「追跡!しぎしぎ誘拐団」(1984年12月22日公開)
「東映まんがまつり」のひとつとして公開された、劇場版第2弾である。
1作目と比べると、正直、内容的には本放送と大差ないのだが、それを補う為か、構成上の工夫がいくつか見られる。

まず導入部だが、テレビ版のED「ハロー!シャイダー」が使われ、空撮による、海面の上を滑るように流れる画面の上に、タイトルが表示されると言う、いかにもスピード感溢れるもの。

そのままカメラが陸地に寄っていき、周辺を海に囲まれた、まさに羊腸のように曲がりくねった峠道の上を走る一台の車と、それを追うシャイダーのブルホークの姿を捉える。

ブルホークの攻撃を受けた車はパンクして崖の前で停まるが、ブルホークで横付けすると、いつの間にか車内は無人になっており、しかも大変親切なことに、時限爆弾のステップセコンド式カチカチ音が聞こえてくるではないか。

それに気付いたシャイダー、スタコラサッサとその場から離脱し、間一髪で爆発から逃れる。
……
だから時限爆弾の秒針はスイープセコンドにしとけっつっただろうがっ! (全ての悪の人たちに捧ぐ、管理人の魂の叫び)

シャイダー「アニー、車には子供たちが乗っていない」
アニー「何処へ連れ去られたのかしら?」
シャイダー「この一帯にフーマの秘密基地があるに違いない。探してみる」
シャイダー、アニーと連絡を取りながら、フーマに攫われた子供たちを捜索しているところだった。

シャイダーがシャイアンで飛んでいくのを、岩場で釣りをしていた老人が見上げ、ニヤリと笑う。
そう、毎度お馴染み、石橋雅史さんである。って、昨日もたっぷり貼ったか。
時期的にも、「ダイナマン」でカー将軍を演じていた頃と被る。
なおもOPクレジットが表示される中、シャイダーはバトルシャイアンで地中にある基地に突入するが、そこは既に放棄された基地で、シャイダーをそこにおびき寄せて殺す為の罠だった。
そこから脱出したところで、OPが終了。

野獣が牙を剥くように、白く泡立つ波濤が黒々とした岩場に襲い掛かっては、空しく砕け散っている。
ヘスラー「シャイダーめに逃げられてしまった。折角罠を仕掛けたのに」
老人「この先、いくらでもチャンスはあります」
黙々と釣り糸を垂れている老人の背後にヘスラーが現われ、悔しそうにつぶやく。
ヘスラー「うむ。で、攫った子供はどうした?」
老人「はい、ここへ」

ヘスラーが、老人の示すビクの中を覗き込むと、小魚ほどに小さくされた子供たちが、水面から顔を出して、助けを訴えながらもがいていた。

ヘスラー「これでは気付くまい、いくらシャイダーとてなぁ」
老人「これから何百人でも攫って見せます」
ヘスラー「頼むぞ、不思議獣ムチムチ」
老人「お任せを」
石橋雅史さんを起用しながら、序盤であっさりその正体をバラしてしまったのは勿体無い気がする。
途中まで、敵か味方か分からない、謎めいたキャラとして温存しておいた方が良かったと思う。
ここでやっとサブタイトルが表示される。

夜遅く、雄一少年が自室で一心不乱に勉強していると、母親がおやつを持ってくる。
雄一「もう出来た、簡単だい、こんなの」
母親「うん、さすがは雄一、東大はあなたの為にあるのよ」
ねえよ。 
と、窓の外にあの老人の不気味な顔が浮かんだかと思うと、急に嵐が襲ってきて、

家の屋根と外壁ごと、強風で吹き飛ばされると言う豪快なシーンとなる。
ま、部屋の周りが全部更地と言うのが見えてしまうのが残念だが。
混乱の中、老人は雄一の体を抱えて飛び去り、母親が気付いた時には嵐はおさまり、家は元通りになっていたが、雄一の姿だけ忽然と消えていると言う寸法。
続いて、熱烈投稿写真塾と言う、物凄い名前の塾。
……間違えました。
天才塾と言う、物凄い名前の塾。
ひとりひとりにマイコンが支給されて、それを使って勉強すると言うハイテク塾であったが、

不意に塾生全員のマイコンのディスプレーに、あの老人のにこやかな顔が映し出される。

女の子「はっ」
思わず息を呑む女の子。ちょっと可愛い。

画面の中の老人が右手を伸ばすと、実際にディスプレーから右手から出て来て、子供たちの喉首を掴み、そのまま画面の中に引き摺り込んでしまう。

変幻自在の老人、今度はマジシャンに扮して、公園に大勢の見物人を集めて手品を披露している。
エキストラの多さなど、この辺は映画らしいんだけどね。

手品の最中、不意に白い布を広げて、最前列に座っていたレギュラー子役たちの上に被せると、そのサイズが見る見る小さくなっていき、

老人「よっ」

ネズミほどの大きさになったところを、すかさず老人がシルクハットで掬い取ってしまう。
何も知らない観客、マジックだと思って(思うなよ)盛んに拍手するが、その最中、老人自身の姿もパッと消える。
子供たち、それも成績優秀の少年少女たちばかり誘拐されると言う奇妙な事件は、やがてテレビや新聞でも取り上げられ、世間の耳目を集める社会現象となる。
テレビに出て、雄一のことを切々と語っているさっきの母親。
母親「朝は5時に起き、夜は午前2時まで、それこそ寝る暇を惜しんで頑張っておりました。天才は2パーセントの才能と98パーセントの努力と申すではありませんか、雄一は天才なんです!」

しかつめらしい顔でその番組を見ていた小次郎さん、ペットショップから出ると、向こうから陽子が慌てふためいた様子でやってくる。
陽子「小次郎さん、大変! ワタル、信、ルミ、恵子、良一が攫われた!」
小次郎「なに、またか、これで50名だ。こりゃ大変だ……」
とりあえず走り出した小次郎さんだったが、ふと立ち止まり、
小次郎「こりゃ誘拐じゃないよ」
陽子「え」
小次郎「ワタルも信も、せいぜい30点どまりだろが。誘拐されんのは天才ばっかりだ。ぼんくらは安心」
陽子「安心て……」
無責任に決め付けてしまう小次郎さんだったが、続いて現われた大ちゃんには、「陽一たちが誘拐されたらしい」と言うのだから、わりと分裂気味であった。
アニーから三浦半島の灯台から怪電波が発信されていると言う知らせを受けた大ちゃん、直ちに現地へ急行する。

果たして、灯台の中から「助けて~」と子供たちの声が聞こえてくる。
大ちゃん、迷わずその中へ飛び込むが、

入った途端、そこは、マンホールから水蒸気が噴き上がり、ぼろぼろの服に顔はお化けと言う怪人たちが華麗に踊り狂う、まんま「スリラー」的な異世界に変わる。
しばらく不思議時空的な世界で戦った後、大ちゃんは灯台の外へ放り出される。
見れば、近くの岩場に良一たちが倒れている。大ちゃんは良一たちを揺り起こし、「さあ、みんな早く逃げろ」と、ハケさせる。
いや、ここ、三浦半島なんだろ? 金もない子供たちを現地解散させちゃダメだろ。
大(5人は助かった。あと45人の子供たちは一体何処へ?)

大ちゃんが考え込んでいると、背後からあの老人が釣竿をムチのように振り回して襲い掛かってくる。

老人、着物を脱ぐと、その下からビョウの一杯付いた「北斗の拳」風・世紀末的衣装が露出する。
石橋さん、若いなぁ。

大ちゃんもシャイダーに変身し、お互い空中を一回転して、ムチムチが岩場の上、シャイダーが下に着地して対峙するが、

そこへいきなり巨大な高波が押し上げてきて、シャイダーの体を飲み込むように覆い尽くしてしまう。
波が崩れた後、さいわいシャイダーはその場に立っていたが、石橋さんもスタッフたちも一瞬ドキッとしたのではないだろうか。
よくまあ、こんな荒れた海模様の日、こんなところで撮影したものだ。

残念なことに、日本一過激な衣装の老人は、さっさとムチムチ本来の姿になってしまう。

ムチムチ、さらに彼らの頭上に現われたヘスラーたちの猛攻撃を受け、シャイダーはまっさかさまに海へ落ちる。ヘスラーは、手を緩めず海中にバズーカ砲を何発も撃ち込ませ、いつまで経ってもシャイダーが姿を現わさないのを見て、漸くシャイダーが死んだものと確信し、全員を引き揚げさせる。
折角の劇場版で、わざわざ三浦半島まで来たというのに、ギャルたちにはろくに見せ場もない。
立ち去る時、ギャル2やギャル5のスカートがめくれあがってパンツが見えるのだが、あまりに小さいので貼るのはやめにした。

少し遅れてやってきたアニー、大ちゃんが海面にぷかりぷかり浮かんでいるのを見て、迷わず海へ飛び込んでその体を岸へ引き揚げる。
アニー「シャイダー、シャイダー!」
これじゃあ、いくらなんでも大ちゃんが情けな過ぎる……と思いきや、

大(アニー、上手く行ったぜ!)
アニー「うん」
大ちゃんはパッと目を開け、周囲を素早く見回してから、アニーに向かってニンマリして見せる。
大ちゃん、フーマを油断させる為、死んだふりをしたらしい。
でも、既にフーマはいないのに、途中までアニーが本気で心配しているのは変だよね。
ここでやっと、誘拐された子供たちの状況が説明される。
人里離れた山奥の、巨大な石窟のような空間に集められ、台上に立つ神官ポーからフーマの一員としての基本精神を叩き込まれている。
今回の誘拐の目的は、今は亡きショッカーも大好きだった、優秀な子供たちを掻き集めて洗脳・教育し、自分たちの仲間にしようと言うものだった。「悪の組織」と言うのは、だいたいのところ、「寂しがり屋さん」が多いのである。

ポー「ひとつ、大帝王クビライ様は全宇宙の神様であられます」
子供たち「ひとつ、大帝王クビライ様は全宇宙の神様であられます!」
ポー「ひとつ、大帝王クビライ様は全宇宙の支配者であられます」
子供たち「ひとつ、大帝王クビライ様は全宇宙の支配者であられます!」
ポー「ひとつ、私たちは大帝王クビライ様に絶対服従を誓います」
子供たち「以下同文!」
ポー「手ぇ抜くんじゃありません!」 ……途中から嘘である。
ポー「良く出来ました、これより労働実習です。ご覧なさい」

ポー様はそう言って、後ろの壁に貼ってある円形の時間割に子供たちの注意を向けさせる。
ポー「あなたたちを待っているのは地獄の時間割です」

雄一「睡眠時間はたったの2時間、こりゃあママよりひどいやー」
そうぼやく雄一の態度から見て、彼らはまだ洗脳はされておらず、無理矢理フーマ式教育を受けさせられている段階らしい。
しかし、睡眠時間2時間じゃあ、逆に勉強の能率が落ちるよね。子供たちの健やかな成長に必要な成長ホルモンも、十分睡眠を取らないと分泌されないことをフーマは知らないのだろうか。
この、キチガイじみた時間割は、当時の実際の受験地獄に対する上原さんの批判精神が反映されているのかも知れない。

外へ出て、ほとんど無意味と思える単調な肉体作業に従事させられる子供たち。
雄一「どうしてこんなことしなきゃいけないのー」
ヘスラー「黙って働け、口答えは許さん、どんな環境でも生き抜いていける鋼鉄のような精神と肉体を作り上げるのだ」
子供たち「はーい」
周りには、銃を持った兵士たちがいるので、子供たちもしぶしぶヘスラーおじさんの言うことに従う。

ポー「フーマ教育は素晴らしい効果を上げております。子供たちは朝は4時に起き、夜中の2時まで、それこそ夜に日を継いで努力いたしております。天才は2パーセントの才能に、98パーセントの努力と申します」
ヘスラー「さすがは天才たち、飲み込みが早いです」
ポー「みっちり洗脳した上で、他の惑星に売り出せばフーマの為に働く人類が誕生することでしょう」
基本的な目的はショッカーと同じでも、フーマはさらに、洗脳した子供たちを銀河の各惑星へ送り込んで将来の指導者に仕立て、武力を使わずそれらの惑星をフーマの傘下におさめようという、壮大無比の青写真を描いていた。
さて、大ちゃんとアニーは、バビロス号の高性能センサーで敵のアジトを発見し、まずアニーがひとりで潜入を試みる。
ここ、普通は男のほうが行くと思うんですけどね……。ま、いつものことか。

崖の上で、監視兵に見付かったアニーだったが、ちょうど目の前に谷に渡したロープと滑車があったので、

それにぶら下がって空中へ身を躍らせ、一気に谷を渡り切ると言う離れ業を演じる。

これ、凄いのは、アニーの足に兵士がぶら下がっていて、アニーに飛び掛かった別の兵士がそのまま崖から落ち、さらに、数人の兵士が崖から落ちそうになると言う三つのアクションが、同時に行われているところである。
しかし、折角のハイパーアクションなのに、撮り方が淡白なので、あまり凄いことをやってるように見えないのが実に勿体無い。
アニー、途中で兵士を蹴り落として、無事に向こう側に到達する。
さすがにその時の兵士は人形である。つまり、森永さんは少なくとも二回は滑空していることになる。

続いて、石窟の入り口、かなり高さのあるところから普通に飛び降りてしまう。
ま、下にマットか何かを敷いているのだろうが、やっぱり凄い。

老人「どんな惑星のどんな食べ物でも平気で食えるようにならねばならん。鉄の胃袋を作るのだ」
アニー、難なく最深部に入り込み、物陰からフーマ式スパルタ教育の様子をうかがう。

再びあの老人が登場し、檻に入れられた子供たちにそんな講釈をたれながら、柄杓で檻の前に置かれた横長の台の上に、白くてぐちゃぐちゃした得体の知れない食べ物(多分、豆腐だろう)を放り投げていく。
それを手掴みで貪り食う子供たち。
まるっきり、ブタのような扱いをされている。
そう考えると、ブタさんにとても悪い気がしてハムやベーコンを食えなくなる管理人であった。
アニー、大ちゃんに連絡しようとするが、その前に敵に見つかってしまう。

だが、フーマは大勢いるのにアニーひとりに翻弄され、子供たちを檻から助け出され上、レーザーセンサーガンを撃たれて近付くことさえできないと言う体たらく。
いくら、シャイダーが死んだと安心していたとは言え、これで全銀河征服など本当に出来るのだろうか。
その後、白い壁で囲まれた部屋に閉じ込められるアニーと子供たちだったが、一方の壁が開き、そこにトラックが後ろ向きで荷台をくっつけて、子供たちを荷台の中に吸い込み、石窟から走り出してしまう。

アニーから連絡を受け、森の中をうねる道を走るトラックを、上空からスカイシャイアンで追うシャイダー。

アニーも、アジトから出る際にトラックの脇に取り付いており、走行中、荷台の上によじ登る。

パンツを全開にしつつ、荷台からキャブに飛び移るが、管理人的には、そのパンツより、右膝に貼ってある絆創膏の痛々しさのほうが目に沁みた。
生傷の絶えない現場だったんだろうなぁ。

もっとも、次の瞬間には、ドアを開けて運転席に潜り込む際の、チラッと見えた可愛いお尻に心を奪われてしまった、重度の尻フェチが進行中の管理人であった。
トラックは自動運転だったので運転席には誰もおらず、アニーは難なくトラックを乗っ取ることが出来た。
道を離れ、採石場に入るが、何故かブレーキが利かない。

壁にぶつかりそうになるが、上空のシャイダーがビームを放ち、その前方の壁を壊して山を作り、なんとかトラックを停める。

アニー「……」
その時のアニーの表情が、
「何考えてんのよ、もうちょっとで死ぬところだったじゃないの!」 などと、荒っぽい相棒に対する不満を語っているように見えるのは管理人だけだろうか。
トラックに乗っていた子供たちは無事だったが、そこにいたのは30人だけで、残りの15人はまだ石窟に抑留されていた。

今度はシャイダーがバトルシャイアンで地中から突入するが、その15人がいきなりシャイダーに向かって斬りかかって来る。

ヘスラー「シャイダー、生きておったのか?」
今の今までシャイダーが死んだと思っていたヘスラー、驚きの声を上げるが、それには若干の「嬉しさ」が含まれているように聞こえるのは管理人だけだろうか。
にしても、ギャルたち、見せ場どころからアップのひとつもないというのは悲し過ぎる……。
子供たちに殺到されて困惑するシャイダーだったが、彼らがクビライの形のペンダントをぶら下げているのを見て、それによって操られているだけだと察し、毟り取る。毟り取られた子供たちはたちまち正気を取り戻す。
こうなればもう詳しく書く必要もない。
屋外でのヘスラーたちとのバトル、不思議時空でのムチムチとの戦いとなり、シャイダーの勝利&事件の解決となるのだった。
ラスト、雄一親子や、他の子供たちが一緒に動物園に来ているシーンで幕となる。
どうせなら、雄一の母親がガリ勉をさせ過ぎたと反省するシーンも欲しかったが……。

とりあえず最後は大ちゃんとアニーの笑顔で締めましょう。
以上、空撮を駆使したカーチェイスや滑空など、アクションは派手だったが、ストーリーはテレビの第3クールそのままの、平凡な内容であった。
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