第17話「怪鳥テロチルス 東京大空爆」(1971年7月23日)
昨日に続く、2話構成エピソードの後編である。

一夜のうちに東京のど真ん中に作られた、テロチルスの巨大な巣。
MATはそれを「銀の城」と呼んでいた。
一方、悪島では、噴火口に潜んでいたテロチルスとウルトラマンとの死闘が続いていたが、結局ウルトラマンは敗れ、怪鳥は再び大空の彼方へ飛んでいく。
本部に戻り、その対応を協議するMATの隊員たち。

岸田「怪鳥の学名はテロチルス、白亜紀にテラノドンと共に棲息していた巨大翼竜です。肉食の凶暴な奴です」
上野「あれは奴の巣だと思うな」
丘「巣は、悪島の噴火口なんでしょ?」
加藤「巣だと断定するのはまだ早い」
慎重な加藤隊長は、郷と上野にMAT地震研究部に悪島の火山活動について調べてくるよう命じる。
加藤「銀の城を焼く方法は?」
南「火炎放射器で焼くことも考えたのですが、ガスが発生する恐れがあります。そこで、この
チャッカマンで焼くことにしました」
加藤「南、明日から来なくていいぞ」
じゃなくて、
南「この熱線砲で焼くことにしました。これから毒ガスが出る心配はありません」

その頃、恋の恨みからヨットを爆破した松本三郎は、警察から脱走し、改めて由起子と横川の命を狙っていた。

所員「最近、この火山帯の活動が活発化してきました。特に悪島の胎動が激しくなりました」
上野「じゃ、噴火の恐れが?」
所員「ええ、ありますね」
郷「噴火を予知して巣を移そうとしてるんだ」
郷たちの報告を受けた加藤は、「銀の城」をテロチルスの巣だと断定し、現場付近まで、マットジャイロで熱線砲を運ばせる。

そんな中、三郎がバイクに乗って由起子の入院している警察病院の玄関に突っ込んでくる。
三郎「よるな、このダイナマイトのスイッチを入れれば病院ごと吹っ飛ぶぜ!」
警官隊に囲まれるが、体に取り付けたダイナマイトで脅し、刑事を人質にして由起子の病室へ向かう。

由起子「郷さん? 浩さん? ああっ」
人の気配に気付いて声を出すが、それが三郎だと知って怯える。
(註・以下、ボツにしたギャグ)
由起子「郷さん? 浩さん? 進さん? コウジ? ジロウさん? ケイジ君? 背が高い方のサブちゃん? それとも竜? いえ、ひょっとしてハツノリ?」
三郎「……」
刑事「……」
毒ガスで一時的に視力を失っている由起子、人の気配に気付いて誰何するが、どーしよーもない尻軽女だと言うことを自ら暴露してしまう。

三郎「横川は何処だ?」
刑事「彼はこのところ来ない。お前を恐れてな」
三郎「ふっ、別荘に行ったんだな。よし、来い、別荘に行くんだよ」
由起子「イヤよ、放して!」
三郎「俺の体にはダイナマイトが20本くっついてるんだ」
由起子「えっ!」
驚いた由起子が、三郎の体をまさぐり、
由起子「20本? ひとつ、ふたつ、みっつ……あら、1本多いわ」 と言うような下品なギャグを書いてみましたが、こちらも当然ボツになりました。

三郎、病院から連れ出した由起子をバイクの尻に乗せ、商店街を突っ走っている。
当時としては、大胆かつ意欲的な操縦者目線のカメラワーク。
どうやって撮影してるんだろう?

由起子「お願いよ、サブちゃん、これ以上鼻の穴を広げないで」
じゃなくて、
由起子「お願いよ、サブちゃん、これ以上罪を重ねないで」
三郎「しっかり掴まってなきゃアウトだぜ」

前方に非常線が張られているのを見て、急ブレーキをかけて脇道へ入る三郎。
ショートパンツの女の子がバイクの尻に乗ってるのって、なんか良いよね。

今度は、それを追いかけるパトカー目線の映像となって、下手な刑事ドラマよりよっぽど臨場感のあるシーンとなっている。

石橋さん、テロリスト(?)の役だけど、何をやらせてもサマになる。
彼が「アイアンキング」で主演を務めるのはこの翌年だが、「アイアンキング」のDVDは画質が悪いので、「新マン」の方が新しい作品のように見えてしまう。

「銀の城」周辺では、丘隊員がマットジャイロで熱線砲を近くのビルの屋上に降ろしたところだったが、そこへ三郎のバイクが猛然と突っ込んでくる。
三郎「来るな、来るんじゃねえ」
郷「松本君、馬鹿な真似はやめたまえ!」
加藤「おい、そこは怪鳥テロチルスの巣だ。いつ毒ガスに変化するとも限らん。戻って来い!」
郷たちが口々に叫ぶが、三郎は不敵に笑うとわざとバイクのエンジンを吹かして巣の成分と排気ガスを反応させて、赤い毒ガスを撒き散らす。
そして由起子を連れて、既に全員避難して無人になったマンションの中へ逃げ込む。
MATも、三郎がダイナマイトを所持していることを知って、しばらく様子を見ることにする。
だが、日暮れと共に再びテロチルスが飛来して、「銀の城」上空で巨大な翼をはためかせる。
その猛烈な風を受けて、マンションは地震に見舞われたように激しく揺れ動く。

三郎「あんときの怪物だ」
由起子「ヨットを壊した怪鳥よ」

立ち上がり、手探りで三郎のところへ行こうとする由起子。
はい、これが若き日の服部妙子さんのお尻になります。
とりあえず万歳三唱しときましょうね。
由起子、ヨットを破壊したのは三郎のダイナマイトではなく、怪鳥だったと証言するから一緒に逃げようと訴えるが、既に破れかぶれになっている三郎の耳には届かない。
三郎「俺は信じねえ、俺の信じられるものはこのダイナマイトだけだ!」
由起子「サブちゃん!」
三郎「ここが一番安全な場所かも知れねえな、誰も来ないしな」
MATは、朝になるのを待って攻撃を開始するとして、それまでに周辺住民を避難させることにする。その中には、郷と親しい坂田兄弟の家も含まれていた。

坂田「光化学スモッグだの、毒ガスだの、東京も住みにくくなったもんだ。おい、アキ、何をぼんやり突っ立ってるんだ、早く乗んなさい」
ぶつぶつ言いながら、坂田が車に荷物を積み込んでいたが、妹のアキは手伝おうともせず不貞腐れたような顔で立っていた。

郷「この前ぶったことまだ怒ってるのかい、俺もついカッときたもんで……ごめん、このとおり謝るよ、だから機嫌を直して、さぁ」
前回、ちょっとしたことで郷と喧嘩をしてしまい、アキの中ではまだそのことが尾を引いて感情的なしこりが残っているらしい。
郷が頭を下げて強引に助手席に乗せても、アキは無言だったが、

アキ「郷さん、由起子さんを必ず助け出してね」
郷「うん、必ず!」
最後に真っ直ぐ郷の目を見て漸く口を開く。
後部座席の次郎、アキと郷の顔を交互に見てから、嬉しそうに「出発進行!」と、坂田に号令をかける。
子供心に、二人の仲違いを気にしていたのだろう。
CM後、加藤隊長が拡声器で三郎に、明朝攻撃を開始する予定だから、早く降りて来いと呼びかけている。そこへ、由起子の婚約者の横川浩が来て、「MATもMATだ、あんな鳥の化け物一匹殺せないでどうします?」などと放言し、隊員たちの怒りを買う。

三郎「横川! 由起子が欲しかったらここまで登って来い、話し合おうじゃねえか」
横川に気付いた三郎、由起子にピストルを突きつけたままベランダに出て来て、横川に要求する。

刑事「松本はああ言ってる。早く、一緒に行きましょう」
横川「……」
刑事が促すが、横川はその手を振り払って、その場から動こうとしない。
由起子「浩さーん!」

刑事「今、彼女を救えるのはあんたしかいない。さ、行きましょう」
横川「……」
三郎「どうした、由起子を取り戻したくはねえのか」
郷「横川さん!」
横川「……」
みんな(犯人含む)から「行きませう」の大合唱を受けても、横川は泣きそうな顔でマンションを見上げたまま動かず、遂には、
横川「返すなんて嘘だ、僕を殺すつもりなんだ。僕はいやだっ!」
などと泣き言を言いながらその場からトンズラしてしまうのだった。

郷「……」
さすがの郷もその醜態を目の当たりにして、「ケッ」と言うような顔になる。
その情けなさは、広辞苑を開いて「醜態」の項を見たら、「新マン17話の横川の態度のこと」と書いてあるんじゃないかと思えるほどであった。
三郎「逃げていったぜ、あいつはそう言う男なんだよ。ばっきゃろーっ!」
婚約者に逃げられた由起子、手探りで再び部屋に戻り、ソファにもたれて思いっきり泣き崩れる。

しばらくして、手に雪のようなものが落ちるのを感じた由起子は、急に明るい声を出す。
由起子「サブちゃん、覚えてる、なまはげ? あの日も随分吹雪いてたわねえ」

そう言われて、三郎もつい大昔の、郷里で由起子と一緒に過ごしていた幼時のヒトコマを思い出す。
老母「ごくろうさまだなんし……」
なまはげ「わらしはどこだーっ!」
その時の情景が、セピア色の幻想的な映像で描かれる。
二人で納屋に隠れ、子供の目には本当の鬼のように見えた「なまはげ」たちに迫られた、恐ろしくも懐かしい思い出。

三郎「あん時は怖かったな。だけどお前は泣きもしなかったな」
昔話をしているうちに、いつしか空が薄っすら明るくなっていた。

由起子「私、憶病なくせにいざとなると怖くないの。図々しいのかな、うふふっ」
由起子の笑い声に誘われて、三郎もつい笑みを浮かべる。
そこへ加藤隊長の声が聞こえて、あと30分で攻撃を開始すると警告してくる。
窓際に立って少し考えていた三郎、低い声で「行けよ」とつぶやく。

由起子「えっ、サブちゃんは?」
三郎「俺はいいんだ、早く行けよ」
横川の正体を暴露させたことで、既に三郎の気も晴れ、思い出話で夜を明かすうちに由起子をどうこうしようという気もなくなったのだろう、その笑顔はそれまでにない穏やかなものに変わっていた。

由起子「いや、私もここにいるわ」
三郎「バカ、これから大変なことになるんだぞ」
由起子「サブちゃんのそばにいたいの」
三郎「死んでもいいのかよ」
由起子「うん」
三郎、由起子が頷くのを見ると、たまらなくなったようにその体を強く抱き締める。
由起子も、見えない目からぽろぽろ涙をこぼして三郎にしがみつく。
由起子「サブちゃんの顔が見たいわ」
由起子の願いにこたえ、そこへ北島三郎が与作を熱唱しながら登場……する訳ねえだろ!
三郎、黙って由起子の包帯を外してやる。

最初はぼやけていたが、やがて由起子の目には、懐かしい、昔のままの三郎の笑顔が映るのだった。
三郎「俺、自首するよ、お前を死なせたくないもんな……」
由起子「サブちゃん」
そしてベランダに立ち、「おーい、これからー」と言いかけた途端、待ち構えていた自衛隊に射殺されちゃうのでした。ひでー。
ま、その場で即死した訳じゃないが、その傷が元で死んだ(註1)のだから、別に嘘は書いてない。
(註1……実際はその後、テロチルスに攻撃されたりしているので、はっきりした死因は不明である)
しかも、その発砲で目を覚ましたのか、大人しくしていたテロチルスが再び暴れ出す。
色々あって、郷がウルトラマンに変身し、テロチルスを倒す(一行で済ますなよ)。
「銀の城」も、熱線砲で焼かれ、東京を混乱させた怪鳥騒動は解決を見る。
だが、三郎は、救急車に運ばれる直前、息を引き取る。愛しい由起子の顔を見詰めながら。
三郎「由起ちゃん、好きだよ……」 
由起子「あっ……」
そっと三郎の髪を撫でてやる由紀子。
この由起子のカットが異様なほど綺麗である。
事件解決後、由起子は郷、アキと一緒に三郎の墓参りをする。
由起子は「はじめからやり直しよ、サブちゃんの分まで頑張るわ」と告げ、公園で、郷たちの前から去って行く。
それにしても、途中でギャグのネタにもしているが、由起子、この2話の中だけで、三郎→横川→郷→三郎と言うように、次々と男を乗り換えている。
これを見ると俄然、
「由起子、実はただの尻軽女だった」説が有力視されてくる。

アキ「あたしもはじめっからやり直すわ」
郷「何を?」

アキ「何もかも!」
郷「何もかも?」
アキ「そっ、なにもかも!」
女心に疎い郷、アキの言いたいことがさっぱり分からず、キョトンとするのだった。
以上、特撮ヒーロー番組とは思えないほどしっかりしたドラマを堪能できるエピソードだった。
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