第64話「怪人セミミンガ みな殺しのうた!」(1972年6月17日)
ミーンミーンと、セミの鳴き声が降る林の中で、ナオキのミツルのコンビが、友人たちと一緒にセミ取りをして遊んでいる。
まだ6月なんだけど……
ところが、そこへ見知らぬ男が現われ、横暴にも、ミツルがとったセミを全て没収してしまう。
男「誰に断ってこのセミを取ったんだ? この林は俺のもんだぞ」
ミツル「そんなのムチャだよ」

大人気ないにもほどがあるその男は、ナオキが集めていたセミまで巻き上げると、子供たちを追い払う。
ちなみに、そこには女の子が二人いるのだが、そのうちのお下げ髪のほうが、「魔女先生」でクラスのマドンナ的女の子・ハルコを演じていた杉山和子さんなのである。
杉山さん、ルックスもスタイルも声も良いし、演技も悪くないから他にも色んな番組にも出ていてもおかしくないと思うのだが、自分が知る限りでは、この64話のエキストラ出演だけである。芸能界に興味がなかったのか、早い段階で子役を辞めてしまったのだろうか。
また、もうひとりの女の子も、「魔女先生」に出ていた荒井久仁江さんで、彼女は「仮面ライダー」にもちょいちょい出ておられる。
で、無論、ナオキの矢崎さんも「魔女先生」のレギュラーだった訳で、管理人の目には、「魔女先生」の同窓会のように映るのである。
閑話休題。
もっとも、その男、別に昆虫マニアと言う訳ではなく、ましてやセミ愛護運動家でもなく、そのセミを売って小金を得ようと考えている、ただのクソ野郎に過ぎなかった。

と、そんなクソ野郎は決して見逃さないショッカーの怪人・セミミンガ現われる。
セミミンガ「ミ、ミ、ミ、ミ……おろかなる人間よ、貴様はセミミンガ様の実験材になるのだ」
男「た、助けてくれーっ!」
怪人は男に後ろから抱きつき、本物のセミと同じような長い管状の口を男の喉を刺し、その体液を吸い取ってしまう。刺された男は萎んで消えてしまうが、その現場を、捕虫網を取りに戻ってきたナオキに目撃される。
ほんと、ショッカーは目撃者を作るのがお上手で。
セミミンガ、ナオキの存在には全く気付かず、セミの鳴き声に似た殺人音波を撒き散らしながら飛び去ってしまう。近くにいたナオキは、その音波を浴び、両手で頭を抱えて倒れてしまう。

地獄大使「実験は大成功だ。わしはお前の殺人音波に大いに期待しているぞ」
セミミング「ミッ……俺の殺人音波に狙われた奴は防ぎようがない。今に東京中の人間を残らず殺してやります」
地獄大使「ふぇっふぇっふぇっ、うまくやれ」
意気込みを語るセミミンガの肩を親しく叩いて激励する地獄大使。
だが、現場の戦闘員が、実験を目撃したかも知れない子供たちの存在を知らせてくる。
地獄大使「なぁにいぃ、ようし、ガキといえども容赦はせん。セミミンガ、片付けて来い!」
ショッカーは、目撃者(たいてい子供)の存在を知りながら放置しておくような、そんな不誠実な「悪の組織」ではないのである!

一方、ミツルたちは、気絶したナオキを連れて帰路についていた。
ほんと、杉山さん、実にスタイルが良い。
共演していた菊容子さんが嫉妬しそうなほっそりした足である。

ミツルと、もうひとりの男の子が両脇からナオキを抱えていたが、なにしろ重たいので途中でナオキの体を放り出して座り込んでしまう。
久仁江「なんだか気味が悪い、早く帰りましょうよ」
男の子「でも、ナオキを置いていけないぜ」
和子「じゃ、みんなで担いでいけば?」
ミツル「うーん、じゃ、そうするか」
和子の提案で、4人がお神輿のようにナオキの体を担ぎ上げたが、そこへ颯爽と現われたのがジーパン姿の猛であった。
猛「ナオキ、一体どうしたんだ?」
ミツル「わかんない」
猛「とにかく連れて帰ろう」

猛「さぁ、帽子を拾って」
猛、ナオキの体を担ぎ上げると、子供たちを促して歩き出す。
こうして、杉山さんの貴重な出演シーンがあっさり終わってしまい、管理人は悔しいです!!
まぁ、「魔女先生」でその可愛らしさは十分堪能できるから、この鬱憤は「魔女先生」のレビューで晴らしていくことにしよう。
さて、セミミンガが戻ってきたのは、彼らが立ち去った直後だった。
セミミンガは諦めず、なおもナオキ抹殺を図る。

住宅地に一台のトラックがやってきて、三叉路で停止する。
それは、どうやらショッカーの一味のようであった。
何故なら、
運転しているのが、こぉーんな人だったからである!! なんというか、彼がここに来るまでにどれだけたくさんの「目撃者」を作ってきたかと想像すると、ショッカーのやろうとしていることが実に馬鹿馬鹿しく思えてくるのである。

車が停まったのは、とあるマンションの前であったが、それこそ、猛の住んでいるマンションであった。
滝「ナオキの奴、いったい何を見たのかな」
猛「セミの化け物んだって言うばかりなんだ」
滝「セミねえ、まさかショッカーの改造人間じゃあるまい」
猛「いや、考えられることだ」
滝「すると本郷、わざわざナオキをお前の部屋に連れてきたのは?」
猛「ショッカーだとすれば必ず手を打ってくる」

トラックが向きを変えると、荷台の中からセミミンガと戦闘員が顔を出す。
セミミンガ「ようし、攻撃開始だ!」
勇ましく号令をかけるセミちゃんであったが、実際に攻撃をするのは自分自身だったと言う、悲しいオチが待っていた。
窓の外からセミの鳴き声が聞こえてくるのに気付いた猛は、すぐに滝にナオキを連れて避難させる。

猛「あ、ああ……なんだ、これは?」
凄まじい殺人音波に顔を歪めて悶える猛。
そのうち、窓ガラスが割れ、地震でも起きたように天井が崩れて建材が落ちてくると言う事態になる。
猛、床に転がって「あ、ううっ」などと叫んでいたが、戦闘員たちが入ってくると、その姿がない。
戦闘員「そんなバカな、奴は殺人音波でやられたはずだ」
戦闘員「よく探せっ」

猛「探し物とは俺のことかね? はっはっはっはっ、殺人音波か、並の人間なら助からんだろうが、その程度の音波では俺には通用せん!」
猛、やられたふりをしていただけのようだ。
……
いや、誰に対して?
猛「言え、殺人音波の発信場所は何処だ?」
猛が戦闘員のひとりを尋問していると、再び殺人音波が聞こえてきて、猛はパッと身を伏せる。

代わりに、その戦闘員が直撃を受けて木っ端微塵に砕け散る。
これは、マネキン人形に戦闘員の服を着せて、実際に爆発させて撮っているようだ。
まさか、このマネキン人形も、こんな惨めな最後を迎えるとは、マネキン工場で誕生した時には夢にも思っていなかっただろう。合掌。

猛、逃げ去るトラックをバイクを追跡し、ジャンプして屋根の上に飛び降りる。
トラックが猛を振り落とそうと右に左に蛇行運転すると、

当然、その上の猛も右に左に体をくねらせる。
しかも、どうやら、これは藤岡さん本人が演じているらしいのだ。
いくら低速で走っていると言っても、トラックの周りは硬いアスファルトである。無茶するなぁ。

さらに、戦闘員も上がってきて、その上で格闘すると言う、「ゴーグルファイブ」「ダイナマン」の春田さんばりのアクションまで見せる。

やがて滝もバイクで追いかけてきて、シートの上に膝立ちになると、

助手席から身を乗り出して押し返そうとする戦闘員を殴って気絶させ、

窓から戦闘員が上半身を垂らしたままのドアを開けて、運転席に乗り込むと言う、これまた危険なアクションを見せる。
しかし、助手席の戦闘員、単にドアを開けて滝のバイクを弾き飛ばせばよかったんじゃないの?
結局、トラックは港の材木置き場に停止させられる。
猛、殺人音波を出す何らかの機械が積んであるのかと思ったのだが、幌の下から現われたのは、セミミンガであった。
猛「殺人音波を出していたのは貴様だったのか」
セミミンガ「今になって気がついたか、ショッカーの殺人音波はこのセミミンガ様が出す」
猛もライダーに変身して、積んである材木の上での戦いになる。

最近、ショッカーは財政難なのか、戦闘員に剣どころかスティックさえ支給されないようで、みんな素手であり、中にはありあわせの「木の棒」で戦おうとする奴までいる始末。
「木の棒」って、スタート直後のRPGの装備じゃないんだから……

ライダー「意識が、意識が消える……」
セミミンガ「仮面ライダー、最後の仕上げだ。貴様のエネルギーをみんな吸い取ってやる」
だが、セミミンガは強敵で、ライダーも背後を取られて管を刺され、体液だかエネルギーだかを吸い取られて、ふらふらになってしまう。
が、セミミンガの頭を後ろから滝がチョップしたので、なんとか九死に一生を得て、ひとまず退却する。
CM後、おやっさんたちが猛の入院している病院へ深刻な顔でやってくる。
病院を見張っていた戦闘員、それを見て、
「本郷猛は間違いなく重体で入院しております」とあることないこと地獄大使に報告する。
地獄大使「ようし、そのまま見張りを続けるのだ」
……いや、だったら今こそ病院に総攻撃をかけて猛の息の根を止めるべきじゃないの?
地獄大使「首領、本郷猛はセミミンガの殺人音波を受けて
半身不随」
が、地獄大使は一切そういうことは考えず、これまた、あることないこと首領に報告していた。
なんか、酔っ払いの伝言ゲームを見ているようだ。
だいたい、戦闘シーンを見る限り、ライダーは殺人音波ではなく、血を吸われたせいで意識が朦朧としていたようにしか見えないのだが。
一方、何でもお見通しの首領も、今回はその報告を真に受けて、東京中の人間を殺人音波で皆殺しにする作戦の実行を命じていた。

滝「思ったとおりだ、ばっちり見張ってやがる」
立花「やぁーれ、やれ、心配させるなよ、猛……わしゃ滝の連絡で本当にやられたのかと思ったぜ」
猛「いやー、満更嘘でもなかったんですよ、もうちょっと遅かったら完全に脳をやられていた」
果たして、猛が重体と言うのは芝居で、実際はピンピンしていた。
猛「ショッカーの連中には俺が動けないと思わせておく方が何かと都合がいいんだ」
立花「うん、で、わしらのやることは?」
ユリ「なんでも言ってよ」
トッコ「ばっちりやっちゃうから」
猛は、殺人音波をより効果的に流す為にショッカーが占拠していると思われる電波塔を探し出してくれと、おやっさんたちに頼む。
と言う訳で、珍しく、おやっさんとライダーガールだけでの探索が開始される。
滝の用意した音波探知機を屋根に乗せたおやっさんの車が、まず、東京タワーの脇から道路へ出てくる。

立花「おい、どうだ」
エミ「ここじゃないわぁ」
立花「やぁれやれ、ショッカータワー探しも楽じゃないわ」
無論、ショッカーが占拠したのは東京タワーではなかった。
何故なら、東京タワーで撮影するとなると、許可を取るのが大変だからである!
で、次のシーンで早くもあちこちに畑がある、山の中に来ているおやっさんたち。
電波塔などなさそうな田舎であったが、ここで音波探知機が反応する。
……しかし、セミミンガが常時、殺人音波を流しているのならともかく、まだ準備段階なのだから、音波探知機を使ってもあまり意味がないと思うのだが。

立花「よし、探してみよう」
トッコ「大丈夫、会長?」
立花「まかしとけ」
今回も、体格に全然似合ってない、子供のようなサロペットスカートを着させられているトッコが可愛いのである!

車から降りて周囲を探し回っていたおやっさんたちは、あっさりとそれらしい電波塔を発見する。
いかにも悪の巣窟と言う感じの塔で、このロケーションはなかなかよろしい。
おやっさんはみんなを集めて作戦を耳打ちすると、正面からその電波塔の敷地に入っていく。

で、塔の土台に腰掛けると、わざと目立つように、用意していた弁当を広げて、楽しそうに食べ始める。
見張りの戦闘員が、所員に化けて彼らに近付き、
所員「ここは立ち入り禁止です」
立花「お、こりゃどうも、私たちハイキングに来てるんですがな、弁当ぐらい食わしてくださいよ」
所員「規則だから駄目です」

エミ「これ食べてからすぐ行きます」
トッコ「もうちょっとだけ、ね?」
立花「え、へっへっ」
それぞれお握りやおかずを頬張りながらお願いする4人。
ああ、かわええ……

だが、おやっさんの鋭い目は、物陰からこっちの様子を窺っている戦闘員の姿をばっちり捉えていた。
友達になりたかったのだろうか?
が、おやっさんの視線に気付くと、ピョウッ! と言う効果音と共に物陰に引っ込む。
それを確かめれば長居は無用なので、おやっさんたちは早々に敷地から出て行く。
車に戻ったおやっさん、通信機で猛に連絡しようとするが、

立花「こちら立花……滝、本郷、応答せよ」
ユリ「うっ、うう……」
立花「何やってんだ、あいつら」
ショッカーもアホではない……たまにそう見えることもあるが……ので、彼らが電波塔を探りに来たことなど先刻承知で、いつの間にか背後にセミミンガと戦闘員が来ていて、おやっさんが振り向いたときには全員捕まっていたのだった。
て言うか、ショッカーに完全に面が割れているのを知りながら、堂々と乗り込んでいったおやっさんたちこそ、正真正銘のアホだったのではないかと思う今日この頃。
アホ対アホの戦いか……見たくねえ。
そこへ、病院から猛と滝が消えたと緊急連絡が入る。セミミンガ、二人がこの付近に潜んでいる筈だと考え、

おやっさんとユリたちを塔の柱に縛り付け、
セミミンガ「今から5つ数えるまでに姿を出せ、さもなければ貴様の仲間は殺す!」
大声で周囲の森に叫んで、二人を燻り出そうとする。
ガールたちに縛りが入ったのは大変喜ばしいが、どうせなら、ロープは二本、それも各人のおっぱいを挟む形に巻いて欲しかった。

セミミンガ「ひとぉつ、ふたぁつ、みーっつ、よっつ、いつつ! 出て来い本郷猛、臆病者め、俺の殺人音波に恐れ、仲間を見殺しにする気かぁ? 望みどおりこの4人を殺してやる。いや4人だけではない、このショッカータワーから東京中に殺人音波を浴びせてやるぞぉーっ!」
だが、セミミンガの喚き声が終わる前に、頭上からライダーの快活な笑い声が降って来る。
ライダー「はっはっはっ、セミミンガ、あいにくだな、このタワーの周囲には殺人音波を妨害する電流が流してある。お前が私と滝を探すのに夢中で、足元についた火に気がつかなかったわけだ」
セミミンガ「それでは滝の小僧が妨害電流を!」
既に猛はライダーとなって、電波塔の上に立っていたのだ。
……って、いくらなんでも来るのが早過ぎないかい?
あと、ライダーと怪人の会話を聞いていれば、ライダー=猛だと、ユリたちにも分かりそうなものだけどね。
ちなみに、妨害電流うんぬん、ライダーのハッタリかと思いきや、実際に滝が電波塔の周囲に通信機のようなものを置いて回っているのが映し出される。
しかし、電波を電流で妨害すると言うのならまだイメージできるが、音波を電波で妨害すると言うのは、いかにもマユツパだ。
それはともかく、滝によっておやっさんたちが救出され、塔の上で、ライダーと怪人、戦闘員たちとの戦いとなる。
塔から投げ飛ばされたセミミンガ、地面に着地すると、
セミミンガ「ライダー、貴様だけはなんとしても必ず倒す!」
ライダー「そうはさせん!」
細かいことだが、このやりとりもちょっと変である。
たとえば、
セミミンガ「東京中の人間を皆殺しにしてやる!」
ライダー「そうはさせん!」
なら分かるんだけどね。
不利を悟ってセミミンガは逃げ出すが、ライダーも先回りして土手の上に立つ。
そう言えば、セミミンガって、セミの怪人なのに空を飛べないんだよね。
ライダー、殺人音波をよけながら、「ライダー返し」で投げ飛ばす。

セミミンガ「くっそぉ~」
ライダー「よし、今だ!」 何が「よし、今」なのか、良く分からなかったが、ライダー、必殺のライダーキックを放ち、セミミンガを撃破するのだった。
終わってみれば、セミミンガ、東京皆殺しどころか、
・セミ取り野郎×1
・不運な戦闘員×1
実際に殺したのは、この二人だけと言う、トホホな戦果しか挙げられなかったことになる。
しかも、音波で殺したのは戦闘員だけ……
敗因は、いつものことだが、些細な目撃者にこだわって、仮面ライダーの介入を招いてしまったことである。余計なことをせずに、ちゃっちゃと電波塔を占領して殺人音波を流していたら、大成功していたのではないだろうか。
以上、愛しの杉山和子さんや緊縛のライダーガールなど、それなりに見所は多いが、ストーリー自体は平凡な回であった。
- 関連記事
-
スポンサーサイト