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「乳姉妹」 第3回「地獄の豪邸」

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 第3回「地獄の豪邸」(1985年4月30日)

 なんかホラー映画みたいなタイトルである。

 前回のラスト、紅葉坂教会の懺悔室の仕切りを挟んで、静子が18年前の秘密を大丸剛造に打ち明けているシーンの続きから始まる。

 自分でも混乱してしまうので、もう一度書いておくと、18年前、静子が、ふと魔がさして、自分の娘・しのぶの産着と、大丸の娘・千鶴子の産着を取り替えてしまう。そこへ亭主の龍作があらわれ、しのぶの産着を着た千鶴子に火傷させてしまう。

 静子、慌てて千鶴子を医者のところへ連れて行き、治療のあと、やっと産着を取り替えたことを龍作に打ち明ける。

 
 静子「この子は大丸様のお嬢様なんだよ、私が悪戯心を起こして産着取り替えたんじゃないか」
 龍作「なんだとぉ、それじゃあ俺たちの娘は?」

 
 二人が慌てて部屋に戻ると、既にベッドはもぬけの殻になっていた。部屋を空けていた僅かな間に何者かに連れ去られてしまったのだ。

 静子「あんた、どうしたんだい?」
 龍作「バカヤロウ、そんなこと俺が知るもんか」

 龍作はしらばっくれるが、もともとこの事件は、龍作が犯人夫婦(路男の両親)をそそのかしてやらせたことなんだよね。

 しかも、静子が赤ん坊たちの体を洗う為に一時外していたネームタグが、ご丁寧にも龍作によって付け直されていたことが判明する。

 つまり、しのぶの足に千鶴子の名札が付けてあり、当然、犯人たちはそれを見て、しのぶを大丸の娘・千鶴子だと思い込んでしまったのだ。

 
 剛造「待ってくれ、それじゃああなたは、誘拐されたのは私の娘の千鶴子ではなくてあなたたちの娘だったというのか?」
 静子「はい、さようでございます」

 ここで一旦、回想シーンから現実の場面に戻る。

 ちなみに、前回のラストでは懺悔室にいた筈なのに、ここでは最初から懺悔室の外で話している。

 剛造「そんな馬鹿な、あなたはあの時、確かに誘拐されたのは私の娘だと言ったじゃないか!」
 静子「……」
 剛造「だから私は身代金の500万を用意したんだ」
 静子「その身代金が私たち夫婦には払えなかったんでございます」

 再び回想シーン。病院の静子たちに犯人から脅迫電話が掛かってくるが、身代金500万を要求される。

 しかし、これはストーリー上の都合だからしょうがないとはいえ、犯人が、大丸本人ではなく静子たちにそんな重要なことを告げると言うのは明らかに変である。

 命懸けで犯行に及んでいる誘拐犯が関係ない人間に「あのー、○○ちゃんの両親に500万円持って来いって伝えといて貰えますぅ?」なんてことを言う筈がないだろう。

 だが、貧乏で笑うしかない松本夫妻には、500万と言う大金などあろう筈がなく、やむなく、誘拐されたのは千鶴子だと偽って、ひとまず剛造に500万出して貰って、まずはしのぶを無事取り戻そうと考える。

 無論、静子としては事件が解決した後に、しのぶと千鶴子が入れ替わっていたことを告白するつもりだったのだが……。

 しかし、これもねえ……、時代劇でもよくあるパターンだけど(金持ちの息子と貧乏人の息子が遊んでいて、服を取り替え、間違えて貧乏人の息子が悪人に誘拐されると言う)、この場合、静子が何もかも剛造に打ち明けた上で、500万の身代金を出してくれるよう頼むのが筋だったろう。

 なにしろ、静子には千鶴子に乳をわけてもらった恩義があるのだし、剛造にしてみれば500万などと言う金はほんのはした金であるし、情誼に厚い彼の性格からしても、そう言われれば確実に500万を出してくれたと考えられるからである。

 とにかく、松本夫妻は千鶴子が誘拐されたと剛造に告げ、土下座して謝罪する。

 ……これも冷静に考えたら、静子がちょっと目を離した隙に誘拐されたのだし、別に静子は仕事として千鶴子の面倒を見ていた訳ではないのだから、別に土下座までする必要はないと思うんだけどね。

 
 手島「社長、すぐ警察に」
 剛造「いや、千鶴子の命にもしものことがあったら取り返しがつかん。君はすぐ近くの銀行に行って500万用意してくれ!」

 キビキビと部下に命じる若き日のアデランス剛造。

 
 手島「わかりました」

 同じアデランス仲間でもあり、剛造の忠実な部下である若き日の手島(大石吾朗)。

 ま、大石さんの方は地毛かもしれないが……。

 剛造、ベビーベッドに残された赤ん坊を、それが自分の娘・千鶴子だとも知らずにつらそうな目で見てから、

 剛造「千鶴子は慶子が命と引き換えに生んでくれた娘だ。なんとしてでも助けなければ……娘さえ無事なら金なんかどうでもいい。娘を助け出してくれた人間には報酬は惜しまん」

 
 「報酬」と聞いた途端、顔を伏せていた龍作がパッと目を輝かせ、興奮したように立ち上がる。

 龍作「大丸さん、今のお言葉ほんとですかい」
 剛造「ああ、本当だとも、君は何か心当たりでもあるのかね」
 龍作「いや、心当たりと言われても……」

 心当たりも何も、龍作は最初から誘拐犯の名前も住所も知っていたのである。

 静子「大丸様、それから先のことはあなたはよくご存知の筈ですね。龍作の案内で、あなたは部下を連れて犯人の家へ向かわれました」

 それには静子は同行せず、龍作は何も教えてくれなかったので、静子はその件については何も知らず、逆に剛造に、犯人の家で何があったのか、尋ねる。

 今度は剛造の回想シーンとして、龍作の案内で海辺の掘っ立て小屋のような粗末な犯人の家に、こっそり向かったときの様子が描かれる。

 龍作が、どのように剛造たちに説明したのか不明だが、要するに、龍作は、「報酬」に目が眩んで、いわば「共犯者」とでも言うべき誘拐犯夫婦を売ったのである。

 なんと言う腐れ外道であろう。

 
 龍作が、壁の隙間から覗くと、犯人の片割れである妻が、千鶴子、いや、しのぶを抱いている姿が見えるのだが、演じているのは「スクールウォーズ」で真面目な女性教師を演じていた松井きみ江さんである。

 ついでに、その隣にいる男の子こそ、後の路男なのである。

 だいぶ後になって、松井きみ江さんも、ド派手なキャラとして再登場することになる。

 で、それから起きた痛ましい事件こそ、路男を復讐に駆り立てた原因となったのだが、このドラマはほんとに出し惜しみが好きなので、まだこの段階では、詳しいことは一切明かされない。

 また、子供の取替え事件とは直接関係のないことなので、静子も敢えて聞き出そうとはしない。

 
 剛造「何も恐ろしいことなどある筈がない。私は無事に我が子を取り戻した、それだけのことだ。さあ、先を続けなさい」
 静子「はい、私は犯人が逮捕されて、娘が無事だということを知らされて、千鶴子様をお返ししようとあなた様を追ったんでございます」

 再び静子の回想シーン。

 剛造たちが車に乗って真鶴から去ろうとしていると、静子が、千鶴子を剛造に返そうとやってくる。

 ところが、それを龍作が止めるのである。

 
 静子「あんた、私たちの赤ちゃんは?」
 龍作「馬鹿、誘拐されたのは俺たちの娘じゃねえ、大丸の娘だ」
 静子「何言ってんだい!」
 龍作「今更俺たちの娘だなんてどの面提げていえるんだよ? それによ、大丸の娘には火傷まで負わせちまってんだぞ、礼金取り損ねたうえに、豚箱入りだよ!」
 静子「そんなことどうだっていいじゃないか、娘さえ取り戻したら私は何もかも正直に話すつりでいたんだ」

 龍作、もし打ち明けたら礼金を取り上げられてしまうと、実にさもしい理由から、そのまま娘を入れ替えたままにしておこうと言うのであった。

 ……

 さすがにそんな奴おらへんやろ。

 仮にも自分の娘だぞ?

 まさか、その時点で、いずれそのことをネタに剛造を強請ろうと思った訳でもあるまいし。

 もしそうなら、18年も待たずに、もっと早いうちに剛造や千鶴子に近付いていただろうからね。

 
 夫婦の悶着をよそに、剛造はさっさと車を出させてしまう。

 静子は赤ん坊を抱いたまま、「大丸様、待って下さい、この子はあなたの赤ちゃんなんですよ」と、大声で叫びながら追いかけるのだが、剛造は一切気にせず走り去ってしまう。

 ……

 さすがにそんな奴おらへんやろ。

 普通、ちょっと停まるよね。

 さらに、駄々っ子のような龍作に、本当のことを打ち明けたら、しのぶ、つまり本物の千鶴子を海に叩き込んで殺すぞと、訳の分からない脅しを掛けられ、静子も結局断念してしまうのだった。

 
 静子「あ、あああ……」
 龍作「へへ、泣きたいだけ泣きやがれ。赤ん坊が摩り替わってるのを知ってるのは俺たちだけだ。おい、変な気ぃ起こして警察なんぞ駆け込みやがったら俺はこのガキ、叩き殺すからな。覚えてろよコラ」

 剛造の車が見えなくって、思わずその場に泣き崩れる静子であったが、龍作はせせら笑いを浮かべると、憎々しげに言い放つ。

 ……

 いや、くどいようだが、いくら龍作が腐れ外道だからって、さすがにこの言動はおかしいよね。

 僅かな礼金欲しさに、実の娘を手放しても構わないだなんて……。

 また、それっきり子供を取り替えようとせずに18年そのままにしてしまった静子も静子である。

 友達から借りた本を返そう返そうと思ってるうちに、いつの間にか自分のものにしてしまった……などとは次元の違う話だからである。

 いくら龍作に脅されていたからって、その後も剛造に申し出る機会はいくらでもあった筈だ。血液型を調べれば、すぐ分かることだしね。

 しかし、この調子では、当然、松本夫妻の仲は決定的に悪化したと思われるのに、その2年後(?)に、彼らの間にめでたく耐子が生まれてるんだよね。つまり、これから僅か1年前後で、二人は子供が出来るようなことをするまでに関係を修復させていたということになる。ま、しのぶや耐子の生年月日が分からないので時系列ははっきりしないのだが、考えたらちょっと変だよね。

 さて、告白を聞き終えた剛造だが、だからと言って、

 剛造「わっかりました。じゃあ、娘を交換しましょう」

 などと気さくに言ってくれる筈もなく、

 剛造「信じられん、私には信じられん!」

 と、激しく混乱して静子の話を否定する。

 
 静子「大丸様、どうあっても信じて貰わなければなりません。18年前、あなたが我が子と信じたのは私の娘、私の育てたしのぶこそ、あなたの実のお嬢様なんです。どうぞ、いま、ここで私に約束してくださいまし、しのぶをあなたの娘として引き取って幸せにすると、そしてあなたのお嬢様として育てられた私の娘も今までどおり可愛がって頂けるなら、私は思い残すことはありません」

 静子、ガバッと剛造の体に縋りつくと、涙ながら、冷静に考えるとかなり虫の良いお願いをする。

 剛造がその手を乱暴に振り払って、

 剛造「嘘だ、あんたは私をたぶらかして、自分の娘を私に押し付けようとしてるんだ!」

 と、決め付けたのも無理からぬ話であった。

 無論、静子も、自分が死病にとりつかれていなければ、口を噤んでこのまましのぶを自分の娘として育てていただろうが……。

 負けない静子、再び剛造の体に取り縋り、

 
 静子「私が身をもって証明します。そうしたら信じて頂けますか?」
 剛造「身を以て?」

 (註・管理人、ここでとても下品なギャグを思いついたが、このブログの品位をこれ以上落としたくないのでボツにした)

 静子、ここで必殺技の心臓の発作を起こして長椅子にもたれる。

 
 若山「大丸、この人は明日をも知れぬ身だ。血を吐くようなこの人の告白をお前はまだ信じられないのか?」

 剛造も若山に諭されて、やや語調をやわらげると、

 剛造「何か確たる証拠があるのなら、しのぶさんと耐子さんを大丸家に引き取ると約束しよう」

 と、譲歩する。

 静子は床に土下座して剛造に感謝すると、そのまま転げるように教会から立ち去ってしまう。

 
 そして静子は、荒波が打ち寄せる断崖の上に立ち、心の中で娘たちに別れを告げてから、あっさり海へ身を投じる。

 剛造に命じられて手島が静子の後をつけていたのだが、止める間もなく静子は海に飲まれてしまう。

 静子の立っていた場所には、脱いだ靴と遺書の入った封筒が残してあった。

 手島は美熟女の香りが染み込んだ靴の臭いを嗅いでから(註・嗅いでません)、断崖の下を覗き込む。

 管理人、最初見たとき、迂闊にもほんとに静子が死んだのだと思ってしまったのだが、大映ドラマの主要キャラクターともあろうものが、こんなうすしお味のポテトチップスのようにあっさり死ぬ筈がないということに気付くべきだった。

 ここでやっとOPとなる。

 OP後、電話で手島から静子の自殺を告げられ、さすがの剛造も愕然とする。

 警察への連絡などを手島に一任すると、剛造は静子との約束を守って、しのぶと耐子を自宅に引き取ろうと決意するのだった。

 それが、完全無欠の大丸家をメチャクチャに、もう、笑うしかないほどメチャクチャにしてしまう結果を招くことになろうとは、夢にも思わず……。

 
 真鶴の松本家の陋屋に、手島と、大丸家のお手伝いの鈴子が上がり込んでいる。

 号泣しながら、母の遺書を読んでいる松本姉妹。

 勿論、遺書には、18年前の秘密をうかがわせるようなことは一字も書かれておらず、娘たちは何故母親がいきなり自殺してしまったのか、さっぱり訳が分からないのであった。

 
 しのぶ「お母さん、どうして死んでしまったの? どうして、私たちの元に戻って来てくれなかったのよーっ!」
 耐子「私は信じない。信じないよ、だって、お母さんの遺体だってまだ見付かってないじゃない」

 それでも耐子はまだ一縷の希望に縋っていたが、

 手島「遺体を見付けるのは不可能だろう……地元の警察と消防隊に頼んで捜索して貰ったんだが、沖に流されてしまったんだろうということだ」

 手島から最後通告のような無慈悲な言葉を投げられ、母親の死を受け入れざるを得なくなる。

 
 やけに展開が早いが、母親の亡くなったその夜のうちに、二人はセーラー服に着替え、荷物をまとめて東京の大丸邸に到着している。

 剛造たちが入ってくると、使用人のように深々と頭を下げる二人の少女。

 余人は知らぬ、剛造の胸には、目の前に立つしのぶという少女が、自分の血を分けた実の娘かも知れないと言う思いがあり、しかも母親を亡くしたばかりのよるべない境遇に対する同情も重なり、

 
 剛造「つらかったね」
 しのぶ「はい……」

 彼女を見詰める目の奥には、最初から娘を思う父親に似た慈愛が満ち満ちていた。

 剛造「静子さんとの約束で今日から君たち姉妹を私が預かることになった。家事見習いをしながら学校へ行って貰うと言うことになるが、それでいいね?」
 しのぶ「はい、身に余る光栄でございます」

 し、しのぶさん、いくらなんでもへりくだり過ぎ。それ、女子高生の言う台詞じゃないですよ。

 しかし、同じ預かるにしても、もうちょっと別なやり方があったのではないかと、フィクションの話ながら、思われてならない。特に、情緒不安定なところがあり、しかもひょっとしたら自分の実の娘ではないかも知れない千鶴子と同じ屋根の下で暮らさせると言うのは、一言で言ってあさはかな選択であったろう。

 別にアパートを借りて、二人だけで住まわせ、学費や生活費の面倒を見る、と言う程度で良かったのではないだろうか。

 もっとも、同居してくれないとドラマにならないので仕方ないんだけどね。

 それはさておき、剛造は家族を二人に引き合わせる。

 
 則子「しのぶさんと耐子さん、あなたたちのことは旦那様からようく伺っています。お母様のことはとても悲しいことだけど、いつまでも嘆いていてはいけませんわ、あなたたちが立派に成長することがお母様のお望みでもあるんですものね」

 まだ何も知らない則子は、中盤以降とはまるで別人のように二人を歓迎する。

 この笑顔が逆に物凄く怖い……。

 
 剛造「娘の千鶴子だ」
 千鶴子「真鶴でお会いしたわね、よろしく」
 しのぶ「こちらこそよろしくお願い致しします」
 
 問題の千鶴子も、まだ父親のしのぶに対する異様なほどの思い入れには気付いていないので、何のわだかりもなく挨拶を交わす。

 雅人「雅人です、ようこそ」
 しのぶ「雅人さん……」
 雅人「分からないことがあったり困ったことがあったらなんでも僕に話してください」

 雅人の爽やかな笑顔を見上げるしのぶの瞳は、この間の真鶴での一件が思い出されて、つい潤んでしまうのだった。だが、雅人としのぶの穏やかならぬ関係も、千鶴子の神経を「キーッ!」と逆撫でする原因のひとつとなってしまう。

 とりあえず、二人はあてがわれた部屋に女中頭と言った立場の鈴子に案内される。

 その部屋は、使用人部屋と言うよりゲストルームのような広さと豪華さで、思わずしのぶが「ほんとに私たちの部屋なんですか」と確認したぐらいであった。

 
 鈴子「ええ、そうよ、この部屋をしのぶさんと耐子さんにって、奥様に言われてるの」

 鈴子はにこやかに応じるが、別の若いお手伝いたちが入ってきて、

 お手伝い「あったまにきちゃうわぁ、これじゃ私たちの部屋とは段違いじゃないの!」

 と、無遠慮に不満の声を上げる。

 さすがに、来て早々、こんなイヤミをわざわざ言いに来る奴もいないと思うけどね。

 
 お手伝い「そうよ、同じお手伝いなのにどういうことぉ? これじゃあまるでお嬢様の部屋と変わりないじゃないの」
 お手伝い「そうね、ほんのちょっと見劣りするけど私たちと差がつき過ぎだわ!」
 しのぶ「……」

 しのぶ、黙って二人の言葉を聞いていたが、いきなり二人の顔面に鋭いパンチを叩き込む。

 お手伝い「げふっ」
 お手伝い「な、なにを?」
 しのぶ「真鶴の地獄姉妹と呼ばれた私たちに喧嘩を売るとはいい度胸ねぇ、タエちゃん」
 耐子「ほんと、身の程知らずもいいところだわ」
 しのぶ「ま、この際だから、私たちのことをようく知っておいて貰いましょうか」
 お手伝い「ひ、ひぃっ~!」

 ……こうして、来着早々、しのぶと耐子はその実力を遺憾なく発揮して、その後、大丸邸を近隣から「地獄の豪邸」と呼ばれて恐れられる、血と暴力の支配する屋敷に塗り替えるのだった。

 ……なこたぁない!(byタモリ)

 もっとも、管理人がとりあえず二人のお手伝いに頭突きを食らわしたくなったのは事実であり、たぶん、しのぶたちも同様のことを考えていたと思われる。

 
 あれこれやってると、そこへ千鶴子が入ってくる。

 千鶴子「私としのぶさんは乳姉妹らしいけど私はそんなこと覚えてないし(当たり前だ)、何の意味もないことだわ、あなたたちは大丸家のお手伝い。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 まだしのぶに何の遺恨もない筈なのに、お手伝いとは比べものならぬ極上のイヤミを並べ立てる千鶴子。性格悪過ぎだろ。

 しのぶ「はい、承知しております」

 しのぶ、腹の中は煮えくり返っていたと思うが、表面的にはひたすら低姿勢で頭を下げる。

 それだけでは済まさず、千鶴子は「これではマサコさんやトキさんが怒るのも無理ないわ!」と、使用人用とは思えない豪華なツインベッドなどを見て感想を漏らす。

 鈴子から、則子の指図でベッドなどを新たに運び入れたと聞くと、千鶴子はそのことを質しにリビングへ。

 千鶴子の根っからの狭量さが良く出ているシーンだが、その結果、もろもろの指図は、則子ではなく剛造から出されていたことが判明する。

 
 千鶴子「お父様が?」
 剛造「しのぶさんも耐子さんもお母さんを亡くされてどうしても心が暗く沈みがちだ。少しでも明るくしてあげたいと思ってな」
 千鶴子「それは分かりますけど、他のお手伝いさんにしめしがつきませんわ」
 剛造「しのぶさんも耐子さんも家事見習いとして来て貰ってはいるが、私は静子さんから預かった大切な人だと思っている」
 千鶴子「あの二人はお父様にとってそんなに大切な人なんですの?」
 剛造「いや、千鶴子、お前としのぶさんとは乳姉妹じゃないか。お前が今日まで無事に来られたのもしのぶさんのお母さんにお乳を飲ませて貰ったからなんだ。私はその御恩返しがしたいと思うんだ」
 千鶴子「……」

 噛んで含めるように言われても、まだ千鶴子は納得いかない面持ちを崩さない。

 あるいは、父親がここまで静子の遺児に肩入れするのは、自分が静子のお乳を分けて貰った際、「すまんが、ついでに私にも吸わせて貰えませんかね?」などと言っていたからであるまいな、このエ ロオヤジ、と疑ってしまう千鶴子であった……と言うのは嘘である。

 
 雅人「千鶴子ちゃん、友達と妹がいっぺんに出来たと思えばいいじゃないか。しのぶさんと耐子さんもとても良い人だし友達になったら楽しいと思うよ」
 千鶴子「雅人さん……」

 見兼ねて、その場にいた雅人も口添えするが、剛造からしのぶたちが自分と同じ清和女子学院に通うことになったと聞かされ、ますます穏やかならぬ顔付きになる。

 それにしても、雅人って、大映ドラマのメインキャラクターにしては珍しいほど常識人で物分りが良い若者だよね。まるで食パンみたいなキャラである。

 その分、千鶴子や路男などのキレまくったキャラと比べるとパンチに欠けるが、とりわけアクの強いキャラ揃いのこのドラマにおいては、一種の安全弁と言うか、視聴者にとってのレストルーム的な役割を担っていると言えよう。自分も、雅人がその場にいるとホッとするのである。

 で、その雅人が、なんでよりによって千鶴子みたいな性格の悪い女を好きになったのか、謎である。

 
 剛造「千鶴子、お前はしのぶさんと耐子さんの仲のいい友達になってくれ。それが私の望みだ」
 千鶴子「……はい、わかりました」

 千鶴子、真っ直ぐ剛造の目を見返しながら答えるが、その顔はとても「わかった」と言っているようには見えなかった。

 自室に引き揚げると、物に八つ当たりする千鶴子であった。小さい!

 
 一方、当然のことながら、耐子は母親のことを思い出しては涙を流していた。

 しのぶ「泣かないで!」
 耐子「だって、海で死んだお母さんのことを考えたら……どうして自殺なんて馬鹿なことをしたのかしら……お母さんはどんなつらい時でもへっちゃらへっちゃらって笑って頑張り通した人なのよ……」

 
 耐子「そんなお母さんが自殺だなんて……それにね、お姉ちゃん、私、もっと分からないことがあるの」
 しのぶ「なあに?」
 耐子「大丸様はどうして私たち姉妹を引き取ってくれたのかしら?」

 耐子は泣きながらも、剛造の不可解な行為に鋭い疑問を感じていた。

 目を赤く泣き腫らした森恵さんが可愛いのである!

 耐子「乳姉妹だと言っても所詮は他人なんだし……、そりゃ、大丸様はお金持ちだから、私たち二人くらいどうってことないかもしれないけど……」

 
 耐子「ねえ、お姉ちゃん、どうしてそんな変な顔と髪型なの?」

 ……失礼しました。渡辺桂子さんにこの場を借りて心からお詫び致します。

 耐子「ねえ、お姉ちゃん、変だと思わない?」
 しのぶ「……」
 耐子「それによ、大丸様がお姉ちゃんを見る目も少し変なのよ」
 しのぶ「変ってどんなこと?」
 耐子「だって、なんだかとっても悲しそうで痛ましい目でお姉ちゃんを見るんだもん」
 しのぶ「ばっかねえ、それはタエちゃんに対してだって同じよ、私たちお母さんを亡くしたばかりだからきっと同情なさっているのよ」
 耐子「そうかなぁ」

 千鶴子同様、鋭い少女の直感で、耐子も剛造の姉を見る目が普通ではないことに気付いていた。

 しのぶは、高校を卒業したら就職して、二人でアパートを借りてこの家を出ようと将来のささやかな夢を語り、耐子を喜ばせる。

 しのぶは耐子の母親代わりとなって彼女を明るく励まし、眠りに就かせるが、母親を失って悲しいのは無論、自分も同じことで、「お母さん、どうして死んでしまったのよ! 一緒に幸せになろうってあれほど言ってたじゃないの!」と、割と大きな声で叫ぶのだった。

 一応、既に耐子は眠りに落ちて聞こえてないらしいのだが、普通はもう少し小さな声で叫ぶよね。

 さて、もう一方の立役者である路男は、渡り鳥連合のアジト(と言うよりバーのような店)にいた。

 
 路男「敵がどんなに馬鹿でけえからって目を剥くことはねえ、俺の標的は大丸剛造と娘の千鶴子だ。財界の帝王と威張ったところで、奴も人間、人間なら必ず泣き所がある筈だ」

 賛同してくれたメンバーに剛造や千鶴子などの個人データ票を見せながら、復讐事業のアウトラインを説明しているのである。

 
 路男「そこにつけこんで揺さぶりを掛ける。きたねえ手だが、俺たちが奴に勝つにはこれしかねえ」
 部下「おもしれえ! 考えただけでも体に電気が走るぜ!」
 路男「う、うん、それは一度医者に診て貰った方がいいな……」

 ……途中から嘘である。

 
 路男「みんな勘違いするなよ、俺たちの目的は大丸を殺すことじゃねえ、天上から俺たちを見下している奴らに泥水の苦さをたっぷり思い知らせてやることだ。奴らに地獄の苦しみを味あわせてやることだ。俺はどんなことをしてでも、大丸剛造と千鶴子を俺の足元に土下座させて、許してくれと叫ばせてやる!」

 長々と演説をぶつ路男であったが、割と注文の多い人であった。

 列挙すると、

 ・泥水の苦さを思い知らせる
 ・地獄の苦しみを味あわせる
 ・土下座させる
 ・許してくれと叫ばせる

 コンプリートさせるのは、なかなか大変そうである。

 
 と、ドアが開いて優子が入ってくるが、管理人の目には、反抗期の息子が悪友たちを自分の部屋に集めてしょうもない相談をしているところに、若くて綺麗なお母さんが入ってきたように見えてしまう。

 優子「路男……みんな、今日うちで晩御飯食べて行くんでしょ? そのつもりで準備してるけど」
 路男「もう、勝手に入って来んなっつっただろう、ババァ!」
 部下「あ、お邪魔してまーす」

 じゃなくて、

 優子「路男」
 路男「優子さんか……」

 優子は、ライブハウス「火の国」のお客さんに別れのペットを吹くべきではないかと言いに来たのだ。

 
 路男「俺に最後の演奏をさせようってのかい?」
 優子「そう、物事にはけじめってものがあるからね」

 優子には恩義のある路男、割と素直に承知して、一緒に歩いて「火の国」へ向かう。

 
 優子と路男が「火の国」へ行くと、数人の柄の良くない男たちが店内をテキパキと片付けているところだった。一代組の組長・島田の指図であった。優子は、島田の情婦なのだ。

 優子「あんた、何をしてるの?」
 島田「おう、見れば分かるだろう。いつまでもゼニにならねえライブなんぞやってる訳にいかねえ。この店はクラブにする」
 優子「クラブに? 待ってよ、私が我儘を言ってライブを始めたのは……」
 島田「うるさいっ!」

 優子が何か言いかけると、島田はいきなりその美しい頬を引っ叩く。

 
 島田「ヤクザがライブなんてやってちゃシノギが出来ねえ御時世なんだよ。俺もそろそろ実業家として顔を売らねえとな」
 優子「そんなことされたら、路男が帰って来れなくなるじゃない!」
 島田「路男ぉ?」

 
 島田「お前か?」
 手下「おい、チンピラ、組長に挨拶しな」
 路男「挨拶する理由はないね。それに俺はチンピラじゃねえよ」

 相変わらず、口から出る言葉のひとつひとつが憎たらしいほどカッコイイ朝男、じゃなくて路男。

 まぁ、公平に見て、島田より路男の方が遥かに格上のように見える。

 その気になれば、路男一人でこの連中をぶちのめせたことであろう(註・5話で実際にそうしてました)。

 部下「なんだと、この野郎!」
 優子「やめてよ! 私の店で暴力沙汰はごめんだよ」
 島田「いい~根性してんな、小僧」
 優子「あんた、路男には手を出さないで」
 島田「路男、路男ってこいつはお前のなんなんだ?」

 
 優子「私の死んだ弟に似てるって言ったじゃないか! 私たちは子供のときに親に死なれ……」

 
 優子「私は非行に走って地獄に落ちたけど、弟はペットを支えに真っ直ぐに生きてきたんだ。私は死んだ弟の為にも路男のペットに花を咲かせてやりたいんだ」
 路男「……お世話になりました」
 優子「ああん、これからいいところなのにぃ~!」

 人が思い入れたっぷりに語っている最中に退席する、大映ドラマのキャラにあるまじき行動に出る路男。

 ちなみに優子が言う「地獄に落ちた」と言う過激な表現には、「不良少女」でもお馴染みのアレのことが秘められていたことが後になって明らかになる。

 
 島田、反射的に路男を追いかけようとした優子の腕を掴んで、「いい加減にしろぉっ!」と、床に叩きつける。

 優子「あっ……!」

 と、店の外から懐かしい路男のペットの音が聞こえてくる。

 この三枚の画像、岡田さんがなかなか綺麗に撮れているので貼っておきました。

 でも、やっぱり岡田さんには清楚で真面目なお嬢様キャラの方が100倍似合ってるよね。

 路男の別れのペットが物悲しくネオン街に響いている頃、紅葉坂教会に龍作が「何か食わせてくれ」と、慈悲を乞いに来る。

 しかも驚いたことに、誰かに聞いたとか勧められたとかじゃなく、完全な偶然であった。

 無論、若山はそれが18年前の事件の元凶である静子の夫だとは知らない。

 若山は、前回、龍作が静子につけられた腹部の傷を見て、食事の前にまず手当てだと、龍作を長椅子に寝かせると、「エリカ! エリカ!」と大声で呼ぶ。

 
 奥のドアが開いて、おずおずと顔を覗かせたのは、脇役ながら存在感のあるエリカと言う女性であった。

 演じるのは石井めぐみさん。

 若山「救急箱を持ってきなさい」

 
 若山は救急箱を持ってきたエリカに傷の手当てをさせる。

 龍作「どうもすいませんね、ばい菌入ってないでしょうね?」
 エリカ「……」
 龍作「すぐふさがりますかね?」
 エリカ「……」
 龍作「大したことはないですよね」
 エリカ「……」

 龍作があれこれと話しかけるが、エリカは相槌すら打たずに黙々と治療を施す。

 龍作「牧師さんよ、この人は、言葉が喋れないんすか?」
 若山「いや、そんなことはない、人を見るだけだ」

 
 若山、ほどなく男が静子の夫・松本龍作だと知ると、にわかに真剣な顔付きになる。

 若山「龍作さん、静子さんは亡くなった」
 龍作「なんだってえ、静子が?」

 
 若山「静子さんはすべてを告白した上で故郷に近い海に身を投じた」
 龍作「静子が告白? まさか、俺たちのことは何もかも……ちょっちょっと牧師さんよ、俺たち家族の秘密を誰にもしゃべっちゃ……」
 若山「パカモノォッ!」

 静子のことなどそっちのけで、18年前の秘密のことを気にする龍作を、若山が一喝する。

 若山「そんな心配するより少しは妻の死を悲しんでやったらどうだぁっ?」
 龍作「……」

 若山に叱られて一応神妙な顔になる龍作だったが、

 
 若山がいなくなると、逆ににやにやと下卑た笑いを浮かべる、どうしようもない腐れ外道だった。

 静子が死んで、自分が殺されることもなくなったし、18年前の秘密をネタに剛造を強請るのを邪魔するものがなくなったとほくそえんでいるのだろう。

 龍作は、最終回になってやっと心から改心して家族と和解するのだが、この態度だけ見ても、しのぶたちはこの男を一生許してやるべきではなかったと思う。

 翌朝、大丸邸。

 甲斐甲斐しく、これ見よがしにお手伝いとしての仕事に励んでいるしのぶと耐子を見て、剛造夫婦も目を細めていた。

 
 だが、しのぶを見詰める剛造を、階段の途中から千鶴子がただならぬ目付きで見詰めていた。

 その日はしのぶたちが聖和女子学院に初めて登校する日だった。

 朝食の席で、剛造は何の気なしに千鶴子に、車で一緒に学校へ行きなさいと指示する。

 
 千鶴子「はい……」

 そこへ真新しい制服に身を包んだしのぶたちが降りてきて、元気に剛造に挨拶する。

 剛造「しのぶさんも耐子さんも制服が良く似合ってるぞぉ」

 キャピキャピの女子高生二人を前にして、剛造の目はますます細くなる。

 そして、その剛造の目付きを、ただならぬ目付きで見ている、いちいち面倒臭い千鶴子だった。

 そう、この千鶴子と言うキャラクターの性質を一言で表すと、「面倒臭い」になるのではないかと思う。

 大映ドラマ的には、ヒロインと言うよりライバルキャラにふさわしい性格だと思うが、肝心のしのぶの渡辺桂子さんの存在感が薄かったせいか、結局いつの間にかヒロインになっちゃうんだよね。

 しのぶ役が伊藤麻衣子さんとかだったら、また違った展開になっていたのではないかと思う。

 
 さて、車で出発する間際になって、

 千鶴子「あ、いけない、体育着を忘れたわ。しのぶさん、悪いけど取って来て下さらない?」
 しのぶ「はい、よろこんで!」

 居酒屋の店員のように快く応じると(註・嘘です)、しのぶはすぐ家の中へ引き返す。千鶴子の予想通り、耐子もしのぶについていく。

 その上で、

 千鶴子「出して」
 運転手「はい、よろこんで!」(註・言ってません)

 と、さっさと車に乗り込んで運転手に出発を命じるのであった。

 とても大丸財閥の令嬢とは思えない、せこいイヤガラセであった。

 
 二人が忘れ物を手に玄関に戻ってくると、既に誰の姿もなかった。チーン。

 
 耐子「お姉ちゃん?」
 しのぶ「うん!」

 いや、このタイミングでその笑顔はおかしいと思うんですが……。

 
 雅人「どうしたんですか」
 しのぶ「いえ、なんでもありません」
 雅人「そうか、おいてけぼりを食ったんですね」
 しのぶ「違います、私たちが千鶴子さんに先に行ってくださいって言ったんです」

 雅人は、あくまで千鶴子をかばおうとするしのぶを、健気に思うのだった。

 さっきも言ったけど、どうして雅人は千鶴子のような性悪女に惹かれているのだろう?

 しかし、千鶴子の意地悪は、かえって、雅人が二人を車で連れて行くと言う結果を招いてしまう。

 
 情緒不安定な千鶴子は、車で学校に向かう間に、早くも涙を流しながら、自分の幼稚で卑劣な行いを深く恥じていた。

 そして、途中で車を停めさせ、自分は歩いていくから、しのぶたちを迎えに行ってくれと運転手に頼む。

 運転手「はい、よろこんで!」(註・言ってません)

 
 だが、学校に向かう途中、雅人の運転する車の中で、楽しそうに談笑しているしのぶたちの姿を目撃してしまい、一瞬芽生えた良心も、あっという間にどこかへ行ってしまう。

 
 先に雅人の車が学校に着くと、千鶴子が走って追いかけてきて、物凄い目付きでしのぶに迫ってくる。

 
 千鶴子と、その迫力に押され、思わずあとずさって門扉に背中を押し付けるしのぶの姿を、横から雅人と耐子が見ていると言う図で、次回へ続くのであった。
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70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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