から怪獣が出たと言う電話が掛かってきたので、光太郎たちはただちに現場に急行する。
毛虫はまだ家の外壁に張り付いていたのだが、夜でもあり、隊員たちはその吐いた糸を拾っただけで見逃してしまう。
母親は、光太郎から貰ったスイカから怪獣が出たのだと言って、光太郎を責める。
タケシはあの糸のせいで一時的に視力を失い、顔に包帯を巻いていた。タケシ本人は、別に光太郎のことを恨んではおらず、逆に母親から光太郎を庇おうとする。
タケシ「母さん、東さんのせいじゃないんだ」
ゆき「あなたは黙ってなさい」
荒垣「奥さん、我々も東のお土産のスイカを食べたんです、でも何も異常は認められなかったんです。全面的に東の責任とは言い切れないでしょう」
ゆき「だってえ、現にタケシはこうして……」
荒垣も光太郎の為に弁護するが、光太郎自身、強く責任を感じて暗い顔をしていた。
同じ頃、大熊山がひときわ激しく噴火したかと思うと、噴火口の中で育ち、成鳥になった火山怪鳥バードンが、まがまがしい雄叫びと共に遂に噴火口から飛び出す。

小林「おい、でかいぞ、肉眼で観測だ。それに写真!」
噴火の様子は、地震研究所からもありありと見え、小林はテキパキと所員に指示を下す。

建物の外に出て、噴火の様子を見ながら、メモに何やら書き込んでいる若い研究員。
「いったい何を書いているのだろう?」と言う疑問はおいといて、

カメラが足元を映すと、そのすぐ後ろに毛虫怪獣がうっそり鎌首(?)をもたげていた……と言うのがなかなかのホラー演出。
その毛虫は、光太郎が小林にあげたスイカの中に入っていた個体だった。
つまり4つのうち、2つに虫が入っていてそのどちらとも小林家の人間のところに行ったことになる。

所員たちは、次々と毛虫に殺されていき、残った一人が「助けてくれー!」と叫んでいると、何か得体の知れないものが飛んできて、毛虫を横合いからひっさらって巨大な嘴でむしゃむしゃ食べてしまう。
毛虫からは逃れたが、あわれ、生き残った所員も、その怪物……バードンに食い殺されてしまう。
さらにパードンは巨大な嘴で、研究所の壁に次々穴を開けていき、建物を半壊させる。
同じ頃、光太郎たちはタケシが録音していた怪獣の咀嚼音と思われるテープを聴いていた。

そこへ森山隊員が大熊山の爆発的噴火のことを知らせてくる。
荒垣「なにぃ」
光太郎「思い出したぞ、研究所にあげてきたスイカも同じ音がした」
ゆき「なんですって!」
不意に光太郎が叫ぶが、と言うことは、光太郎、ちゃんとスイカの中から聞こえる異音に気付いていたのか。しかも直前に農家の人から虫のことを聞かされていたと言うのに、中に虫が入っているかもしれないと推測することができなかったのか?
光太郎にしては軽率な行動で、ゆきに責任を追及されても仕方ないところである。
光太郎、慌てて電話を借りて研究所にかけるが、ちょうどバードンに建物が襲われている最中で、呼び出し音が数回鳴ったあと、ぷつっと切れてしまう。
翌朝、荒垣たちはホエールで長野へ飛び、大熊山のふもと、地震研究所の近くに着陸する。

荒垣「森山、北島、現場へ行ってくれ」
森山「ハイ!」 
明るくハキハキ答えて走り出す森山隊員が健気で可愛いのである!
小林は、食い殺されなかったものの、半壊した建物に押し潰されて重傷を負っていた。
現場で、北島は、小林家の庭にあったのと同じ白い糸を発見する。
ZAT本部に戻り、その分析の結果を聞いている荒垣たち。

森山「科学班の分析では非常に絹に似た成分で、早く言えば絹とゴムの中間だそうです。それからこれと同じものでできた布が古代博物館にあるそうです」

森山「驚かないで下さいね、
実は私、男なんです」
光太郎「そりゃ驚くわいっ!」 じゃなくて、
森山「驚かないで下さいね、文書によればケムジラと言うカイコを巨大化したような動物の吐き出す糸なんですって。不思議なことにどーして死滅したのか分からないらしいんです」
荒垣「もしかしたら火山の爆発の影響で、死滅した筈のケムジラがまた出てきたのかも知れん。しかし、そんなに害を及ぼすもんなのか?」

森山「ケムジラは甘味のある食物を好み、口から強い酸を出すそうです。でも、全部
推測ですけどね」
推測かいっ!! ……あ、思わず愛しの森山いずみ姫に全力で突っ込みを入れてしまった。
ところで、彼女の言う「文書」って具体的に何なのか不明なのだが、まさか管理人も昔持ってた「怪獣図解入門」のことじゃあるまいな?
と、突然ですが、ここでCMです。
さぁ、みんなで買おう!

光太郎、志願して小林家の警護に加わり、ついでにお詫びの意味を込めて、果物かごをお見舞いに持って行くが、ゆきは受け取ろうとしない。
ゆき「あなたのお陰で主人まで怪我をしてしまったんですよ、そんな果物で主人やタケシが治りますか? いいえ、この中にまた何かが入ってるんじゃないでしょうね」
光太郎「でも、タケシ君にお詫びだけでも言わせてください」
ゆき「お詫びなんて結構です。帰ってください」
光太郎「お願い……」
ゆき、光太郎の言葉に耳を貸さず、ぴしゃりとドアを閉める。
光太郎、仕方なく、果物かごをドアの下に置き、家の周りの警戒を続ける。

と、今度はその果物めがけて、どこかに隠れていたケムジラが糸を伝って降りてくる。
光太郎たちがすかさず銃を撃つと、

毛虫は一瞬で巨大な繭のようなものに成長すると、

それを突き破って、毛虫に手足が生えたような怪獣が出てくる。
……って、いくらなんでも一瞬で毛虫がそこまで大きくなる訳ないだろうと思ったが、物の本によると、光太郎たちの撃ったZATガンのエネルギーによって一気に巨大化してしまったらしい。
どうも、光太郎、今回は何をやっても裏目に出る天中殺のようであった。
色々あって、光太郎、タロウに変身して巨大ケムジラとの戦いになる。
ケムジラの吐き出す糸で胴と足を拘束され、

屈辱の四つ ん這いポーズを取らされるタロウ。
さすがに、これはあまりに情けない。是非NGにして欲しかったカットである。

森山「副隊長、あそこに子供が!」
上野「タケシ君だ」
荒垣「くそう、あんなところにいては手も足も出んなぁ」
ZATも援護射撃しようとするが、何故か家を出たタケシが、ふらふらとその足元を歩いているので迂闊に攻撃が出来ず、暇になる。

と、そこへいきなり舞い降りたのが、ケムジラより一回り大きなバードンであった。

ケムジラ、おもちゃ売り場で駄々をこねている子供を引き摺っていく母親のように、タロウの体を引っ張って天敵バードンから離れようとする。
タロウ、自力で糸を引き千切り、タケシを安全なところへ運んでから、とりあえずケムジラにストリウム光線を撃とうとするが、

背後から、その脇腹、腰の辺りにバードンの鋭い嘴がぶすりと突き刺さる。

天敵バードンがタロウをどつきまわしている隙に、身を屈めて後退するケムジラ。
この手前のマンションとか、いつも言ってることだが素晴らしい作り込みである。
仰向けに倒れたタロウが、何度も嘴を打ち込まれている凄惨なシーンで、18話へ続くのだった。
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