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アニメ「はいからさんが通る」 第36話「泣いて笑って初月給」



 第36話「泣いて笑って初月給」 作画監督 田中英二・岸義之

 タマプロ担当だが、西城・水村両氏を差し置いて岸氏が作監を務めているのがちょっと釈然としないのだが、作画スタッフの中に西城・水村両氏の名前があるので、作画の出来はかなり良い。

 さて、なんとか冗談社と言う雑誌社に就職を果たした紅緒、本格的な勤務の前に、編集長室で、編集長の青江冬星から、記者としての心得を教え込まれている。

 
 青江「いいか、この会社にいる間は、自分を女だと思うな。男として働くんだ」
 紅緒「はい!」
 青江「女は泣く、女は甘える、女はサボる、もし君にそう言うことがあれば、即刻やめてもらう」

 日頃から男尊女卑を公言している青江らしい言い草だったが、とりあえず、「男も泣く、男も甘える、男もサボる」と言う言葉を進呈しておきたい。

 
 紅緒「むぅずかしいなぁ、あたしって女らしいから!」

 ギャグ顔を赤くしながら、白々しく困ったふりをしてみせる紅緒に、

 
 青江「良く言う……」

 ほんの一瞬ヒョータンツギみたいな顔になった後、横を向いてボソッとつぶやく。

 
 青江「ま、君のことだ、大丈夫だとは思うがね……」
 紅緒「む! ……どう言う意味でしょうか?」

 紅緒、ムッとした顔になるが、すぐ気を取り直して、精一杯おしとやかな表情と声を作るのだった。
 (原作では、怖い顔のまま同じ台詞を言っている)

 もう数え切れないほど書いてきたが、西城or水村氏の描くところの、この鼻筋が少し盛り上がった紅緒の顔、管理人は大好きなのである!

 言ってみれば、この顔こそ、自分がこの作品を紹介したいと思った原動力と言っても良く、ひいては、こうやってブログで色んな特撮やドラマを紹介することになったそもそものきっかけと言っても過言ではないのである。

 サブタイトル表示後、青江に他の編集者たちに紹介され、明るく挨拶する紅緒。

 編集者は三人いるが、ろくに名前も付けてもらえず、和服とか眼鏡とか、その外見だけで他と区別されている。眼鏡は、終盤に紅緒のライバル・ツメ子(だっけ?)となし崩し的に結婚するんだっけ?

 まあ、いずれにしても、アニメ版では彼らにほとんど出番はないのだが。

 
 編集者「君は、そっちの机を使えばいい」
 紅緒「はいっ」

 本当にしつこくて申し訳ないが、管理人はこの横顔が大好きである。

 
 紅緒「いよいよ、私も雑誌記者かぁ……うふ、ごっ機嫌!」

 男性編集者たちの反対側の机につき、ペンを取って原稿用紙の上を走らせて、早くも雑誌記者気分に浸る紅緒。

 
 青江が編集長室に引っ込んだ後、男性編集者のひとりが、感に堪えたように、

 編集者「しかし、良くあの編集長が女を雇ったなぁ」
 紅緒「はぁ?」
 編集者「あれー、知らないの? あの編集長、有名な女嫌いで通ってるんだぜぇ」

 
 紅緒「ええーっ、そうは見えないけど……」

 さらに、女に触られるとジンマシンが出ると聞かされ、

 紅緒「そんな馬鹿な……」
 編集者「本当だって」
 編集者「試してみたら?」

 

 
 そう言われて、何かを決意したように顔を起こす紅緒。

 うーむ、自分の気に入ったカットをとりあえず貼っていたら、きりがないな、これは。

 紅緒、すたすたと編集室へ行き、いきなり青江の手首を掴んでみる。

 最初は何も起きなかったが、少しすると、本当に青江の顔にぶつぶつが浮かび上がってくる。

 紅緒「うわっ! か、く、く、く……」
 青江「何をサボッとるかーっ、取材、取材、取材、さっさと働けーっ!」

 青江に怒鳴られて、紅緒は編集長室からすっ飛んでいくのだった。

 
 紅緒の声「その晩私は、毎日学校サボって月謝だけ納めるのを無駄だと思い、学校を辞める決心をしたのです……」

 夜、仕事に疲れた紅緒が、退学届けを書いた後で、机に向かって居眠りしている。

 そこへ伯爵夫人が訪れるが、紅緒の肩越しに「退学届」と言う文字を見て、思わず目頭を押さえる。

 伯爵夫人「この家のために……」

 夫人の落とした涙が紅緒の頬を打ち、紅緒は目を覚ます。

 紅緒「おばあさま……わぁっ!」

 紅緒、慌てて退学届けを体で覆い隠す。

 
 伯爵夫人「紅緒さん、卒業までもうすぐではありませんか……おやめなさい、そんなこと」

 紅緒の肩に手を置いて、優しく翻意を勧めるが、

 
 紅緒「あの、私、学校が大嫌いなんです。学校行ってるだけで、血圧が上がって食欲がなくなり意識が朦朧となるんです……助けると思って見逃して下さい」

 紅緒、つらそうな顔で、目から涙を溢れさせながら、そんな出鱈目を並べ立てる。

 しかし、「意識が朦朧となる」と言うのは、いくらなんでも大袈裟であろう。一度病院行った方がええで。

 
 伯爵夫人「あなたは、あなたはなんと優しい人なんでしょう……ああ……」

 伯爵夫人は、紅緒の気遣いに感激して、紅緒の髪に頬を寄せて、その頭を掻き抱くのだった。

 伯爵「忍さえ生きておれば中途退学などさせなんだのにのぉ」
 伯爵夫人「でも私たちは忍さんを失った変わりに、紅緒さんという人を得たのですよ」

 その後、紅緒の退学の件を伯爵に話している夫人。

 
 伯爵「うん、わしはこの頃じゃ、紅緒が本当の孫のように思えてならんのじゃ」

 紅緒が聞いたらどんな喜ぶか知れないありがたい言葉を口にする伯爵であった。

 なかなか良いシーンだが、原作にはない。

 また、退学がどーのこーのという話も一切出て来ない。そもそも原作では、忍が戦死(生きてるけど)してからは、学校のことが話題になることはほとんどなかったように思う。

 せいぜい、ミハイロフ侯爵が飛行船で来日する前日、紅緒が久しぶりに環と会った時に、女子大生となっていた環が「女学校の延長みたいなもの……」と口にするくらいだろう。

 原作では、別に明言されていないが、とっくの昔に紅緒は学校を辞めているようなのだ。

 その後、紅緒の新米記者としての奮闘ぶりがイメージ的に描かれる。

 
 しばらく日が過ぎてから、青江が編集部へやってきて、長ギセルを口にくわえながら部下に尋ねる。

 青江「新入社員はどんな具合だね?」
 編集者「なかなか良くやっていますよ」
 青江「女だからといって甘えることはないだろうな?」

 青江が重ねて問い質した時、

 
 紅緒「おらっ、お茶だぞよ!」

 お盆とたくさんの資料を抱えた紅緒が、足で戸を開けて入ってくる。

 その、女らしいとからしくないとかのレベルを超越した紅緒のあさましい姿に、青江も編集者も思わず怖気をふるう。

 
 編集者「あ、あの人が女だと言うのは神への冒涜ではないでしょうか?」

 
 青江「ちょっと何言ってるかわからない」

 じゃなくて、

 青江「そうか……」

 余計な心配だったか……とでも言いたげな青江であった。

 なお、編集者の台詞は原作にもあるのだが、「何言ってるのか分からない」のは事実である。

 
 ある夜、いかにもモダンな雑誌記者といういでたちの紅緒が仕事の後の快い疲れを抱いて帰宅する。

 ま、少女漫画のヒロインだから当然なんだけど、大正8年と言えば、まだモガ(モダンガール)と言う言葉すらなかった頃で、こんなスタイルの良い、バリバリに洋装した一般女性は、まずいなかっただろう。

 大正14年に行われた街頭調査で、銀座を歩く老若男女の洋装と和装の比率が出ているのだが、それによると、男性はともかく、女性は実にその99パーセントが和装だったと言うのだから、紅緒や環などのような女性がいかに非現実的な存在だったか、理解して頂けると思う。

 閑話休題、

 
 紅緒「うわぁ、グロッキーなのだぁ」

 荷物をテーブルの上に置くと、ソファの上に身を投げ出し、思いっきり手足を伸ばす。

 と、帰りを待ち侘びていたのだろう、伯爵夫人が現われ、

 伯爵夫人「紅緒さん、すみませんねえ、あなたにばかり苦労を掛けて……」
 紅緒「おばあさま」
 伯爵夫人「世が世ならやんごとない華族の御台所が下々の女のように働くなどおいたわしい……」

 伯爵夫人、ハンカチを目に押し当てて嘆く。

 これも原作どおりの台詞だが、「世が世なら」と言う言い方、ちょっとおかしくないか? これが戦後の、華族制度がなくなってからの会話ならピッタリなのだが、今は、まさにどんぴしゃで、その「世」だと思うんだけどね。

 

 
 紅緒「ぃやだ、やだ、おばあさま、これからは女だって仕事を持つ時代なんですよ」
 伯爵夫人「でも紅緒様」
 紅緒「私、平気ですぅ、若いし、丈夫だし、それに今の仕事、私に向いてるみたいだし」

 紅緒、つとめて明るい顔で、沈みがちな伯爵夫人の気を引き立てようとする。

 紅緒「それよりも、おばあさまこそ元気を出してくださいね、そんなんじゃ、少尉が帰ってきたらきっと心配しちゃうでしょ」
 伯爵夫人「え、忍が?」

 
 紅緒「ええ! 帰ってくるに決まってるじゃありませんか」

 飛び切りの笑顔で断言する紅緒。

 ……もう、ほんと、この紅緒の顔が好き過ぎて胸が切なくなるのです!

 伯爵夫人「まだ信じている、忍さんが生きていると……」

 紅緒が自室に引き揚げた後、ぽつりとつぶやく伯爵夫人であった。

 かと言って、紅緒だって、忍が生きていると言う確証があるわけでもない。

 自室で忍の写真を見て、元気な忍の姿を脳裏に思い浮かべると、思わず熱い涙が込み上げて来て、嗚咽を漏らす。さらに、浅草のオペラ見物や、居酒屋での騒動など、楽しかった恋愛時代のことを思い出し、最後は、床に身を突っ伏してひたすら涙に暮れる紅緒だった。

 ここで、再びシベリアの雪原に立つ小屋で、サーシャ・ミハイロフ侯爵こと忍と、その妻と称するラリサの姿が描かれる。

 彼らは革命軍に捕まることを恐れ、もっと安全な場所への逃避行を決意していた。

 さて、そんなことは知らない紅緒、その日は入社して初めての月給日に当たっていた。

 
 行きがけに、伯爵夫妻にそのことを告げた紅緒、出社してからも、

 紅緒「えっと、あれを買ってこれも買って……」

 仕事も上の空で、月給で伯爵夫妻に何を買って帰ろうかと算段していた。

 と、暇そうにしていると、先輩記者から「江戸川端散歩先生のところに、廃人二十面相の原稿取りに行ってくれ」と頼まれ、あくびを噛み殺しながら出掛ける。

 今まで楽しそうに考え事をしていた紅緒が、急にあくびをするのはいささか唐突な感じだが、原作では、初月給のことは出て来ず、前夜、忍のことを思って泣き明かしたのでよく寝てないと言うことになっているのだ。

 
 外観からして怪奇ムードたっぷりの江戸川端先生の屋敷。

 
 中もほとんどお化け屋敷のような感じで、不気味なインテリアが所狭しと並んでいる。

 原作も似たようなものだが、アニメの方が徹底している。

 江戸川端「いやー苦労したよ今回は、その代わりいい出来だと思うが、ぃふっふっーっ!」

 見た目の割に、気さくな性格の江戸川端であった。声はナレーターの永井一郎さん。

 シリアスなキャラからチェリーのような妖怪まで、幅広い芸風を自在に演じ切る永井さんの演技は、いまさらながら素晴らしい。

 ちなみに「江戸川端散歩の廃人二十面相」が、「江戸川乱歩の怪人二十面相」のもじりであることは言うまでもあるまい。大和先生がファンだったのだろう。

 もっとも、乱歩が作家としてデビューするのはこの4年後のことである。

 また、散歩の屋敷がこんな風なのも、「乱歩は薄暗い土蔵で原稿を書いている」と言う、当時から流布していた噂(と言うかイメージ)から来ているのだろう。

 
 首尾よく原稿を受け取った紅緒だったが、路面電車で戻る途中、途中で降りていく背の高い男性の後ろ姿を見て、「しょ、少尉!」と、我を忘れて追い掛けて、自分も電車から降りる。

 その金髪頭のすらっとした後ろ姿が、忍そっくりだったからである。

 紅緒「ちょっとーっ、ちょっと待ってーっ!」

 
 男「おらのことだべか?」

 だが、紅緒の声に立ち止まった男性が振り向くと、忍とは似ても似つかぬ顔だった。

 と言うか、これが人間の顔か?

 
 紅緒「うっ、嫌なものを見てしまった……」

 思わず吐きそうになって口に手を当てた後、可愛いギャグ顔になってハンカチで汗を拭く紅緒。

 ちなみに原作では、同じページに廃人二十面相や、貧血ゾロなどが散らばっている。

 
 紅緒「やだ、やだ、私どうかしてる。少尉がこんなとこにいる訳ないじゃないの……あ? なんだか手が寂しいような……と……うわっ! 原稿がない!」

 ぶつぶつ独り言を言いながら何事もなかったように歩き出した紅緒、すぐ、しっかり持っていた筈の原稿がなくなっていることに気付き、顔面蒼白になる。電車に置き忘れてきたのだ。

 慌てて路面電車を追って走り出す紅緒の前に、馬に乗って覆面をつけた得体の知れない4人の男が現われる。

 
 紅緒「あ、いいとこへ怪傑ゾロ!」

 
 怪傑ゾロ「なんぞ事件かな、お嬢さん?」

 ……と言う訳で、彼らが怪傑ゾロらしい。

 なんだか良く分からないのだが、奇しくも、大正8年と言えば、「怪傑ゾロ」の第1作目が雑誌に掲載された年に当たるのである。

 
 紅緒「ちょっとどいて」
 ゾロ「な、何をする」
 紅緒「うらっ!」

 紅緒、そのひとりをいきなり引き摺り下ろすと、自分が馬にまたがり、縋りつくゾロを思いっきり蹴飛ばす。

 
 紅緒「ハイヨーッ!」

 そしてそのまま駆け出し、電車を追いかけるのだった。

 これも原作どおりだが、この馬の動きなど、なかなか良く描けている。少なくとも、原作の、なんか別の生き物みたいに見える馬の絵よりは上手である。

 ま、馬の絵を描くのは難しいからねえ。

 紅緒、上手く路面電車に飛び移ることに成功するが、原稿は既に誰かに持ち去られた後だった。

 帰社した紅緒は、当然、青江にこっぴどく叱られる。

 それでも、もう一度原稿書いてもらうように頼みに行くと言い出し、青江も同行することになる。

 アニメでは、かつて同じようなことをした記者が、江戸川端に回転ノコギリで輪切りにされたなどと言う話が出てくるが、原作にはない。

 
 で、まぁ、恐る恐る頼みに行ったら、意外にも江戸川端本人から紛失した原稿を渡される。

 原稿を拾った人が彼の読者だったので、わざわざ屋敷まで届けてくれたらしいのだ。

 江戸川端「これからは気をつけてくれたまえ」
 紅緒「ありがとうございます、江戸川端先生、これからは廃人二十面相は先生のことだと思って尊敬します」
 江戸川端「えっ、わしってそんなに廃人みたいかしら……」

 紅緒、嬉しさのあまりそんなお世辞を言うが、かえって江戸川端を傷付けてしまうのだった。

 さて、その夜、紛失騒動もあって紅緒は残業となり、結局そのまま編集室に泊まってしまう。

 
 朝、机の上で目覚めた紅緒は、紅緒に付き合って徹夜で仕事をした青絵が、編集長室で疲れて眠っているところを見て、

 
 一瞬、とろけそうな顔になってしまう。

 長髪に隠れて見えなかったその素顔が、忍に勝るとも劣らない美形だったからだ。

 紅緒「編集長ってすっごいハンサムだったんですね、今まで気がつかなかったけど」
 青江「顔のことは言うな!」

 誉めたつもりだったが、青江は逆に怒り出してしまう。

 青江の自分の顔に対するコンプレックスには理由があったことが後に分かるのだが、アニメはそこまで行く前に終わってしまった。

 紅緒は帰宅すると、同じく徹夜で紅緒の帰りを待っていた伯爵夫妻に、貰ったばかりの月給袋をそっくり渡してしまうのだった。

 そう言えば、紅緒が働いてるのを隠して学校に行くふりをして、それを伯爵たちも見て見ぬふりをすると言う「美しい嘘」が、いつの間にかどっか行っちゃったなぁ。
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70~80年代の特撮、80年代のドラマを中心に紹介しています。

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