第19話「恐怖の人工太陽!」(1989年3月12日)
ある日の朝、あろうことか、東京上空に二つ目の太陽が昇ってきて、都民を恐慌状態に陥れる。

路上に出て来た住民が集まって、コンパクトにカメラのフレームの中に納まる。
光太郎もやってきて、不思議そうに空を見上げる。
突然現われた二つ目の太陽のせいで気温がぐんぐん上がり、季節外れのプールを楽しむ人々がいる一方、災厄の前触れかと恐れおののく人たちもいた。
政府は目下、原因を究明中とのことだったが、言うまでもなく、それはクライシスの仕業であった。
ガテゾーン「政府の奴ら、パニックを恐れて発表を控えたな」
ゲドリアン「しかし日本政府はおとなしくエレニウム鉱石を差し出すかな」
ガテゾーン「逆らえば、人工太陽温度を一気に上げるまでよ、そうすれば東京は一瞬にして焼け野原」

ジャーク将軍「エレニウム鉱石さえあれば、わがクライシス50億の民を一度にこの地球につれてくることが出来る次元転換装置の開発も可能だ」
今回の人工太陽作戦は、クライシスがそれによって政府を脅し、エレニウム鉱石なる貴重な鉱石を手に入れることが最終的な目標であった。
だが、その作戦の障害となるかもしれない人物がいた。相原文吾教授である。彼の開発している「磁力砲」が完成すれば、人工太陽も簡単に取り除くことが可能らしい。
ジャーク将軍は、相原教授の抹殺を厳命する。

ジャーク将軍「良いか、この作戦に失敗は許されん、ガテゾーン、マリバロン、今回は怪魔二大隊の共同作戦で行け!」
マリバロン「はっ」
ガテゾーン「アイアイサー」
今日も張り切ってお仕事するマリちゃん35才でありました。
実家の母親から「はよう結婚して孫の顔を見せておくれ」と言われているのが悩みの種なのデス。

一方、とある喫茶店で、光太郎は、「赤い牙」なる組織から人工太陽について政府が脅迫されていると言う極秘情報を玲子から聞かされていた。
玲子「国立科学アカデミーに設置された政府の調査団に、内閣調査室まで動いてるという情報があるの。変だと思わない?」
光太郎「調べてみよう」
暇で暇でしょうがない二人、早速国立科学アカデミーの会館の前にやってくる。
ちょうどそこへ大きなジェラルミンケースを提げてやってきて、科学アカデミー総裁に会わせろと警備員に要求したのが、クライシスの狙う相原教授であった。

戦闘員が現われ、相原教授に襲い掛かるのを「待ってました」とばかりに撃退する光太郎。
光太郎「早く逃げろ!」

続いて、怪魔ロボット・クロイゼルが登場。
クロイゼル「南光太郎、余計なところに首を突っ込みおってぇ」
なかなか秀逸なデザインで、デスガロン同様、「悪のライダー」と言う雰囲気を漂わせている。しかし、テクスチャーがいまいちだし、声がゲドリアンと同じと言うのはマイナス要素。
光太郎、とりあえずRXに変身して戦う。
教授と一緒に逃げた玲子の前には、マリバロン配下のスカル魔が現われるが、RXがライドロンを呼び、スカル魔を蹴散らさせる。

クロイゼルは、人工太陽からエネルギーを受けると、

それを強力なビームに変えて両目から発射する。
ま、その割に、RXに命中しても大したダメージは与えられなかったが……。
相原教授の抹殺が本来の使命なので、クロイゼルは適当なところで退却する。

光太郎「だいじょぶですか」
相原「はあ」
光太郎「どうしてクライシスに狙われたんです」
相原「クライシス? いや、そんなものは知らん。君たちこそ何者だね」
光太郎「クライシスから地球の平和を守る為、戦ってる者です!」
相原「地球の平和を?」

二人は相原教授の家に行き、詳しい事情を聞かせて貰う。
まず、ケースの中の奇妙な形の銃を見せて、
相原「磁力砲です。私は明応大学の物理学の教授ですが、今、地球の磁場を利用した新しいエネルギーの研究をしております。この磁力砲はその理論を応用したものですが、それが完成すると、あの二つ目の太陽を宇宙の彼方に追い払うことが出来る……」
相原は、まだ未完成の磁力砲の完成に協力を求めに、国立科学アカデミーにアポなし突撃を図ったのだという。
相原は、その理論があまりに突飛な為、学界からは異端(キチガイ)扱いされていて、最初から政府の調査団に加えられていなかったのだ。

光太郎「そうか、それでクライシスは研究を阻止する為に、教授を襲ったのか……」
玲子「政府を脅している赤い牙がクライシスだとしたら、いったい何が目的なのかしら」
彼らが話している最中、2階にいた相原の二人の子供、恵子と進一の姿が消えてしまう。

三人で付近一帯を探し回ったが、徒労に終わり、相原の家に戻ってくると、
マリバロンの声「はっはっはっはっ……子供を返して欲しければ磁力砲の開発を中止してこちらに渡すことね」
何処からかマリバロンの笑い声が聞こえてきて、ついでマリバロンの幻影が目の前に出現して、相原教授に要求する。
さらに、人工太陽のエネルギーをパラボラで受けて増幅させ、その熱で内部の気温がどんどん上昇していく特殊な部屋に監禁された恵子と進一が苦しむ様子も見せ付け、教授をさいなむ。
マリバロン「教授、いい返事を期待してるわよ。
にゃあっははははっーっ!」

相原「どうしたらいいんだーっ、磁力砲を渡せば子供たちは救われる。しかしこの地球はクライシスに占領されてしまう」
光太郎「教授、磁力方を完成させてください」
相原「なにっ、君は子供たちを見捨てろというのか?」
光太郎「ええ、僕の子供じゃないんで」 相原「……」
玲子「うふっ、それもそうよね。光太郎さん、あったまいいーっ!」 相原「てめえら……」
相原教授、磁力砲が完成したあかつきには、まずこいつらを宇宙の彼方に吹っ飛ばそうと固く心に誓うのであった。
じゃなくて、
光太郎「違います。クライシスは約束を守るような連中じゃない。磁力砲を渡したところで子供たちは帰ってきやしません」
相原「……」
光太郎「子供たちは僕が命に賭けて救い出します、教授、磁力砲を一刻も早く完成させてください」
その後、光太郎は自分が囮になって相原家を見張っていた戦闘員たちを引き離し、その隙に玲子と教授を敵の目の届かない安全な場所へ移動させる。
CM後、玲子が世話した山の中のログハウスで磁力砲の開発に没頭している相原教授。

だが、助けを求める恵子と進一の声に続いて、再びマリバロンの哄笑が鳴り響く。
マリバロンの声「何処に隠れても無駄よ、教授、居場所が分からなくても私はテレパシーでお前を脅迫し続けることが出来るのよん」
相原「やめろぉーっ!」

恵子「暑いよー、助けてー」
部屋にあるテレビに、既に50度近くになる部屋の中で苦しんでいる子供たちの姿を映し出し、

マリバロン「教授、これが最後のチャンスよ、子供たちを救いたければ磁力砲をこちらに渡せ!」
相原「うう、くぅ~」
だが、健気な娘は、「パパぁ、悪い連中の言いなりにならないで地球を救って!」と、特撮ドラマの人質の作法にのっとり、私情より大義を優先させてと父親に訴えるのだった。
マリバロン「さあ、どうする教授?」
玲子「やめてーっ!」
マリバロン「子供たちの命はあと
10時間と持つまい。それまで良く考えることだ」
割と長い余命だった。
しかし、閉め切った摂氏50度の部屋に、水も食べ物も与えないまま小学生を放置していたら、1~2時間で脱水症状を起こして死にそうな気がするのだが……。
まぁ、死なれては困るので、教授の見てないところでは、マリバロンが風を送ったり、ポカリでも飲ませてやっていたのかもしれない。
ところで、クライシスとしては別に完成した磁力砲が必要なのではなく、それを作らせないことが目的なのだから、無理に磁力砲を欲しがらず、即座に相原教授の身柄を要求すべきだったのではないだろうか。
けれど、マリバロンの脅迫を聞いていると、いつの間にか完成した磁力砲を奪うことが目的みたいになってるように聞こえて、ちょっと変である。

それはさておき、子供たちを救う為、相原教授はそれから一睡もせずに磁力砲の開発を続け、翌朝、遂に磁力砲を完成させる。
そばにいた玲子はいつしか眠りこけてしまっていたので、教授は彼女に気付かれないよう、若干ゴリラっぽい歩き方でロッジを出て行く。
そしてマリバロンにテレパシーで教えらたれ取引場所へ、玲子の車を拝借して向かう。
その後、ロッジにやってきた光太郎に揺り起こされて、やっと玲子が目を覚まし、教授と自分の車がなくなっていることに気付く。
教授と子供を映した家族写真の裏に、光太郎と玲子に宛てた置手紙が残されていた。

相原の声「光太郎君、玲子さん、許してくれ、私にはどうしてもあの子たちを見捨てることは出来ない。明神ヶ原で磁力砲と子供たちを交換することになった。クライシスは子供たちを返さないかも知れないが、私は父親としてやるだけのことはやるつもりだ」
死を覚悟して明神ヶ原に到着した相原、待ち受けていたクロイゼルに、磁力砲を見せつつ子供たちを返せと要求する。
見れば、崖の上に、恵子と進一が十字架に縛り付けられている。それを見た相原は、
相原「やはり、子供を返すというのは嘘だったかーっ!」
クロイゼル「え、いや、ちょっと……」
クロイゼルが、十字架のそばに立つ戦闘員に子供たちを解放しろと命じようとしたとき、相原がいきなり磁力砲を撃ってくる。
……と言うのは嘘なんだけど、このシーン、相原がクライシスが約束を破ったと早合点しているように見えたのは事実である。
もっとも、実際にクロイゼルは二人を殺すつもりだったらしいが、はっきり言って、子供たちの生死などクライシスにとってはどうでもいいことなのだから、ここはすんなり子供たちと磁力砲を交換しておいたほうが吉だったろう。
とにかく、相原は磁力砲を撃つが、クロイゼルも目から赤いビームを撃って応戦する。
二つの光線は空中で衝突して直下に落ち、その凄まじいエネルギーで地割れが起き、地中から炎が吹き上がる。

相原側から見た、爆発ショット。
画面全体が炎に埋め尽くされるという凄まじさである。
相原、その衝撃で吹っ飛ばされ、磁力砲もその手から転がり落ちる。

クロイゼル「貴様がその気なら太陽を東京のど真ん中に落としてやる」
相原「くわーっ」
クロイゼル「人工太陽のコントロール装置は俺の体内にあるのだ」
クロイゼル、実際に目からビームを放って、人工太陽を降下させ始める。
相原、子供たちも救えず、磁力砲もクロイゼルに邪魔されて拾えず、八方ふさがりとなる。

相原「もう、駄目だ……すまない」

だが、その時、地平線の向こうから、軽快なBGMと共に現われたのが、アクロバッターにまたがるRXであった!
人々が悪の強大さの前にうちのめされ、絶望した時に、何処からともなく現われる、「仮面ライダー」と言うキャラクターの本質をビジュアル化したような名場面である。
RX、崖の上に跳んで、あっさり子供たちを助け出す。
この肝心な時に、マリバロンがいないのはとても不自然だが……。
だが、クロイゼルは強敵で、素のRXでは歯が立たない。

RX、昨夜、タンスの角で小指をぶつけた時の痛みを思い出してロボライダーに変身、攻勢に転じる。
しかし、人工太陽のバックアップを受けるクロイゼル、徐々に盛り返し、凄まじい力でロボライダーの体を押さえ付ける。

クロイゼル「俺のエネルギー源はあの人工太陽だ。人工太陽が近付くに連れ、力が増大するんだ」
ロボライダー(駄目だ、このままではやられてしまうぞ!)

恵子「ライダー!」
近くの物陰から戦いを見守っていた恵子、今にも倒されそうなロボライダーと、転がっている磁力砲を交互に見ていたが、
恵子「進一、ここにいるのよ」

決然とその場から飛び出し、スカートがめくれるのも構わずしゃがんで磁力を拾い上げると、

怪我をして動けない父親のところへ持っていく。

相原、恵子と一緒に磁力砲を構え、今にも落下しそうなほど大きくなった人工太陽めがけて発射する。
磁力砲を受けた人工太陽、見る見る遠ざかって小さくなっていく。
クロイゼル「しまった、太陽が……」
ロボライダー「今だ。ボルテックシューター」

ロボライダー、クロイゼルがうろたえ、そのパワーが低下した隙に、右手をもものあたりに下ろし、その手の中にボルテックシューターを生成する。

そして密着したまま銃口をクロイゼルの腹部にあてがい、

そのまま引き金を引く!
……
ヒーローが、鉄砲玉みたいな殺し方するのはやめて欲しい。

ロボライダー、撃った後、体を反転させるが、

カメラが引くと、何故か、クロイゼルからほどよく離れた位置に移動しているのだった。
クロイゼルはあえなく爆死し、それと同時に人工太陽も消滅する。
今回の敗因は、ひとえに、わざわざ相原教授に磁力砲を完成させる時間と(子供を助けるという)強い動機を与えてしまったことにあると言えるだろう。
元来、相原を抹殺することが目的だったのだから、マリバロンもゲドリアンも途中で本来の目的を見失っていたとしか思えない。
もっとも、エレニウム鉱石自体は依然として政府が所有しているのだから、以後も、奪おうと思えば奪えた筈である。
ラスト、抱き合って無事を喜ぶ相原親子。

恵子「ライダー!」
この子役(伊藤愛)、特に美人と言う訳ではないが、なんとなく爽やかな雰囲気があるよね。

相原「ありがとうございました」
進一「東京は助かったんだね、ライダー」
ロボライダー「そうとも、君たちとパパのお陰さ」
以上、ストーリーは壮大で面白そうなのに、実際には、捻りのない、箸休め的なエピソードとあまり違いのない凡作に終わっていた。
クロイゼルがいなかったら、スルーしていた可能性大である。
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