第43話「君も天才になれる」(1981年12月5日)
悪の組織の提供する便利なアイテムで、人間(子供)が堕落していくと言う、割と良くあるプロットである。

朝夫「合同な図形を見つけましょう……何言ってんだか、もう」
飛羽「駄目ですね」
朝夫「おかしいな」
サファリで、朝夫が小学生の算数の問題を見て、深刻な顔でブツブツつぶやいている。
正男「お兄ちゃん、小学校出たの?」
朝夫「ガーン!」
正男の手厳しい一言に、思わずテーブルに自分の顔面を叩きつける朝夫。

美佐「でも豹に家庭教師を頼むなんて正男君のお母さんも変わった人ね」
正男「僕も無理だと思ったんだー、ねえ、お姉ちゃん教えてよ」
美佐「ダメダメ、自分でやらなきゃ」
正男「あーあー、なんかこうパーッと答えの出るコンピューターかなんかないかなぁ」
正男の横着な願望を聞いて、周りの大人たちが一斉にその頭を叩く。

ゼロツー「過去の作戦は全てが失敗でした」
一方、ブラックマグマでは、今更ながら、ゼロガールズたちが自分たちの情けない戦績をかえりみて、ゼロツーが森進一みたいな低音ボイスと沈痛な表情で報告していた。
ヘドリアン女王「ううーっああ、何かこう万能のメカはないかのう?」
アマゾンキラー「そうだ、今度の作戦はその万能解答機で行きましょう。子供たちにどんな問題でも解ける解答機を与え」
ゼロスリー「何も考えない、頭が空っぽになる人間を作り上げるのです」
ヘドリアン女王「うーん、なるほど、イージー人間を作り解答機で自由自在に動かそうと言う訳じゃな」
アマゾンキラーの提示した作戦に、ヘドリアン女王もヘルサターン総統も乗り気になり、その作戦の為の怪人・メカメカモンカーが作り出される。
翌朝、正男がその日予定されているテストのことを思いながら嫌々登校していると、明るい女性の声で「坊や!」と呼びかけられる。
正男「なんだい、お姉さん?」

アマゾンキラー「いいものあげましょうか?」
それは、てっきり「おばさん」と呼ばれると思っていたら、はっきり「お姉さん」と呼ばれたので、思わずその場で飛び跳ねて全身で喜びを表現したい気持ちが顔に表れている、販売員に扮したアマゾンキラーであった。

アマゾンキラー「質問を押すと、どんな答えでも出てくる珍しいメカなんだからー」
正男「へー、算数だけでなく、国語も社会も理科も?」
アマゾンキラー「勿論よ、だったら試してご覧!」
ブラックマグマの行動隊長より、路上販売員の方が向いてるんじゃないの? と言ってあげたくなるような飛び切りの営業スマイルで促すアマゾンキラー。
そう言えば、「シャイダー」のギャル1の名和慶子さんも、「円盤戦争バンキッド」20話で、怪しげな路上販売員に扮してたっけ。

正男「ようし、太陽戦隊は……」
解答機を受け取った正男、勉強とは関係のない、意味不明の質問を入力する。
と、小さな表示窓に、「サンバルカン」と、一文字ずつ表示される。
正男「すげーっ!」 ……え、なにが?
アマゾンキラー「さあ、それを持っていれば、君は今日から天才よ」
正男「ありがとう!」
正男、金を払おうと言う素振りすら見せず、解答機を持って行ってしまう。
しかし、嘘でもここでは500円くらい取らないとかえって怪しまれると思うんだけどね。
正男が行った途端、アマゾンキラーはがらっと態度を変えて、
アマゾンキラー「メカメカモンガー、用意はいいな?」
メカメカモンガー「お任せモンガー」
背後のワゴンにはメカメカモンガーが待機しており、そのワゴン自体、彼らの動く作戦拠点であった。
さて、テストの時間となるが、正男はあの機械を机の下に忍ばせて、それに問題を入力しては正解を出していく。

メカメカモンガー「ああー、忙しい、忙しい、次は社会か」
アマゾンキラー「頼むよ。メカメカモンガー」
メカメカモンガー「なーに、超ブラックマグマLSIをもってすればお茶の子モンガーだ」
もっとも、あの万能解答機はあくまで送受信機に過ぎず、実際の解答は空き地に停めてあるワゴンの中のメカメカモンガーによって行われており、問題の受信と回答の送信は、ゼロガールズのオペレーターによって処理される仕組みらしい。

アキラ「おい、正男、お前、変なインチキはやめてくれよ」
正男「なんだと?」
アキラ「俺、見てたんだぞ」
正男「何をだ、僕は何もしてないよ」
アキラ「本当だな」
正男「ああ、言いたければ先生に言えよ、お前は学級委員だしよ、クラス一のインテリ様だしよ、イーッだ!」
テストのあと、正男の斜め後ろの席にいて、正男が何か機械を操作しているのを見ていた友人のアキラに咎められるが、正男はひたすらしらばっくれ、普段から成績のことで鬱屈していたのだろう、屈折した憎まれ口を叩いて走り去る。

正男「わーい、やった、やった、やったぞーっ!」
放課後、正男は文字通り小躍りしながら答案用紙を手にサファリに飛び込んでくる。
大人たちは驚くと言うより呆っ気に取られてその狂態を眺めている。
助八「どうしたの、正男君、成績悪くて頭壊れちゃったの?」
正男「僕100点取ったんだ、ほらー」
嵐山「あ、そー、1000点満点で、だろ?」
嵐山のツッコミに、飛羽たちも笑い声を上げる。
普段、よほど成績が悪いのだろう、のび太がたまに100点取った時のように、周囲の大人たちにも俄かには信じてくれないのだ。
正男「嘘じゃないよ、ほらー」
美佐「あら、ほんとうだわ」
飛羽「国語も算数もだぞ」
朝夫「これもひとえに私の教え方が良かったんでしょうね」
正男「ひとりでやったんだよ。あー、嬉しくてお腹すいちゃった! カレーちょうだい」
助八「はー、人間やればやれるもんですねー」
美佐「助八さんも料理をもっと勉強しなきゃだめよ」
助八「ヒー、聞きたくない、聞きたくない」
その後、ゼロガールズたちもセールスレディに扮して、子供たちに手当たり次第にあの機械をばら撒いていた。

ゼロスリー「どんな答えでもすぐに出るわ」

ゼロフォー「使い方は簡単よ」
こう言う格好すると、ゼロガールズがみんな「いい人」に見えてしまう。

多分、これが最後になるのかな、ゼロガールズの私服姿?
天才少年が急に増えて、学習塾に閑古鳥が鳴いているというテレビニュースを見ている嵐山たち。
嵐山「正男君の件と言い、どうも気になってしょうがないんだ」
欣也「おちこぼれが一夜明ければ天才か」
飛羽「ひょっとしたら、またブラックマグマが何かを企んでいるのかも知れないぞ」
朝夫「天才なんか作ってどうする気だ」
嵐山「わからん、その原因を突き止めることが先決だ」
ゼロガールズが首尾よく解答機をばら撒き終えてニンマリしていると、変身済みのサンバルカンが現れる。
普通、こう言うシーンでは十中八九、ゼロガールズたちは本来の姿に戻るものなのだが、ここでは、戦いは戦闘員たちに任せると、

ガールズたちはスタコラサッサと逃げ出してしまうのだった。
多分、ガールズたちのメイクと衣装を変えるのがめんどくさかったんだろうな、スタッフが。

正男、授業中も比類なき天才ぶりを発揮しては先生や同級生を驚かせていた。
正男「先生、質問があるんですけど、アインシュタインの相対性原理についてですけど」
先生「相対? そぉれは……ああ、この次の授業に、な……今日はこれまで」
正男の鋭い質問に窮して、先生は授業の途中で逃げ出してしまうほど。
先生が出て行くより先に、わっと子供たちが正男の周りに群がり、賞賛と羨望の声を浴びせ倒す。

正男「僕には強い味方があるんだ、だから勉強できるんだよ」
立ち上がりながら、解答機を背中に隠す正男を、教室の窓の外から美佐と飛羽が思いっきり見ている。
今なら即通報されるだろうが、当時は部外者の学校への出入りも随分緩やかだったからねえ。
二人は、急に成績の上がった秘密があの機械に隠されているのだと睨む。

放課後、グラウンドを横切っていた正男の前に、美佐の張りのあるお尻が立ちはだかる。
危険を察して逃げようとするが、グラウンドのすぐ外で飛羽に捕まる。
飛羽「誰に貰ったか知らないけど、こんなもん使ってたら頭が空っぽになっちゃうぞ」
正男「返してよー」

飛羽「これが天才少年の秘密か」
美佐「ブラックマグマの秘密兵器かも」
飛羽「ようし、これを逆に利用してやろう」
賢い飛羽は、正男から取り上げた機械に「お前のボスは何処だ?」と打ち込む。と、たちどころにワゴンの停めてある住所が表示される。
その後で用済みとばかり解答機を地面に叩きつけて踏みにじって壊してしまうのだが、急いで壊さずとも、詳しく分析すればブラックマグマの情報を知る手掛かりになったのではないだろうか。
飛羽たちは公園に停めてあったワゴンを見付けて急襲し、乱戦となるが、結局メカメカモンガーには逃げられてしまう。
嵐山「やはりブラックマグマの仕業だったか」
欣也「あんなメカで全ての科目を100点取るなんて」
嵐山「メカは便利だ、だが使い方を間違えれば人間の頭脳を低下させ、やがては人間をダメにしてしまうだろう」 行き過ぎた機械(コンピューター)への依存がどれだけ人間を堕落させるか、40年近く前の作品の発した警告に、我々は今改めて耳を傾ける必要があるのではないだろうか?
今回の機械など、まさにスマホそのものだからね。

正男、校外でもモテモテで、いつもの仲間が代わりに宿題をやって欲しいと次々持ち込んでくる。
次郎「正男、国語の宿題頼むよ」
まり「私の理科も~」
正男「なんでも引き受けてやるよ!」
またあの機械をアマゾンキラーから貰ったので、気前良く引き受ける正男。
外見的には、体の良いパシリにしか見えんが……
しかし、ゼロガールズたちがあれだけ盛大に機械をばら撒いているのに、正男の周囲に同じような天才少年が出現しないと言うのは、やや不自然のように思える。
学習塾の経営にまで影響が出るくらいだから、かなりの量が出回っている筈なのだが。

ルミ「でも、正男、どうしてそんなに天才になったの?」
ルミ、5人の中では明らかに一番年下なのに、思いっきり呼び捨て。
正男「実は秘密があるんだ」
ルミ「えー、教えて、教えてー」
正男「あるお姉さんに凄いもの貰っちゃったんだー」
次郎「なんだい、そりゃあ」
正男「それは言えない。僕の宝だからな」

まり「けちんぼー!」
「あーら、やだ奥さん」的な仕草をしつつ、文句を言うまりちゃんが可愛いのである!
管理人がここでレギュラー子役たちの画像を多めに貼ったのは、そろそろ最終回が近付いて、子役たちがこんなにしっかり映し出されるシーンが、そろそろ番組最後になりそうだからである。
そこへ新聞記者たちが押し掛けて来て、天才少年として有名な正男の写真を撮らせて欲しいと頼み、正男も得意そうにポーズを取る。
しかし、さっきも言ったように天才少年は他にもうじゃうじゃ出現している筈だから、いまさら正男にそんな希少価値があるとも思えないのだが……

正男、自宅で解答機を使って宿題を片付けてのんびりしていると、いきなり美佐が入ってくる。
美佐「ね、正男君……」
正男「……」
思わず机の上に投げ出された解答機の方を見る正男と、その視線を追って解答機に気付く美佐。
美佐「正男君、このメカをまた何処で手に入れたの?」
正男「返してよー、これは僕の宝だ」
美佐「違うわ、これは宝なんかじゃない、正男君をダメにする恐ろしいものなのよ」
正男「嘘だっ」

美佐「嘘じゃない、こんなものを使ってまで成績を上げたいの? 友達の信頼を得たいの?」
正男「……」
美佐「正男君、人間は考えることが大事なのよ、自分で考えるから進歩するのよ。だからもうこんなものを使うのはやめて」
正男「やだ、僕はおちこぼれにされたくないんだっ」
美佐が、噛んで含めるように説得するが一度味わった天才少年としての名誉がどうしても捨て切れない正男、美佐の手から解答機をひったくると、家から飛び出してしまう。
が、出てすぐ、路上を徘徊していたバルイーグルに見付かり、あえなく解答機を没収される。

正男「あ、返してよ、僕のだよ!」
正男が必死に取り戻そうとするが、

イーグル「こら」
イーグルは「はい、邪魔しないの」と言う感じに無造作に払い除け、

イーグル「アジトは何処だ?」
何事もなかったように機械を操作する態度が、いくらなんでも乱暴ではないかと思うのだ。
イーグルの中の飛羽としては、知り合いの正男だからこその素っ気なさなのだろうが、だったらここは、変身前の姿で演じさせるべきだったと思う。
あと、このイーグルの姿、子供がかまって欲しいのにスマホに夢中でそれどころじゃない親のようにも見える。
それはともかく、前と同じ質問を打ち込むが、何故か今度は何の答えも出ない。
前回の失敗を教訓にして、ワゴン車の周囲には電磁パリアが張り巡らされていたのだ。
……って、自分で書いてて、意味がわからんのじゃい!!
それより、そう言う質問が無効になるように機械のプログラムを書き換えるほうが簡単だったろう。
それに対する、
嵐山「敵は電磁バリアを使ってるに違いない、ジャガーバルカンのバリア破壊ビームを使うんだ」 と言う嵐山の異様に察しの良い台詞も、かなり唐突である。

で、三人は指示通りジャガーバルカンを発進させ、バリア破壊ビームでワゴン車を撃って……って、
ワゴンの位置が最初から分かっとるやないかい!! ま、これは一応、闇雲に撃ったら当たったと言うことらしいのだが、それにしても広い東京で、そう簡単に当たるかね?
とにかく、ワゴンの居場所を突き止めたところで、ラス殺陣に突入する。
それは長い長い、21世紀まで続くのではないかと思われるほど長いバトルシーンを経て、事件は解決を見る。メカメカモンガーの死と共に、万能解答機がすべて壊れてしまったのは言うまでもない。

正男「僕はもう駄目だ」
美佐「駄目なことないわ、あの助八さんのような人間のクズでさえ立派に生きてるじゃない!」
正男「それもそうだね!」
じゃなくて、
美佐「駄目なことないわ、何事も自分の力を精一杯出し切ることが大切なのよ」
正男「でも、僕は……」
公園でひとり正男が落ち込んでいると、美佐が現われて慰め、励ます。

そして優しく正男の肩を抱いてあるところへ連れて行くが、それは、あのアキラという少年の自宅の前だった。
美佐「見てごらん。みんな頑張ってるのよ」
見れば、窓越しに、アキラが机に向かって一生懸命考え、勉強している姿があった。
正男「お姉ちゃん、ごめんよ」
美佐「分かってくれたのね」
ずいぶん簡単だなオイ!! ま、元々「サンバルカン」の子役って、ルミの富岡香織さんを除けばみんな大して演技がうまくないから、正男にそんな微妙な演技を求めるのは、ないものねだりと言うものだろう。
ラスト、再び答案用紙を手に正男がサファリにやってくる。
100点どころか30点と聞いて飛羽たちはずっこけるが、機械に頼らず今度は自分の力だけでやった正男の顔には、地に足の付いた自信と満足感が溢れていた。
正男「僕、昨日必死に予習したんだ。やればやれるんだよね。だって僕、今まで10点以上って滅多にないんだもん」
美佐「そうよ、やれば出来るのよ、そうすればきっと40点取れると思うわ」
さらに、正男と仲直りしたと言うアキラも店に現われ、大変教育的なエンディングとなるのだった。
凡作の多い第4クールの単発エピソードとしてはなかなかの佳作だが、いまひとつ物足りなく感じられるのは、無駄に多い戦闘シーンに圧迫されて、正男とアキラの確執や、解答機に頼り切って無能人間になった子供たちの様子などが、ほとんど描かれていないせいだろう。
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