第6話「悪役レスラーの愛」(1982年3月13日)
冒頭、ヤモリモズーによって、ダイヤモンド、サファイア、ルビー、オパールが美術館などから盗まれる。盗まれたのはすべて極めて高価な宝石であったが、警察は犯人の手掛かりすら掴めなかった。

ゴーグルファイブやコンボイたちは、差し当たりすることもないので思い思いに時間を潰していた。
黒田と黄島が将棋を指しているが、序盤ではちょくちょくメンバーが将棋を指しているシーンが見られる。
赤間「気になる」
黄島「え」
赤間「盗まれたルビーは俺のシンボル、サファイアはブルー、オパールはイエロー、ダイヤはピンクのシンボルだ」
新聞を睨んでいた赤間が、不意にそんなことを言い出す。
シンボルと言うのは、彼らの強化スーツの額に埋め込まれている宝石のことを指しているのだ。

青山「それじゃあ犯人はデスダークだと?」
ミキ「……」
青山の言葉に、リラックスしていたミキたちの表情が一気に引き締まる。

コンボイやみどりたちも、俄かに真剣な表情になって赤間たちの方を見る。
それにしても、みどりさんは可愛い! お嫁さんにしたい!

黄島「何故? 宝石をどうするつもりなんだよ」
赤間「そこまではわからん」
ミキ「となると、まだ盗まれていないのは……」
みどり「ゴーグルブラックのシンボル」
さゆり「エメラルド!」
黒田「……」
みんなの視線が黒田の苦みばしった横顔に注がれる。
赤間「大至急、狙われそうなエメラルドの持ち主をコンピューターでリストアップするんだ」
コンボイたち「はい!」
コンボイたちが弾き出したのは沢村と言う金持ちの家だった。まさか、大ちゃん家(ち)じゃあるまいな。

だが、一足遅く、黒田が駆けつける前に、侵入したヤモリモズーによって金庫が飴のように溶かされ、あっさり秘蔵のエメラルドを奪われてしまう。

屋敷の周りの路地に下りるヤモリモズー。
体中に小さなヤモリの顔が張り付いていると言う、なかなか不気味な造型の怪人である。
それを屋敷の警備員たちが必死に追ってくる。

ヤモリモズー、シュシュシュシュ……と鳴き声を発しながら、とある倉庫の中を走り抜けるが、その物陰では、偶然、ヘルマスクと言う有名な悪役レスラーが、何やら楽しそうに色んなお菓子やおもちゃをズタ袋に詰め込んでいるところだった。
ヘルマスク「あー、なんだ、ありゃ?」
その後ろ姿を見ながら、首を傾げるヘルマスク。
大して気にもせずに袋を抱えて歩き出そうとするが、その体が山積みになっている段ボール箱に当たり、それが崩れて、ちょうど倉庫に来た警備員たちの頭上に落ち、追跡を妨害する形になってしまう。

警備員「悪役レスラーのヘルマスクじゃないか」
警備員「どうしてこんなところに」
警備員「そうか、こいつ仲間を逃がす役だったんだ」
ヘルマスク「なんのことだ?」
警備員「とぼけるな、おとなしくしろ」
警備員たちは、悪役レスラーだから悪党だろうと言う、短絡にもほどがあるだろうという結論に飛びつき、ヤモリモズーそっちのけでヘルマスクを捕まえようとするが、あえなく蹴散らされる。
同じ頃、倉庫の反対側に黒田も現れ、倉庫から出てきたヘルマスクと鉢合わせする。
黒田「ヘルマスク?」
警備員「宝石泥棒の一味だ!」
ヘルマスク「知らん、俺は知らん」

逃げるヘルマスクを追い越し、両手を広げて進路を塞ぐが、ヘルマスクは力尽くで突破しようとする。

ヘルマスクが振り回すズタ袋を、空中を飛んで回避する黒田。

着地したところを「地獄投げ」で投げ飛ばされるが、逆にその手首を掴んでダンボールの上に叩き付ける。黒田、合気道の心得があるのだろう。
しかし、結局ヘルマスクには逃げられてしまう。
パトカーがけたたましく走り回る中、公園の物陰に巨体を沈めているヘルマスク。

マスクを外して素顔になると、再び楽しそうな顔になって、ズタ袋からサンタクロースの衣装を取り出し、着替える。

そして彼が向かった先は、のぞみ保育園と言う保育園だった。
ヘルマスク「おーい、季節外れのサンタのおじさんが遊びに来たぞー」
しょっちゅう訪ねているのだろう、中庭で遊んでいた子供たちが歓声を上げて集まってくる。

保母「すみませーん、いつもお世話にばかりなって」
ヘルマスク「いやー、気になさらんで下さい、子供が好きなんですよ」
保母「さあ、どうぞこちらの方へ」
保母さんも、笑顔で施設内に招じ入れる。
世知辛い昨今では、まずありえない展開である。

黒田「どうなってんだ、こりゃ?」
ひそかにヘルマスクを尾行していた黒田、その意外な光景に、驚きを隠せない。

心底楽しそうに子供たちにプレゼントを渡していたヘルマスクだったが、たまたまやっていたテレビニュースで、いつの間にか、自分が宝石窃盗犯の一味にされていることを知り、俄かに険しい目付きになる。
ヘルマスク(馬鹿な……そうか、宝石泥棒とはあいつのことか……)
同時に、倉庫の中で見掛けた怪人こそが一連の宝石泥棒の犯人だと気付く。
ヘルマスクを演じるのは、「デンジマン」のバンリキ魔王こと大前均さん。

一方、デスダークは、倉庫街の地下にアジトを設け、そこで何やら特殊な兵器を開発していた。
デスギラー「総統タブー、このエメラルドをセットすれば、5つのデスレーザーガンが全部揃うことになります」
モニター越しに、デストピアの総統タブーに報告しているデスギラー。

ザゾリヤ「すなわち5つの宝石はそれぞれデスレーザーガンのレーザー発振機になります」
それを受けて、タブーの前にいるザゾリヤ博士が説明する。
惨めな負け犬に転落する前だからか、目が活き活きとして、妙にザゾリヤ博士が綺麗に見える。

ザゾリヤ「たとえば、ルビーレーザーはゴーグルレッドのルビーを撃ち抜きます。そうなるとゴーグルレッドはゴーグルビクトリーフラッシュを発することは出来ません」

タブー「ザゾリヤ博士、見事なアイディアである。最早ゴーグルファイブなど、敵ではない」
しかし、ひとりでもビクトリーフラッシュを出せなくすれば、それで必殺技を封じることが出来るのに、わざわざ5人全員のデスレーザーガンを揃えようとは、デスギラーもショッカー直伝の完璧主義にかぶれていたように思える。

その結果、レッドたちにアジトへの入り口を発見され、易々と侵入を許してしまう。
狭い部屋での乱戦になるが、

ここ、さりげなく白衣を来た戦闘員のひとりが、後ろ向きに膝をついて、両手をブルーがジャンプする時の踏み台にしてやっているのがお分かりいただけるだろうか?

ひとしきり戦った後、レッドが「何者だ?」と、デスギラーに向かって意外な質問を発する。
良く考えたら、デスギラーが彼らの前に現われるのがこれが初めてだった。

デスギラー「デスギラー将軍!」
レッド「デスギラー?」
レッドたちは、ヤモリモズーや戦闘員と戦いながら地上へ出てくるが、ちょうどそこへ、ヤモリモズーを探してやって来たヘルマスクと、彼を尾行してきた黒田が現われる。
で、敵味方入り乱れてのエメラルド争奪戦が繰り広げられるが、結局エメラルドは近くの森まで飛んでいってしまう。ヘルマスクはなおも森へ入ってエメラルドを探すが、デスダークに襲われ意識を失う。ブラックとピンクが駆けつけ、敵を撃退してヘルマスクを助ける。

CM後、意識を取り戻したヘルマスクが目を開けると、視界に、実に絵になる若い男女の顔があった。

ヘルマスクの巨体は、公園のベンチに寝かされ、ミキに手当てを受けていたらしい。
黒田「どうして危ない真似をする? 何故そんなにエメラルドを探すんだ? ヘルマスク」
ヘルマスク「なんのことだ?」

黒田「俺は知っている、あなたは悪役レスラーのヘルマスク、そしてある時は、季節外れのサンタのおじさん」
ヘルマスク「……」

黒田「俺はゴーグルブラックです」
ミキ「私はゴーグルピンクです」
ヘルマスク「いかにもヘルマスクだ、だが、いくら悪役とはいえ、宝石泥棒の仲間にされちゃあかなわん。俺の手でエメラルドを返して無実を晴らしたかったのだ」

ミキ「そんなことしなくても、はっきりと無実と言えばいいじゃないですか」
ヘルマスク「それを説明すると俺がサンタのおじさんだということがばれてしまう。俺はいつもあの倉庫の中でサンタクロースに着替えるんだ。そしてサンタのおじさんとしてのぞみ保育園に遊びに行ってるのさ」
ミキ「良い話ではありませんか」
悪役レスラーの意外な素顔を知って、黒田もミキも胸の中をそよ風が吹き抜けていくような、清々しい気分にさせられる。
ヘルマスク「馬鹿言え、あの可愛い子たちは俺が悪役レスラーと言うことを知らないんだ」

ここで、悪魔のように相手レスラーを痛め付けるリング上のヘルマスクと、

サンタの格好をして園児たちと遊ぶヘルマスクの姿がイメージ的にカットバックされる。

黒田「ほんとは心の優しい人だという事は分かっています。あなたの無実は俺たちが必ず晴らして見せる。あなたは手を引いてゴーグルファイブに任せて下さい」
ヘルマスク「……分かった。ありがとう」
黒田とミキの澄んだ目を見詰めていたヘルマスク、信用するに足る相手だと思ったのだろう、割と素直に聞き入れてくる。
その後、森の中でレッドがエメラルドを発見し、それを奪い取ろうとしたマズルカを一蹴すると、「これが欲しければ天狗坂まで来い」と、珍しく、正義の方から悪に場所を提示する。
正義、悪の双方が、マシンを駆って同じ目的地へ向かうと言うシーンになる。

なるべく人目につかない高架の下をジープに乗って走っているデスギラー一行。
デスギラー「おのれぇ、ゴーグルファイブめぇ、急げーっ!」
しかし、さっきも言ったように、別に5つ揃わなければ使えない訳ではないのだから、そんな挑戦に乗らずとも、デスレーザーガンで各個にブラック以外の4人を狙撃すれば良いのではないだろうか?
あるいは、沢村家のエメラルドじゃないとダメと言うことでもないだろうから、他のエメラルドを探すとか。
ともあれ、双方、取引場所にやってくるのだが、よく考えたら、取引って、何かと何かを交換しないと
成り立たないと思うので、レッドがエメラルドを持ってくるだけでは、そもそも取引にならないのではないだろうか。
その癖、デスギラーは、それを受け取るのが当然見たいな顔で「エメラルドは持ってきただろうな」と言っているのだから、なんかピントが外れている。
ありきたりだが、ここはデスギラーがのぞみ保育園の園児をさらって、それと交換する……と言うのなら、この後のヘルマスクの行動にも説得力が増したと思う。

すなわち、ああ言ったものの気になって天狗坂までやってきていたヘルマスクは、デスギラーが5人の背後にマシンガンを持った伏兵を忍ばせているのに気付き、
ヘルマスク「ブラック、危ない!」
彼らに注意を促すと共に、自慢の怪力で岩を持ち上げて伏兵たちの頭上に落とすのだった。

ブラック「何故来た?」
ヘルマスク「見掛けは悪役レスラーでも心はサンタクロース、やっぱりあんたたちに任せておけなくなってね」
今更だけど、大前さんって良い役者だよね。清濁併せ呑むスケールの大きな演技である。
デスギラー「やれぇーっや!」 高橋さんの切れっぷりも、相変わらず素晴らしい。
ヘルマスク「今日は正義の味方、暴れるぞぉーっ!」
ヘルマスク、試合用のマスクを被ると、戦闘員の群れに突っ込んでいく。
と言っても、仮にも世界征服を狙うデスダークが、たかが悪役レスラー一人に倒されてはお父さんお母さんに顔向けが出来ないので、

戦闘員はともかく、ヤモリモズーたちには通用せず、あっさり彼らに捕まってしまう。
デスギラー「あっははははっ! ゴーグルファイブ、こいつとエメラルドを交換しようではないか」
レッド「なにっ」

レッド「わかった」
ブラック「レッド、俺が行く」
ブラック、一歩進み出て、レッドの手からエメラルドを受け取るふりをして、あらかじめて手の中に仕込んでおいた人造エメラルドを握り、デスギラーに差し出す。

デスギラー「にひっ……」
いいなぁ、この完全にイッちゃった釣り目!
しかも、約束どおりヘルマスクを解放してやるのだから、詐術を仕掛けた正義のヒーローより、よっぽどモラルが高いように見える。

マズルカ「これでデスレーザーガンが5つ揃ったわ」
デスギラー「デスギラー将軍自らの手で地獄へ送ってやる」
デスギラー、戦闘員たちに既に宝石をセットしたレーザーガンを持たせ、自分はエメラルドデスレーザーガンを構える。

そして、色とりどりの光線を一斉に発射する。

しかし、あたらなけば意味はないのだった。チーン。
それなりに威力はありそうだが、この外れっぷりは、照準器が歪んでいるとしか思えない。

デスギラー「どうしたことだ?」
しかも、デスギラーの持っていた銃は、すぐに異常が起き、ひとりでに暴発して壊れてしまう。
このデスギラーの顔、ちょっと可愛い……。

ブラック「はっはっはっ、人造エメラルドと摩り替えたのさ」
デスギラー「なにぃ」
ブラック「ヘルマスク、行くぞ」
ヘルマスク「おう」

種明かしをすると、ヘルマスクの肩の上に飛び上がり、ヘルマスクの必殺技「地獄投げ」で、豪快に宙を飛んで、

華麗な空中二段蹴りを放ち、4つのデスレーザーガンを一瞬で粉砕する。
この二段蹴りが、実にカッコイイのだ。
ちゃんとヘルマスクに花を持たせているところも良い。

ブラック「てぇぇぇいっ!」
デスギラー「ううおおーっ!」
着地しないで、そのままデスギラーの喉元に強烈な一撃を見舞う。
デスギラー「おぉのれ、かかれーっ!」
デスギラーのヤケ気味の掛け声を合図に、ラス殺陣に突入する。
事件解決後、濡れ衣が晴れ、その正体もばれずに済んだヘルマスクが、再びサンタのおじさんに扮して保育園を訪ねている。

ミキ「ほんとにあの人が、悪役レスラーのヘルマスクとは……」

ミキ「信じられないわね」
赤間「ああ、人は見掛けによらないと言うことさ」 黒田「うん、頑張れよ、サンタクロース」
青山&黄島(俺たちにもなんか台詞くれ……)
最後の最後に教育的結論を引き出す赤間であったが、その割に、明らかに見掛けだけで青山と黄島が冷遇されているのだから、いまひとつ説得力に欠けていた。
それにしても、いつも言ってることだが、ミキは可愛い!
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