第47話「悪の願い十本尻尾」(1983年12月24日)
クリスマスイブ放送だが、季節イベントとは一切関係ない、最終エピソードの入り口に当たる回である。
キメラやレイのサンタコスプレが見たかったと言うのは、全世界の成人男子の願いであった。
それはさておき、冒頭、カー将軍が自ら前線に出撃すると帝王アトンに申し出て、アトンを驚かせる。
大滝山のマグマから採取したガスから、強力な毒ガスを生み出せるドクガスイタチと言うメカシンカと、キメラを引き連れて、カー将軍は颯爽と地上へ向かう。

彼らはまず後楽園ゆうえんちに降り立ち、ドクガスイタチが手当たり次第に毒ガスを撒き散らす。
ガスを浴びた客は、悶え苦しんでバタバタと倒れて行く。

ちょうど好物のラーメンを啜っていた耕作だったが、変身する間もなく毒ガスを浴びて倒れてしまう。

カー「なぁはははははは、ぬあーっはぁっはっはっはっはっはっ!」
と、ジェットコースターのレールの上に、カー将軍とキメラが現われる。
ここはちゃんとキメラ本人が立っているのがエライ。
ま、顔は笑ってるが、内心はかなり怖かったのではないかと推測されるが……。

カー「
大人さえも童心に帰る、夢と楽しさに満ち満ちた場所こそ、地獄の門出にふさわしいのだ!」
下に降りてきたカー将軍、高らかに勝利を宣言する。
悪逆非道の限りを尽くしても、しっかりタイアップ施設のことを誉めるあたりは、さすが大人である。
もっとも、カー将軍の勝利宣言はちと早かった。
キメラ「カー将軍、生きています!」
カー「うん?」
最初は苦しんで七転八倒していた客たちが、しばらくすると症状が落ち着き、普通に起き上がりだしたのだ。

だが、その代わり、耳や鼻が異様に大きくなったり、頭から角が生えたり、全員、体の一部にとんでもない異変が生じていた。
耕作も例外ではなく、織田ユージのように耳が馬鹿でかくなっていた。
キメラ「カー将軍、どういうことですか?」
カー「うむ、ひとまず退け!」
被害者は死にはしなかったが、体の変化のほかに、毒ガスを吸ったような症状が後遺症として残っていた。

北斗「被害を受けた人たちは大学病院へ収容しました。でも原因は分からないそうです」
耕作だけは、ダイナステーションで仲間たちの手厚い看護を受けていた。
耕作が苦しい息の中で、
「俺も大学病院に入院させてくれ~」と訴えていたかどうかは定かではない。
竜「どうやら奴らに手違いがあったようでござる」
レイ「南郷さん、ずっとこのままなのかしら?」
ずっとこのままだったら、四六時中、笑いを堪えるのに苦労させられるなぁと心配する4人であった。

夢野「私に任せてくれ。なんとか全力を尽くしてみる」
夢野司令の妙に自信ありげな言葉に、4人が一斉に振り向く。
洋介「驚いたなぁ、博士に医学の心得があったなんて」
夢野「君たちは毒ガスの元を突き止めるんだ、必ず毒ガスを取り出している場所があるに違いない。大滝山周辺を探ってみてくれ」
北斗「手掛かりを見つけられたんですか?」
夢野「うん、ちょっとな」
北斗「ちょっとって……もっと詳しく言って貰わないと、それだけでは探せません」
夢野「今は私の言葉を信じて欲しい!」
奥歯にものの挟まったような夢野司令の説明に、北斗たちは納得いかない表情だったが、押し切られて大滝山へ向かうことになる。
一方、グランギズモでは、大口叩いて出撃したカー将軍の醜態に帝王アトンが声を荒げていた。

アトン「これはどういうことだぁっ?」
ゼノビア「角を生やしたり鼻を高くしたり、遊びではありませんのよ」
ライバル格であるゼノビアも、忘年会のビンゴゲームでSwitchが当たったような、世にも嬉しそうな笑顔でやんわりと指摘する。
だが、カー将軍は平然と……いや、むしろ得意げに、「有尾人一族の運命に関わる重大な発見をした」と公言し、アトンたちをどよめかせる。

北斗「はっきりした理由も教えられずに探すなんてこんなこと初めてだな」
竜「まあ、とにかく手分けして探そうや」
北斗たち4人は、いまだに半信半疑の面持ちで大滝山に到着し、捜索を開始するが、すぐに、白い運動靴とハイソックスが爽やかなレイの足が、まるで生き物のように蠢いている蔓に引っ掛かり、レイは「キャーッ!」と、けたたましい悲鳴を上げて仲間を呼び集める。

レイ「ちょっと見て、この蔓、生き物みたいに動いてる!」
北斗「もしかしたら、これはあの毒ガスのせいかもしれないぞ」
同じ頃、カー将軍たちもその大滝山を訪れ、ガスの発生源に向かっていた。
彼らの後をゼノビアの侍女ビルギスが尾けていたが、途中で気付かれ、まかれてしまう。

ビルギス「ゼノビア様、申し訳ありません、見失いました」
ゼノビア「おのれ、カー将軍、何処へ行ったのやら」
ダークナイト「ふっふっふっふっ、はっはっはっはっ、教えてやろうか?」
ビルギスが報告していると、横合いから聞き覚えのある声が飛んでくる。

ゼノビア「その声はダークナイト!」
ダークナイト「ゼノビア、十本尻尾になりたくないか」
ゼノビア「馬鹿な、我らは生まれながらにして尻尾の数は決まっている。帝王アトン様すら自由には出来ない!」
ダークナイト「それが確実に増やせるのだ」
ゼノビア「まさか」
ダークナイト「カー将軍が狙っているのもそれだと聞いたらどうする?」
ゼノビア「一体どうすればいいのだ?」
ダークナイト「そう簡単には教えられん」
ゼノビア「何が欲しい?」
ダークナイト「あとでイヤと言わぬか」
ゼノビア「言わぬ」
ダークナイト「ならば、Switchを寄越すのだ」
ゼノビア「イヤだ!」
じゃなくて、
ダークナイト「ならば俺と手を組むのだ」
ゼノビア「叛乱を起こせと言うのか?」
ダークナイト「うむ、誓いを」
ダークナイト、つとにゼノビアの心底を見透かしていたのか、アトンへの反逆をその交換条件として提示する。ゼノビアも、その本心を隠そうともせず、あっさりその申し出を受ける。
それがジャシンカの作法なのだろう、互いの武器を交えて「誓約」を結ぶと、

ダークナイト「例の毒ガスの中に有尾人一族を十本尻尾にする手掛かりが秘められている」

洋介「なんだとぉっ!」
4人は、近くの物陰から彼らの会話を盗み聞きしていたのだが、何故かこのタイミングで洋介がゴリラティックな顔になって、思わず飛び出そうとする。
竜が慌てて引き戻すが手遅れで、ダークナイトたちに気取られてしまう。

「この馬鹿!」と言う風に洋介の頭を叩く竜。
無論、管理人の視線はレイのキュートなお尻に釘付けである。
結局、4人は堂々と出て来て変身し、戦うが、ひとり欠けている上、相手はゼノビアとダークナイトの最強コンビである。あっさり蹴散らされてしまうが、二人は十本尻尾の秘密の方を優先して、トドメは刺さずに行ってしまう。
河原に投げ出されていた4人は、意識を取り戻すと夢野司令に連絡しようとするが、無人のダイナステーションが映し出され、北斗の叫びが空しく響くだけ。
北斗「おかしい、やっぱり博士はおかしいぞ」
ま、トイレ(大)行ってるだけだったのかも知れないのだが。
一方、カー将軍たちは、大滝山の断崖の途中に、ぽっかり巨人の口のように開いた洞窟の奥深くで、問題のマグマの成分を採集・分析していた。
秘密は、マグマそのものではなく、天井の岩の隙間からマグマだまりに滴り落ちる特殊な液体にあった。

カー「おお、レトロ遺伝子、あの水滴に何かが含まれているとは思っていたが、やはりレトロ遺伝子だったのか!」
キメラ「レトロ遺伝子?」
カー「15年前に発見された恐るべき遺伝子、細胞をどんどん増やす働きがあり、最後には命を奪う」

キメラ「分かったわ、だからこのマグマ池の成分も変わり、遺伝子もマグマの影響を受けて変わり、ガスを浴びた人間たちに角が生えたりしたのですね」
カー「うむ、だが、これが有尾人に対してはどう作用すると思われますかな?」
キメラ「まさかっ」

カー「そのまさかです!」
キメラ「どのまさかです?」 カー「いや、そう言うことじゃなくて……」
嘘である。
カー「遂に我々は尻尾を増やす秘密に辿り着いたのです!」
キメラ「ええーっ」

カー「帝王アトン様は十本に、私は八本尻尾、王女キメラ様は4本尻尾から5本、いや6本にも7本尻尾にもなれるのです!」

キメラ「ああーっ!」
カー将軍の言葉に、思わず自分の尻尾に触れたり、嬉しそうに天を仰ぐキメラ様が可愛いのです!
……でも、「最後には命を奪」われるんでしょ? そこは良いの?
CM後、ダークナイトとゼノビアも、あの洞窟の入り口付近に到達していた。
ゼノビア「そう言う作戦はどうかしら」
ダークナイト「ふふ、悪党め」
「越後屋、おぬしも悪よのぉ」的な台詞を吐いて、目を細める(無理だけど)ダークナイト。
で、それに続けて、何の前触れもなく耕作が4人の前に出てくるので、

洋介「あれ、耳は?」
耕作「治ってしまいました。博士が治してくれたらしいんだ」
管理人、てっきり、これはダークナイトかゼノビアが化けた、ニセモノだとばっかり思ったのだが、普通に本物の耕作だということが分かり、いささか肩透かしを食らった格好になる。
つまり、耕作に化けてダイナマンに同行し、あの洞窟の入り口に案内してカー将軍たちと戦わせ、その隙にレトロ遺伝子を横取りしようと言う作戦なのかと勘繰ってしまった訳なのだ。
さて、耕作によると、夢うつつの中、夢野に注射を打たれたことは覚えているが、気がつくと夢野の姿が消えていたと言うのだ。
では、ゼノビアの作戦と言うのは何かと言うと、カー将軍たちが苦労して集めたレトロ遺伝子のビンを、生き物のように動く蔓で奪い取ろうと言う、何の工夫もない方法だった。
だが、折角盗んだビンも、ダイナマンに横から掻っ攫われてしまう。

ダークナイトはすぐ退散するが、ゼノビアのところにカー将軍たちがやってくる。
カー「ゼノビア、どうしてここへ?」
ゼノビア「少しでもお役に立とうと思ってね」
白々しいことを言って誤魔化そうとするゼノビアであったが、横からダイナマンたちに
「ビンを盗んだのはそいつですよー、あと、ダークナイトと一緒にアトンに叛乱を起こすとか言ってましたよー、あと、カー将軍ってなんかコーカサスオオカブトムシみたいだとか言ってましたよー」などと、あることないことチクられるのではないかと内心ハラハラしていたものと思われる。
しかし、ダイナマンは余計なことは一切言わず、いつものバトルに移行する。
卑しくもスーパーヒーローたるもの、告げ口などと言う卑怯な真似は決してしないものだからである。
ドクガスイタチとの戦いには勝ったが、レトロ遺伝子のことや、夢野司令の不可解な言動など、多くの謎をはらんだまま、48話へ続くのであった。
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