第63話「怪人サイギャング 死のオートレース」(1972年6月10日)
冒頭、伊豆シャボテン公園近くの公道をオートバイで走っている猛と滝。

猛「おやっさん、どうです、タイムは?」
立花「だいぶ調子は上がってきたが、優勝にはもう一息だ」
彼らは明日この地で行われる全日本ロードレース大会に備えて猛特訓を行っているのだ。

立花「負けても悔いのないようにもっと走り込むんだ。勝丸は今頃必死だぞ」
猛「勝丸か、あいつはどうしても優勝してアメリカに行きたいだろう。アメリカに行けばタダシ君の足は完全に治るらしいからな」
勝丸と言うのは、同じくオートバイレーサーで、猛たちの好敵手であった。

その頃、ショッカーのアジトでは、再び来日した死神博士の指揮の下、いつものようにしょうもない作戦が行われようとしていた。
ナレ「アフリカ支部から派遣された怪人際ギャングの到着を、一足早く日本に上陸した死神博士が待っていた」
しかし、撮影の都合とはいえ、何の説明もなく大幹部が入れ替わっていると言うのはやっぱり不自然に感じる。せめて「休暇を取って家族サービス中の地獄大使にかわって……」とか「ギックリ腰で療養中の地獄大使にかわって……」とか、一言でいいから説明が欲しかった。

一方、有料道路の料金所の係員が、警察からの電話で200キロで暴走するバイクがそっちに行くから止めちくりと
無茶なことを頼まれる。
係員「止まれ、止まれーっ!」
馬鹿正直な係員はそのオートバイの前に立ちはだかって呼びかけるが、

黒一色のライダーは、ニヤッと笑うと頭を前に倒し、

たちまち巨大な二本の角を持つ、サイギャングに変身する。
この変身シーンおよびサイギャングのデザインはなかなかカッコイイ。
サイギャングは係員を跳ね飛ばして走り去り、ほどなく、ある死神博士のアジトに到着する。

死神博士「待っていたぞ、サイギャング」

怪人「死神博士、私を日本に呼び寄せた目的は?」
死神博士「いや、別に……ちょっと呼んでみただけだ」 
怪人「……」
じゃなくて、
死神博士「この男は本郷とレース仲間の勝丸功、サイギャング、こいつをアジトに連れて来い」
怪人「キキキキーッ!」
死神博士、モニターに勝丸とその恋人サナエがバイクで走っている姿を映し出し、簡潔に命令する。

勝丸「サナエさん、マシンの調子は最高だぜ」
サナエ「この調子なら優勝してタダシ君をアメリカへ連れて行けるかもしれないわねっ」
サナエを演じるのは、「ダイナマン」のゼノビアこと藤山律子さん。
レモンイエローのライダースーツが良く似合っている。
だが、勝丸は、サナエと別れた後、スポーツ新聞の記者に化けたサイギャングによってあっさり昏倒させられ、アジトへ連れて行かれる。

ミキ「タダシぃ、エミちゃんとトッコちゃんがお見舞いに持って来てくれたのよ」
エミ「早く良くなるようにって本郷さんから」
トッコ「元気を出してね」
そのタダシ、伊豆の病院に入院しているらしいが、そこへ姉のミキがエミとトッコを連れて入ってくる。
ミキを演じるのは、これまた特撮作品にゆかりの深い大森不二香さんである。
それにしても、トッコの、まるっきり似合ってない少女趣味のドレスがめちゃくちゃ可愛いのである!

そこへノックの音。タダシは兄かと思ってベッドの上に起き上がるが、兄ではなくサナエであった。
タダシ「サナエのお姉ちゃん、兄ちゃんは?」
サナエ「新聞社の人に取材を受けているのよ」

死神博士「勝丸功、お前は今から、ショッカーに忠誠を誓う身となったのだ」
その頃、死神博士のアジトでは、例によって死神博士が得意の催眠術を勝丸に掛けていた。
前回と比べてみると、やっぱり、地獄大使は「陽」で、死神博士は「陰」と言うことが良く分かる。
死神博士は勝丸をショッカーの手先に仕立てて、サイギャングと協力させて本郷猛抹殺を図ろうとしているのだ。

洗脳済みの勝丸、何食わぬ顔で猛たちの前にやってくる。
勝丸「急に本郷と走りたくなりましてね、立花さん、本郷をお借りしていいですか」
立花「うん?」
猛「僕は構いませんよ、おやっさん」
勝丸「それじゃ本郷、行くぞ」
勝丸は打ち合わせていた場所まで猛を誘導すると、マシンの調子が悪くなったと偽って止まり、あわせて走るのをやめた猛に、催涙弾のようなものが投げ付けられる。
不意打ちを食らった猛、一時的に視力を失ってしまう。
ほとんど無抵抗の猛を、戦闘員が積もりに積もった恨みを込めて、ボコボコにする。

戦闘員「イーッ!」(日本語訳・これは蜂女の分!)
猛「うっ」

戦闘員「イーッ!」(日本語訳・これは九条みわことギリーラの分!)
猛「うっ」

戦闘員「イーッ!」(日本語訳・これは綾小路律子の分!)
猛「うっ……って、
綾小路殺したのはお前らだろうが!」

管理人がない知恵を絞って考えたギャグでスベッてる間に、猛は海に面した崖っぷちに追い詰められ、断崖をスベり落ちそうになっていた。

相変わらず、スタントなし(多分)で危険なアクションに挑む藤岡さんでした。
なんとか岩にしがみついていた猛であったが、サイギャングの火炎攻撃を避けようとして、結局海へ転落してしまう。

怪人「口ほどにもない奴よ、ケケケケケッキョーッ!」
仮面ライダーの力を良く知らないサイギャング、その程度で猛が死んだものと思い込み、勝利の奇声を響かせる。

怪人「ケッケケケケ……」
当然、意気揚々とアジトに戻ってくるが、

死神博士「ふんっ!」
怪人「ケーッ!」 入り口に近いところで待ち構えていた死神博士に、思いっきり杖でしばかれる。
管理人、大笑い。

怪人「死神博士、何を?」
死神博士「何故本郷をトドメを刺さなかったのだ?」
怪人「それでは、まさか本郷は?」
死神博士「死んではいない、崖下の木に掴まっていたのだ」
死神博士、改めてサイギャングに本郷猛抹殺を厳命する。

九死に一生を得た猛、仲間と合流し、視力も元に戻っていた。
そこへ勝丸がまたもや何食わぬ顔でやってくる。たまには何か食えよ。
勝丸「心配掛けてすまなかった、あの時、変なガスに気を失ってしまって……本郷、明日は正々堂々と戦おうぜ」
猛「勿論だ」
二人はがっちり握手を交わし、健闘を誓い合う。
CM後、いよいよ全日本ロードレースが開催される。

立花「猛、気をつけていけよ、ショッカーがお前を狙ってくるとすると」
猛「ええ、恐らく何か仕掛けて来るでしょう」
フラッグが振られ、各車一斉に走り出す。

観客の中には、サナエとミキの姿もあった。
特撮ファン的にはなかなか豪華なツーショットなのだが、島田真之氏の脚本らしく、折角こんな魅力的なキャラクターを用意したと言うのに、ほとんどストーリーには関係ないのだった。チーン。
どうせなら、サナエ(ミキでも可)をショッカーにさらわれ、その命を助けたかったら我々に協力しろと脅迫された勝丸が、私情と友情の板ばさみになって葛藤すると言う設定にしておけば、女性キャラの顔も立つし、無味乾燥なドラマも少しは面白くなっていたのではないだろうか。

それはさておき、なかなか本格的なレースシーンは、空撮ではないが、高い場所からの俯瞰ショットなどもあり、かなりの臨場感となっている。

ほどなく、猛と勝丸がトップに躍り出て、激しい首位争いを展開する。

だが、後続車を大きく引き離したとみるや、前に出た勝丸が、わざと左右にマシンを揺らして、猛の進路を妨害すると言う危険な行為に出る。
猛「おいっ、勝丸! やめろ、何をするんだ?」
さらに、体当たりでもするようにぐいぐい接近する勝丸を避けようとして、本来のコースから外れてしまう。
未舗装の道に入ると、勝丸はバイクから降り、刃物を振り回して猛に襲い掛かってくる。

猛「勝丸、これは一体どう言うことだ?」
勝丸「……」
無論、勝丸は猛の敵ではなく、ぶん投げられるとさっさと逃げていく。入れ違いに、ショッカーオートバイ部隊が猛の前に現われる。
しかし、死神博士、折角猛の友人を仲間に引き入れたと言うのに、肝心のその使い方が甘い。
二回とも単に猛を指定の場所に誘導することしかしていないではないか。
勝丸の体に時限爆弾を埋め込んで、猛もろとも吹っ飛ばすとか、逆に勝丸を囮にして猛を必殺の罠へ誘い込むとか、もっと有効な方法がたくさんあると思うんだけどね。

で、毎度お馴染み、適度な車間距離をとりつつ、ライダーと戦闘員の皆さんによる楽しい楽しいツーリングの時間となりまーす。
どうせなら派手にバイクを衝突させたり爆発させたりして欲しいところだが、予算がないので、

走りながら、ライダーがサイクロンからジャンプして戦闘員のバイクの後ろに乗り移り、

バイクにはかすり傷ひとつ付けないよう、細心の注意を払って戦闘員をひとりひとりバイクから落としていくと言う脱力アクションが展開される。
しかし、オートバイ部隊にしても、毎回毎回ライダーの周りをただ走り回るだけと言うのは芸がないよね。そもそも、武器らしいものがバイクにも戦闘員の体にも装備されていないのだから、いくら走ったところでライダーを倒せる訳がない。
とにかく、オートバイ部隊を全滅させると、猛は変身を解いてレースに戻る。

給油の為の中継地点では、おやっさんたちやサナエたちが、心配そうに猛たちの来るのを待っていた。
くどいようだが、折角こんな可愛い女優さんを二人も揃えておきながら……。
そこには、各レーサーの名前が書かれた給油タンクが置かれていたが、猛のタンクに、係員に化けたサイギャングが、何かをこっそり混入させた。おそらく、固形の可燃物か、特殊な薬品だったのだろう。

やがて、こちらもレースに復帰した勝丸が到着するが、サナエたちは急いでいたので、間違えて猛のタンクで給油してしまう。

ミツル「あ、あれ本郷さんのガソリンだぜ」
立花「いいさ、何もガソリンで勝負が決まる訳じゃない」
ミツルが気付いて騒ぎ立てるが、おやっさんは敢えて気にしない。

立花「それにしても、遅いな……」
この画像、右端から、トッコ、おやっさん、ユリ、エミ、ミツル、ナオキと、正しく身長順に並んでいるようで、ちょっと笑える。
その後、猛と滝が来るが、猛は異物が間違って勝丸の燃料タンクに入れられたと気付き、急いで勝丸の後を追う。

勝丸のマシンからは黒い煙が上がっており、バランスを失って横倒しになり、

かなり遠慮がちに爆発する。
うーん、これじゃあ、計画通り猛のバイクに異物が入っていたとしても、とてもじゃないが猛を死に至らしめることは出来なかったのだろう。
現に、勝丸も軽傷で済んでるからね。
死神博士、今回は何もかも詰めが甘い。南米から帰ったばかりで、時差ボケしてたのだろうか?
そして都合のいいことに、そのショックで勝丸の催眠も解けて正常に戻る。
こうなれば後は詳しく書くこともない。
ライダーが「ライダーきりもみシュート」でサイギャングを倒して事件解決となる。

あれやこれやでかなりトップとは離されていたが、猛は再びレースに復帰し、不屈の闘志と、人造人間としての能力をフルに活用して(反則)、見事に優勝してしまうのだった。
滝も、ほぼ同着で二位に入ったのだから、猛が改造人間であることを考慮すれば、滝のレーサーとしての能力は極めて高いと言えるだろう。

ラスト、怪我で入院している勝丸を、弟たちが見舞っている。
勝丸「タダシ、兄ちゃん、勝てなくて悪かったな」
タダシ「ううん、いいんだよ、僕」
だが、病室のドアの下に、猛からのプレゼントが入った封筒がそっと差し込まれていた。
猛の声「タダシ君、これはアメリカ行きの切符だ。向こうで足を治して来て、みんなの前でこんなに歩いても大丈夫なんだよって、見せてあげるんだ。約束したよ、お兄さんの友達より」 封筒に、何も言わずに去っていく猛と滝の後ろ姿に重なり、猛の声で手紙が読み上げられる。
レースの優勝賞品であるアメリカ行きの切符を勝丸にプレゼントすると言う猛の粋なはからいであった。
爽やかな幕切れであったが、そもそもアメリカに行くだけでタダシの足は治るのだろうか?
アメリカに行っても、治療を受けるには、それなりの費用が掛かると思うのだが……。
と言う訳で、道具立ては賑やかだが、あんまり面白くないエピソードであった。
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