第44話「大脱走・ヘリ爆破」(1981年12月12日)
45話から最終話までは、ブラックマグマの内部抗争に焦点を当てた連続的エピソードとなるので、単発エピソードとしてはこれが最後となる44話である。

嵐山「かねてから私が計画設していた新兵器の製造が正式に決まった」
のっけから、巨大ロボットの設計図のような図面が表示される。
どう見ても「バトルフィーバーJ」のバトルフィーバーロボだが……
飛羽「それが完成すればサンバルカンロボを補佐して太陽戦隊はより強力になりますね」
嵐山「本部に要請していたテストパイロットの隊員も決まり、実習訓練も兼ねてこのバルカンベースに来ることになっている」
戦隊シリーズで、途中から二台目の巨大ロボットが登場すると言うのは「マスクマン」あたりからひとつのパターンとなっているが、「サンバルカン」でもそういう構想があった訳である。結局実現はしないのだが。

ちょうどそこへ、美佐に案内されて、軍服姿の凛々しい青年が入ってくる。
飛羽「山根、山根じゃないか、おい」
山根「久しぶりだなぁ、飛羽」
飛羽「お前がテストパイロットだったのか」
山根「ああ」
その顔を見るなり、飛羽は嬉しそうに進み出て、親しくその腕を掴む。

飛羽「長官、私から紹介させてください!」
嵐山「いいだろう」
飛羽「平和守備隊の優秀なる空軍将校、山根淳一隊員です」
山根は、にこやかに欣也、朝夫とも握手と挨拶を交わす。
そのキビキビした態度に欣也たちも彼に好感を持ったようであった。
飛羽によると、山根とは空軍時代の親友同士で、二代目バルイーグルの最終候補にも挙げられた逸材らしい。

山根「へー、美佐さんは嵐山長官のお嬢さんなんですか」
美佐「ええ、でも、バルカンベースにいるときは長官といち隊員に過ぎません」
司令室に残って雑談を交わしている山根と美佐。

山根「はっ、なかなかシビアなんだな。素敵ですよ、とっても」
美佐「あらっ……」
飛羽たちの口からはまず出そうもない飾り気のない賛辞に、美佐はくすぐったそうに笑う。
ちなみに、管理人、クレジットを見るまで全然気付かなかったのだが、山根を演じているのは、飯田道郎さん、すなわち、「宇宙刑事ギャバン」の悪役ハンターキラー、あるいは「科学戦隊ダイナマン」のダークナイトの声、「超人機メタルダー」のメタルダーの声を演じている人なのである。
ハンターキラーを演じている時は、常にどぎついメイクとかぶりものをしていたから、その素顔が、こんな爽やかな好青年とは想像もつかなかったのだ。
山根「もし迷惑じゃなかったら、一度ゆっくりお茶でも飲みたいなー」
美佐「え、でも……」
初対面の相手にそんなことを言われ、さすがの美佐も戸惑って口ごもるが、決して嫌がっている様子ではない。

と、通信機のコールが鳴り、美佐が急いで出ると、
嵐山「美佐、すまないが例の新兵器の設計図を持ってきてくれないか」
美佐「はい!」
美佐は言われたとおり設計図を持って部屋を出て行く。
にしても、仮にも本物の軍隊の司令室で、いつもこんな露出度の高い衣装を着てるなんて最高だよね。
ところが、美佐が出て行ったあと、山根が不審な行動を見せる。ぴったりとドアを閉めると、嵐山長官のデスクを引っ掻き回し始めたのだ。

もっとも、すぐにタモリみたいな顔で嵐山が入ってきたので、慌てて引き出しを閉め、何食わぬ顔で、

山根「素晴らしい設備の司令室ですね。さすがバルカンベースだ」
嵐山「……」
山根「僕も一日も早く恥ずかしくないテストパイロットになりたいと思ってます」
嵐山「いい心がけだ。山根君……頑張れよ」
嵐山、めざとく、引き出しから書類が少しだけはみ出しているのに気付くが、何食わぬ顔で激励する。
その夜、夜道をひとりで歩いていた美佐が、得体の知れない怪物に襲われる。
が、ちょうど来合わせた山根に助けられ、事なきを得る。

翌日、飛羽たちがサファリの店内に顔を出すと、助八の機嫌が妙に悪い。一切料理を作ろうとせず、ひたすら、寸胴をタワシで擦っている。
助八「今日は何にもないの、僕ちゃん、料理作る気分じゃないの」
朝夫「どうしちゃったの、助八さん」

正男「失恋だよ」
まり「美佐お姉ちゃんに山根って男の人から電話が掛かってきて……」
ほいほいデートに出掛けてしまったと、助八の代わりに、カウンターに座る子供たちが説明する。

次の場面では、既に日が暮れており、夕日に染まりながら、美佐が公園の池のそばにしゃがんでいる。
美佐「まぁ、山根さんてメカの設計もなさるの?」

山根「ええ、興味があるんですよ。サンバルカンロボの設計図なんて是非見てみたいなぁ」
美佐「残念だけど、それは」
山根「新入りの僕じゃ信用が出来ないって訳ですか」
美佐「そんな」
山根「はっはっ、いいんですよ。でもサンバルカンロボには地球の平和がかかっているんだ。よほど慎重に機密を守らないと……きっと凄い秘密の場所に厳重保管してあるんだろうな」
美佐「いくら山根さんでもそのことに関してだけは……」
何気ない雑談を装いつつ、ちょいちょいサンバルカンロボの機密を探ろうとする山根であったが、無論、それでべらべら喋ってしまうほど美佐は軽率ではない。
かと言って、山根が機嫌を悪くしたり、逆に美佐が山根のことを疑うようなこともなく、あくまでお互いにくつろいだ表情のまま、山根の車に乗り込むのだった。
だが、車が行った後、彼らを見張っていたと思われるムササビモンガーが現われ、視聴者に対し、いかにも山根がブラックマグマのスパイのように印象付ける。
管理人も、てっきり、ハンターキラー同様、山根が裏切り者だとほぼ確信していたのだが……

その後、山根が人目を忍んで太陽戦隊の中枢部に入り込もうとしているところに、偶然、飛羽が現われて声を掛ける。
山根「飛羽!! 俺も早くバルカンベースに馴染みたくてね。見学させて貰ってた」
飛羽「なんだよ、一言言ってくれたら俺が案内したのに」
山根「畏れ多い、わざわざバルイーグルに手間を取らせるなんて」
飛羽「山根……」
山根「なんたって俺はただのテストパイロット、お前は憧れのサンバルカンだからな」
飛羽「お前、つまらんことを言うな。俺たちは共に学び、一緒に戦った仲間じゃないか」
山根の、らしくない僻むような言い草に、飛羽も思わず声を荒げる。

空軍時代の野外での厳しいトレーニングの様子も回想される。
二人の友情は、そんな厳しいトレーニングを通して培われたもので、ちょっとやそっとのことでは小揺るぎもしないもの……飛羽はそう思いたかった。
飛羽「俺はお前と誓い合ったあの時のことを決して忘れてはないぞ」

山根「そいつは説教か、それとも慰めのつもりか」
飛羽「ぃ山根ーっ!!」
だが、山根は飛羽の熱い言葉を受けても傲然と嘯き、飛羽は思わずその襟を掴む。
その腕を冷たく振り払うと、
山根「確かにお前は勝った。そしてバルイーグルになった。だが俺はいつまでもお前に負けてばかりはいないぞ!!」
飛羽「……」
と、そこへモンガー出現の知らせが入った為、飛羽は山根をひと睨みすると、その場を後にする。

今回の怪人ムササビモンガー、本来の足の他に、本物のムササビのような小さな足と、皮膜が付いていると言う、なかなか可愛らしい奴なのだ。
無論、夜道で美佐を襲ったのもこいつだった。
屋上に立つムササビモンガー、背中からロケット弾を発射して、手当たり次第にビルを爆破していく。
そこへサンバルカンが駆けつけ、怪人やアマゾンキラーたち相手に一通りバトルを繰り広げるが、結局逃げられる。
その直後、緊急事態発生の知らせが嵐山から入ったので、三人は基地へとんぼ返りする。
恐れていたことが起きた。山根がサンバルカンロボの設計図を持ち去ったと言うのだ。

欣也「あれが敵の手に渡ったりしたら……」
嵐山「その心配はない。こう言う事態を予測して設計図はすりかえて置いた」
さすが嵐山、文字通り、役者が一枚も二枚も上だった。
美佐「そう言えば山根さん、サンバルカンロボの設計図のことをしきりに聞いていたわ」
欣也「全て計画的だったんだ」
朝夫「ひどい奴だ、昔の親友まで裏切るなんて」
飛羽「それにしても、何故奴がこんなことを!!」
信じられないと言うように叫ぶ飛羽。
しかし、新兵器のテストパイロットに選ばれたのなら、サンバルカンロボじゃなくて、そっちの設計図を盗む方が簡単だったのではないだろうか。
本当なら、二台目の巨大ロボットのテスト運転中に、そのまま乗り逃げしてブラックマグマに献上する……と言うような話に(スタッフは)したかったのかもしれないが、その為だけにもうひとつ巨大ロボットを作るのは予算が足りなかったのかも知れない。

欣也「何処行くんだ」
飛羽「山根を探す。たとえ奴が裏切ったにしても設計図がニセモノと分かれば奴は殺されるに決まってるんだ」
欣也「おいっ」
飛羽「放っとく訳には行かないんだ」
欣也「お前、そこまであいつを……」
飛羽の友情の篤さに、感動を覚える欣也と朝夫だった。
さいわい、抜け目のなさ過ぎる嵐山が、山根の車に発信機を取り付けておいたので、三人はそれを手掛かりに山根の行方を探す。

さて、山根は、原っぱの片隅の、人気のない、打ち捨てられた変電施設のようなところでアマゾンキラーたちと会っていた。
アマゾンキラー「ごくろうだったな」
山根「こいつと引き換えに俺にヘルサターンに会わせ、ブラックマグマの司令官にしてくれるんだな」
アマゾンキラー「分かっている」
やはり、山根は最初からスパイとしてサンバルカンロボの設計図を狙っていたらしい。
このまま行けば、山根はそれこそハンターキラーのような元正義の悪の幹部になっていたかもしれないが、その場で設計図を調べていたアマゾンキラー、すぐにそれが真っ赤なニセモノだということを見抜き、血相変えて問い質す。
アマゾンキラー「何の真似だ、これはサンバルカンロボの設計図ではない!!」
山根「なにぃ?」

だが、山根は予め用意してた拳銃を構え、アマゾンキラーたちに突きつける。
山根「俺はその設計図をみやげにヘルサターンに会い、この手で奴を抹殺してやるつもりだった」
アマゾンキラー「スパイのふりは嘘だったのだな」
山根「あったりまえだ」
そう、管理人と大方の視聴者の予想を裏切って、実は山根が二重スパイになろうとしていたことが判明する。
もっとも、山根はムササビモンガーに拳銃を叩き落され、あえなく捕まってしまう。
それにしても、山根、生身の体でヘルサターンを倒せると本気で思っていたのだろうか。だとすれば自信過剰、大いなる認識不足と言わざるを得ない。それに、いずれにせよサンバルカンロボの設計図を敵に渡してしまうことになるので、あまりにリスクの高い計画だったのではあるまいか。
アマゾンキラー、すぐに山根を殺そうとはせず、洗脳装置で今度こそ山根を本物のスパイに仕立て上げようとするが、そこへバルイーグルが飛び込んでくる。

アマゾンキラー「お前の仲間は我らを手玉に取ろうとしたのだ。こんなもの紙切れ同然」
イーグル「山根、やっぱりお前はスパイじゃなかったんだな?」
わざわざ山根の潔白を明言して、二人の友情を復活させてやる優しいアマゾンキラーさんでした。
イーグルは山根を救出したものの、

ムササビモンガーのロケット弾を至近距離から食らい、強化スーツに大ダメージを受ける。
なんとか建物の外へ出るが、

イーグル「だぁめだ、スーツが爆発する!!」

飛羽「とあっ」
飛羽は強化スーツを脱ぎ捨て、追いかけてきたアマゾンキラーたちに向かって放り投げる。

強化スーツはアマゾンキラーたちの目の前に落ちると、大爆発を起こす。
戦隊シリーズで、強化スーツが破れたり故障したりすると言うのはまま見られる現象だが、それを自ら脱ぎ捨てると言うのは、これ以外ではなさそうな稀有なケースである。
さて、ここから、シリーズでも最高に派手なアクションシーンのオンパレードとなる。
二人はちょうど近くに停めてあったブラックマグマのジープに乗り込み、逃走を開始する。
山根「すまん、俺の野心の為に」
飛羽「もういい、何も言うな」
しかし、休む間もなく後方から戦闘員の乗ったジープ、そしてヘリコプターまで接近してくる。

ジープとヘリからマシンガンが浴びせられ、ついで、ヘリの戦闘員が手榴弾を投げてくる。

至近距離での連続的な爆発を、空撮、および地上からのカメラで捉えた迫力のショット。
飛羽、その爆風で吹き飛ばされた山根を助けようとしてジープから飛び降りる。
山根を助けてジープに戻ろうとするが、ヘリからマシンガンを撃たれ、ジープに近付けない。
やむなく徒歩で走り出し、谷に掛かった橋の上に踏み込むが、

前方からマシンガンを持った戦闘員、後方からアマゾンキラーたちが現われ、挟み撃ちの形となる。
戦闘員が、殺傷能力のある武器を持っているというのは、やはり怖いよね。

ただ、残念なことに、みんな壮絶に射撃が下手だったので、前後、そして上空のヘリから一斉に撃ったにも拘らず、弾は一発も当たりませんでした。チーン。

飛羽は山根を促して、そこから空中に身を躍らせて、下の激流の中に飛び込み、死地を逃れる。
「ゴーグルファイブ」「ダイナマン」などで、メンバーの一人が変身できない状態に追い込まれて、多数の敵から追われるというシチュエーションは良く見られるが、このように二人で逃げ回ると言うのは珍しい。

これだけでもうお腹一杯だが、続いて、走行中の貨物列車の前にやってくる二人。
土砂や砕石を積んでいる貨車のひとつに、なんとか這い上がる。
走っているのは本物の貨物列車だと思うが、乗り込む時の映像は、別に撮っているようだ。
凄いのは、

その上空に現われたヘリから再び手榴弾が投げられ、列車のそばでボンボン爆発が起きるところである。

いくら貨物列車とは言え、良くこんな撮影の許可が下りたものだ。
しかも、爆発時にちゃんと貨物の上に人が乗っているのが見えるし、

ヘリコプターからのカメラでは、乗っているのはどうも俳優さん本人らしいのだ。
まさか、撮影の為に、特別に列車を走らせたとは思えないが、とにかく、映画顔負けのアクションシーンが、子供向け特撮ヒーロー番組で見られるとは感激である。
何とか列車から飛び降りた二人に、なおもヘリコプターが追いすがり、猛攻撃を加える。
ここでやっと、シャークとパンサーが到着し、
シャーク「バルカンスティーック!!」
シャークの投げたバルカンスティックで、ヘリコプターは脆くも撃墜されてしまう。
ここで初めて、パンサーたちは飛羽が変身出来なくなっていることを知る。
連絡を受けた嵐山は、ただちにジャガーバルカンを発進させる。
サンバルカンと山根は、待ち受けていたアマゾンキラーたちと死闘を繰り広げるが、ひとり欠けた状態では苦戦は免れなかった。

と、上空にジャガーバルカンが現われ、アマゾンキラーたちにミサイルを撃ってから、

ケースミサイルなる特殊なミサイルを発射する。

飛羽がそれを受け止め、その中にあった真新しいブレスレットを装着、無事にバルイーグルに変身する。
こうなればもう書くことはない。いつものように、果てしなく、永遠に続くかと思われるほど長ったらしいラス殺陣が演じられる……と思いきや、今回は既にアクションシーンにたっぷり時間が費やされていたので、いつもの半分くらいの長さであった。
ラスト、夕陽を浴びて佇む飛羽と山根。

飛羽「山根、これからも良いライバルでいようぜ」
山根「許してくれるのか?」
飛羽「何を言ってんだよ、お前と俺は親友じゃないか」
山根「飛羽!!」

がっちり手を握った二人の姿を、美しい夕陽が黄金色に染め上げる。
以上、盛り沢山のアクションに加え、男同士の友情を高らかに謳い上げた秀作であった。
実際、これだけたくさん台詞を書いたのは「サンバルカン」では初めてのように思えるほど、ドラマとしても充実していた。
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