第32話「暗黒の海のモンスターシップ」(1980年11月5日)
このところ、太平洋上で船舶の消失事件が頻発していた。

イケダ「これは第二のバミューダートライアングルですよ」
エミ「まさかー、あの魔の三角地帯はここよ」
イケダ「でも、原因が分からないなんてほかに考えられますか?」
船舶の消失した場所の記された地図を見ながら、中学生のような意見を交わしている二人。

猛「状況は似ているが、今度の事件は地域が一定していないし、常に移動している。僕はもっと恐ろしい何かじゃないかと思うんだ」
イケダ「先輩がそう言うのならそうかも分かりませんね」
エミ「じゃ、怪獣かしら?」
なんというレベルの低い会話であろう……。
80の全般的なつまらなさは、ひとえにこの退屈なダイアローグにあるのではないかと最近思う。
今回も、スルーしようかどうか迷った境界線上のエピソードであると、あらかじめ申し添えておく。

勤務を終えた猛は、川でラジコンのボートを操縦している山本明と言う少年と会っていた。
二人はひょんなことから知り合い、すっかり仲良くなっていた。
明は外国航路の船長をしている父が明日帰ってくるのだが、最近起きている船舶消失事件に巻き込まれないかと心配していた。
明「もしも危なくなったらUGMが守ってくれる?」
猛「勿論さ、まかしとけ!」
猛、日本近海では起こらないだろうと高を括っていたこともあり、いやに自信たっぷりに請け合う。
だが、その夜、日本近海でまた一隻の船が消息を絶つ。それは、バラックシップと言う、船の残骸が集まって出来たような異形の物体による仕業だった。

翌日、UGMの面々が事件について話していると、養豚場から脱走したブタのような勢いでセラが駆け込んでくる。
セラの顔を見ると反射的に銃を抜きたくなるUGM隊員たちであったが、なんとか自制する。
セラ「なんとかしてくださいよ、船会社から苦情がボンボン入ってるんです。このままじゃ船を就航させられないって」
エミ「怖がってるのね、船会社も」
セラ「このままじゃタンカーも貨物船も日本に入ってこなくなります」

オオヤマ「我々が船舶の安全を保証するしかないな、セラ、そう言って船会社を説得させてくれ」
セラ「わかりました」
オオヤマ「これからは24時間体制で警戒に当たる」
それにしても、セラの醜く垂れ下がったケツと、猛のキリッと引き締まったお尻と、とても同じ種に属する同性の生き物の同じ部位とは思えない。

それはそれとして、陽光きらめく海面上を飛行するスカイハイヤーの特撮が美しいのである。

だが、ある場所に差し掛かると、急にコントロールが利かなくなり、機体が目には見えない力で鉛直方向へ引っ張られているような状態になる。
パイロットの猛は、持ち堪えられないと見てコックピットからパラシュートで脱出する。ほぼ同時に、機体はそのまま海中に没してしまう。

空中に浮かんでいる猛の視線の先を、一隻の船が航行していく。
他でもない、それは明少年の父、山本三郎船長が乗っている船だった。
鈴木「船長、もうすぐ日本です。どうやら無事に到着しそうですね」
山本「俺にとっては最後の航海だ」
鈴木「船長はほんとにお辞めになるんですか」
山本「ああ、この船を無事に日本までやることが船長としての最後の仕事だ」
鈴木「まさか、例の事件に巻き込まれたりしてないでしょうね」
山本「はっはは、大丈夫だよ、UGMが安全を保証してくれてるじゃないか」
山本船長を演じるのは元プロボクサーのガッツ石松さん。鈴木航海士は、洋画の吹き替えでお馴染み、秋元洋介さん。
だが、二人の会話が終わった途端、船が激しい揺れに襲われる。

スカイハイヤーと同じようにコントロールを失った船体は、海面に浮上したバラックシップにぐいぐい引き寄せられていく。

船は成す術もなく、バラックシップの表面に乗り上げる。
猛も、その一部始終を海面に浮かびながら見ていたのだが、コックピットから射出された時の衝撃か、あるいは着水した時の衝撃によるものか、徐々に視界がぼやけて意識が朦朧としていき、80に変身して助けることも出来ないまま、気を失ってしまう。
猛は、船から救命ボートで脱出した船員たちに発見されて救助されるが、山本船長だけは船と共に行方不明となってしまう。
その後、UGM本部に明少年が猛を訪ねに来るが、明少年はいきなり「嘘つきっ! 矢的のバカヤロウ!」と叫んで野球のボールを猛の体に投げつける。

明「お前なんか大嫌いだっ」
猛「明君!」

猛はすぐ明少年に会いに行く。最初は反発していた明少年だったが、最後は猛の体に抱き付いて泣きじゃくる。
……
いかん、書いてて全然面白くない。
やっぱりスルーしとくんだった。
UGMは、日本に近付いたバラックシップから発信されている無線電波をキャッチする。雑音が多くてはっきり聞き取れなかったが、明少年はそれをすぐ父親の声だと断定する。
そして山本船長の言葉で、バラックシップの本体が、15年前に沈没した筈のクィーンズ号だと判明する。
大型貨物船クィーンズ号は、全てがコンピューターによって自動制御された文字通り無人の船だった。だが、15年前、マゼラン海峡通過中、氷山と激突して沈没してしまったのだ。
ことの真偽はさておき、猛とフジモリがシルバーガルでバラックシップに接近し、山本船長の救出を試みる。

だが、シルバーガルの視界にバラックシップが入ると、

戦艦のものと思われる巨大な主砲がせり出してきて、激しい対空射撃を浴びせてくる。
これって、しかし、まんま「ウルトラセブン」のアイアンロックスだね。
シルバーガルにはいつの間にか明少年が入り込んでおり、それに気付いた猛たちは一旦基地へ引き返そうとしていたが、その暇もなくあっさり撃ち落とされてしまう。
もっとも、シルバーガルの機体も即座にバラックシップの強力な磁力に吸い寄せられ、海面に露出している部分に乗り上がる格好になる。

猛たちはすぐ近くに山本船長の船があるのを見て乗り移り、大きく斜めに傾いだデッキを手摺などに掴まりながら這い登る。

船の内部に入ると、様々なコードが束になったものが生き物の触手のように伸びてきて猛たちを捕まえ、コンピューターの本体のいる部屋まで引き摺り込まれる。
そこには山本船長もいて、柱に縛り付けられていたが無事だった。

一方、UGM本部では、イケダ隊員が過去の記録を調べ上げ、ある重大なデータを発見していた。
それは沈没前のクィーンズ号の航路予定図であった。

イケダ「これとですね、ちょっとこの地図を見比べて下さい。奴が進んでいるコースは15年前にプログラミングされたクィーンズ号の進路と同じなんですよ。奴はクィーンズ号の最終目的地、つまり東京湾に進んでいるんですよ」
イトウ「なんだって?」
エミ「キャップ、当時クィーンズ号が積んでいたのはMK合金です」
イケダ「そう、強力な磁力合金だ」
つまり15年前に与えられた使命を果たそうと、クィーンズ号のコンピューターが蘇って航海を再開したと言うことなのだ。
それが行く先々で船舶を襲っていたのは別に悪意からではなく、氷山とぶつかって一度沈んだ教訓からクィーンズ号のコンピューターが自己学習して、船体をより巨大かつ強固にすべく、他の船を引き寄せていたのだ。
この辺のプロットは、現在急速に成長・普及しているAIの問題を先取りしたような先駆性を感じさせる……と言いたいところだが、もっと前に「レッドバロン」で似たようなことやってたよね。
ついでに数年後の「ジャスピオン」の第2話「哀しみの超電子星サクラ」も、これと同じような話だった。

なお、猛たちの前にはバラックシップの頭脳である巨大コンピューターが鎮座しているのだが、元々これはクィーンズ号に搭載されていたものなので、それがこの船の中にあるというのは変である。
ここで、コンピューターに喋らせて猛たちと会話させたならSF的で面白くなったと思うのだが、そう言う要素も一切なく、後から来た明少年によって猛たちは助け出され、その部屋を出る。
デッキに出ると、スペースマミーが応援に向かってくるのが見えた。猛は自分の救命胴衣を山本船長に着せると、先に三人を海へ飛び込ませる。

だが、スペースマミーもあっさり対空砲火の餌食となり、近くの岩礁に不時着する。

猛「80!」
それを見ていた猛、(使えねーなー!)と思いつつ、ブライトスティックを空にかざし、80に変身する。

バラックシップは、何隻もの大型船が合体したもので、そのサイズは過去の怪獣など比べものにならないほど巨大であったが、80の猛攻撃を受けてあっさり破壊される。
このバトルシーンも、とにかく盛り上がらないのでレビューの書きようがないのである。
ラスト、海岸の岩場の上で山本親子と隊員たちが面白くもおかしくもない会話を続けているところで終わり。
以上、コンピューターが自己学習して15年前の任務を果たそうとしていると言うアイディアがちょっと面白い以外は、まるっきり取柄のないエピソードであった。
- 関連記事
-
スポンサーサイト