第6話「僕の弟はロボットだ!」(1971年11月7日)
3~4話と同じく、市川森一氏による脚本。
個人的にはこの作品、(完全に路線変更する前の)17話まではひとつひとつのエピソードが国宝級の出来栄えに感じられるのだが、ほとんど唯一、あまり好きになれないのがこの6話である。
いや、ドラマとしては優れているのだが、あまりに真面目と言うか、暗い作風で、自分の理想とする「魔女先生」の明るいテイストとは懸け離れているように思われて、去年の今頃初めてこの作品に出会ってから、DVDはそれこそ何十回となく見ているのだが、この6話だけは2回くらいしか見ていない。
冒頭、ひかるのクラスの坂井ノブオという少年が、自分の部屋で、ブリキのバケツの頭を持った大きなロボットを念入りに整備している。
その脳裏に描かれる形で、昼間の教室でのひかるとのやりとりが回想される。

ひかる「どうしてこんな出鱈目な作文を書いたの。僕の弟だなんて……ノブオ君はひとりっ子で弟なんかいないこと、先生ちゃんと知ってるのよ」
ノブオ「僕には弟がいます。名前もケイタローってんです」
ひかる「またそんないい加減なことを……先生は嘘を言う子は嫌いよ」
ノブオ「嘘言ってません、月先生が信用しないなら、明日学校へ連れてきます」
と言う訳で、ノブオは、学校へケイタローと言うロボットの弟を連れて行く為、登校前にせっせと油を差したりネジを締め直したりしていたのだ。

と言っても、所詮、小学生の作ったものなので、動いたり喋ったり出来ることは出来ず、登校の際も、足にローラースケートを履かせ、左右の腕を級友に持って貰い、ロープでノブオが引っ張っていくことになる。
当然、他の子供たちは興味深そうにケイタローの周りに集まってくる。
ノブオ「弟のケイタローです」
ひかる「こ、これが?」

進「このロボット、ノブオが作ったのか?」
ノブオ「ああ」
正夫「へーっ、変なロボット」
正夫、例によって乱暴にケイタローの体をいじくっているうちに、腕を引っこ抜いてしまう。
正夫「あら、取れちゃった」
ノブオ「なにすんだよー、返せよー」
腕を持ったまま走り回る正夫と、必死になって追いかけるノブオ。
ひかるはムーンライトリングの力で正夫から腕を取り返してやる。
そのうち始業のベルが鳴り始めたので、子供たちはぞろぞろと教室へ入っていく。

ひかる「わかったわ、ノブオ君、彼があなたの弟だってこと認めるわ。それから作文のこともね」
ノブオ「ありがとう先生」
ひかる、廊下に出して置いたらまた悪戯されるからと、ケイタローを教室に入れることを許可する。

一旦教科書を取りに職員室に戻ったひかるに、旗野先生が意外な事実を教えてくれる。
旗野「ノブオには弟がいたんですよ。去年、交通事故で死んじゃったんですけどねえ」
ひかる「えっ」
旗野「ケイタローって言うのもきっとその名前でしょう」
ひかる「あ……知らなかったわ」
ちなみに今回から、ひかるの髪型がストレートからパーマをかけたものに変わっている。
個人的にはストレートの方が好みだが、子供っぽく見えることを菊さんが嫌ったのかも知れない。
もっとも、撮影順と放送順の違いから、次の7話ではまたストレートに戻るのだが。
教室の中では、引き続きケイタローがみんなの注目を一身に集めていたが、正夫はいかにも不満そうに膨れっ面をして、ケイタローのことを馬鹿にする。単に、自分以外のものが脚光を浴びている状況が気に食わないのだろう。

進「こいつ動くのかよー」
正夫「動くもんかよ」
ノブオ「動くとも」
太一「じゃあ動かしてみろよ」
ノブオ「よし」

負けん気の強いノブオ、周りの挑発に乗って、ロボットの胴体の後ろにあるスイッチを入れて、ケイタローの目と、耳(?)の先端の豆球を点滅させる。

さらに、両手を動かしながら、下駄のようなローラースケートを滑らせて前進し始める。
とても小学生が独力で作ったとは思えないロボットであった。
しかし、図画工作専門の旗野先生、工作の得意なタケシや、絵の上手いロノオにかなり目を掛けてやっているのに、ノブオに対してはそう言う態度を一切見せないのは、不公平のように思える。

ケイタロー、それでも所詮は子供の作ったロボットなので、少し進むとあえなく倒れてしまう。
正夫「へっ、ざまーねーやー!」
世にも嬉しそうに嘲り笑う正夫に同調して、進も「つまんねーのー」と無遠慮に失望の声を上げる。
進って、その時々によって正義漢だったり、正夫のような意地悪な子供になったりするんだよね。
ノブオ「ちきしょう……」

友達から馬鹿にされて悔しそうに鼻をこするノブオを、廊下からひかるが見ていると、その背後にパッとバルが現われる。
バル「かわいそうによぉ」
ひかる「バルぅ、困るじゃないの、こんなところに出てきちゃ誰かに見付かったらどうすんのよ……」
ひかる、慌ててバルのそばに駆け寄って注意する。平和監視員は、みだりにその正体や超能力を人に見せてはいけない規則なのである。

バル「それより、あのノブオという子の弟、なかなか良く出来とるじゃないか。いっそ、あのロボットに命をを与えてやったらどうだ?」
バル、突拍子もないことを言い出す。

ひかる「命を?」
バル「ああ、ノブオが喜ぶぞぉ、姫も変なことにばかり超能力を使わずそういう人の喜ぶようなことにつかわにゃあかんよ」
ひかる「良い考えね、でも、構わないかしら?」
バル「構うもんか、今更人口が一人増えたぐらいのことで日本の政府が騒ぎ出すこともあるまいて、パイチョ」
バル、無責任な提案をすると、さっさと超能力でどこかへ雲隠れしてしまう。
平和監視員としてまだ経験の浅いひかる、ついバルの口車に乗せられて、即座にムーンライトパワーを使い、ケイタローに命を与えてしまう。それが後に大きな悩みの種になるとも知らず……。

ケイタロー「ヒトリデ起キレルカラダイジョーブダ」
ノブオ「ケイタロー!」
命を吹き込まれたケイタロー、そう言うと自分の力で立ち上がる。
ノブオ、自分が作ったロボットなのだから、ケイタローにそんな芸当が不可能なのは分かりそうなものなのに、全く気にせずケイタローの「成長」をわがことのように喜ぶのだった。

ひかる「ギリシャのアリストテレスと言う偉い学者は化石は土の中で生まれた生物たちが地面の上に出てこられなかったものだと言いました。またキリスト教の神学者たちは……」
理科の授業で化石について話しているひかるだったが、教室の後ろに座っているケイタローがせわしなく手足を動かし、それを見た子供たちが騒ぎ立てるので、その声も掻き消されがちで、授業にならない。

ひかる「ケイタロー君、授業の邪魔しちゃいけません。退屈だったら表で遊んでらっしゃい」
仕方なくひかるがそう言うと、ケイタローは子供たちに手を振って教室を出て行く。
しかし、ノブオの弟として命を与えられたせいか、やることはまるっきり小学生低学年のように幼稚で気まぐれで、しかもロボットなので人並みはずれたパワーを持っているので、

自分の部屋でこっそりウィスキーを飲もうとしていた用務員からボトルを取り上げてがぶ飲みしたり、校長室のドアを壊して侵入して校長を散々怖がらせたり、校庭で子供たちを追い掛け回したりと、もうメチャクチャであった。
CM後、ずぶ濡れになった旗野先生が教室に入って来て、
旗野「月先生、ロボットの奴が叛乱を」
ノブオ「えっ、ケイタローが?」
ひかるが止める間もあればこそ、子供たちは様子を見にどやどやと教室を出て行ってしまう。

ケイタローが手にしているホースから放出される水を、学園紛争的なスタイルで必死に防いでいる校長、教頭、用務員たち。
その後ろに、体操服を来た女の子たちが見えるが、そのうちの一部は、まごうかたなき「チョウチンブルマー」をお召しになっておられる。
ノブオ「やめろ、ケイタロー!」
兄のノブオも来て必死に叫ぶが、ケイタローは一向に聞こうとしない。

ひかる「こんな暴れん坊だとは思わなかったわ。元に戻さなくちゃ……ムーンライトパワー!」
ひかる、急いでケイタローを元のロボットに戻そうとムーンライトリングをかざすが、何も起きない。

ひかる「あれ、効かないわ……」

ケイタロー、水遊びに飽きたのか、不意にホースをぽいっと放り投げてトコトコ走り出し、大人も子供も一斉にその後を追いかける。

ひかる「……」
バル「ハハハハハ、よろしい、ロボットならあれくらいの元気がなくちゃあ」
ムーンライトリングが効かず、ひかるが茫然と立ち尽くしていると、背後にまたバルが現われ、無責任な笑い声を上げる。

ひかる「バルぅ、ね、超能力が効かないのよ。あのロボットを元に戻そうとしたのに全然ダメなのよぉ」
バル「そうだろう、そうだろう」
慌ててバルのもとに駆け寄り、その太い足で地団駄を踏まんばかりに訴えるひかるであったが、バルは妙に落ち着き払っていた。むしろ得意げに、

バル「あったりまえだ」
ひかる「何故?」

バル「我々の超能力はたいていのことが出来る。空を飛ぶことも……」

バルの言葉に合わせて、実際にバルの体が垂直に浮かび上がる。
バル「石ころをケーキに変えることも……そして自分の好きなところに現われることも……パイヨ!」
宙に浮いたまま、手の中の石ころをケーキに変えてから、掛け声と共に杖を振り、パッと姿を消す。

バル、一瞬で近くの滑り台の上に移動する。
バル「しかし、ただひとつだけ出来ないことがある。それはの、人の命を奪うことだ」 
ひかる「なんですって、それじゃあ、あのロボット元に戻すことはできないって言うの?」
バル「命を奪う超能力無し、アンドロメダ憲章、第9条!」
男の子向けの特撮番組ではまずありそうもない平和的な制約が、アンドロメダ星雲では課せられていたと言う、いかにも市川さんらしい設定。それを定めた条項が、第9条と言うのもシャレている。
もっとも、仮にも平和監視員であるひかるが、そんな基本的なことを知らなかったと言うのは、いささか不自然に思えるのだが……。

ひかる「どうしてそれを……」

ひかる「早く言ってくれなかったのよぉーっ!」

ひかる、文句を言いながら滑り台を一気に駆け上がり、バルにしがみつこうとするが、再びバルはパッと姿を消し、

ひかる「あ、ちょっ、ああ……」
滑ってうつ伏せになったひかるは、バルの代わりに滑り台の上の手摺を掴むが、結局そのままつるんと下まで滑り落ちてしまう。
……
管理人は、今、かつてないほどの感動を覚えている!! これほどまでにあかさらまなパン チラが見られようとは……。
最初に書いたように、このエピソードはほとんど見たことがなかったので、こんな素晴らしいシーンが隠されていたことに、今回レビューをして初めて気付いた次第である。
残念なことに、昔の作品なので肝心なところがはっきりくっきり見えないのだが、東映さんには是非、4Kレストアのブルーレイ版を発売して頂きたいところである。
もし出たら、女房(いないけど)を質に入れてでも買いますから!
それにしても、ミニスカの女性に滑り台を昇り降りさせるとは……、佐伯監督のセンスには脱帽です!
前にも書いたが、この作品、序盤……具体的に7話までは、ちょくちょくこういう爽やかなお色気シーンが挿入されていて、そこも大きな魅力のひとつなのだが、8話以降、まったくと言っていいほどそう言う趣向が見られなくなるのが残念である。

ひかる「ああ……」
旗野「ロボットはいずこー?」
ひかるが滑り落ちたところへ、これまた全共闘的ないでたちの旗野先生がやってくる。
旗野「月先生、今誰かと話してましたね?」
ひかる「い、いえ、別に……」
旗野「さようですか、うん、また遅れてはならじ、いざーっ」
旗野先生、深く追及することもせず、勇ましく角材を槍のように振り回すと、正夫たちの後を追って走り出す。

ワンテンポ遅れてひかるが滑り台から立ち上がろうとした時に、今度は正面からのパン チラが炸裂。
後ろから前から、これだけ存分にひかるのパ ンツが見れて、管理人はもう思い残すことはありませんっ。
学校を逃げ出したロボットのケイタローを、教師や生徒たちが追いかけている。

ここから、街頭ロケによる、この番組でも最大級の大掛かりな撮影となる。
ケイタロー、行く先々でトラブルを起こし、どんどん追っ手の数を増やしていく。
散々逃げ回った挙句、多摩川の岸まで追い詰められ、そこで立ち往生となる。

進「あ、いた!」
子供たちもすぐやってきて、ケイタローを見下ろす。
進の隣のエキストラらしい子供の、妙にテンションが高いのが気になる。

興奮状態で、ほとんど集団ヒストリーを起こしている人々は、誰からともなく石や空き缶などをケイタロー目掛けて投げ始める。
真面目で優しいハルコちゃんまで楽しそうに石を投げているのを見た時にはショックだった(いい年して何を言うとるんだ、お前は?)
ケイタロー、何とか逃げようとするが、すっかり取り囲まれて身動き取れず、なすがままに石をぶつけられ続ける。

少し遅れてノブオがやってきて、ケイタローの前に立って両手を広げ、
ノブオ「やめろー、やめろーっ! ケイタローが何したって言うんだよ!」
身をもって弟を庇おうとするが、誰も彼も石を投げるのをやめようとしない。
これだけでも集団ヒステリー……と言うより、群衆そのものの怖さが良く表現されているが、

主婦「ね、ね、あのロボット、なんですの?」
寿司屋「宇宙の怪物らしいです」
男「人を殺したって話で、あの野郎」
主婦「ええっ、まぁ、ひどいわ」
などと言う大人たちの会話が、非常時におけるデマの危険性・恐ろしさをひしひしと感じさせてくれる。
さすが市川さんである。
どうでもいいが、寿司屋の着ている任侠シャツが欲しい!(註・ほんとは欲しくない)
……にしても、客商売の人間が
「死んでもらいます」はさすがにまずいだろ。
ここでやっと旗野先生とひかるがやってくる。
ひかる「校長先生、どうして止めてくれないんです」
校長「こんな大騒ぎになるとは思わなかったんだ」
ひかる、このまま放っておけば、ノブオまで巻き添えになって殺されかねないと考え、ムーンライトパワーを使い、二人の体を宙に浮かせて、向こう岸まで運んでやる。

向こう岸に着地した二人は、まるで本物の兄弟のように仲良くトコトコと走り去っていく。

ひかる「……」
ひとまずホッとするひかるであったが、無論、これで問題がすべて片付いた訳ではない。

その後、下宿先の離れの隠し部屋にひかるが怖い顔で入ってきたので、バル、思わず読んでいた新聞で顔を隠す。
ひかる「バル!」
バル「わしゃ知-らないっと」
ひかる新聞を取り上げると、腹立ち紛れにくしゃくしゃに丸めて床に叩きつけ、

ひかる「あんたが変なこと言ったからこんなことになっちゃったんじゃないの!」
バル「いや、わしはただ、このノブオって子に弟が出来たら喜ぶだろーっと思ったから、そいだから、あのー」
さすがのバルもしどろもどろで言い訳するばかりで、この問題の助けにはならない。
しかし、経験豊かなバルが、元に戻せないことを知りつつ、ひかるにロボットに命を吹き込むよう唆したのは、いささか不見識のように思える。この場合は、むしろひかるが後先考えずにふとした思い付きでロボットに命を与えてしまい、後で超能力では元に戻せないと知って困惑する……と言う展開の方が、ひかるの未熟さも表現できて良かったと思う。
ひかる、心底困ったように透明なビニールソファーの上に体を投げ出し、

ひかる「ああー、取り返しのつかないことしちゃったぁ。あの二人、今頃どうしてるかしら」

ノブオ「ここまで来れば大丈夫だ。でもぉ今夜は何処かに隠れていような」
ケイタロー「……」
ノブオ「お前も腕白モノだなぁ、死んだケイタローも腕白だった。けど、お前はもっと腕白だ」
ノブオとケイタローは、そのまま、だだっ広い河原の草むらの中に身を潜めていた。
群衆の熱狂も一時的なものだから、もう心配することもなかったろうが、念の為、ノブオはすぐ家には帰らず、外で一夜を明かすことにする。
ケイタローと相撲などして遊んでいたノブオ、そろそろ空腹を感じるが、「パン買うお金もないしな」と、諦め顔でぼやく。
と、ちょうど土手の上をチンドン屋の一団が通り掛かったのを見て、兄思いのケイタロー、チンドン屋のアルバイトをしてお金を稼ごうとする。

ここでも実際に、街中でチンドン屋と一緒に練り歩くケイタローの姿が、割と大掛かりな街頭ロケで描かれている。
やがて元の場所にケイタローが1000円札を手に戻ってくる。
ノブオは喜び勇んでパン屋に駆け込み、パンと牛乳を買い求める。
だが、

待ち切れずに迎えに来たケイタロー、車道に飛び出したところを、社員旅行中らしいバスと衝突し、バラバラに壊れてしまう。
男「なぁんだ、ロボットじゃねえかよ」
男「脅かしやがって……」
人を轢いたかとヒヤッとした運転手たちは、それが単なる機械だと分かると、さっさとバスに乗って行こうとする。
だが、ノブオにとってケイタローは紛れもない弟である。ノブオは激怒して、男たちに食って掛かる。

ノブオ「待て!」
男「なんだよ」
男「文句あんのか?」

ノブオ「僕の弟だぞ、僕の弟だぞ!」
男「弟だって?」
男「文句あるなら、交番行こうか、ぼうや」
ノブオ「ケイタロー、返せ! ケイタロー、返せよぉ!」
男「ガキぃ、ふざけんじゃねえ!」
男たちはノブオの必死の訴えなど相手にせず、ノブオを突き飛ばして走り去る。

ノブオ「ケイタロー、返せ! ケイタロー、返せよぉ! ケイタロー、返せ! ケイタロー返せよーっ!」
なおも諦めきれず、ケイタローの頭を持ってバスを追いかけるノブオであったが、みるみる引き離されて行き、その悲痛な叫び声が空しく路上に響き渡る。

夜、心配したひかるがムーンライトパワーでノブオの家の前に瞬間移動し、待っていると、ケイタローのバラバラになった体を背負ったノブオが、涙を拭きながらとぼとぼと帰ってくる。
ひかる(ロボットが壊れている!)
ひかる、ケイタローが壊れたのを見て、一面ではホッとするが、ノブオの様子が気になって幽霊のような状態でノブオの部屋に入り込み、その様子を見守る。
ノブオ、弟を二人も交通事故で失ったことになり、その悲しみは尋常ではなく、部屋に入ってからも、いつ果てることなく嗚咽を繰り返してた。

母親「ノブオ、何泣いてるの?」
ノブオ「ママ、ケイタローがまた死んじゃったんだよ、うう……」

ベッドに顔を押し付けて泣きじゃくるノブオを、「すべて自分の責任なんだわ……」とでも言いたげにつらそうに見るひかる。
だが、ここで、ケイタローの母親(小山明子)が、意想外の救いの手を差し伸べる。

母親「ノブオ、ケイタローはね、死んだんじゃないのよ。ケイタローはね、今度はロボットじゃなくて本当の人間になって戻ってくるのよ。
ママのお腹の中から」
ノブオ「ママのお腹の中で?」
母親「そうよ、ママのお腹の中から生まれ変わってくるのよ。来年の春にはあなたも兄さんね」
ノブオ「えー、ほんとー?」
そう、ロボットが命を吹き込まれて弟になると言う奇想天外なストーリーは、母親が自分の胎内に新しい命……ケイタローの生まれ変わりがいるのだと教え、ノブオを励ますと言う、どんな教師にも超能力にも不可能な、母親にしか出来ない解決方法に着地するのだった。
管理人も、初めて見た時には、この意外な結末に思わず感嘆したものだ。

そばで聞いていたひかるも、思わず会心の笑みで指を鳴らす。

母親「本当よ、ほら、耳を当てて聞いて御覧なさい」
ノブオ「……」
言われたとおり母親のお腹に耳を当てるが、何も聞こえない。だが、ひかるがここでリングに息を吹きかけ、ロボットのような機械的な作動音を聞かせてやるのが、ノブオに対しても、母親に対しても、そして、はかなく散ったロボット・ケイタローに対しても、実に粋なはからいとなっている。
ノブオ「あっ、動いてる、ケイタローが、ママがお腹の中で!」
それを見届けると、ひかるは安心して家の外へ移動する。
なお、書くのを忘れていたが、ノブオ役は「星雲仮面マシンマン」でお馴染み、佐久田修さんでした。
つまり、ひかるは、ゴーグルイエロー(正夫)や、マシンマン(ノブオ)、また、今回は見えなかったがバロム1の片割れ・高野浩幸さんたちを教え子として持っていたことになる訳で、そう考えると、なかなか凄い教師だったのである。
ひかるが家の外に出たところに旗野先生がやってくる。

旗野「月先生ーっ」
ひかる「旗野先生?」
旗野「今、お宅のほうへお寄りしたらノブオ君ちだってんでね、迎えに来たんですよ。夜道は物騒ですからね」
ひかる「どうもすいません」
ひかる、旗野先生の思いやりに深々と一礼する。

旗野「どうですか、こっちは」
ひかる「ノブオ君、来年の春にはお兄さんですわ」
旗野「じゃあ、お母さん、おめでた?」
ひかる「ええ、いいお母さんだわぁ」
旗野「そうですか、生まれるんですか、そりゃ良かった。ほんとに良かった」
ひかる「私もなんだから救われたような気持ちだわ」

石段を降りかけたひかる、ふと空を見上げ、流れていく雲の後ろから顔を覗かせる満月に気付く。
ひかる「あ……綺麗なお月様」
旗野「いや、月先生のほうがもっと綺麗です」
ひかる「あらっ……」
旗野先生に素朴なお世辞を言われて、恥ずかしそうに笑うひかる。
今回、ストーリーの辛気臭さは別にして、全体的にあまり弾けた感じがしなかったのは、普段と比べて、ひかるが大人し過ぎるせいでもあったかもしれない。
二人が去った後、パッと塀の上にバルが現れ、

バル「ふんっ、なにが綺麗なお月様だ。わしのことなどケローッと忘れおって……あの旗野とか言う若造も気に食わんよ、『ひかる先生の方がもっと綺麗ですよ……』、へっ、見え透いたお世辞をしゃあしゃあと……それにしてもあの少年に本当の弟が出来るというのは朗報だったよ」
ぶつぶつ独り言を言うが、それでもやはりロボットの問題に責任を感じ、様子を見に来たのだろう。
バル「ああ、人間は良く出来とるよ、ああ、それでは諸君、今夜はこれにてバイバイ……パイチョ」
ラスト、バルがカメラの向こうの視聴者に語りかけ、再び姿を消したところで幕となる。
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