第17話「バイオライダー!」(1989年2月26日)
「ガロニア姫編」の最終エピソードである。
前回のラスト、ガロニア姫として成長したひとみの超能力で空中高く持ち上げられていた光太郎、茂、霞のジョーは、あえなくマリバロンに捕まり、奇跡の谷の上に築かれた城の一室に拘束されている。
三人とも石のベッドの上に、両手両足を特殊な金属製のチューブで縛られ、身動き出来ない。

マリバロン、ガロニア姫、その侍女たちがどやどやと入ってきて、
姫「このものが私の敵か?」
マリバロン「さようでございます、名前は南光太郎、姫様のパンティーを盗んだ犯人でございます」
光太郎「ちゃうわ!」 じゃなくて、
姫「このものが私の敵か?」
マリバロン「さようでございます、名前は南光太郎、クライシス皇帝にあだなす邪悪なものにございます」

光太郎「お前が誘拐したひとみちゃんと6人の少女は何処だ?」
マリバロン「誘拐? ほほほほ、何を血迷ったことを言っているのだ? 私は誰も誘拐などしておらん」
マリバロンの、片方の足を外側に曲げた立ちポーズ、なかなか色っぽいよね。
光太郎「血迷っているのはお前だ。ひとみちゃんを誘拐して何をしようとしてるんだ?」
マリバロン「黙れっ、黙らんかっ!」 続いて、これまたマリバロン名物、ヒステリックな叫び声がその口からほとばしり出る。

マリバロン、装飾的な短剣を取り出してガロニア姫に渡し、彼女自らの手で光太郎を処刑するよう促す。

ガロニア姫、短剣を手に光太郎と茂のそばに立つが、
姫「この二人に、私は会ったような気がする」
マリバロン「なっにを申されます。姫君がこんな人間に会ったことなどあろう筈がございません」
ガロニア姫、短剣の切っ先を光太郎の顔の真ん中に向けるが、その美しい頬にためらいの色を浮かべ、
姫「この者たちは殺さぬ」
マリバロン「何故でございますか?」
姫「いますぐ殺したのでは面白くない」
マリバロン「……ほっほっほっほっ、さすがはガロニア姫、この者たちはもう逃れられぬ身、後ほどたっぷり痛め付けて楽しむのも一興でございましょう」
姫「部屋に戻る!」
ガロニア姫、荒々しい足取りでそこを出て行く。

一人残ったマリバロン、光太郎のベッドに片足を掛け、その顔を覗き込んで、
マリバロン「諦めるが良い、光太郎、どんなに足掻いてもその特殊合金で出来たタガを外すことは出来ぬ。たとえRXでもな」

マリバロン「はぁーっはははっ……」
マリバロン、高笑いを響かせて、お尻丸出しにしながら去って行く。
悪の皆さん、仮面ライダーを捕まえたら、すぐ殺すのが吉ですよ~っ。
そして、絶対に逃げられないと言う自信があったにせよ、見張りくらいは残しておくべきであった。

ガロニア姫の寝室には、姫に続いてお付きの侍女たちもどやどやと入ってきて、狭い部屋がますます狭苦しくなっていた。
これから四六時中、この6人が付いてまわるのかと思うと、いささかげんなりするガロニア姫であった。
その侍女の一人が「姫様は何故、あの者たちの息の根を止めなかったのですか?」と質問する。
姫「何故だか分からない、私はあのものたちを懐かしいと思ってしまった。私は遠い昔にあの二人に会ったような気がしてならない。思い出そうとしているのだが……」

マリバロン「これはいかん、ひとみの記憶を完全に消したつもりでいたが、まだ人間としての心が残っているようだ……」
彼らの会話を盗み聞いたマリバロン、照明のガンさん(仮名)から目にライトを当てられつつ、深刻な顔で考え込む。
一方、光太郎たちの監禁されている部屋では、必死にもがく二人を尻目に、ジョーがひょいひょいと自ら手足の関節を外して、やすやすと自由の身になっていた。
ジョー「霞流拳法・関節外し、ま、ざっとこんなもんさ」
光太郎「……」
光太郎、
「それのどこが拳法なんだ?」と突っ込みたくてしょうがなかったが、それを言ったらジョーに助けて貰えないのではないかと思って黙っていた。
ジョーが壁のレバーを倒すと、二人の拘束も簡単に解ける。
その部屋からは、聖なる滝を裏側から見下ろすことが出来た。

見れば、今しも、ガロニア姫を滝の下に立たせ、対岸にいるマリバロンが、なにやら妖しげな呪文を唱えるという「儀式」が再度執り行われていた。
何度も滝に打たせ、ひとみとしての記憶を完全に除去するつもりらしい。
でも、滝には成長作用もあるのだから、何回もやってたらオバサンになってしまうのではないかと思うのだが。

茂「僕、ガロニア姫とどこかで会ったような気がしてるんだ。なんとなくひとみに似ているような気がして」
光太郎「……」
光太郎、茂の言葉に、以前、ミンバ村長から聞かされた聖なる滝の効用のことを思い出す。
そこで、ジョーに茂を任せて、一旦安全な場所に避難させる一方、自身はガロニア姫に会って、直接そのことを確かめようとする。

幸い、寝室にはガロニア姫しかおらず、ドレスを着たまま横になっていた。
その枕元に立ち、すやすや眠っているガロニア姫のうなじにほくろがあるのを見た光太郎は、ひとみのうなじにもほくろがあったことを思い出す。

光太郎「ひとみちゃん、起きてくれよ」
姫「……あっ、お前は!」
光太郎「ひとみちゃん、君はガロニア姫なんかじゃない、思い出してくれよ」
姫「何を言う、私はクライシス皇帝の王女ガロニア、ひとみなどと言う名前ではない」
光太郎「……じゃあ、なんで流暢な日本語喋ってるの?」 姫「はうっ!」
じゃなくて、

光太郎「思い出してくれよ、俺は君が光太郎兄ちゃんと呼んでた男だよ。それにね、茂君は君の本当のお兄さんなんだ。君は茂と言う名をようく覚えている筈だ」
姫「……」
光太郎「君はマリバロンに誘拐されて、聖なる滝に打たれて大きくなったんだ」
姫「無礼者! 私はガロニア姫!」
光太郎の言葉に一瞬動揺する姫であったが、キッと柳眉を逆立て、超能力で光太郎を宙に舞わせる。
そこへマリバロンと侍女たちが雪崩れ込んでくる。光太郎、窓を突き破って聖なる滝の近くに着地するが、すぐマリバロンたちも追いつく。

ガロニア姫の超能力で向こう岸に飛ばされるが、爆発で水しぶきが上がる中、ようやくRXに変身する。

右手を突き出し、空高く跳躍するRX。
左下に、電柱が見えてますが……。
だが、トリプロン1号、2号、3号が人質にされたジョーと茂を連れて現われ、RXはまたしても敵の手に落ちる。予告編では、トリプロンに二人が捕まるシーンも見えるが、本編ではカットされたようだ。

姫「マリバロン、あの者たちの処刑はお前に任せる。ただしすぐに殺してはならぬ、長い長い苦しみを与えるのだ」

マリバロン「ははっ!」
クライシス皇帝の後継者にふさわしい冷酷な命令に、思わず会心の笑みを浮かべるマリバロン。

RX「本物のガロニア姫は既に死んでいる。だから身代わりとしてひとみちゃんを誘拐し、ガロニア姫に仕立て上げたんだ」
マリバロン「黙れ、黙れ、無礼者! トリプロン、RXを処刑せよ」
トリプロン「はっ」
トリプロンがボタンを押すと、RXの足元がパカッと開いて、その体は深い穴へ吸い込まれてしまう。

地下1000メートルの底まで落ちたRXは、何故かピンピンしていた。
1000メートル、つまり1キロの高さから落ちたら、普通、それだけで死にますよね。
勝利を確信したマリバロンは冥土の土産にガロニア姫の正体がひとみであることを教えてやる。
しかし、閻魔大王も「実は土産話があるんすよー。実はガロニア姫の正体はひとみちゃんだったんですよー」って、光太郎に言われても、「ふーん、それで?」と応じるしかなかっただろう。
マリバロンによって地の底深く落とされたRX。

ロボライダーに変身して、左右のトゲの付いた壁を壊そうとするが、一方の壁が強力な磁力を発してその体をぴったり吸い寄せてしまう。
さすがマリバロン、ちゃんとロボライダーへの対策も用意していたのだ。
さらに、頭上からはマグマのかたまりが降ってくる。
RXに戻って磁力から解放されるが、左右の壁も動き出してRXを圧殺しようと迫ってくる。
RX「ひとみちゃんと茂君を助けなければ、死んでも死に切れんぞーっ!」 ジョーはええんか?
RX「うおおおーっ!」 トゲから放たれる電撃を全身に受けながら、RXが怒りの雄叫びを上げる。
ナレ「不思議なことが起こった。RXの体が怒りの叫びと共に、バイオライダーに変身したのである!」
初めてロボライダーになった時以上に強引な解説で、割とあっさりRXは三つ目の形態、バイオライダーに進化してしまう。

変身ベルトも、曲線的なフォルムになるが、このデザインはむしろ初代仮面ライダーに近いよね。

オンエアの時は、素直にカッコイイと思ったものだが、30年を経た今見ると、うーん、いまいちだなぁ。

続いて、バイオライダーの必殺技(?)が発動する。体をゲル状に変えて、どんな狭い隙間もするする通り抜けてしまうと言う、アレである。
どう言う原理なのか説明はないが、分厚い岩盤の僅かな隙間に入り込み、絶体絶命の窮地を脱するのだった。

バイオライダー、一気に地上に出ると、処刑寸前のジョーと茂を助け出す。
バイオライダー「霞のジョー、茂君を頼む」
マリバロン「お前は何者?」
バイオライダー「俺は怒りの王子、RX、バイオ、ライドュワー!」 お約束どおり「フー・アー・ユー?」と聞いてくれるマリバロンに、渾身の名乗りで応えるバイオライダー。

まだ最初だから若干思い切りが悪いが、ポージングはアマゾンっぽい野性的なもの。

どうも影が薄いトリプロンは、ここで3機が合体して合体トリプロンになる。

バイオライダー、アクロバッターを呼んでまたがり、トリプロンに向かって走るが、アクロバッターの車体も神秘的な光に包まれ、

ロボライダーのロボイザーと同じく、バイオライダー専用のマックジャバーに変化する。

トリプロンは慌ててビームを乱射するが、素の状態でもバイオライダーの体をすべて通り抜けてしまう。
トリプロン「「「弾がすべて奴の体を突き抜けてしまうぞ!」」」
うーん、いくらなんでもそれはインチキなのでは?
確か、後には、ゲル状にならない限り、いわゆる無敵状態にはならないように変わると思うが。
バイオライダー、ベルトの左右に両手を構え、バイオブレードと言う飾り気のない剣を生成する。
武器が、RXのリボルケインと同じ剣と言うのはいささか芸がなく、弓矢や槍など、ほかの種類の方が良かったかな、とも思う(註1)。
(註1……どんな武器を使おうがどうでもいいので、ほんとは思ってない)

ただ、フィニッシュの、剣を下から切り上げて敵の体を真っ二つにするというのは、少なくともリボルケインの「そのタマ貰ったで~土手っ腹えぐり」よりは爽快感があることは確かである。

爆発も、合体トリプロンの巨体にふさわしい豪快なものでスカッとする。
しかし、トリプロン、その魅力的な形態の割に、見せ場らしいものがなかったな。惜しい。

マリバロン「おのれ、バイオライダー!」
姫「マリバロン、何者だ?」
マリバロン「姫、皇帝陛下にあだなすバイオライダーにございます」
マリバロン、ガロニア姫の超能力でバイオライダーを攻撃させるが、

茂「やめろ、やめるんだ、俺は茂だ」
姫「茂?」
茂「お前の兄ちゃんだ!」
姫「……」
それにしても、こんな化粧の濃い妹はやだなぁ。
姫「お兄ちゃん!」
茂「ひとみぃ」
姫「お兄ちゃん、茂兄ちゃん!」
やがて、ガロニア姫は、これまたあっさりひとみとしての記憶を取り戻すが、気を失い、その場に崩れるように倒れ込む。
しかし、兄に呼びかけられただけで記憶が戻っちゃうというのは、いくらなんでも安易である。この辺はもうちょっと工夫が欲しかったところだ。
マリバロン、腹いせにひとみを殺そうとするが、バイオライダーに阻止され、あえなく退散する。
……しかし、侍女たちの記憶はどうなるんだろう?
まぁ、ガロニア姫ほど聖なる滝の影響を受けていない彼女たちなら、肉親と会えば簡単に記憶を取り戻すことだろう。
と、ここで、ストーリー上の重要な転機が訪れる。一連の戦いの中で、茂がRXの正体が光太郎だと気付いてしまったのだ。

茂「光太郎兄ちゃん、RXは兄ちゃんだったんだね?」
光太郎「……!」
さすがに一瞬目を泳がせる光太郎だったが、すぐ気を取り直して、
光太郎「ああ、今まで隠していてごめん」
茂「いいんだ、僕、秘密は絶対に守るよ。僕もクライシスと戦う戦士だからね」
健気な言葉を吐く茂を、頼もしそうに見詰める光太郎。
ジョーに続いて、光太郎の新たな同志が生まれた瞬間である。
さて、記憶は戻ったが、ひとみの体は成長したままである。光太郎もどうしたものかと思案していたが、再びミンバ村長の知恵を借り、「聖なる滝」の効果を打ち消す「聖なる泉」と言う便利な場所があることが分かる。

ひとみ、そして6人の少女たちもその場所へ連れて行かれ、その水を口に含む。

と、たちまちひとみは、元の幼い少女の姿に戻るのだった。
……
この瞬間、光太郎や茂が、「やっぱり、大きなままで良かったかなぁ」と心の中でつぶやいたとか。
何度も言って失礼だが、この子役、可愛くない!
こうして光太郎はお世話になったミンバ村長に別れを告げ、ジョー、茂、ひとみ、6人の女の子をライドロンの中にぎゅうぎゅう押し込んで地球へ帰っていくのだった。
一方、手間隙掛けた作戦が水泡に帰した上、ただでさえ手を焼いていたRXに新たな能力を身に付けさせる結果となってしまったマリバロン、

クライス要塞に帰還するが、さすがにその表情は重く、目には涙さえ浮かんでいた。
マリバロン「ジャーク将軍……」
無論、死を覚悟して臨んだマリバロンだったが、

ジャーク将軍「マリバロン、ガロニア姫はRXに暗殺されたと、皇帝陛下には報告をしておいた」
マリバロン「申し訳ございません」
ジャーク「RXはロボライダー、バイオライダーと変身を重ね、恐るべき敵となった。ただちに対策を立てるのだ!」
マリバロン「ははっ」
ジャーク将軍はこともなげに言って、マリバロンの罪は一切不問に付してくれるのだった。
……しかし、その報告だけでお咎めなしで済むのなら、わざわざニセモノを仕立てるなどと七面倒臭いことをせずに、最初からそうすれば良かったんじゃないの?
それに、皇帝に、RXに姫を暗殺されまひたとおめおめと報告して、ジャーク将軍たちが無事で済むとは到底思えないのだが。
ラスト、光太郎が、心配のあまり憔悴しきっていた佐原夫妻にひとみを送り届け、佐原家に明るい笑顔が戻ったところで幕となる。
と言う訳で、「仮面ライダー」シリーズでも珍しい4週にわたる長編エピソードであったが、ロボライダー、バイオライダーと、二つの新たな形態が誕生したにも関わらず、デスガロンのデザインと強さ、ガロニア姫の化粧の濃さしか印象に残らなかった。
成長したひとみのキャスティングミスと言うのもあるが、そもそも、茂とひとみの兄妹がどうなろうと、特に気にならない(註・あくまで管理人個人の感想です)というのが、ドラマとして盛り上がりに欠けた原因ではないだろうか。
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