第35話「99年目の竜神祭」(1980年12月3日)
後半では貴重な、シリアスかつSF色の濃い力作である。

山川「遠い遠い昔のことじゃ、この地方にはたくさんの妖怪が住んでおってな……その中でも一番恐ろしいのが三つ首竜じゃった。この三つ首竜は三つの首で村人たちの大切な馬や牛を食べつくすと、今度は村人たちをも片っ端から食べ始めた……」
冒頭、やまなみ村の神社の拝殿の前で、子供たちに昔からの言い伝えを語って聞かせている山川と言う神主。
演じるのが常田富士男さんなので、まるっきり、実写版「まんが日本昔ばなし」と言うおもむき。
そう言えばつい最近亡くなられたんだよね。合掌。

そう言いながら、絵巻物を広げて見せるのだが、そこに描かれた怪獣の絵も、いかにも昔の人が描いたようなタッチの絵なので、説得力が増す。
当時の村長は、三つ首竜に大酒を飲ませて酔い潰れさせたところを、首の根元を切りつけ、三つの首を切断したと言う。無論、ヤマトタケルのヤマタノオロチ退治のパクリである。
すると、首の付け根から水晶のような球が出て来て、三つの首はそれぞれどこかへ逃げ去り、村には平和が戻ったが、その球は、以来、竜玉と呼ばれる宝物として、代々、このやまなみ神社に受け継がれてきたのである。
で、その勇敢な村長と言うのが、山川神主の先祖にあたるらしい。

人の輪の後ろで神主の話を聞いている、白い袴姿の凛々しい少年こそ、神主の養子であり、神社を受け継ぐことになっている光男少年であった。
ナレ「99年に一度の竜神祭り、その最後の日に竜玉は開帳され、磨かれるのだ」
その竜神祭りの様子が描かれる。外見的には、参道の左右に色んな屋台が並び、その間を大勢の見物客が行き交うと言う、ごく普通の縁日の祭りである。

ただ、屋台のほかに、巨大な岩を持ち上げて頭突きで割るという青いタイツの怪力男や、手品師、

赤一色の衣をまとったくまどり男など、大道芸人がパフォーマンスを見せるブースも設けられていた。
くまどり男のネタは、青森で特にウケたと言う、
「異様に手相がわかりやすい男」である。
……嘘である。

ほんとは口から火を吹くのである。
怪力男はバンリキ魔王の大前均さんで、くまどり男は新海文夫(丈夫)さんである。
OP後、にぎやかな境内に現われたのは、猛とイケダ隊員であった。
彼らは(事実上)休暇で、99年に一度行われる竜神祭りを見物に来たのだ。なお、イケダ隊員は山川神主の甥にあたるらしい。
猛「どうして99年に一度なんだ?」
イケダ「え、どうですかねえ、100年経つと竜玉が曇るって言われてるんですけど……」
猛「曇る前に磨くんだ、それで99年ごとに祭りが来て、玉を磨くんだ」
イケダ「はー、なるほど、さすが先輩」

その後、二人は神主の家にあがり、神主の妻と光男に会う。
イケダ「光男君、大きくなったなぁ」
光男「はい」
母親「いい神主になるわ、きっと、学校の成績もいいのよー」
イケダ「ほう、おばさんも安心だね」
母親「ええ、お祭りの最後の日に光男が竜玉を磨くのよ」
猛「光男君、それは大役だな」
母親「ええ、竜玉が曇るとまた竜が暴れたり、不吉なことが起こると言われてるんです」
イケダ「光男君もいよいよ一人前だね」
母親「私ももう嬉しくて、この役目を無事に務めると光男もここの跡取りとしてみんなに認められるのよ」
光男の養母は、数日後に迫った息子の晴れ舞台に思いを馳せ、実の息子のことのように目を細めるのだった。
口数の少ない光男が一礼して退室した後、入れ替わりに神主が顔を出す。

山川「良く来たな」
イケダ「おじさん!」
山川「……」
猛「矢的です、お世話になります」
【悲報】イケダ隊員、おじさんに軽くシカトされる。 (註・ほんとは小さい声で「うむ」と言ってます)

挨拶を済ませて、存分に祭りを楽しもうと外へ出た猛たち、おみくじを引こうと神社の前にやってくるが、
猛「ああーっ!」
そこに座っている巫女さんを見て、猛が思わず驚きの声を上げる。

何故なら、その巫女は、UGMのお天気お姉さん・ユリちゃんだったからである。
ユリ子「うっふっふっふっ」
ユリ子も、イケダ隊員に誘われて、やまなみ村に遊びに来たのだ。
遊びに来たのになんで巫女のバイトやってるの? などと野暮は突っ込みはなしにしよう。
管理人は、ユリちゃんの巫女さん姿を見れただけで幸せである。
それにしても、一度に三人も隊員が休みを取れてしまうUGM、過去の防衛隊ではまずありえない緩さである。
光男少年、物静かでよく神主の手伝いをする感心な少年として村人から賞賛の的となっていた。
お祭り騒ぎを尻目に、黙々と境内の掃除をしていたが、ふと、宝物殿にあのくまどり男が近付いているのを見てハッとする。

くまどり男は、単に竜玉を外から窺っていただけのようだったが、光男に何か意味ありげな笑みを向けてくる。光男も、あの男のことを知っているのか、視線をそらし、唇を噛み、なんともやるせない顔になる。

翌日早朝、猛たちが起き出して来ると、既に光男は参道の掃除を行っていた。
猛「光男君、おはよう」
光男「おはようございます」
イケダ「おはよう」
光男「……」
【悲報】イケダ隊員、光男君にもシカトされる。 猛「光男君、空手やってんだってね」
光男「はい」

三人は小さな祠のある林へ移動し、猛と光男が道着をまとい、朝靄の中、組手稽古を行う。
いや、稽古と言うより、ほとんど試合のような真剣さであった。
猛と互角に打ち合ったり、猛と同じように空を飛んで枝をへし折るなど、とても子供とは思えない技量を見せる光男。

猛「凄いな、光男君」
光男「矢的さん、ありがとうございました。凄いなぁ矢的さんは」
猛「凄いのは光男君だよ」
イケダ「……」
【悲報】イケダ隊員、ほぼ空気と化す。 だが、調子に乗った光男、枝を拳で折ろうとして右手を怪我してしまう。

羨ましいことに、温かい日差しの差し込む縁側で、ユリちゃんと差し向かいで傷の手当てをして貰っている光男少年。
光男「いいんです」
ユリ子「いいことないわ。……光男君は七つの時にここに来たんだって?」
光男「はい」
ユリ子「(実の)お母さんは?」
光男「いません、父も、兄弟も……」

ユリ子「でも、あの神主とおばさんは光男君のほんとのご両親のようじゃないの」
光男「はい……」
うう、思わず三枚も貼ってしまうほどに、ユリちゃんは可愛いのである!
しかも、いつもは周りより年下でマスコット的ポジションなのに、ここではお姉さん風なのもポイント高し。
白坂紀子さんって、ハーフっぽい顔立ち、と言うか、ローラっぽい顔してるよね。
ユリ子「矢的隊員は光男君のお兄さん、私はお姉さんよ、これからはそう思ってね」
光男「はい!」
【悲報】イケダ隊員、名簿から漏れる。 (註・ほんとはちゃんとイケダ隊員と矢的隊員は……と言ってます)
神主夫妻も、最近の光男の態度が変だと気付いていたが、竜玉を磨くと言う大役が迫っているから、そのせいだろうと軽く片付けてしまう。

翌日(?)、ひとりの村人が、村はずれの人気のない場所に光男がいるのに気付いて声を掛ける。
村人「よう、光男君じゃないか。こんなところで何をしてるんだ?」
と、あの怪しい二人が光男の背後にぬっと立ち上がる。
村人「ああ、あんたたち、祭りの……」
村人は相手が単なる大道芸人だと思い込んでいるので、別に恐れる色も見せない。

くまどり男「ふっふっふっふっ……」
だが、不気味な笑い声を立てるくまどり男の右手が、怪物のように醜い形状なのを見て、思わずあとずさって逃げ出すが、あえなくくまどり男が口から吹き出した猛火を浴びて骨も残らず燃え尽きてしまう。

くまどり男「うーふっふっふっふっ……」
くまどり男、なおも、村人が連れていた小さな男の子に対しても炎を浴びせようとにじり寄るが、

今度は、光男がパッと子供を庇うように飛び出し、自分の体で炎を受けて子供を守る。
そこへ猛たちが駆けつけたので、二人はサッと草むらに身を隠す。

イケダ「どうしたんだよ」
光男「この子が、ここで泣いていたから……」
光男はあの二人のことは一切話さず、曖昧に説明する。
光男は、二人に完全に同調している訳ではないが、仲間であることは間違いないようだ。
……まぁ、勘の良い人なら、光男とあの二人の正体はもう分かってるよね。
さて、子供から事情を聞いた駐在が神主たちのところへやってきて、

駐在「小さな子供の言うことだから……父さんは真っ赤になって消えた」
山川「なんだって?」
駐在「怖い人が二人いた、僕はお宮さんの兄ちゃんが抱いて助けてくれた。まぁ、そう言う風なことを言ってるんだ」
光男「僕は村のはずれで泣いている坊やを見つけたんだ」
駐在「隠すことはないんだよ、良いことをしたんだから」
光男「本当です」
光男にとって都合のいいことに、神主が、村人が酒を飲んで赤くなって池に落ちたのではないかと見当違いの推理を組み立てたので、それ以上駐在から追及されずに済む。

猛(光男君)
光男(……)
光男の後ろにいた猛、もしやと思って、思い切ってテレパシーで光男に語り掛けてみる。
果たして、光男は猛の心の声に、弾かれたように振り向く。
猛(君は決して悪い子じゃない、しかし、普通の子じゃないね)
光男(みんな逃げてください、お祭りの最後の日に、もっともっと恐ろしいことが……)
猛(あの坊やの言ったことは本当じゃないのか)
光男(言えない……僕は……)
まだ事件ともなんとも言えない段階だったが、猛からの連絡を受けて、イトウとフジモリもやまなみ村にやってくる。
UGM、そんなに暇なんか? あと、どうせならエミに来て欲しかった……。

お祭り何日目か知らないが、まだ大道芸を見せている怪力男。

その男こそ事件の鍵を握る人物だとも知らず、岩石割りを見て、暢気に拍手しているイトウとフジモリ。
関係ないが、手前にいる女の人の顔、味があり過ぎる!
祭り四日目の夜、光男は宝物殿の前にやってきて、(みんな、許してください)と、心の中で謝りながら、扉にかけられている南京錠をつかんで、そのまま握り潰そうとするが、(ダメだ、僕には出来ない)と、途中でやめてしまう。

怪力男(おい、いいか、明日のご開帳の時こそ、我々が99年待ち望んだ時だ。竜玉を奪え!)
くまどり男(いや、竜玉は我々のものだ、奪い返すのだ)
近くの木の枝の上にあの二人が立っていて、テレパシーで光男に語りかけてくる。
光男(いやだ、いやだ、出来ない!)
五日目の朝、家に戻らなかった光男を、猛が山の中で発見する。

光男「矢的さん、矢的さん、矢ぁ的さんは……」

猛、そこに現われた怪力男に思いっきり突き飛ばされてあえなく気絶してしまう。

光男「矢的さん、矢的さん、僕はみんなと一緒にいたかった、これからもずっと、でも、僕は、僕は……」
矢的の体に寄り添い、涙ながらに自分の思いを口にする光男。

その後、いよいよ竜玉を磨く儀式がおごそかに執り行われる。
神主が御幣を振った後、主役である光男が進み出て、竜玉に被せられた布のうえから、撫でるように竜玉を磨き始めるが……、その最中、布ごと竜玉を掴むと、いきなり外へ走り出してしまう。

あの二人もぴったりついてきて、追いかける村人たちを炎で追い払うと、山の中に入り、竜玉を地面に置き、三人が手を乗せる。
すると、空から雷光が落ちてきて竜玉にスパークし、

凄まじい爆発とともに、三つの首を持つ怪獣が出現する。
そう、怪力男もくまくどり男も、そして光男も、すべて言い伝えの三つ首竜の、切り落とされた首の化身だったのだ。
つまり、言い伝えは事実で、竜玉はバラバラになった怪獣を元通りにするパワーの源だったのだ。
こう言うパターンで人間が怪獣に変身すると言うのは、ウルトラシリーズ中でもこれだけじゃないかなぁ。

で、その正式な名前はファイヤードラコと言うのだが、そのデザインは当然、東宝怪獣映画でおなじみ、キンググドラを連想させる。手前にある鳥居なんかも、キングギドラの登場シーンに通じるものがある。
こちらは、キングギドラの翼の代わりに、腕があるんだけどね。
真ん中の首はくまどり男で、同様に口から炎を吐く。向かって右側の首が怪力男で、こちらも同様に怪力を誇る。向かって左側が光男だが、最後までその能力は分からないままであった。光男と言う名前から、レーザービームでも吐くのだろうか。
真ん中の竜の吐く炎を地面を転がりながらよける猛。

光竜(あー、矢的さん!)
まだ竜たちには人間だった頃の意識が残っており、光男の竜だけは戦おうとせず、逆に猛の身を気遣うほどだった。
そのうち、猛は80に変身、ファイヤードラコに向かっていく。

三つの首のうち二つしか攻撃に参加しないとはいえ、ファイヤードラコは80の怪獣の中でも最強クラスの強敵で、80は苦しい戦いを強いられる。
だが、光男の竜が突然真ん中の首に噛み付いた為、ファイヤードラコは一瞬動きを止める。
80、その隙にすかさずラッシュをかけ、

光男以外の首を重点的に攻める。
最後は、サクシウム光線を赤い竜と青い竜だけに撃ち、怪獣を倒す。
そして、80が燃え上がる怪獣の体から何かを掴み、地面に下ろすと、人間の姿に戻った光男が竜玉を抱えて立っていた。

光男は竜玉を足元に置き、80に一礼すると、そのまま走り去ってしまう。
竜玉は無事に神社に戻されるが、そのまま光男は帰ってこず、悲嘆に暮れる養父母の姿が映し出される。

夕暮れの中、しっかりした足取りで歩いて行く光男の後ろ姿を見詰めながら、

猛(良かったな、光男君、今度こそ、君は人間として生きることが出来るだろう。もう君を妨げるものはいない。勇気のある君のことだ。きっと生きていく。何処へ行っても君の周囲には君を愛する人たちが現われる筈だ。今日までのように……)
こうして、光男はこのまま人間として新しい人生を歩み始めることになったのである。
……って、ハッピーエンドみたいに言ってるけど、無理に山川夫妻の前から去る必要があったのだろうか?
本人は良いかも知れないが、長年育てた子供に理由も分からず失踪された山川夫妻の悲しみも、ちっとは考えて欲しい。
竜玉は無事だったのだから、持ち逃げしたことは適当に言い訳して(あの二人に竜玉を持ってくるよう脅されていたとか……)謝罪し、山川夫妻のところに戻ってくる、で良かったんじゃないの?
その辺がどうにも後味悪く、また、人間に身をやつした三人が、どうして何百年もの間、竜玉を力尽くで取り戻そうとしなかったのか(註1)、その点が気になって、自分としては力作以上の評価を与えることに躊躇を覚えるのである。
(註1……竜玉が、普段、特殊な結界で守られているとかなら分かるのだが、単に宝物殿に保管されているだけなのだから、盗み出そう思えば、彼らなら容易だった筈である。あるいは、99年ごとにしか彼らを復活させるだけのパワーが戻らない、と言うことなのかもしれないが)
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